普通の歯科医師なのか違うのか

義歯に何かつけてブラシをかけるのは効果的か?

 
この記事を書いている人 - WRITER -
5代目歯科医師(高知市開業)
東京医科歯科大学卒業(47期)
同大学院修了
【非常勤講師】
徳島大学
岩手医科大学

機械的な義歯の清掃法ですが、日本では通常歯磨き粉を付けずに磨いてくださいと指導していると思います。しかし、論文を読んでいると義歯を磨く専用の歯磨き粉がどうやら市販されており、それを実験に使っています。日本ではそういった市販品は見たことがないです。ポリデントフレッシュクレンズももどちらかというと化学的洗浄ですからね。そういったわけでその効果がいかほどの物なのか論文を読もうと思い立ったのですが、案外数がなく、さらにクロスオーバーしているものとなるとブラジルの国内雑誌に載った2013年の今回の論文ぐらいしかヒットしませんでした。

Complete denture biofilm after brushing with specific denture paste, neutral soap and artificial saliva
Helena de Freitas Oliveira Paranhos , Antônio Eduardo Sparça Salles, Leandro Dorigan de Macedo, Cláudia Helena da Silva-Lovato, Valéria Oliveira Pagnano, Evandro Watanabe
Braz Dent J. 2013;24(1):47-52. doi: 10.1590/0103-6440201301946.

PMID: 23657413

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/23657413/

Abstract

This study compared the levels of biofilm in maxillary and mandibular complete dentures and evaluated the number of colony-forming units (cfu) of yeasts, after using auxiliary brushing agents and artificial saliva. Twenty-three denture wearers with hyposalivation and xerostomia were instructed to brush the dentures 3 times a day during 3 weeks with the following products: Corega Brite denture dentifrice, neutral liquid soap, Corega Brite combined with Oral Balance (artificial saliva) or tap water. For biofilm quantification, the internal surfaces of the dentures were disclosed, photographed and measured using a software. For microbiological analysis, the biofilm was scrapped off, and the harvested material was diluted, sown in CHROMagar™ Candida and incubated at 37°C for 48 h. Data were analyzed statistically by two-way ANOVA and Tukey’s test (α=0.05). Mandibular dentures presented a mean biofilm percentage (µ=26.90 ± 21.10) significantly greater than the maxillary ones (µ=18.0 ± 15.0) (p<0.05). Brushing using Corega Brite combined with Oral Balance (µ=15.87 ± 18.47) was more effective (p<0.05) than using the denture dentifrice (µ=19.47 ± 17.24), neutral soap (µ=23.90 ± 18.63) or tap water (control; µ=32.50 ± 20.68). For the microbiological analysis, the chi-square test did not indicate significant difference between the hygiene products for either type of denture. The more frequently isolated species of yeasts were C. albicans, C. tropicalis and C. glabrata. In conclusion, mandibular dentures had more biofilm formation than maxillary ones. Denture brushing with Corega Brite dentifrice combined with the use of Oral Balance was the most effective method for reduction of biofilm levels, but the use of products did not show difference in yeast cfu counts.

この研究は、補助的なブラッシング薬品と人工唾液を使用した後の、上下顎全部床義歯のバイオフィルムレベルを比較し、酵母真菌のコロニー形成単位(cfu)を評価しました。23名の唾液分泌不全症、口腔乾燥症を伴う義歯装着者は、3週間の間、以下の材料を使用して義歯を1日3回磨くよう指導されました。Corega Brite denture dentifrice(義歯用歯磨剤)、液体石けん、義歯用歯磨剤+人工唾液、水道水。バイオフィルムの定量化については、義歯の内面を暴露し、写真撮影を行い、ソフトウェアを用いて測定しました。微生物学的解析については、バイオフィルムを削り取り、採取したものを希釈してCHROMagar Candida培地に散布、37℃で48時間培養を行いました。データは2元配置分散分析とTukeyの多重比較で解析しました。

下顎義歯は、上顎義歯よりも有意に平均バイオフィルム割合が高い結果でした。義歯用歯磨剤+人工唾液を用いたブラッシングは、義歯用歯磨剤、液体石けん、水道水を使用した場合よりも有意に効果的でした。微生物学的解析では、χ2検定で有意差を認めませんでした。検出が多かった酵母真菌としては、Candida Albicans、C. tropicalis、C. glabrataでした。結論として、下顎義歯の方が上顎義歯よりもバイオフィルムの形成量が多く、義歯用歯磨剤+人工唾液はバイオフィルムの減少により効果的ですが、酵母真菌のコロニー形成単位数では、薬品間で有意差を認めませんでした。

ここからはいつもの通り本文を適当に抽出して意訳要約します。誤訳もあり得ますので、気になったら実際の本文をご確認ください。

緒言

全部床義歯のバイオフィルムは、機械的清掃(ブラッシングと超音波)と化学的洗浄(アルカリ過酸化物、次亜塩素酸塩、酸、酵素、消毒剤)によって除去する事が出来ます。これらの中で、コンベンショナルまたは特定の歯磨剤を用いたブラッシングは最も一般的な義歯清掃法で、効果も実証されています。補助的な衛生薬品である石けんは、入手が容易な研磨剤フリーな製品であり、嫌気性微生物や酵母真菌、ステインなどに効果的であると主張されてきました。ココナッツ石けんと次亜塩素酸塩の組み合わせは効果的であると指摘する論文もあります。しかし、ランダム化比較試験は報告されていません。

口腔の健康状態に不利に働く要素としては、唾液分泌不全症に引き続き起こる口腔乾燥症があります。唾液量の減少は、口腔粘膜の潤滑に影響し、残留物の洗浄や唾液の抗菌成分量を減少させ、感染症の発生を促進します。口腔乾燥者の唾液の抗菌能力を回復させることを目的として、ラクトフェリン、リゾチーム、ラクトパーオキシダーゼを含む酵素系が研究されており、チオシアネート(SCN-)や過酸化水素(H2O2)などのレベルを増加させ、Candida Albicansやその他の微生物の増殖を抑制する能力があります。この酵素系の利用により、歯肉縁上のバイオフィルムの減少が観察されていますが、義歯表面への効果を評価した論文はありません。

義歯バイオフィルムの集積は口腔乾燥症の人で多いだろう、という仮説は、全部床義歯装着者の疾患の重要な原因である真菌に対する抗菌作用を有する洗浄剤と人工唾液のバイオフィルム形成抑制能の評価の必要性を促します。

本研究の目的は、2つのブラッシング補助薬品(特定の義歯用歯磨剤と中性洗剤)と人工唾液使用後の上下顎全部床義歯表面のバイオフィルムのレベルの比較と、酵母真菌の定量定性評価を行う事です。

実験方法

平均年齢65歳(44~84歳)である23名の上下顎全部床義歯を装着している無歯顎患者(男性9名、女性14名)をリクルートしました。全ての被験者は全身状態は良好ですが、口腔乾燥症と唾液分泌不全症を認めました。義歯は装着後1~4年でバイオフィルムスコアは1以上でした。口腔乾燥症、唾液分泌不全症は質問表とシアロメトリーテストを元に診断されました。唾液流量が1ml/min以下の場合、唾液分泌不全症と診断されました。

最初に、義歯内面を1%ニュートラルレッドを用いて染色し、バイオフィルム全体を除去するために義歯用ブラシで中性洗剤を併用し清掃しました。次に、それぞれの被験者から歯ブラシ(Oral B Indicator 40 soft)を受け取り、義歯ブラッシング方法を指導しました。毎食後2分以下のものを併用して清掃を行います。①水道水、②Corega Brite dentifrice for complete dentures(義歯用の歯磨剤)、③中性洗剤、④Corega Brite dentifrice for complete denturesにOral Balance artificial salivaを併用。被験者に義歯をブラッシングした後に口を水道水でゆすぎ、義歯は夜間水道水に浸漬することも指導しました。

本研究はクロスオーバーデザインを採用しました。被験者それぞれに、ランダムに3週間ブラッシング方法の1つが割り当てられます。1クールが終わると、別のブラッシング方法に変更します。各クール間に7日間の水道水で清掃させる期間を設定しました。毎週、義歯の内面を1%ニュートラルレッドで染色し、45°の角度で写真撮影を行いました。面積(総面積と染色面積)をイメージツールソフトウェアで計測しました。バイオフィルム割合を、染色面積/総面積で算出しました。研究者は、写真撮影終了後に義歯のバイオフィルムを除去しました。

微生物学的解析では、1クール終了時に、生理食塩水を使いながらブラッシングすることでバイオフィルムを落として収集しました。ドレンプラグPBS(10-4)溶液での希釈液を層流下で、CHROMagar™ Candida培養液(CM)に2枚ずつ播き、37℃で48時間培養しました。酵母真菌のコロニー形成単位数をカウントし、顕微鏡とカラーコード(C. albicans:緑、C. dubliniensis:緑、C. glabrata:紫、C. tropicalis:青、C. papapsilosis:白)を使って真菌の種類を確認しました。発芽、厚膜胞子のチューブ形成テストと発酵と同化テストにより分離した酵母真菌を同定しました。

義歯清掃方法効果のデータは、二元配置分散分析とTukeyの多重比較しました。コロニー形成単位数の減少はχ2検定で解析しました。有意水準は5%としました。

結果

下顎義歯の平均バイオフィルム割合は26.90±21.10%で、上顎の18.0±15.0%と比較して有意差を認めました。Corega Brite dentifrice for complete denturesにOral Balance artificial salivaを併用した方法は、他の方法と比較して有意に効果的でした(表1)。

バイオフィルムの平均割合を図1(上顎義歯)、図2(下顎義歯)に示します。

コロニー形成単位数を対数化しました(上顎:図3、下顎:図4)。

表2に示すように、酵母真菌のcfuは上顎の方が下顎よりも多い結果でした。C. albicansが最も検出されました。各ブラッシング方法間でのχ2検定では、上下顎共に有意差は認めませんでした。

考察

人工唾液中のラクトペルオキシダーゼ酵素システムは、抗微生物能の刷新または改善が期待され、in vitroで抗菌活性を示し、歯磨剤に配合することで臨床効果を発揮します。本研究で使用した人工唾液は全身的、局所的な副作用を示さず、口腔乾燥症の徴候を軽減させ、レジンの変色や着色などの原因にもなりません。

本研究において、コントロール群と比較して有意にバイオフィルムが減少したことから、義歯清掃補助薬品の必要性は証明されました(表1)。代替材料を探している際に、中性洗剤が研磨性がなく、入手しやすさと安価であることを理由で選ばれました。医薬品や防腐剤を添加していないため、洗浄能力を評価することができます。pHが中性というのは、アレルギー反応や嫌いな味の可能性の減少のためであり、液体はブラッシングするのに適した形態です。ラウリル硫酸ナトリウムは、ラウリル硫酸トリエタノールアミンや、コカミドプロピルベタインと同様に、薬剤を行き渡らせる効果があり、Corega Brite歯磨き粉の中にも入っています。Landaらによると、tansoactive製品と併用することでバイオフィルムの浸透がが促進されます。ラウリル硫酸塩を浸漬式衛生洗浄剤に配合したところ、タンパク質の溶解剤として作用し、より高い効果を得ることができました。

本研究では、Corega Briteを併用したブラッシングは中性洗剤よりも効果的でした。この事実は、歯磨剤中の二酸化チタンやシリコーン、二酸化ケイ素が機械的な清掃能力を上昇させる事を説明します。洗浄剤の有効性は主にバイオフィルムへの浸透に依存し、成熟バイオフィルムはこのプロセスを遅く、部分的にします。Goddsonによると、歯磨剤とマウスリンスの成分が、充分吸収されるには平均で2分要します。平均的なブラッシング時間とバイオフィルムへの浸透を考慮すると、時間は洗剤の効果を決定する因子と推定されます。ブラッシング前に薬剤に暴露する時間を長くする事に加え、防腐剤や浸透力の高いテンソアクティブ製品を取り入れることを評価する必要があります。これらの結果は、Colgate Antitartar dentifriceと洗剤間で有意差がなかったMcCabeらの研究と一致しません。この不一致はMcCabeらが専門職によるブラッシングと、異なるバイオフィルム定量化方法を採用したことで説明できるかもしれません。本研究では、ブラッシングは被験者本人が行い、バイオフィルムの客観的評価のために、定量解析を兼ねた写真撮影を採用しました。バイオフィルム割合は下顎義歯の方が上顎よりも有意に大きい結果となりました。これは、上顎義歯の形態と維持力によって説明出来るかもしれません。下顎義歯の形態は、微生物のリザーバーに向いており、口腔衛生状態を良好に保つ事の重要性が強調されます。

酵母真菌の減少について、本研究で採用した補助薬品の有効性が観察されたにもかかわらず、アルカリ性洗剤も同様な結果を示すかどうかはわかっていません。Gibbsonらはin vitroで、酸性、アルカリ性消毒薬は中性洗剤よりも特定の細菌除去に効果的であると報告しています。しかし、Barnabéらは、ココナッツオイルでは全部床義歯バイオフィルム中のStreptococcus mutans、C.albicansの減少しなかったと報告しています。

Corega Brite denture dentifriceに関して、この義歯バイオフィルム除去能力は実証されていますが、この抗菌力は評価されていません。Panzeriらは、2種類の実験歯磨剤(1%クロラミンT、0.01%フッ素系界面活性剤含有)はバイオフィルム被覆とmutans streptococci数を減少させることはできましたが、Candida genusには影響がなかったと報告しています。おそらく、Candida属の有意な減少には、塩化セチルピリジニウムのような活性物質が高濃度に含まれる歯磨剤しか期待できないと思われます。

人工唾液の免疫システムは、バイオフィルムの除去に関して臨床的な有効性が認められました(表1)。ラクトペルオキシダーゼ酵素系システムの影響を受けやすい浮遊細胞への抗菌的な効果を強調する研究があります。In vitroでの試験では、ラクトペルオキシダーゼシステムは真菌にも効果が認められています。しかし、本研究での微生物学的解析(表2)では有意な効果を認めませんでした。これは、口腔乾燥症を有する高齢者の微生物叢に対して、人工唾液は酵母真菌の減少に有意な効果を認めなかったという以前の研究と一致します。バイオフィルムの塊が抗菌剤に対して促進するバリアに加え、培養された微生物は特定の薬剤に対する耐性が低い可能性があるため、in vitroで観察された有効性は相対的なものです。本結果は、機械的なバイオフィルム除去単体では酵母真菌の減少を促進するには十分ではない事を示しています。生存能力の高い微生物の数を減らすためには、化学的な薬品使用が必要である事が裏付けられます。いくつかの論文では、化学的洗浄による除染の能力を強調しており、特に手の巧緻性が低下した患者への使用を勧めています。今後、ランダム化比較試験によって、化学的洗浄の有効性を調べる必要があります。

他の研究と類似して、Candida Albicansは本研究でもC. glabrataとC.tropicalisよりも最も高頻度で分離されました。本研究でC. albicansとC. glabrataが最も高頻度であった所見は、唾液流量が減少した患者の唾液中の真菌を観察したGrimoudらの研究と一致します。C. dubliniensisは、口腔カンジダ症と関連するCandida属として最近記載されており、免疫不全の患者によく認められます。この菌はC.albicansと高い類似性が認められます。CHROMagar培地の使用は、1枚の分離プレートで異なるサンプルの酵母種の混合物を検出することを容易にするのに有利です。C. dubliniensisはC. albicansと共分離することが多いので、この培地は特に有用です。

得られたデータから、下顎義歯は上顎義歯よりもバイオフィルム割合が有意に高いと結論づけることができるかもしれません。特定の義歯用洗浄剤を用いたブラッシングは、中性洗剤や水道水でのブラッシングよりも有効でした。人工唾液は全部床義歯のバイオフィルムレベルを下げるのに予防的有効性を示しました。本実験では、酵母真菌のcfu数を有意に減少させる方法はありませんでした。最も高頻度に検出された真菌は、C. albicansとC. glabrata、C.tropicalisでした。

まとめ

Corega Brite dentifrice for complete denturesという商品を検索してみたのですが、全くヒットしませんでした。もうすでに発売してない可能性が高そうです。海外のサイトもいくつか見たのですが、義歯をブラッシングする際に専用でつける材料というのは見つけられませんでした。

ADAのDenture Care and Maintenanceのページをみたところ、以下の様な記載があります。
 The American College of Prosthodontists (ACP) recommends that dentures be cleaned daily by soaking and brushing with an effective, nonabrasive denture cleanser to reduce levels of biofilm and potentially harmful bacteria and fungi.

In addition or as an alternative to commercial cleansers, dentures can be cleaned with toothpaste or soap (i.e., mild hand soap or dishwashing liquid) with warm water and a soft-bristle toothbrush.3, 4 However, denture wearers should avoid using bleach or powdered household cleansers for cleaning their denture, as this may damage the denture.

研磨剤が含まれていないものであれば、歯磨剤、マイルドなハンドソープ、食器用の洗剤+温水、柔らかめの歯ブラシによるブラッシングでもよいようです。

本実験の結果から、中性洗剤や専用の歯磨剤で磨いたら水道水よりもバイオフィルムは除去出来るようですが、真菌については結果が悪くなっている人もいるので、機械的清掃に真菌除去をそこまで期待してはいけないとも言えそうです。やはり化学的洗浄が義歯には必要でしょう。

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5代目歯科医師(高知市開業)
東京医科歯科大学卒業(47期)
同大学院修了
【非常勤講師】
徳島大学
岩手医科大学

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