骨折は健康な高齢男性であっても死亡リスクになる
ここまでずっと歯科材料の話ばかり読んでいたのですが、さすがにちょっと飽きがきてしまったので、気分一新で全身的なものを読みます。老年歯科医学会の講演をオンラインで観ていたら紹介されていた論文で、2017年とちょっと古いんですが、興味が湧いたので読んでいこうと思います。骨折が将来的な死亡リスクになるかどうかという論文です。
Incident fracture associated with increased risk of mortality even after adjusting for frailty status in elderly Japanese men: the Fujiwara-kyo Osteoporosis Risk in Men (FORMEN) Cohort Study
M Iki , Y Fujita , J Tamaki , K Kouda , A Yura , Y Sato , J S Moon , A Harano , K Hazaki , E Kajita , M Hamada , K Arai , K Tomioka , N Okamoto , N Kurumatani
Osteoporos Int. 2017 Mar;28(3):871-880. doi: 10.1007/s00198-016-3797-y. Epub 2016 Oct 18.
PMID:27752744
Abstract
Frail elderly individuals have elevated risks of both fracture and mortality. We found that incident fractures were associated with an increased risk of death even after adjusting for pre-fracture frailty status as represented by physical performance tests and laboratory tests for common geriatric diseases in community-dwelling elderly Japanese men.
Introduction: While fractures reportedly increase the risk of mortality, frailty may complicate this association, generating a false-positive result. We evaluated this association after adjusting for pre-fracture levels of frailty.
Methods: We examined 1998 community-dwelling ambulatory men aged ≥65 years at baseline in the Fujiwara-kyo Osteoporosis Risk in Men Study for frailty status as represented by activities of daily living (ADL), physical performance tests (grip strength, one-foot standing balance with eyes open, timed 10-m walk), and laboratory sera tests. Participants were then followed for 5 years for incident clinical fractures and death. Effects of incident fracture on death were determined by Cox proportional hazards model with the first fracture during follow-up as a time-dependent predictor and with frailty status indices as covariates.
Results: We identified 111 fractures in 99 men and 138 deaths during the follow-up period (median follow-up, 4.5 years). Participants with incident fractures did not have significantly worse frailty statuses, but did show a significantly higher cumulative mortality rate than those without fractures (p = 0.0047). Age-adjusted hazard ratio (HR) of death for incident fracture was 3.57 (95 % confidence interval: 2.05, 6.24). When adjusted for physical performance, this decreased to 2.77 (1.51, 5.06), but remained significant. The HR showed no significant change when adjusted for laboratory test results (3.96 (2.26, 6.94)). Exclusion of deaths within the first 24 months of follow-up did not alter these results.
Conclusion: Incident clinical fracture was associated with an elevated risk of death independently of pre-fracture levels of frailty in community-dwelling elderly men.
フレイル高齢者では骨折と死亡のリスク両方が上昇します。地域在住日本人高齢者男性において、身体機能検査および一般的な老年期疾患の検査所見で表される骨折前のフレイル状態を調整した後も、骨折イベントが死亡リスクの上昇と相関する事が明らかになりました。
緒言:骨折は死亡リスクを上昇させるといわれる一方で、フレイルはこの関連を複雑にし、偽陽性の結果を生じさせる可能性があります。骨折前のフレイルレベルを調整後に、この関連性を検討しました。
実験方法:藤原京在住のベースライン時65歳以上の歩行可能な男性1998名を対象として、日常生活動作(ADL)、進退機能検査(握力、開眼片足立ち、10m歩行時間)、および血清検査によるフレイル状態を評価しました。被験者は5年間フォローされ、骨折と死亡イベントをカウントしました。骨折が死亡に与える効果はフォローアップ期間中の最初の骨折を時間依存予測因子とし、フレイル状態指標を共変量として用いたCox比例ハザードモデルによって決定されました。
結果:フォローアップ期間中(中央値4.5年)に99名の男性に111の骨折、128名の死亡を確認しました。骨折イベントが起こった参加者のフレイル状態は、骨折なし群と比較して有意差は認めませんでしたが、累積死亡率は有意に高い結果を示しました。骨折イベント後の死亡についての年齢調整ハザード比は3.57(95%信頼区間 2.05-6.24)でした。身体機能で調整した場合、ハザード比は2.77(95%信頼区間 1.51-5.06)に低下しましたが、依然として有意差を認めました。検査所見で調整した場合でもハザード比は3.96(95%信頼区間 2.26-6.94)であり有意な変化を認めませんでした。フォローアップ期間の最初の24か月の死亡を除外しても結果は変わりませんでした。
結論:地域在住高齢男性において、骨折前のフレイルの状態に関係なく、骨折イベントは死亡リスク上昇と関連しました。
ここからはいつもの通り本文を訳します。誤訳もあり得ますので、気になったら実際の本文をご確認ください。
緒言
高齢者において、骨折h死亡リスクの上昇と関連しています。多くの研究によると、骨折が発生した患者の死亡率は、一般的な層と比較して有意に高いことが示されています。臨床的に明らかな椎体骨折は勿論、形態計測で認識できない椎体骨折や変形でも死亡リスクが上昇することが明らかになっています。
しかし、フレイル高齢者は骨折と死亡リスク両方がより高くなります。フレイルは骨折と死亡の関連性をより強くし、偽陽性の結果をもたらす可能性があります。この種の選択バイアスは、骨折患者における観察された死亡リスクを同性別・同年齢の一般集団における予測リスクと比較する症例系列研究においても、あるいは骨折前におけるフレイルレベルを骨折患者とその対照群間で調整しないコホート研究においても、排除することはできません。
この問題をクリアするために、いくつかのコホート研究では、フォローアップ期間中に骨折した被験者とそれ以外の被験者間での死亡リスクを、骨折前のフレイルレベル、併存疾患、ADL、身体活動レベル調整後に比較する事を試みてきました。多くの研究では、これらの因子を調整した後でも死亡リスク向上は有意差を認めましたが、有意差を認めない研究もありました。これらの結果の違いは、フレイルの効果が完全に調整されていないことによるかもしれません。年齢と併存疾患はフレイルのリスク因子ですが、必ずしも現在のフレイル状態を示す物ではありません。併存疾患、ADL、身体活動は主に自己申告で得られるもので、被験者の記憶の不正確さから誤分類されがちです。フレイルはいくつかの表現型、たとえば易疲労性、体重減少、身体活動低下、握力や歩行速度の低下を含む身体機能レベルの低下といったもので特徴付けられます。こららの表現型において、身体機能は直接的客観的な指標となり得ます。これらの指標を調整することで、フレイルによる交絡効果を効果的に低減することが期待されます。しかし、この期待はいままで検討されてきませんでした。加えて、一般的な老年併存疾患、例えば糖尿病、脂質異常症、腎疾患、栄養障害、慢性炎症などは、検査により客観的に評価可能であり、自己申告での併存疾患よりも調整のための共変量としてより適しているかもしれません。
上記より、我々は骨折イベントと死亡リスクの関連性を、身体機能検査結果、一般的な老年併存疾患の検査結果を含む骨折前のフレイルレベルの客観的直接的指標を調整後、コホート研究で評価しました。
被験者と方法
被験者
男性藤原京骨粗鬆症リスク研究(FORMEN)は、2007年から始まった大規模前向きコホート研究である藤原京スタディの補助的な研究です。藤原京スタディは、日本人高齢者のフレイル予防、健康寿命延伸、QOL上昇などに対する包括的な戦略のための科学的基礎データを得ることを目的としています。FORMEN研究は藤原京スタディの男性被験者全ての骨の状態を評価しました。藤原京スタディとFORMEN研究の詳細は他の論文に記載しています。
藤原京スタディは奈良県の4つの都市の住人から被験者を募集しました。採用基準は募集時65歳以上、在宅、アシスタントなしでの歩行が可能、質問表に自己申告でき、インフォームドコンセントに記載できる人としました。男性2174名、女性2253名がベースライン時に参加し、スタディを完了した2012名の男性がFORMEN研究の対象者として追跡調査を受けました。
藤原京スタディのプロトコルは奈良県立医大の倫理委員会の承認をうけています。FORMENについては、近畿大学の倫理審査の承認を受けています。
タイムライン
藤原京スタディのベースライン調査は2007、2008年に行われました。2009年、2010年に質問票を郵送し、ベースライン調査時のデータの欠落を埋め、骨折イベントを含むアウトカムを観察しました。ベースライン調査と同様の内容を含む追跡臨床調査が2012年と2013年に実施されました。また2013年と2014年に追加の手紙と電話調査を行いました。これにより、追跡臨床調査に参加しなかった対象者もアウトカムの発生を確認することが可能となりました。
死亡の確認
ベースラインから2013年3月末までに起こった被験者の死亡は、住民基本台帳への問い合わせを通じて確認しました。死亡日時は入手しましたが、死亡理由は入手しませんでした。2013年のフォローアップ調査に参加しなかった被験者のため、追加の手紙と電話調査を2013年と2014年に行い、骨折イベントの発生について確認しました。被験者の死亡が追加調査で家族によって確認されましたが、住民登録データによる確認はまだ行われていませんでした。
骨折イベントの確認
骨折が発生した場合、トレーニングされた看護師が骨折部位、日時、状況などを決定しました。また、2012年と13年のフォローアップ調査時に行ったインタビューから、レントゲン検査での骨折の診断(骨折あり/なし)を報告しました。2013年と14年に行った追加の郵送、電話調査にて、フォローアップ調査に参加していなかった人について同じ情報を入手しました。骨折イベントは、ベースライン後に発生し、医師がレントゲン検査により診断したものと定義しました。この骨折検出法は、医療・放射線学的記録を検討した過去の研究によって繰り返し確認されてきました。我々はフォローアップ最初の2年間で確認された21の骨折イベントでこの方法を検証しました。この中の19ケースで、骨折の発生、発生日、および骨折部位を確認するために担当外科医に連絡することを承諾しました。全ての外科医が我々の問い合わせに答え、骨折についての患者の自己申告を確認しました。骨折の発生日については、申告日と実際の発生日のずれは6か月以内で、骨折部位が間違っているのは殆どありませんでした。我々は、この方法を用いた骨折の同定における偽陽性は極めて低く、骨折日と部位の間違いは許容できるレベルであるという結論に至りました。
同定された骨折のうち、頭部・指骨・下腿以外の部位で強い外力なしに発生したものは、骨粗鬆症性骨折として扱いました。骨粗鬆症性骨折で最もメジャーだったのは、大腿骨近位部、脊椎、上腕骨近位端、前腕骨遠位端です。複数の骨折が起こった場合、フォローアップ期間の最初の骨折をイベントとして採用しました。
フレイルの評価
フレイルはベースライン時の高次生活機能、身体活動、身体機能、検査結果により評価しました。日本人高齢者の高次生活機能を評価するために開発された東京都健康長寿医療センター(TMIG)インデックスを用いました。TMIGインデックスはインストゥルメンタル・セルフ・メンテナンス(注:高齢者が一人暮らしなどの現代社会で自立して生活するために必要な能力やスキル)、知的活動、社会的役割の3つの項目から構成され、0~13ポイントのスコアで低いほど高次生活機能能力の低下を意味します。
身体活動は、ベースライン時に被験者が回答した国際標準化身体活動質問票によりMetsを計算しました。この身体活動量は、藤原京スタディ対象集団の一部において加速度計で測定された値と良好な相関を示しました。
我々は、本研究の身体機能として、握力、開眼片足立ち、10m歩行時間を採用しました。これらの指標は高齢者の障害や死亡の予知因子として報告されています。等尺性の最大握力を座位にて、両方の手で2回ずつ計測しました。それぞれの手での最大握力の平均値を解析に使用しました。各被験者に開眼したままで立ち、片側の足を上げるように指示しました。このポジションを維持できた時間(最大60秒)をストップウオッチで0.1秒単位で計測しました。このテストを2回繰り返し、長い時間の方を採用しました。10mの最大速度での歩行時間を、0.01秒単位の赤外線センターで2回計測しました。短い時間の方を採用しました。
血液生化学検査では、糖尿病、低栄養、慢性腎疾患、脂質代謝異常などの一般的な老年疾患を評価できるHbA1c、アルブミン、総蛋白、クレアチニン、HDLコレステロール、LDLコレステロール、総コレステロールなどを含むスタンダードな方法を用いました。腎機能を評価するためにeGFRを算出しました。加えて、慢性炎症を評価するためにCRPを計測しました。
統計解析
正規分布に従う変数は平均値±標準偏差で表記、対数正規分布の場合、幾何平均×/÷標準偏差で表記しました。他の分布では、中央値と25、75パーセンタイルを表記しました。骨折イベントのありなしによる群間比較には、t検定とMann-Whitney U検定を分布に応じて使用しました。累積死亡率曲線をKaplan-Meierアルゴリズムにより得ました。累積死亡率の違いはWlicoxon検定により評価しました。フレイル指標を共変量として含め、骨折イベントを時間依存性予知因子として使用した場合の死亡リスクをCox比例ハザード回帰モデルから得られたハザード比(HR)で評価しました。開眼片足立ちと10m歩行の結果は正規分布から有意に逸脱していたため、2、3段階に階層化しました。適合度統計量であるAkaike情報量基準(AIC)に基づき、最も優れた層別化を示すモデルが選択されました。モデル間のAICの差が1より大きい場合、AICが小さいモデルの方がデータに対して有意に優れた適合性を示すとみなされました。多変量Cox比例ハザードモデルにおいて調整HRを計算する際、死亡率に有意な未調整効果がある共変量をモデルで使用しました。共変量とその他の因子(体重、BMI、LDLコレステロール、総コレステロール、クレアチニン、eGFRなど)と高い相関性を認めた場合、より小さいAICHを有する共変量を選択しました。
結果
被験者の基本情報
コホート研究に使用できる2012名の被験者において、1998名の男性(99.3%)がフォローアップ調査または追加の手紙、電話回答を完了しました(トータルフォローアップ8686名、フォローアップ期間中央値4.5年)。これらの参加者の基本特性(表1)は、追跡調査対象者と有意な差は認められませんでした(データは示さない)。

ふぉろアップ期間中に99名の被験者で111の骨折、138名の死亡を確認しました。骨折部位は以下の通りです。頭部(2)、鎖骨(3)、肋骨(15)、肩(3)、上腕(1)、前腕(10)、手(13)、脊椎(26)、骨盤(4)、大腿骨近位部(6)、脚(13)、足(15)。フォローアップ期間中に8名が骨折2回、2名が骨折3回を経験しました。
表1に示すように、年齢、身体の大きさ、併存疾患、検査データは全骨折群と非骨折群で有意差を認めませんでした。非骨折群と比較して、全骨折群では身体機能検査のデータが悪くなりましたが統計的有意差は認めませんでした。骨粗鬆症性骨折群は、非骨折群と比較して有意に高齢で体重が小さくなりました。また、脳卒中の既往が多く、身体機能検査のデータが悪い傾向を認めました。加えて、骨粗鬆症性骨折群、または全骨折群ですら、非骨折群と比較して全死因による死亡リスクが有意に上昇しました。しかし、骨粗鬆症性骨折群と全骨折群間で死亡リスクに有意差は認められませんでした。
骨折イベントと累積全死亡率
図1に骨折群と非骨折群の累積全死亡率の結果を示します。骨折群は非骨折群と比較して有意に死亡利子区が高い結果となりました。

フレイル指標による全死因の未調整ハザード比
表2にフレイル指標を含む共変量の全死因における未調整HRを示します。悪性疾患は有意に死亡リスクを上昇させましたが、TMIGスコアと身体活動は死亡率に影響しませんでした。身体機能における全ての低下は死亡リスクの上昇と関連性を認めました。いくつかの血液検査指標は死亡リスクと関連しました。

フレイル調整後の骨折イベントに対する全死因のハザード比
表3に共変量のコンビネーションと骨折イベントによる全死因のハザード比を示します。いずれかの骨折を有する群における死亡リスクは、年齢を調整した後でも、骨折のない群と比較して4倍高くなりました(モデル3)。さらにBMIと既往歴または悪性疾患の併存を調整した場合では、ハザード比は有意に変化しませんでした(モデル3と4)。身体機能を調整した後には、ハザード比は約20%低下しましたが、有意ではありました。生化学検査結果を調整すると、ハザード比が有意に変化しませんでした(モデル6)。解析からフォローアップ期間の冒頭24か月で死亡した被験者を除外した場合、ハザード比は小さくなりましたが、フレイル指標調整後にも骨折イベントは有意に死亡リスク上昇と相関しました。

骨折部位が死亡リスクに与える影響
表4に異なる部位の骨折に関連した死亡のハザード比を示します。肋骨と鎖骨の骨折では死亡リスクの有意な上昇は認められませんでした。上肢の骨折は死亡リスク上昇と関連しましたが、身体機能調整後には有意差を認めませんでした。椎骨、骨盤骨折と関連する死亡リスクは、身体機能を調整しても有意差が認められました。下肢骨折と関連した死亡リスクは年齢、身体機能調整後も高いままでした。大腿骨近位部骨折を本解析から除外した場合でさえ死亡リスクの上昇が認められました(年齢調整HR 3.23 95%信頼区間1.02-10.2)。年齢と身体機能を調整した場合でのHRは3.35(95%信頼区間 1.06-10.6)でした。血液生化学検査は骨折イベントと関連した死亡リスクの上昇に影響しませんでした。

骨折のタイプが死亡に与える影響
表5に異なるタイプの骨折と関連した死亡のHRを示します。最も大きなHRは主な骨粗鬆症性骨折で認められ、身体機能で調整すると大きく低下しました。全ての骨折タイプにおいて、身体機能で調整後にも有意に高い死亡リスクが認められました。骨折と死亡リスクの関係性に血液生化学検査結果は影響しませんでした。

考察
骨折イベントと死亡の間の未調整の有意な相関は、フレイル指標で調整後も有意であることが多くの研究で認められましたが、全てのコホート研究で認められたわけではありませんでした。調整後も有意な関連性が認められなかった研究においても、Tostesonらは研究の一部において大腿骨頸部骨折に関連する死亡リスクが有意に高いことを発見しました(大腿骨頸部骨折発生後6ヶ月以内の死亡リスク)。またKadoらは、調整前においても死亡リスクへの影響が比較的小さかった新規発生の形態学的椎体骨折の影響を検討しました。そのため、多くの過去の研究が、骨折イベントが死亡リスクを上昇させると示唆しています。しかし、骨折前のフレイルレベルで調整するまでは、これは証明されません。本研究では、関連を検証するために初めてフレイルレベルで調整しました。身体機能評価として握力、直立バランス、10m歩行時間を使用しました。これらは客観的な測定であり、将来的な障害や死亡の予知因子として精度が高いものです。加えて、これらはFriedらによってフレイル指標として採用されています。本研究では、フレイル状態に関係なく死亡リスクの上昇と骨折イベントが関連していることが示されました。
本研究の他の重要な知見として、骨折イベントと死亡の関連は、自己申告された老年疾患と血液生化学検査の結果と関係なかったという事が挙げられます。悪性疾患といくつかの生化学検査項目が、モデル4での調整前後において死亡に対し有意な影響を認めました。しかし、関連には影響しませんでした。これらの知見は、骨折は死亡リスクを上昇させますが、骨折による老年疾患の状態悪化によるものではなく、疾患を有しない高齢男性でも作用しうる別の経路によるという事を示唆しています。骨折が死亡に影響する経路を明確にするために、今後更なる研究が必要です。
骨折が死亡リスクに与える影響の大きさは、骨折部位に依存しているようです(表4)。これは過去の研究結果とも一致しています。例えば、Cauleyらは大腿骨近位部と脊椎の骨折は死亡リスク上昇と関連するが、前腕やその他の骨折ではリスクは上昇しなかったと報告しています。本研究では、大腿骨近位部ではない下肢骨折は死亡リスクの上昇と関連しており、これは関連性のメカニズムを示唆している可能性があります。下肢の骨折は患者の可動性を一定期間制限するかもしれません、非大腿骨近位部骨折でさえ寝たきりリスクを上昇させます。寝たきりにより肺炎や、一部死亡に至るかもしれません。この経路は、歩行速度や直立バランスの低下のような下肢の機能低下がその後の障害や死亡の予知因子であることを示した過去の研究知見からも支持されます。しかし、本研究では死亡原因を利用不可だったため、骨折と死亡の関連性を説明するメカニズムに関する更なる知見を提供する事はできません。強調すべきなのは、骨折の治療とリハビリの進歩が死亡リスクの減少に非常に重要であるということです。勿論、骨折自体を予防する事もです。
本研究にはいくつかの強みがあります。今回の地域住民全体を対象とした研究デザインは、比較的健康な日本の高齢男性を調査しており、極めて高いフォローアップ率のためドロップアウトによる選択バイアスを無視できます。骨折イベントと死亡の関連性を、骨折前の客観的な身体機能検査結果で調整し評価しました。単一施設による研究であり、施設間の差がありません。
しかし、本研究にはいくつかの特筆すべきlimitationがあります。まず、被験者は地域在住の歩行可能な高齢男性ボランティアであり、重い病気や障害のある患者は参加しづらかったかもしれません。結果として、フォローアップ期間中の死亡者数は138名で、日本の人口動態統計から予想される死亡者数の55%に過ぎませんでした。また、35名の男性にしか主要骨粗鬆症性骨折を認めませんでした。これも大規模な人口調査から期待される約半分程度でした。これは、本研究の被験者は、一般的な層よりも健康だったことを意味します。そのため、比較的健康な高齢男性であっても骨折イベントは死亡リスクを上昇させることが示唆されました。この選択バイアスは最終的な結論を覆すことはないでしょう。なぜなら、被験者集団は骨折と死亡の関連性を過小評価する方向に導いたはずだからです。第2に、一部の死亡は住民登録データで確認されませんでしたが、死亡後1年以内に遺族への聞き取り調査を通じて特定されました。死亡の発生と日時は許容できる正確さであると信じています。しかし、死亡は重要なアウトカムであり、客観的な登録データにより確認するべきです。第3に、主要骨粗鬆症性骨折は35名で骨折全体でも99名のみでした。この骨折数は、骨折部位による骨折と死亡の関連性を解析するには小さすぎます。第4に、死亡原因が特定されていません。もし特定されていれば、骨折に起因する疾患特異的な死亡率の上昇を推定することができ、これにより骨折に伴う死亡リスク上昇のメカニズムに関する推測につながる可能性があります。今後の研究では死亡原因を特定する必要があります。最後に、本研究での骨折イベントは自己申告のデータから得ています。この骨折同定方法の妥当性は過去の研究でくり返し確認されており、我々のパイロット研究からも支持されています。しかし、誤分類を起こした可能性はあります。
結論
地域在住の比較的健康な高齢男性における骨折イベントは、骨折前のフレイル、老年疾患レベルを調整した後でも全死亡リスク上昇と関連していました。健康な高齢男性であっても骨折の予防は、死亡リスクを下げるための妥当性のある方策であるかもしれません。
まとめ
ある程度健康と考えられる高齢男性で、フレイルや基礎疾患を調整しても骨折は死亡リスクと関連する事が示されました。機序は明確では無いものの骨折すれば死亡する可能性が高くなるわけです。Kaplan-Meierでは骨折の有り無しでフォローアップ60か月で累積死亡率が倍ぐらい違います。

考察では、健康な男性ですらこの結果という感じの書き方をしています。ということはより骨粗鬆症の割合が高くなる高齢女性では相関がより顕著に出るであろうという前提があるということになります。女性のみ、女性を含めた論文をまだ読んでいないのでなんともいえませんが、女性の方が骨折しやすい→寝たきり→死亡リスクという流れができやすいことは想像できます。
結論にもあるように、骨折を予防するということが非常に重要であるということが示唆された論文でした。ということは骨粗鬆症に骨吸収抑制薬の使用が重要であるということになります。女性の高齢患者さんの多くは骨吸収抑制薬を服用または注射しています。そしてそれを自己判断でやめてしまう人がいるのも事実です。そういった方にちゃんと説明出来るようになりたいです。