普通の歯科医師なのか違うのか

骨吸収抑制療法とインプラント治療についてのステートメント

 
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5代目歯科医師(高知市開業)
東京医科歯科大学(現東京科学大学)卒業(47期)
同大学院修了
【非常勤講師】
徳島大学、岩手医科大学

前回、低用量骨吸収抑制療法はインプラント失敗リスクを低下させるという論文を読みましたが、今回も同様の内容になります。実は著者も重複しておりますが、今回は国際ONJタスクフォースのステートメントになります。結構長文で、しかも文章が複雑でした。どこに代名詞がかかっているのかなどがなかなか分かりづらいので、訳に間違いがあるかもしれません。ご注意ください。前回読んだ論文の内容も使われていますが、結構さらっと流れていきますので詳しく知りたい方は前回のブログをご参照ください。

Antiresorptive Therapy to Reduce Fracture Risk and Effects on Dental Implant Outcomes in Patients With Osteoporosis: A Systematic Review and Osteonecrosis of the Jaw Taskforce Consensus Statement
Dalal S Ali , Aliya A Khan , Archibald Morrison , Sotirios Tetradis , Reza D Mirza , Mohamed El Rabbany , Bo Abrahamsen , Tara L Aghaloo , Hatim Al-Alwani , Rana Al-Dabagh , Athanasios D Anastasilakis , Mohit Bhandari , Jean-Jacques Body , Maria Luisa Brandi , Romina Brignardello-Petersen , Jacques P Brown  Angela M Cheung , Juliet Compston , Cyrus Cooper , Adolfo Diez-Perez , Serge L Ferrari , Gordon Guyatt , David Hanley , Nicholas C Harvey , Robert G Josse , David L Kendler , Sarah Khan , Sandra Kim , Bente L Langdahl , Christos Magopoulos , Basel K Masri , Sarah L Morgan , Suzanne N Morin , Nicola Napoli , Barbara Obermayer-Pietsch, Andrea Palermo , Jessica Pepe , Edmund Peters , Dominique D Pierroz , Rene Rizzoli , Deborah P Saunders , Clark M Stanford , Riad Sulimani , Akira Taguchi , Sakae Tanaka , Nelson B Watts , Joile Zamudio , M Carola Zillikens , Salvatore L Ruggiero 
Endocr Pract. 2025 May;31(5):686-698. doi: 10.1016/j.eprac.2025.02.016.
PMID: 40335186

Abstract

Objective: Placement of a dental implant in a patient on antiresorptive therapy has been hypothesized to increase the risk of medication-related osteonecrosis of the jaw (MRONJ) and/or impact implant survival. In patients with osteoporosis, the risk of MRONJ with antiresorptive therapy is only marginally higher than observed in the general population.

Methods: The International ONJ Taskforce conducted a systematic review of the literature and evaluated the outcomes of implant placement in individuals with osteoporosis receiving antiresorptive therapy.

Results: The data were reviewed by the International Taskforce, and consensus was achieved on the following GRADEd recommendation. In patients with osteoporosis on antiresorptive therapy, the Taskforce suggests that antiresorptive therapy does not need to be stopped prior to proceeding with dental implant (weak recommendation, very low-quality evidence). Long-term bisphosphonate use maybe associated with a small increase in the risk of MRONJ (3 cases per 1000 patients; adjusted hazard ratio: 4.09, 95% CI: 2.75-6.09, P < .001, moderate certainty).

Conclusion: Current evidence does not suggest an association between antiresorptive therapy in patients with osteoporosis and dental implant failure. Implants may be safely placed in the presence of concomitant use of bisphosphonates or denosumab in patients with osteoporosis with no evidence of an increased risk of implant failure/compromise.

目的:骨吸収抑制療法を受けている患者へのインプラント埋入は、MRONJリスクを上昇させ、インプラント生存率に影響を与えるという仮説が長い間存在しています。骨粗鬆症の患者において、骨吸収抑制療法に伴うMRONJリスクは、一般的な人と比較してほんの僅かしか上昇しません。

方法:国際ONJタスクフォースはシステマティックレビューを行い、骨粗鬆症で骨吸収抑制療法を受けている患者へのインプラント埋入のアウトカムを評価しました。

結果:国際タスクフォースによりデータのレビューを行い、GRADEdに従いコンセンサスを得ました。骨粗鬆症で骨吸収抑制療法を受けている患者において、吸収抑制療法をインプラント術前から止める必要は無い事が示唆されました(弱い推奨、とても低いエビデンスの質)。BP製剤の長期使用は、MRONJリスクの小さな上昇と関連するかもしれません(1000人中3名、調整後ハザード比 4.09、95%信頼区間 2.75-6.09、p<0.001 中等度の確実性)。

結論:現在のエビデンスからは、骨粗鬆症患者の骨吸収抑制療法とインプラント失敗の間に関連性は認められませんでした。骨粗鬆症患者でBP製剤またはデノスマブを使用している場合でも、インプラントはおそらく安全に埋入でき、インプラント失敗のリスクを上昇させるというエビデンスはありません。

ここからはいつもの通り本文を訳します。誤訳もあり得ますので、気になったら実際の本文をご確認ください。

緒言

インプラント治療は、様々な理由で歯を失った患者のQOLを改善します。骨粗鬆症患者においてMRONJはかなり希です。しかし、骨吸収抑制療法とインプラントの生存率の関連性について懸念が示されています。骨吸収抑制薬には2つの承認された使用方法があります。まず、骨密度が低い、または過去に脆弱性骨折の既往がある患者の骨粗鬆症性骨折を減少させます。第2に、がん患者の骨転移の合併症リスクを低下させることです。がん患者への使用は高用量であり、骨粗鬆症患者への使用は低用量で、両者の間には10倍以上の差があります。骨吸収抑制療法を受けている骨粗鬆症患者のMRONJ発症率は約0.01~0.03%です。骨吸収抑制療法を受けているがん患者のMRONJ発症率は約2~5%です。インプラントの失敗は動揺に至るインテグレーションの喪失であり、健康な人には殆ど起こりません。これはチェアサイドやレントゲンで確認する事ができます。インプラントの失敗は6か月以内の早期に起こる場合もありますし、もっと遅れて起こることもあります。インプラント失敗の原因は色々な要因があり、熱傷、感染、骨量不足、骨質、初期固定の喪失、早期の過負荷などがあります。

インプラントは、1本欠損補綴物として、また固定式・可撤式歯科補綴物の支台歯として、広範な進展を遂げています。アメリカでは、最低1本以上の歯を喪失した成人のインプラント治療率は1999~2000年には0.7%でしたが、2015~2016年には5.7%であり、15年で8倍になっています。最近の傾向では2026年には17%まで上昇すると予想されています。2016年には55歳より上のアメリカ人1億人のうち、約2/3が27本以下の残存歯であり、これがインプラントの候補となります。1億人のうち約23%が無歯顎です。そのため、インプラント患者の60%超が55歳より上であることは驚くことではありません。この世代は骨粗鬆症リスクが高く、骨吸収抑制療法を受けている可能性があります。

今日の歯科インプラントの寿命は驚くべきものです。数万件のインプラントデータが報告されており、追跡期間は最大で20年間に及んでいます。10年間の平均生存率は、リスクファクターの有無に関わらず約95%です。生存に影響するリスクファクターは、術者のスキル、喫煙、骨質、重症な歯周病の既往、ブラキシズム、初期固定がない、早期の過負荷、定期検診の有無などがあります。また、全身疾患(糖尿病、循環器疾患、骨粗鬆症)も同様です。

インプラント失敗の約2/3は、埋入後9~12か月間のインテグレーション期間に起こります。喫煙歴がなく重度の歯周病の既往もない患者を対象に、半年ごとの歯科検診を受診している歯科インプラント試験において、10年後の生存率が99%と報告されることは珍しくありません。

過去10年間において、インプラントは修復治療において一般的なものになりました。骨吸収療法の有無に関係なく55歳超の人にはインプラントが膨大な数埋入されているので、骨吸収抑制薬を投与されている人のインプラント成功率に関する徹底的で正確なデータは、今後10年間で必要とされるだけでなく、実現可能です。

歯科医と口腔外科医は、インプラント治療が予定されている人において、骨吸収抑制療法の併用に関して懸念しています。顎骨治癒に逆効果になる可能性が高くなります。疲労骨折を予防するために骨吸収抑制療法を受けている骨粗鬆症、骨減少症の患者において特に懸念されます。骨吸収抑制療法中の患者へのインプラント埋入はMRONJリスクを上昇させ、インプラント生存率に影響するという懸念により、我々は、骨粗鬆症で骨吸収抑制療法を受けている人において、骨吸収抑制療法とインプラントアウムカムへの影響についてシステマティックレビューを行いました。本システマティックレビューの目的とコンセンサスステートメントは、骨吸収抑制療法を受けている骨粗鬆症患者にインプラント埋入を行った場合のアウトカムを説明すること、インプラント埋入時の管理についての臨床的推奨事項を提供する事です。

方法

我々のGRADEd推奨を周知するためにシステマティックレビューを行いました。また、システマティックレビューを行うのに不十分なデータの場合、質問を登録するためにナラティブレビューを行いました。骨粗鬆症で骨吸収抑制療法を併用している場合のインプラント生存率を検討した原著論文が限られているため、臨床試験とシステマティックレビューに加えて、ケースレポートとケースシリーズも含むことにしました。翻訳研究からの推測が行われ、一部の推奨事項に反映されました。PubMed、EMBASE、Cohraneデータベースを検索しました。主要な質問を以下のように登録しました。

1 インプラント治療後と抜歯後との骨治癒は違うのか?
2 骨吸収抑制薬はインプラントの生存率に影響するのか?
3 骨吸収抑制療法の期間が、インプラント埋入後の生存率に影響を与えるか?
4 MRONJによるインプラント失敗に影響する追加のリスクファクターはどれか?
5 インプラント埋入後のMRONJリスクに影響する局所要因は何か?
6 インプラント治療後の骨吸収抑制薬とMRONJリスクの間に違いはあるか?
7 インプラント埋入前の骨吸収抑制療法の中止のリスクと利点は何か?
8 長期間骨吸収抑制療法の既往がある患者において、インプラント埋入前後の同化作用物質の使用は意味があるか?
9 骨吸収抑制薬の投与前後でインプラント埋入の適切な時期は?
10 骨粗鬆症で骨吸収抑制療法をうけているインプラント患者には追加のモニタリングが必要か?

システマティックレビュー

システマティックレビューの方法

システマティックレビューとメタアナリシスを、特別な質問である「インプラント治療を受けた骨粗鬆症患者において、骨吸収抑制療法、BP製剤、デノスマブ(Dmb)はインプラント失敗、MRONJリスクを上昇させるのか?」に対して行いました。MEDLINE、EMBASE、Cochrane Central、CINAHL、Web of Scienceについてデータベースの最初(1946)から2024年5月まで検索しました。既存のシステマティックレビューからの引用文献を手作業で精査するとともに、さらなる参考文献を得るため専門家に連絡を取りました。5名以上の患者を取り扱うケースレポートとケースシリーズ、介入、非介入コホート、システマティックレビューも対象としました。本レビューでは、信頼性の高い結果を得るために設計された方法を採用しました。具体的には、構造化された臨床的質問、関連文献の包括的な検索、適格性の二重評価、バイアスリスクの評価、およびデータの抽出が含まれます。GRADEにより研究の質を評価しました。GRADEd推奨は、患者/介入/比較対象/アウトカム形式による問題設定、体系的なエビデンス検索の実施、価値観と選好の特定、推奨事項を証拠の質に応じて強または弱に分類・提示するといった構造化されたプロセスに従って策定されました。Mirzaらのシステマティックレビューにさらなる詳細が記載されています。

インプラント治療後と抜歯後との骨治癒は違うのか?

抜歯においてもインプラントのオッセオインテグレーションにおいても、破骨細胞と骨芽細胞は骨のリモデリングにおける周囲骨の修復に極めて重要な役割を果たしています。破骨細胞による骨吸収は、形成およびその後の骨石灰化を伴います。抜歯またはインプラント埋入後に、破骨細胞は血管性、炎症性、および機械的ストレスメディエーターによって関連部位に動員され、その結果として骨吸収が生じます。その後に骨芽細胞が類骨を形成し、石灰化が起こります。インプラント表面は、単に生理的骨リモデリングに関与するだけでなく、インプラント表面による補体活性化を介した破骨細胞形成を誘発することで、隣接する破骨細胞とより動的な相互作用を示す可能性があるという示唆があります。

抜歯後の骨を含む創傷治癒は広範囲に研究されています。抜歯後、歯槽骨と歯根膜(PDL)の血管からの急性出血により、抜歯窩は直ちに血餅で満たされ、その後激しい急性炎症反応が続きます。その後、血餅は血管が豊富な肉芽組織に置換されます。肉芽組織の中には骨の再構築に必要な細胞が含まれています。上皮成長因子、骨形成因子、線維芽細胞成長因子、血小板由来成長因子、TGFβ、インスリン様成長因子を含む成長因子は、この過程において重要な役割を果たします。

インプラントの場合、チタン表面に対して骨が治癒する必要があり、親密な骨ーインプラント表面接触ができるというユニークな状況です。このプロセスは、インプラント埋入時に厳格な手順規則が遵守され、かつ宿主因子が正常な治癒段階を促進するという前提のもとで生じます。骨粗鬆症患者の5年後のインプラント生存率は、骨粗鬆症患者ではない年齢がマッチされた人達と有意差はなかったと報告されています。

動物実験では、抜歯後創傷治癒には残った歯周組織の細胞(幹細胞含む)の潜在的な寄与が強調されています。興味深いことに、エストロゲン欠乏マウスでは治癒過程が変わる可能性があります。抜歯即時埋入されたインプラントのインテグレーションにも同様の細胞の寄与があるかもしれません。しかし、治癒後の埋入には寄与しないでしょう。

いくつかのイベントがこのプロセスを修飾する可能性があります。例えば、抜歯するために骨を高速切削した、骨が大きくとれてしまったなどです。骨を高速切削した場合、熱が発生し骨細胞は不可逆性のダメージを負う可能性があります。骨壊死を予防するプロトコルとして47度1分以内という閾値が設定されています。インプラントのドリリング中に骨の温度は測れませんが、このプロトコルで骨へのダメージ、その後のインテグレーション未達成、ディスインテグレショーンなどのリスクを最小化できます。特に、ドリル回転数を低速(<1200rpm)で注水下で形成することで、骨内の温度を47度未満に維持する事ができます。骨吸収活動による顎堤吸収は、部位や宿主によって大きく異なります。当該部位におけるリモデリングは、骨格の他の部分と同様に無期限に継続します。

骨の治癒と同等のプロセスがインプラント埋入においても起こり、最終的にオッセオインテグレーションに至ります。適切な埋入部位の形成と一致して、この外科的処置を骨への外傷を最小限に抑えて行う意図が必然的に存在します。これは吸収した下顎前歯部の皮質骨に到達することがより困難であるかもしれません。インプラント窩の形成サイズは、埋入するインプラント径よりもわずかに小さくなります。そのため、インプラントをセルフタッピング方式で固定することが可能となります。この目的は、より骨ーインプラント境界面をできるだけ近接させ、初期固定を得るためです。これによりインプラントと骨ソケット間の肉芽組織形成を最小限に抑え、骨細胞とインプラントの酸化チタン層の接触が極めて緊密になります。良好な初期固定が得られれば、機能時のインプラントの動きが抑制され、最終的にオッセオインテグレーションの獲得に至ります。

抜歯窩とインプラント周囲の骨治癒の違いとしては、他に軟組織の応答があります。両ケースにおいて、健全な基礎骨反応により、骨内(体腔内)領域と口腔内(体腔外)環境を隔てる軟組織バリアが形成されます。抜歯でもインプラントでも治癒過程として軟組織バリアの形成が起こりますが、それぞれには特徴があります。前者は、顎堤上の正常口腔組織になりますが、インプラント埋入においては、インプラントの表面構造に合わせた歯肉組織の特別なアタッチメントが起こります。

キーポイント
・抜歯窩の治癒とインプラント埋入窩の治癒は類似のメカニズムを共有しているようにみえますが、両者を直接比較した臨床データは存在しません。
・厳密なドリリングプロトコルにより、抜歯窩の治癒よりもインプラント埋入窩の治癒での破骨細胞の活動が低下する可能性があります。ドリリングを厳密に制御する事により、炎症性治癒反応を最小化し、動員される破骨細胞の数を減少させることを試みます。そのため、骨吸収抑制療法の影響を受ける破骨細胞が少なくなります。
・歯根膜の存在により、抜歯窩では骨修復細胞への分化が可能な細胞がより多く存在する可能性があります。
・抜歯窩の軟組織治癒とインプラント周囲の治癒は異なる可能性があります。

骨吸収抑制薬はインプラントの生存率に影響するのか(短期的、長期的)?

この論文に前述しましたが、骨吸収抑制療法なしでも、インプラントの早期、長期での失敗に関連するいくつかのリスクファクターが存在しています。

骨吸収抑制薬がインプラントのインテグレーションに影響する可能性は動物実験で研究されてきました。早期の研究では局所、全身に運搬されるBPの効果にフォーカスされました。これらの研究は、早期のオッセオインテグレーション獲得率の上昇と、インプラント周辺の骨吸収の減少が報告されています。骨壊死は報告されていません。しかし、これらの研究の殆どが、口腔外の実験で長期的なデータではありません。Abatahiらによる比較研究では、ラットで局所的にゾレドロン酸でコーティングされたスクリューvsアレンドロン酸皮下注(200μg/kg、14日間)が上顎インプラントのインテグレーションに与える効果を解析しました。皮下注したラット全てに壊死が認められましたが、ゾレドロン酸コーティングラットでは起こりませんでした。Kimらは、うさぎを用い抜歯窩にインプラントを埋入し、全身的に投与されたBPがインプラントのインテグレーションに与える影響を検討しました。早期(4週)のインテグレーションは良好でしたが、BPを投与された全ての動物で、組織学的壊死所見を伴う長期でのインテグレーションの著しい障害を認めました。

非臨床データから骨吸収抑制療法はインテグレーションに影響するかもしれないということが示唆されますが、臨床データではそうではありません。いくつかのシステマティックレビューでは、骨吸収抑制療法とインプラントの失敗、インプラント関連顎骨壊死の関連性を確立するためのランダム化比較試験がないことを強調しています。骨吸収抑制療法とインプラント埋入の関連について検討したシステマティックレビューの意見は混乱しています。Granate-Marquesらは長期間のBP投与(3年超)、ステロイド療法の併用によりインプラント関連性MRONJリスクは上昇すると報告しています。一方で、他のシステマティックレビューではそのようなリスクは報告されていません。

ケースレポートとケースシリーズでは、骨吸収抑制薬をインプラント埋入前後に投与されている患者においてインプラントの失敗が報告されています。Gossらは、南アフリカにおいてインプラント埋入とMRONJについて歯科専門職へ調査を行い、約16000人に28000本が埋入されていました。インプラントに関連した骨壊死が7ケース(0.89%)報告され、そのうち4ケースが骨吸収抑制療法を始める前にインプラント埋入が行われていました。Lazaroviciらは145ケースのMRONJのうち27ケースがインプラント埋入に関連しており、そのうち11ケースが経口BPを投与されていたと報告しています。殆どのケースで、埋入6か月以内にMRONJが発生しましたが、4ケースはインプラント埋入後にBP投与が開始されていました。単独施設でのレビューでは、グループはBP療法開始に対するインプラント埋入時期に基づいて分類されました。インプラント埋入前から、または同時にBPが投与された場合に、壊死はより急速に発生しました。PogrelとRuggieroは、骨吸収抑制療法前に埋入された11本のインプラント失敗を解析しました。全ての患者は2年以上骨吸収抑制療法(アレンドロン酸、ゾレドロン酸、デノスマブ)を行っていました。しかし、全てのケースにおいて、インプラント失敗パターンは明確に異なっていました。腐骨除去時には、インプラントは壊死骨にインテグレーションしており、周囲の天然歯に影響はありませんでした。彼らは、骨とインプラント界面に歯周組織がない事により、歪み増加エリアの形成、微少破折、骨のターンオーバー上昇が起こり、骨吸収抑制療法の影響をより受けやすくなっているのではないかという仮説を立てました。同じ様なインプラント関連の骨壊死パターンはGiovannacciらによって報告されています。

本コンセンサス声明の一環として委託されたシステマティックレビューとメタアナリシスは、以下の疑問を評価しました。骨吸収抑制療法(BPとデノスマブ)は、骨粗鬆症患者のインプラント失敗リスクを上昇させるのか?

骨減少症または骨粗鬆症で骨吸収抑制療法を受けている患者のインプラント失敗リスクを提示している9つの比較的観察研究が確認されました(図1)。ランダム効果メタアナリシスでは、骨吸収抑制療法をうけている患者において、患者レベルのインプラント失敗の相対リスクは0.82(95%信頼区間 0.52-1.28 P=0.38、非常に低い確実性)でした。インプラントレベルでのポストホック感度解析では、信頼区間が狭くなりました。これからBPはインプラントの失敗を約半分にすることが示唆されました(相対リスク 0.53、95%信頼区間 0.34-0.81、P=0.003 非常に低い確実性)。失敗リスクが他の研究よりも遙かに大きく(27% vs 2%)報告している研究2つを除外したポストホック感度解析では、リスク推定値はBP有利に動きましたが、推定値は依然として不正確で有意ではありませんでした。

要約すると、骨粗鬆症患者において、骨吸収抑制療法とインプラント失敗リスクの上昇との関連性は認められませんでした。しかし、規模の小さな研究でイベント数が少ない、リスク推定の範囲が広い、バイアスリスクが高い、比較対照試験がないなどのエビデンスレベルの弱さが認められます。加えて、我々の知見では、骨吸収抑制薬がインプラントの失敗リスクを上昇させるのか低下させるのかハッキリしません(図2)。

キーポイント
・動物実験では、骨吸収抑制療法がインプラントのインテグレーションに良い影響を与える可能性が示唆されています。
・骨粗鬆症用容量を投与されているインプラント埋入患者でMRONJ発症を報告したケースレポートとケースシリーズが存在します。
・インプラント生存率と骨吸収抑制療法の関連を確立するためのシステマティックレビューのエビデンスは限定的で一貫性がありません。

骨吸収抑制療法の期間が、インプラント埋入後の生存率に影響を与えるか?

前述のコンセンサスに関連するシステマティックレビューでは、11のケースシリーズが確認されました(表1)。インプラント周囲にMRONJを発症する前に、骨粗鬆症患者が骨吸収抑制療法を行っていた平均期間は11の研究すべてが類似しており、3.9~5.7年で平均は4.8年でした。骨吸収抑制療法期間の範囲は極めて広く3か月から10年でした。Dmab FREEDOM試験(3年間のランダム化比較試験に7年間の延長試験を付加)の長期延長試験において、インプラントに関連するMRONJ症例が1例確認されました。韓国の70歳超の患者を対象としたレセプトデータベース研究で、Ryuらは2021年に41ケースのMRONJを確認しましたが、BP投与期間は不明です。文献上は症例シリーズのみが利用可能なため、骨吸収抑制療法の期間と疾患リスクとの関連性についてリスク比を算出することはできませんでした。

キーポイント
・インプラント周囲にMRONJが発生するまでの骨吸収抑制療法平均期間は約5年でした。しかし、この期間はかなりのバラツキがあります(3~120か月)。

MRONJによるインプラント失敗に影響する追加のリスクファクターはどれか?

たくさんのリスク要因、ライフスタイル要因、薬があります。それ単独で、または骨吸収抑制療法と連携してMRONJリスクに寄与する可能性があります。これらには糖尿病、骨粗鬆症、リウマチ、悪性腫瘍、 消化性潰瘍、喫煙、口腔衛生不良、感染症、炎症性歯科疾患、ステロイド使用、プロトンポンプ抑制薬、免疫抑制状態などが含まれます。状態や薬がインプラント患者のMRONJリスクに与える影響に関する研究はほとんどありません。

骨粗鬆症患者のMRONJリスクを検討した最近の単一施設観察研究では、喫煙、ステロイド使用、2型糖尿病、リウマチがリスク因子として確認されました。

10の研究、1071名を統合した最近のメタアナリシスでは、骨密度が正常または低下している患者におけるインプラントの生存率を調査しました。インプラントの5年生存で骨密度の違いによる有意差は認めませんでした。採用した研究のデザイン、異質性、広い信頼区間などから、エビデンスの質はとても低いです。いくつかの研究では、改良されたインプラントの外科テクニックであるステップドリルテクニック、ラテラルボーンコンデンシング、さらに改良されたインプラントデザインがMRONJリスクを回避するために使用されました。併存疾患、薬剤併用、骨吸収抑制療法がインプラントの失敗、MRONJに与える影響についてのデータは提示されませんでした。全ての研究ではありませんが、BP投与患者や、併存疾患を有する患者を除外した研究がありました。殆どの研究で、インプラントの失敗率は低く、併存疾患のサブグループ別の解析は不可能でした。

他のメタアナリシスでは8859名、29798本のインプラントを扱い、インプラントの生存率は、骨粗鬆症のありなしで患者レベル(相対リスク比 0.98 95%信頼区間 0.50-1.89、p=0.94)、インプラントレベル(相対リスク比 1.39、95%信頼区間 0.93-2.08、p=0.11)両方で有意差を認めませんでした。インプラントレベルでの骨粗鬆症患者群のインプラント失敗率は4.7%で、コントロール群は3.5%でした。患者レベルでの骨粗鬆症患者群のインプラント失敗率は5.8%で、コントロール群は4.9%でした。この解析では、インプラント周囲の骨吸収の大きさと骨密度の低さが相関していました。メタアナリシスに含まれる研究の1つでは、喫煙またはクローン病の骨粗鬆症患者において高いインプラント失敗率が認められ、13%にもなりました。フィクスチャーの長さと径も失敗と相関していました。

我々の行ったシステマティックレビューでは、2014年~16年に韓国の70歳超骨粗鬆症患者44900名を扱ったコホート研究を確認しています。この傾向スコアマッチング分析は、骨吸収抑制療法、特にBP製剤は、高齢者においてMRONJリスクを上昇させる(調整ハザード比 4.09、95%信頼区間 2.75-6.09)かもしれないと示唆しています。この研究ではインプラント治療とMRONJ発症についても検討しています(n=41/9738、0.42%)。

経口腔的に行われる口腔外科手術は、清潔-汚染手術とみなされます。インプラント治療もこれに含まれます。インプラント埋入時の感染および/または合併症発生率を最小限に抑えるために、抗生物質予防投与が必要かどうかについては、多くの文献が存在します。この問題については議論が続いており、抗生物質耐性の出現に対する懸念と、抗生物質予防投与の潜在的に限定的な利益が天秤にかけられているます。抗菌薬予防投与を選んだ場合、術前投与の方が、術後7日間コースの投与よりも効果的である可能性が高いです。抗菌薬を選ぶ臨床家のために術前30~60分前にアモキシシリン2gまたはクリンダマイシン300~600mgが推奨されます。

キーポイント
・糖尿病、リウマチ、悪性腫瘍、 消化性潰瘍、ステロイド使用、喫煙歴、プロトンポンプ抑制薬、口腔衛生不良、感染症、炎症性歯科疾患はMRONJによるインプラント失敗リスク上昇と関連があります。
・骨粗鬆症のありなしでインプラントの生存率に差はありません。

インプラント埋入後のMRONJリスクに影響する局所要因は何か?

表1に示すケースシリーズ11本をレビューしました。加えて、PogrelとRuggiero、Escobedoら、Parkらによる機能しているインプラント周辺のMRONJにフォーカスした3つのケースシリーズも検討しました。PogrelとRuggieroは骨吸収抑制療法をうけている骨粗鬆症8名とがん患者3名を区別なく報告しています。アレンドロン酸使用が8ケース、ゾレドロン酸が1ケース、デノスマブが2ケースでした。Escobedoら、Parkらの研究では、骨粗鬆症で骨吸収抑制療法をうけている4名の患者が含まれています。

インプラント周囲のMRONJは、埋入して比較的すぐに起こる場合と、機能するようになってからだいぶ経って起こる場合がありえます。MRONJはたまに埋入時の外科処置が原因で起こりました(インプラント埋入後0~6か月、Giocannaciらの研究のみ0~10か月)。0~10か月で73名中28名に発症し、機能後にMRONJが発症したのは73名中45名でした。

骨粗鬆症患者の殆どが、インプラントは骨吸収抑制療法開始後に埋入されていました。しかし、インプラント埋入後に骨吸収抑制療法を始めた患者で、良好なインテグレーション、機能しているインプラント周囲にMRONJ発症が認められました。48名中37名がインプラント埋入時には骨吸収抑制療法を行っており、48名中11名がインプラント埋入後に骨吸収抑制療法を開始しました。

最後に、MRONJはインプラント埋入部位と関連しました。97本のインプラント中65本が下顎、32本が上顎に埋入されました(表1)。機能しているインプラント周囲のMRONJ発生にフォーカスすると、19本中16本が下顎、19本中3本が上顎でした。上下顎ともに、インプラントは臼歯部により多く埋入されます。ガイドラインで報告されているように、MRONJはインプラント埋入を受けていない個人においても、より一般的に下顎骨に発生します。

口腔衛生状態、歯科疾患の存在についてのデータはありませんでした。インプラント埋入後の治癒過程でMRONJになってしまった患者にとって、殆どのMRONJはおそらく外科時の外傷と関連しています。インプラント荷重開始からMRONJが起こった患者にとって、局所的な誘因は明確ではありません。インプラント荷重開始時とは、最終補綴物が装着され咀嚼・咬合機能が発揮される時点を指します。PogrelとRuggieroは、インプラント周囲骨の分離と、インプラントに強固に付着した壊死骨を伴うインプラントの外面化(exteriorization:訳不明)を報告しています。この知見は、骨頂部付近のインプラント周囲の炎症、骨吸収がみられるインプラント周囲炎の特徴とは一致しません。著者らは、機能しているインプラント周囲のMRONJの発症は、局所的な形態のインプラント周囲炎とはみなされないと結論づけています。ここで、口腔内の炎症がMRONJの発生と関連していることが報告されていることに留意すべきです。したがって骨吸収抑制療法を受けている骨粗鬆症患者を含む全ての患者において、インプラント周囲疾患を減少させるための適切な措置を講じる必要があります。インプラントの埋入と補綴的リハビリテーションは、患者のプラーク除去による適切な口腔衛生状態、歯科専門職による効果的なインプラントケアと監視が可能なデザインにするべきです。

キーポイント
・MRONJは、骨吸収抑制療法がすでに行われている患者では、インプラント埋入の外科手術直後に発生する可能性もありますし、オッセオインテグレーション後の機能しているインプラント周囲に発生する可能性もあります。また、骨吸収抑制療法開始前に埋入されたインプラントでもMRONJの発症が報告されています。
・骨粗鬆症容量を投与されている患者では、インプラント周囲のMRONJは下顎が好発です。

インプラント治療後の骨吸収抑制薬とMRONJリスクの間に違いはあるか?

インプラント失敗とMRONJリスクは、BPとDmbの使用について評価されてきました。BPとラロキシフェン塩酸塩使用時のMRONJ発症を検討したケースレポートがあります。本研究は主にケースシリーズで構成されており、質は限定的です。

944801名の骨粗鬆症患者、38230本のインプラントを検討した最近の後ろ向きコホート研究では、インプラント治療後のMRONJリスクは抜歯後よりも低く、ハザード比は0.51(0.36-0.71)と5.63(3.55-8.92)だったと報告しています。傾向スコアマッチング後、インプラント治療を行った22450人で、MRONJを発症したのは52名(0.23%)であり、インプラント治療無しのMRONJ発症は22450人中100名(0.45%)でした。その他の後ろ向きの観察研究とインタビュー研究では、BP使用者と未使用者のインプラント生存率はほぼ同じで、それぞれ99.17%と98.19%でした。

キーポイント
・BPとDmbのインプラント失敗またはMRONJ発症への効果を直接比較したデータは存在しません。

インプラント埋入前の骨吸収抑制療法の中止のリスクと利点は何か?

Mendesらによるシステマティックレビューでは、インプラント埋入時に外科的外傷を負った患者はMRONJの可能性が高まることが示唆されています。骨吸収抑制療法開始前に存在していたインプラントは、新規に外科的に埋入されたインプラントと比較して、骨吸収抑制療法への長期暴露に伴う負荷期間が長いことから、MRONJリスクが高いようです。Escobedeらは、MRONJを発症した骨吸収抑制療法を受けている患者を調査しました。患者を2群に分割しました。インプラントの存在がMRONJのトリガーとなった群には、インプラント埋入後1~15年でMRONJを発症した74ケースが含まれます。インプラント外科がMRONJのトリガーとなった群には、インプラント埋入後早期(2~10か月)にMRONJを発症した27ケースが含まれます。本研究では、インプラントの存在がトリガーになった群が、インプラント外科がトリガーとなった群よりも有意に多い事を報告しています。骨吸収抑制薬の使用が機能的負荷を受けているインプラントを有する患者にMRONJを起こす、これはインプラント埋入手術よりも高い頻度で起こる、という仮説が立てられました。Wattsらは、閉経後の骨粗鬆症女性において、Dmbの調整MRONJ確率は年率5.2名/10000名であると報告しています。212ケースが臨床試験でインプラント治療を受け、1ケースがオッセオインテグレーション遅延に関連したMRONJを発症しました。インプラント埋入前に骨吸収抑制療法を中止するとMRONJリスクが減少することを実証するための適切な臨床試験がありません。BPは中止したとしても何か月、何年も骨内に残留し効果を発揮します。そのため、インプラント埋入前に短期間中止することには利点はないと思われます。Flichy-Fernándezらはインプラント埋入前に半年BPを中止した患者にMRONJが発症したと報告しています。

多施設前向き研究をおこなったHasegawaらは、抜歯に対してMRONJを予防するためにBPを中止するメリットは、骨粗鬆症患者、がん患者共にない事を報告しました。臨床現場ではMRONJに関する懸念が頻繁に提起され、脆弱性骨折後の「治療格差」の拡大に寄与しています。最近の日本のアンケート調査では、骨粗鬆症患者の約16%が、歯科医のアドバイスによりBPを完全に辞めたと報告しています(文献88、89)。加えて、服薬中止期間に骨粗鬆症性骨折リスクの上昇が観察されました。Dmbの中止は破骨細胞新生のリバウンド、骨密度の低下、骨折リスクの上昇と関連しており、特に多発性椎体骨折が顕著であり、主に椎体骨折既往を有する患者で認められます。歯科専門職は、Dmb療法の中止を推薦してはいけません。最近のthe European Calcified Tissue Societyによるレビューによると、歯科治療はDmb注射後5~6か月経過し、骨のターンオーバーによりDmbの効果がほぼなくなってから行うべきです。

要約すると、現時点ではインプラント埋入前の骨吸収抑制療法の中止は何のメリットもないようです。骨粗鬆症患者でBPまたはDmbの使用中だとしてもインプラントは安全に埋入できます。インプラント失敗/機能不全のリスク上昇を示すエビデンスはありません。

キーポイント
・インプラント外科前後に、骨粗鬆症患者の骨吸収抑制療法を中止することを支持するエビデンスは存在しません。
・Dmbの中止は、骨吸収リバウンド、多発性椎体骨折リスクの上昇と関連するためお勧めできません。

長期間骨吸収抑制療法の既往がある患者において、インプラント埋入前後の同化作用物質(Anabolic Agent)の使用は意味があるか?

長期間骨吸収抑制療法を受けてきた患者のインプラント埋入前に骨同化療法を起こった研究データは公開されていません。そのため、これらの患者におけるMRONJ予防における本薬剤群の使用については、今後の検討が必要です。インプラント埋入後に発症したMRONJの治療にテリパラチドが使用されたケースが2例報告されており、両方とも効果があったと示唆しています。他のケースレポートでは、インプラント関連MRONJの治療中にアレンドロン酸からテリパラチドに変更した患者を報告しています。この患者は10年以上アレンドロン酸を投与されており、薬剤変更の効果は明確ではありませんでした。

ある非盲検の実現可能性調査では、24名の患者に28日間テリパラチドまたはプラセボのいずれかを投与し、その後組織学的な検討を行いチタン製インプラントのオッセオインテグレーションを解析しました。その結果、有効治療群において骨結合が改善されたと報告されています。

キーポイント
・長期間骨吸収抑制療法を受けてきた患者のインプラント埋入前後に骨同化療法を行った研究データは存在しません。

骨吸収抑制薬の投与前後でインプラント埋入の適切な時期は?

現在、骨粗鬆症患者において骨吸収抑制療法に関するインプラント埋入の適切な時期を検討した研究はありません。骨粗鬆症の管理で最も一般的なのはBP療法です。経口BPによるMRONJ発症リスクはとても低いと推定されます。経口BP服用中の患者へのインプラント治療によるMRONJリスクは低く、オッセオインテグレーションの失敗確率は、経口BPを服用していない患者とほぼ同等レベルであることがわかっています。Stavropoulosらにより、骨吸収抑制薬がインプラント治療に与える影響についての徹底的なシステマティックレビューが行われました。採用した研究の多くが経口BPであり、一般層と比較したインプラントの成功率の違いは認められませんでした。インプラントに関連したMRONJ発症患者の71%が、インプラント埋入から3年超経過してからMRONJが発生しました。Walterらはインプラント治療をうけた骨粗鬆症患者のMRONJについてのシステマティックレビューを行いましたが、1症例もありませんでした。Guazzoらは、この件については質の高い研究がないことを指摘しつつも、骨粗鬆症群ではMRONJの発症とインプラントの失敗に関する潜在リスクを認識することが重要であると示唆しています。

興味深い事に、ヒトと動物の観察で、ターンオーバーが活発な顎骨領域、抜歯窩や歯周病、根尖性歯周炎などにBPが集積する事が示唆されました。インプラントがインテグレーション過程において、治癒活性の高い領域にBP濃度の上昇が蓄積すると仮説を立てることは合理的です。BaganらはBPからDmbに変更後比較的早期にMRONJが起こった10ケースを報告しています。1ケースのみ契機としてインプラント埋入を受けていました。

ゾレドロン酸(ゾメタ)の使用に関して、ラットを用いた研究では早期の骨ーインプラント界面の接触に有益であり、その結果ゾレドロン酸の使用でオッセオインテグレーションが促進することが実証されています。ヒトにおいて、骨粗鬆症治療のためゾレドロン酸を年1回投与している患者へのインプラント埋入について、その是非を裏付ける確かな証拠は存在しません。あるケースシリーズでは、骨粗鬆症で年1回ゾレドロン酸を投与された後のMRONJの発症を示しています。興味深い事に、患者8名全員がゾレドロン酸の導入前に長期間経口BPを服用していました。しかし、インプラントがトリガーとなったMRONJ発症はありませんでした。BPからDmbへ変更した患者で比較的早期にMRONJが発症する事に関する先行議論と同様に、本研究でも同様の所見が認められました。この特定の疑問に関する研究は、ケースレポートに限定されているようです。

キーポイント
・骨粗鬆症のため骨吸収抑制療法を長期間行っている場合のインプラント埋入はMRONJリスクが上昇しますが、インプラントの生存率はコントロール群と有意差はありません。
・骨吸収抑制療法の中止を支持するエビデンスは存在しません。また、薬剤投与とインプラント埋入の最適なタイミングの推奨を示唆するエビデンスも存在しません。

骨粗鬆症で骨吸収抑制療法をうけているインプラント患者には追加のモニタリングが必要か?

この疑問に適切に対処するために利用できるランダム化比較試験のデータはありません。インプラント失敗とMRONJ発症が、骨吸収抑制療法低用量、高用量どちらの患者でも観察されました。しかし、後ろ向きのケースシリーズでは、インプラントの失敗とインプラント周囲のMRONJが観察されました。Lazaroviciらは、MRONJを発症した27名のインプラント患者中11名が経口BPを服用していたと報告しました。この群では、77.8%が晩期合併症として自然壊死を経験し、平均発症時期は16.2ヶ月でした。このうち4名がBP開始2から10年前にインプラントを埋入されていました。同様に、PogrelとRuggieroは局所的な骨壊死と腐骨形成に関連した11名の患者において長期的なインプラント失敗を報告しました。このケースでは、8名が経口BP、1名がゾレドロン酸を投与されており、骨吸収抑制療法開始前まではインプラント治療は成功していました。この主題を対象としたシステマティックレビューは、内在的なバイアスやランダム化比較試験の不足により限定的であり、全体としてこの主題に焦点を当てた研究は確固たるものではありません。骨吸収抑制薬を投与されている患者のインプラントのアウトカムを議論した多くの研究では、骨粗鬆症用の投与量の患者と、がん治療の一部として高用量が投与されている患者を区別できていません。明確に区別している文献の中でも、骨粗鬆症治療用投与量の患者では、がん治療のための「高」用量を服用している患者に比べて有害所見の発生頻度が低いと述べられている場合が最も多いです。もし骨粗鬆症治療投与量の患者とがん治療用高用量の患者のインプラントアウトカムを明確に区別する研究が将来出てくるようなら、骨粗鬆症、がん領域の療法でとても有益です。

キーポイント
・骨吸収抑制療法をうけている骨粗鬆症患者の10年を超えるインプラント生存率データを提供するインプラントの長期経過観察が必要です。
・ケースレポートのエビデンスは、骨粗鬆症に対する長期骨吸収抑制療法を受けている患者における歯科インプラントの失敗の発生を裏付けています。システマティックレビューでは、骨粗鬆症に対する長期骨吸収抑制療法を約5年間受けている患者のインプラントの生存率は、対照群と差異が認められませんでした。
・骨吸収抑制療法を受けている骨粗鬆症患者の10年を超えるインプラント生存率が本質問を適切に経穴するために必要です。
・ガイドラインに従い、短期、長期のインプラントメインテナンスを行うべきです(表2)。

まとめ

このステートメントを読むと、インプラント埋入時の外科的な処置時に骨にダメージが加わってMRONJを誘発するパターンと、何が誘因かはよくわからないものの、かなり埋入後かなりの期間が経ってからMRONJが誘発される2パターンが存在するようです。どちらもそれほど確率は高くはないわけですが、自費でインプラント治療をして結構すぐMRONJになった場合、周囲骨がごっそりなくなったとしてリカバーをどうするのか、といったことを考えると、骨吸収抑制薬を飲んでいる人に積極的にインプラント治療というのは自分にはハードルが高いなあと思いました。ただし、低用量の骨吸収抑制療法であれば、服用していない人とインプラントの成功率は変わらないというデータがあるのも事実ですから、以前よりハードルが下がってきているのも事実です。

「骨吸収抑制療法を受けているがん患者のMRONJ発症率は約2~5%」という文章が最初の方にあったのですが、自分はがん患者さんでランマーク入ってる人のMRONJ率は現在100%です・・・。勿論トラブルがあるから歯科医院に来てるわけですのでかなりのバイアスが入っているわけですが、ランマーク入ってるだけで自分の脳内にアラートが鳴ります。2~5%に対して大げさな、という感じですが、以前、MRONJの精査を口腔外科に依頼したら骨シンチしてくれて、全然気付いてない部位もMRONJになってたことがありました。この2~5%がどういった検査でMRONJと判断されたかは元の論文を読んでいないのでわかりませんが、実際はMRONJなのに見逃されている人も案外いるんじゃないかなあと思った次第です。

この記事を書いている人 - WRITER -
5代目歯科医師(高知市開業)
東京医科歯科大学(現東京科学大学)卒業(47期)
同大学院修了
【非常勤講師】
徳島大学、岩手医科大学

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