普通の歯科医師なのか違うのか

歯の欠損と全身の炎症は相関する

 
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5代目歯科医師(高知市開業)
東京医科歯科大学卒業(47期)
同大学院修了
【非常勤講師】
徳島大学
岩手医科大学

全身と口腔の関係についての論文

今回はTwitterのタイムラインを見ていたら偶然見つけた論文を読みたいと思います。2021年、パブリッシュされたばかりの論文でファーストオーサーがイギリスの方で、多施設共同研究のようです。

Poor Oral Health and Inflammatory, Hemostatic, and Cardiac Biomarkers in Older Age: Results From Two Studies in the UK and USA
Eftychia Kotronia , S Goya Wannamethee, A Olia Papacosta, Peter H Whincup, Lucy T Lennon, Marjolein Visser, Yvonne L Kapila, Robert J Weyant, Sheena E Ramsay
J Gerontol A Biol Sci Med Sci. 2021 Jan 18;76(2):346-351

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32306041/

Abstract

Background: We examined the association of objective and subjective oral health markers with inflammatory, hemostatic, and cardiac biomarkers in older age.

Methods: Cross-sectional analyses were based on the British Regional Heart Study (BRHS) comprising British men aged 71-92 years (n = 2,147), and the Health, Aging and Body Composition (HABC) Study comprising American men and women aged 71-80 years (n = 3,075). Oral health markers included periodontal disease, tooth count, dry mouth. Inflammatory biomarkers included C-reactive protein (CRP), interleukin-6 (IL-6) in both studies, and tissue plasminogen activator (t-PA), von Willebrand Factor (vWF), fibrin D-dimer, high-sensitivity Troponin T (hsTnT), and N-terminal pro-brain natriuretic peptide (NTproBNP) only in the BRHS.

Results: In both studies, tooth loss, was associated with the top tertile of CRP-odds ratios (ORs) (95% confidence interval [CI]) are 1.31 (1.02-1.68) in BRHS; and 1.40 (1.13-1.75) in the HABC Study, after adjusting for confounders. In the HABC Study, cumulative (≥3) oral health problems were associated with higher levels of CRP (OR [95% CI] =1.42 [1.01-1.99]). In the BRHS, complete and partial tooth loss was associated with hemostatic factors, in particular with the top tertile of fibrin D-dimer (OR [95% CI] = 1.64 [1.16-2.30] and 1.37 [1.05-1.77], respectively). Tooth loss and periodontal disease were associated with increased levels of hsTnT.

Conclusions: Poor oral health in older age, particularly tooth loss, was consistently associated with some inflammatory, hemostatic, and cardiac biomarkers. Prospective studies and intervention trials could help understand better if poor oral health is causally linked to inflammatory, hemostatic, and cardiac biomarkers.

背景:高齢者の主観的、客観的な口腔健康状態と炎症、凝固能、心臓バイオマーカーの関連性について調査することです。

実験方法:71~92歳のイギリス人男性2147名が参加したthe British Regional Heart Study (BRHS) と、 71~80歳のアメリカ人男女3075名が参加したthe Health, Aging and Body Composition (HABC) Studyをもとにした横断研究です。口腔の健康状態に関する指標として歯周病、残存歯数、口腔乾燥を用いました。炎症のマーカーは両スタディ共に用いたのはCRP、IL-6の2つで、組織プラスミノーゲン活性化因子(t-PA)、von Willebrand因子(vWF)、D-dimer、高感度トロポニンT (hsTnT)、N末端プロ脳性ナトリウム利尿ペプチド(NTproBNP)に関してはBRHSのみで測定しました。

結果:2つのスタディとも、交絡調整後に歯の喪失はCRPのオッズ比と相関しました (95% confidence interval [CI]) are 1.31 (1.02-1.68) in BRHS; and 1.40 (1.13-1.75) in the HABC Study)。BRHSでは累計3以上の口腔問題はCRP高値と相関しました(OR [95% CI] =1.42 [1.01-1.99])。歯の喪失はさらに凝固因子、特にD-dimerとの相関を認めました(OR [95% CI] = 1.64 [1.16-2.30] and 1.37 [1.05-1.77]前者ORが無歯顎、後者ORが部分欠損)。歯の喪失と歯周病はhsTnTの増加と相関しました。

結論:高齢者の低下した口腔状態、特に歯の喪失は炎症、凝固系、循環器系のバイオマーカーとの間に相関が認められました。縦断、介入研究がより理解を深めることに役立つかもしれません。

ここからはいつもの通り本文を適当に要約します。誤訳もあり得ますので、気になったら実際の本文をご確認ください。
なお、入手した表がうまく対応しておらず、いまいちよくわからないものになっておりますが、ご了承ください。

緒言

歯の欠損、歯周病、口腔乾燥などの口腔状態の低下は高齢者には一般的なものです。口腔状態の低下は障害、循環器疾患、2型糖尿病、死亡などの不利益に関連します。加齢はCRPやIL-6などの全身の炎症の増加によっても特徴付けられます。同様にD-dimerやvon Willebrand因子、組織プラスミノーゲン活性化因子(t-PA)などの凝固系、高感度トロポニンT (hsTnT)、N末端プロ脳性ナトリウム利尿ペプチド(NTproBNP)などの心臓のバイオマーカーに関しても加齢によって上昇します。炎症の増悪は慢性疾患と関連します。特に凝固系、心臓バイオマーカーは強く循環器系疾患と相関する事が報告されています。

口腔状態の低下、特に歯周病は炎症マーカーと関連性が認められます。歯周病を有している中年層では、歯周病がない被験者と比較してCRPの上昇が認められましたが、IL-6では有意差は認められませんでした(文献14-16)。さらに、歯周病の改善によりCRPとIL-6の低下が認められたという報告があります(文献17)。加えて、歯の欠損と清掃不良は中年、高齢者両群においてCRP、IL-6高値と関連する事が報告されています(文献18-20)。口腔乾燥症は慢性疾患や投薬により起こるものが多いかもしれませんが、口腔粘膜の炎症リスクであり、口腔の感染や全身の炎症増悪の可能性もあります(文献21)。歯周病はon Willebrand因子高値と相関します(文献22)。さらに24本以下になると組織プラスミノーゲン活性化因子(t-PA)高値と相関します(文献23)。これらの研究では中年と高齢者層両方が含まれています。高齢者に焦点を当てた研究では、歯周病とCRP、IL-6は相関しなかったという結果になっています(文献24)。加えて安定した冠状動脈性心臓病と診断された患者において、歯の喪失がN末端プロ脳性ナトリウム利尿ペプチド(NTproBNP)高値と相関しました(文献25)。また歯周病とN末端プロ脳性ナトリウム利尿ペプチドは有意に相関しました(文献26)。しかし、口腔状態と心臓マーカーに関する在住高齢者を用いた大規模な調査は行われていません。

以前の研究においても口腔の状態と炎症の関連性に関しては中年層にて検討されており、高齢者におけるエビデンスは限られています。さらに、多くの研究が歯周病と歯の喪失をみており、口腔乾燥など他の要素は殆ど検討されていません。口腔の健康状態低下と凝固系、心臓バイオマーカーとの関連生に関しても殆どわかってません。そのため、本研究ではイギリスとアメリカの高齢者において炎症、凝固、心臓バイオマーカーと口腔の健康状態の関連を検討する事としました。

実験方法

被験者

The British Regional Heart Study (BRHS)は前向きコホート研究であり、被験者は1978~80年に40~59歳だったイギリス在住男性7753名となっています。30年後のアセスメントを2010~2012年に行い、2147名が郵送の質問表に回答、1722名が身体調査と血液検査に参加しました。

The Health, Aging, and Body Composition (HABC)も真向きコホート研究であり、1997~1998年に70~79歳のアメリカ人男女3075名が参加しました。白人はメディケアからランダムに選択し、黒人はメンフィスとピッツバーグの郵便番号から選択しました。0.25マイルの歩行と10段の階段が問題ない人が対象です。1998~1999年に生存している被験者1975名の口腔状態と全身状態を調査しました。

口腔の健康状態

両方のスタディにおいて、残存歯数、アタッチメントロス、ポケット深さに関しては測定しています。イギリスでは口腔内を6分割し代表歯6本に関してペリオの数値が計測されています。おそらくCPITN的な感じではないでしょうか。アメリカでは全歯において測定されています。

残存歯数は5つの階層に分類されています。
0
1-7
8-14
14-20
21以上

歯周病はExtent and Severity Indexに基づいて分類されていますが、アメリカとイギリスで基準が異なる形になっています。元々の実験条件が違っていたということなんでしょう。
ポケット深さ:20%3.5mmより深い(BRHS)、20%3mm以上深い(HABC)
アタッチメントロス:20%5.5mmより大きい(BRHS)、20%3mm以上大きい(HABC)

主観的な口腔内の評価に関しては質問表で行われています。質問項目としては口腔内の健康状態、口腔乾燥、咀嚼困難、歯や補綴物のトラブル、冷温甘に対する知覚過敏、歯肉トラブルによる食事制限などがあります。イギリスでは、口腔乾燥はXerostomia Inventory Scaleを用いて計測されています。アメリカでは食事時に口腔乾燥感があるかどうかを質問しています。

健康に関する質問項目は 大変良い、よい、悪いの3段階です。
イギリスでの口腔乾燥の評価は0,1-2、3以上の3段階ですが、アメリカの場合は質問表なのではい、いいえの2段階です。

BRHSにおける口腔健康に関する累積値として、口腔乾燥が3点以上、21本未満の残存歯、咀嚼困難や冷温甘に対する知覚過敏を用いて指標を設定しました。問題が0個、1個、2個、3個以上の4群に分類しています。

血液検査

アメリカ、イギリス共通:CRP、IL-6

イギリスのみ:組織プラスミノーゲン活性化因子(t-PA)、von Willebrand因子(vWF)、D-dimer、高感度トロポニンT (hsTnT)、N末端プロ脳性ナトリウム利尿ペプチド(NTproBNP)

変数

社会経済的地位、喫煙、心臓病と糖尿病の既往歴、服薬、BMI

統計解析

炎症などのマーカーに関しては高値、中間、低値で3分割してtop tertile(これがちょっとよくわからない感じですが、高値群の事なんでしょうか?)をロジスティック回帰分析の値として使用し、オッズ比を算出しています。

イギリスのデータでは、年齢、社会的地位、喫煙、心臓病と糖尿病の既往歴、BMIに関して調整しています。
アメリカのデータでは、年齢、性別、人種、教育、喫煙、心臓病と糖尿病の既往歴、BMIに関して調整しています。

結果

BRHSにおいて、血液検査まで参加した人の平均年齢は78.8歳でした。46%がmanual social classで、20%が無歯顎、34%が口腔内環境不良、62%が口腔乾燥感あり、33%が最低でも2つの口腔問題を訴えていました。

HABCにおいて、血液検査まで参加した人の平均年齢は74.7歳で、男性49%、女性51%でした。60%が白人で40%が黒人でした。49%が大学を卒業しています。11%が無歯顎で、30%が口腔内環境不良、4%が口腔乾燥感あり、23%が最低でも2つの口腔問題を訴えていました。

口腔の健康状態と炎症マーカー

BRHS

年齢、性別、社会階層、喫煙、循環器疾患、糖尿病の既往歴、BMI等を調整した結果、歯が21本以上の場合と比較して無歯顎では有意にCRPが高値群(OR = 1.52,95% CI = 1.09–2.13)となりました。同様に21本未満の場合、リスクの増加が認められました(OR = 1.31, 95% CI = 1.02–1.68)。

同様にIL-6においても年齢調整モデルで、無歯顎vs21本以上残存、21本未満vs21本以上、アタッチメントロスありの3つのパターンでOR = 1.47, 95% CI: 1.09–1.99; OR = 1.35, 95% CI: 1.08–1.70; OR = 1.39, 95% CI:1.04–1.85という結果になりました。しかし、全部の交絡調整後では相関は弱まり、有意な相関はなくなりました。

口腔乾燥と自己申告における口腔健康状態に関しては、CRP、IL-6ともに有意な相関が認められませんでした。

HABC

交絡調整後において、21本以上残存者と比較して無歯顎者、21本未満群は有意にCRP高値群と相関しました(OR = 1.57, 95% CI = 1.10–2.25; OR = 1.40, 95%
CI = 1.13–1.75)。3つ以上口腔内に問題がある場合、全く問題が無い群と比較すると、交絡調整後にCRP、IL-6高値群と相関しました(OR = 1.42, 95% CI = 1.01–1.99; OR = 1.65,95% CI = 1.19–2.31)。アタッチメントロスとポケット深さに関してはIL-6高値群と相関したものの、交絡を調整すると有意差はなくなりました。口腔乾燥はCRP、IL-6と相関しませんでした。

凝固系バイオマーカー(BRHS)

無歯顎と1-7本残存群は21本以上残存群と比較して有意にD-dimer高値と相関しました(OR = 1.93, 95% CI = 1.22–3.05; OR = 1.64, 95%CI = 1.16–2.30)。同様に21本未満群は年齢と全交絡調整において、D-dimer高値と有意に相関しました(OR = 1.45, 95% CI = 1.15–1.84; OR = 1.37,95% CI = 1.05–1.77)。

von Willebrand因子と口腔内の健康状態については年齢調整時には相関したものの、全交絡調整後には相関関係は弱まりました。2つ口腔内に問題がある群は全く無い群と比較してvon Willebrand因子高値群と全交絡調整後にも有意に相関しました(OR = 1.49, 95% CI = 1.05–2.09)が、D-dimerとt-PAに関しては相関しませんでした。

口腔の健康と心臓バイオマーカー(BRHS)

歯の欠損とアタッチメントロスは全交絡調整後も高感度トロポニンT (hsTnT)高値と有意に相関しました(OR = 1.32, 95% CI = 1.01–1.74 for partial tooth
loss; OR = 1.49, 95% CI = 1.08–2.07 for loss of attachment)。さらにアタッチメントロスに関してはCRP調整後にも有意な相関を示しました。N末端プロ脳性ナトリウム利尿ペプチド(NTproBNP)はあまり相関する事がありませんでした。21本以上歯を有する場合と比較して15-20本歯を有する場合、NTproBNP高値群と有意な相関を認めました(OR = 1.40, 95% CI = 1.01–1.94)。

考察

CRPとIL-6

中年層における歯の喪失はCRPの高値と相関すると報告されています。歯の喪失により咀嚼に問題が起こり、栄養摂取に影響し、抗酸化物質とビタミン不足に陥る可能性があります。これが全身的な炎症所見に影響しているかもしれません(文献18)。加えて、無歯顎は生涯を通じた口腔内の炎症を示唆するものであり、それ自体が全身状態のマーカーで、炎症、慢性疾患と相関する可能性があります。

高齢者における過去の研究で、歯周病とCRP高値は相関しませんでした。私達の研究も高齢者を対象としており、すでに深刻な歯周病の歯は喪失しており、健康な歯のみが残存しアタッチメントロスやポケット深さが測定されているからではないかと考えられました。さらに、HABCでは口腔内に1つ以上の問題がある場合、CRP高値、IL-6高値と有意に相関しました。この知見は、高齢者の口腔の健康状態が炎症に及ぼす潜在的な負担を浮き彫りにしています。また、喫煙、慢性疾患、BMIなどを調整した後もCRPとの相関が認められたため、口腔の健康悪化とCRPは独立した関連性がある事が示唆されました。

凝固系

今回、歯の欠損とD-dimer高値は相関しました。歯の欠損は慢性的な歯周病や根面カリエスの結果であり、口腔の感染と炎症にリンクしていると考えられます。循環系に侵入した口腔内細菌が間接的に血栓や粥状硬化のプラーク形成に影響することで、循環器疾患と関連した炎症に寄与している可能性があります。加齢によりD-dimerは上昇するため、線維素溶解と全身の炎症を暗に意味しているかもしれません。過去の研究でD-dimerは慢性状態と密接にリンクすることが示唆されています。例えば、粥状硬化や機能障害、フレイル、死亡などです。

私達は高齢者において口腔の健康状態悪化が炎症負荷を与え、線維素溶解とD-dimerのレベルが上昇すると仮定しました。D-dimerは高齢者において口腔の機能障害を伴う状態悪化と全身機能の低下を結びつける1つの機序なのかもしれません。

心臓マーカー

口腔状態の悪化、歯周病、部分的な歯の喪失は高感度トロポニンT (hsTnT)と相関しました。歯周病と高感度トロポニンT の関連はCRP調整後も有意でした。トロポニンTは心筋の傷害に関するマーカーであり、高血圧、粥状硬化、冠状動脈性心疾患と関連します。歯周病は粥状硬化や凝血塊の形成に寄与する事で慢性炎症に関与します。そのため、今回認められた歯周病と高感度トロポニンTの相関は歯周病と冠状動脈性心疾患との潜在的な関係性を示唆しているかもしれません。これは過去の研究でも支持されています。同様に、多くは歯周病によって起こる歯の喪失も冠状動脈性心疾患と関連しているかもしれません。

しかし、左心室のストレスマーカーであるN末端プロ脳性ナトリウム利尿ペプチド(NTproBNP)では殆ど相関は認められませんでした。

Limitation

この研究は横断的な研究であるため、口腔内の健康不良と炎症との間の因果関係や関連の方向性を明らかにすることはできません。さらに、BRHSとHABCでは、高齢者で構成されているという点では同程度であったが、他のいくつかの特徴に違いがありました。HABCでは白人とアフリカ系アメリカ人の男女で構成されていたが、BRHSでは白人男性のみでした。口腔内の健康指標(歯周病、ドライマウス)の評価や炎症マーカーの有無(HABC試験ではCRPとIL-6のみ)が異なるため、両研究間ですべてのバイオマーカーの所見を比較することはできませんでした。しかし、両方の研究集団において、口腔内の健康不良とCRPには同様の関連性が観察されました。両コホートは英国と米国の一般的な集団を代表するものではないかもしれません。また、両研究では健康な人が健康診断に参加していた可能性もあり、生存者にバイアスがかかっている可能性もあります。さらに、我々は口腔内の健康マーカーとの関連性を多数検証し、複数の比較を行ったため、偽陽性の結果が報告される可能性があります。多くの共変量を調整することができたが、残留交絡の可能性も残っています。

まとめ

はじめて読む分野だったことと、自分がダウンロード権限がない論文だったため、本文と表を送ってもらったのですが、表がうまく対応できず理解がなかなか難しくなりました。データの平均値がなにせわからないですから。

実験系が異なるイギリスとアメリカのスタディを統合しようとしたのはちょっと無理がある気がします。

すでに残存歯がない無歯顎の方がCRP高値となりうる、というのがイマイチ意味がわからなかったのですが、考察では「歯の喪失により咀嚼に問題が起こり、栄養摂取に影響し、抗酸化物質とビタミン不足に陥る可能性があります。これが全身的な炎症所見に影響しているかもしれません」という記載があり、咀嚼機能低下による栄養摂取の偏りに原因があるのではというロジックになっています。ここら辺はもっと論文を読んでみる必要があるのかなと思いました。

今回の論文では歯周病の評価基準であるアタッチメントロスとポケット深さはあまり炎症と相関が認められず、「私達の研究も高齢者を対象としており、すでに深刻な歯周病の歯は喪失しており、健康な歯のみが残存しアタッチメントロスやポケット深さが測定されているからではないかと考えられました。」という考察がされています。日本の高齢者では、かなりの歯周病でも抜歯を拒否されたり、残根が汚染とともに大量に残っている事も多いと思いますが、海外ではバンバン抜いてそういう歯が無いことが普通なんでしょうか。統計処理前のデータが載っているであろう表が入手できていないので、そこら辺がよくわからないです。

歯の欠損と全身の炎症に関する引用文献18-20

Lowe G, Woodward M, Rumley A, Morrison C, Tunstall-Pedoe H, Stephen K. Total tooth loss and prevalent cardiovascular disease in men and women: possible roles of citrus fruit consumption, vitamin C, and inflammatory and thrombotic variables. J Clin Epidemiol. 2003;56:694–700. doi:10.1016/s0895-4356(03)00086-6

You Z, Cushman M, Jenny NS, Howard G; REGARDS. Tooth loss, systemic inflammation, and prevalent stroke among participants in the reasons for geographic and racial difference in stroke (REGARDS) study. Atherosclerosis. 2009;203:615–619. doi:10.1016/j. atherosclerosis.2008.07.037

de Oliveira C, Watt R, Hamer M. Toothbrushing, inflammation, and
risk of cardiovascular disease: results from Scottish Health Survey. BMJ.
2010;340:c2451. doi:10.1136/bmj.c2451


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