CAD/CAM冠は大臼歯のどこでも予後に差はない
CAD/CAM冠は小臼歯→第1大臼歯→全ての部位という形で徐々に適応部位が拡大してきました。金銀パラジウム合金の高騰という要因がCAD/CAM冠の使用を大きく推進しました。さて、以前は大臼歯は第1大臼歯、しかも第2大臼歯の咬合がないといけないという謎ルールがあったわけですが、今回の論文はそこら辺を検討した2022年の東北大学のものになります。
Potential complications of CAD/CAM-produced resin composite crowns on molars: A retrospective cohort study over four years
Miyu Inomata , Akio Harada , Shin Kasahara , Taro Kusama , Akane Ozaki , Yusuke Katsuda , Hiroshi Egusa
PLoS One. 2022 Apr 7;17(4):e0266358. doi: 10.1371/journal.pone.0266358. eCollection 2022.
PMID: 35390093
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35390093/
Abstract
Purpose: Evaluation of the clinical performance of computer-aided design/computer-aided manufacturing-produced resin composite crowns (CAD/CAM composite crowns) on molars with a particular focus on placement location.
Methods: A retrospective cohort study was performed based on the clinical records of patients with CAD/CAM composite crowns on molars (June 2016 to March 2021). The hazard ratios (HRs) and 95% confidence intervals (95% CIs) were estimated based the Cox proportional hazard model to evaluate the effect of tooth location on complication type and occurrence. Covariates included crown location (maxilla/mandible, distalmost tooth/not distalmost tooth, and first molar/second or third molar) and endodontically treated (nonvital) or untreated (vital) tooth.
Results: Overall, 362 crowns were evaluated (mean follow-up: 378 days, median: 286 days), and 106 crowns (29.3%) showed complications, most frequently crown debonding. The cumulative success and survival rates were 70.9% and 93.7%, respectively, after 1 year and 49.5% and 86.5%, respectively, after 3 years. There was no significant difference in the HRs and log-rank tests in the Kaplan-Meier curves based on crown location parameters (P > 0.05). However, placement on vital teeth was associated with higher risks than on nonvital teeth (HR, 1.55; 95% CI, 1.03-2.23). In addition, the cement as a covariate yielded a high HR.
Conclusions: The location of CAD/CAM composite molar crowns is unlikely a risk factor for complications; therefore, these crowns can be clinically applied to all molars. However, the application of such molar crowns to vital teeth and the use of a cement other than adhesive resin cement present risks.
目的:大臼歯部にCAD/CAM冠を装着した場合の臨床パフォーマンスを、特に部位に焦点を当てて評価することです。
目的:2016年6月から2021年3月までに大臼歯部にCAD/CAM冠を装着した患者の診療録に基づいた後ろ向きコホート研究を行いました。トラブルのタイプと発生率に与える部位の影響を評価するために、ハザード比と95%信頼区間をCox比例ハザードモデルにより推定しました。共変量は部位(上顎/下顎、最遠心/最遠心ではない、第1大臼歯/第2大臼歯/第3大臼歯)、根管治療の既往があるかないかです。
結果:トータルで、362本のクラウンを評価しました(平均フォローアップ期間378日、中央値286日)。そのうち106本(29.3%)にトラブルが発生しましたが、最も多かったのは脱離でした。累積成功率、生存率は1年後にはそれぞれ70.9%、93.7%で、3年後には49.5%、86.5%でした。ハザード比、Kaplan-Meier曲線でのlog-rank検定では、部位による差を認めませんでした。しかし、生活歯への装着は、失活歯よりもリスクが高い結果となりました(ハザード比1.55、95%信頼区間 1.03-2.23)。加えて、セメントを共変量として分析したところ、高いHRが認められました。
結論:大臼歯のCAD/CAM冠では、部位はトラブルのリスクファクターではないようです。そのため、CAD/CAM冠は大臼歯全てに適用できます。しかし、生活歯である大臼歯、接着性レジンセメント以外のセメントにはリスクがあります。
緒言
最近のCAD/CAM技術の発展は驚くべきものであり、歯科治療に不可欠なものとなっています。ジルコニア、二ケイ酸リチウムブロックがCAD/CAMによるクラウン製作で一般的に用いられますが、ハイブリッドレジンブロックも選択肢の1つとなります。レジンブロックによるCAD/CAMコンポジットクラウンの利点は、研磨が不十分なジルコニアよりも対合歯を摩耗しないことです。さらに、シンタリングや結晶化のような加熱工程がなく、ミリングバーの摩耗も他のセラミックブロックよりも少ないです。CAD/CAMコンポジットクラウンの機械的物性は近年驚異的に改良され、大臼歯領域にも適用されるようになっています。
破折強度、耐疲労性の観点から、in vitroの研究も大臼歯へのCAD/CAMコンポジットクラウンの使用を支持しています。特に、レジンブロックは曲げ強度が低いにもかかわらず、大臼歯用の試料は二ケイ酸リチウムセラミッククラウンと同等の破折強度を有しています。加えて、圧縮試験では破折強度は咬合力の3~4倍で、疲労試験では破折強度は臨床的に許容できるものであした。そのため、これらのin vitroの研究は、CAD/CAMコンポジットクラウンは大臼歯領域に適していると示唆しています。
対照的に、最近のin vitroの研究では、水中で加速劣化試験を実施した結果、CAD/CAM用コンポジットブロックの強度が低いことが実証されており、これは臨床現場におけるCAD/CAMコンポジットクラウンの長期使用に疑問を投げかけています。加えて、CAD/CAMコンポジットクラウンは、レジンブロックの接着の困難さや、使用されるブロックの特性に違いがあることから、従来のメタルクラウンと比較して異なる臨床結果になる可能性があります。特に、小臼歯と比較して、大臼歯部は咬合力の大きさとクラウン軸面の短さにより機械的な不利があると考えられます。いくつかの臨床研究では、CAD/CAMコンポジットクラウンの臨床結果を報告しています。例えば、Miuraらは、大規模な後ろ向き研究の結果を報告しており、小臼歯部における3年間の成功率、生存率はそれぞれ71.7%、96.4%と報告しています。最も多いトラブルは、装着後半年以内の脱離でした。しかし、大臼歯部にCAD/CAMコンポジットクラウンを使用した研究は現時点では殆どありません。加えて、大臼歯CAD/CAMコンポジットクラウンを含む研究のサンプルサイズは小さいです。
日本では、CAD/CAMコンポジットクラウンは2014年の公的な医療保険制度でカバーされています。審美的な歯科治療の需要の高まり、金属価格の上昇、レジンの低いアレルギー誘発性のため、審美的に優れ経済的なレジンクラウンは日本のメタルフリー治療において増加しています。しかし、大臼歯は小臼歯よりも大きな咬合力を受けるため、日本の医療保険では、臼歯部へのコンポジットクラウンの適用に関するガイドラインの策定がなかなか進んでいません。特に、第2大臼歯、最遠心歯への適応は認められておらず、第1大臼歯においては第2大臼歯による咬合支持が全てある患者に限定せれています。さらに、金属アレルギーと診断された患者のみが、全ての大臼歯のクラウン治療が医療保険でカバーされています。しかし、このlimitationを支持するエビデンスはありません。
そのため、大臼歯CAD/CAMコンポジットクラウンの部位による違いを評価することが本研究の目的です。帰無仮説は、クラウンの部位による違いはCAD/CAMコンポジットクラウンの臨床結果に影響しない、です。
実験方法
研究デザイン
本研究は、2016年6月から2021年3月までに東北大学病院と協力歯科医療機関(薬師堂デンタルクリニック)で大臼歯部に装着したCAD/CAMコンポジットクラウンの後ろ向きコホート研究としてデザインしました。本研究に参加した歯科医師は全員日本補綴歯科学会の会員であり、補綴学会のガイドラインに従ってCAD/CAMコンポジットクラウンの治療を行いました。
CAD/CAMコンポジットクラウンは形成時に以下の基準を満たすべきです。咬合面を鋭縁なしで1.5~2.0mmクリアランス付与、フィニッシュラインはディープシャンファーで、軸面でのクリランスは1.0mm、テーパーは6~10度、軸面はアンダーカットがなくスムーズな表面。フィニッシュラインの位置は歯肉縁または歯肉縁上としました。支台歯形成後に、印象はシリコーンゴム印象材、親水性ハイブリッドシリコーン印象材、寒天アルジネート印象材で採得しました。石膏模型は硬質石膏または超硬石膏で製作しました。
CAD/CAMコンポジットクラウンは大学内の技工部または一般の技工所で製作されました。CADシステムはLava Scan ST、Aadva Scan D810、Shofu S-Wave D900、3shape E1、Cerec inLab MCXL、Cerec inLab MCX5が使用されました。CAMシステムはDWX-50、Aadva Mill LW-1、Aadva Harmony Wetが使用されました。レジンブロックはCerasmart 300、Shofu Block HC Hard、KZR-CAD HR Block 3が使用されました。
完成したCAD/CAMコンポジットクラウンを接着性レジンセメント(Gcem One、SA luting、Panavia V5、Resicem、Esthecem II、Superbond C&B)またはレジン強化型グラスアイオノマーセメント(Fuji luting)で装着しました。装着前にクラウン内面にサンドブラスト処理を行いました。レジンセメント使用時にはシラン処理を行いました。セメントをクラウン内面に満たした後に、支台歯に装着し余剰セメントを除去しました。デュアルキュアレジンセメントの場合、短時間光照射後にセメントを除去しました。
後ろ向きのデータ検索は技工指示書と診療録で行われました。まず、技工指示書を探しました。患者データは診療録から後ろ向きに収集しました。除外基準は、最終的にクラウンを装着していない、クラウン装着後に来院していない、歯根分割、歯根分離歯、移植歯に装着している、診療録が不十分なケースとしました。
アウトカム
スタートはクラウンを装着した時点、エンドポイントは臨床的に何かトラブルが起こった時としました。過去の研究によると、トラブルはクラウン、支台歯に関連した根本的な問題と定義されています。本研究で起こったトラブルは、脱離、破折、チッピング、ポストコア脱離、歯髄炎、根尖性歯周炎、支台歯破折(ポストコア破折and/or歯根破折)でした。歯髄炎と根尖性歯周炎は、根管治療が必要な臨床的な徴候(冷水痛、自発痛、咬合痛、サイナストラクトの発生)で判定しました。
トラブルがなかったケースを成功と分類しました。一方で、トラブルはあったものの簡単な治療で継続使用が可能なケースを生存と分類しました。例えば、脱離後に再装着、研磨等でなんとかなるぐらい小さなチッピングの場合です。複数のトラブルが同時に発生したケースでは、最も深刻なトラブルを選択しました。
説明変数と共変量
主な予知因子は、クラウンを装着した部位(上顎/下顎、第1大臼歯/第2大臼歯/第3大臼歯、最遠心歯/最遠心歯ではない)と、根管治療歯(失活歯)か、未治療歯(生活歯)としました。性別(男/女)、クラウン装着時の年齢(65歳以下/65歳より上)、セメントの種類(接着性レジンセメント/その他)、部分床義歯の鉤歯(鉤歯/鉤歯ではない)、対合歯の状態(天然歯、修復歯、欠損、インプラント、不明)などの可能性のある共変量も検討しました。
統計処理
Kaplan-Meier法を用いてクラウンの成功率、生存率を算出し、それぞれの共変量での成功、生存曲線を描記しました。生存時間の差についてはlog-rank検定を用いて評価しました。Cox比例ハザードモデルでハザード比と95%信頼区間を推定しました。2つのモデルをデザインしました。モデル1では、クラウン装着部位と生活/失活の区別に加え,性別と年齢を変数として含めました。モデル2では、モデル1に対合歯の状態、使用されたセメントを追加し、装着部位がトラブルに及ぼす影響を分析しました。
結果
観察期間中にトータルで402本のCAD/CAMコンポジットクラウンが製作されました。このうち40本を基準に基づき除外しました。362本の観察期間の範囲は6日~1603日(平均378日、中央値286日)でした。43本のクラウンは男性に、319本のクラウンは女性に装着されました。患者の年齢は13歳~88歳で、平均は51.1歳(±14.4)でした。装着部位の分布を図1に示します。

表1にトラブルに関連したそれぞれの要因の分布を示します。120本のクラウンが最遠心の歯に装着され、部分床義歯の鉤歯だったのは2本でした。260本が失活歯で102本が生活歯でした。275本が接着性レジンセメントで装着され、87本がその他のセメントで装着されていました。対合歯の状態については、修復歯がもっとも一般的で、インプラントが最も少ない状況でした。対合がない場合が18本ありました。

トータルで106本(29.3%)に観察期間中にトラブルが認められました。図2Aに示すように、最も多いトラブルはクラウンの脱離(74.5%)であり、ついで歯内療法的トラブル(根尖性歯周炎と歯髄炎)(11.3%)、クラウンの破折(4.7%)、支台歯の破折(3.8%)、ポストコア脱離(3.8%)、チッピング(1.9%)でした。

25本のクラウン(6.9%)は失敗であり、除去または抜歯が必要でした。歯内療法的トラブルによりクラウンの除去やオープンアクセスが要求されたのが、最も多いタイプでした。
時系列でのトラブルのタイプ、成功症例数を図3に示します。クラウンの脱離は装着早期に最も多く認められ、その後2年以上の期間認められました。しかし、殆どのケースでは再装着可能でした。歯髄炎も比較的早期に起こりました。クラウンの破折、または支台歯の破折は主に装着1年を超えてから発生しました。

Kaplan-Meier法を用いた生存曲線を元にした1年後の累積成功率、生存率はそれぞれ70.9%、93.7%であり、2年後では50.8%、88.3%、3年後では49.5%、86.5%でした(図4)。

表2にCox比例ハザード解析の結果を示します。クラウンの装着部位に関連する要因のハザード比(HR)は、性別および年齢を共変量として設定したモデル1の表に記載されています。モデル1の生活歯か失活歯かの項目以外は有意差を認めませんでした。

図5にそれぞれの要因により分類した成功率を示します。生活歯か失活歯かはハザード解析でも有意差を認めました。

考察
本研究では、362本のCAD/CAMコンポジットクラウンを最大1603日(平均378日、中央値286日)まで追跡しました。本研究は、CAD/CAMコンポジットクラウン大臼歯のみに焦点をあてた初めての後ろ向き研究です。大臼歯に焦点を当てた先行研究はいくつかありますが、これらのケースでは、サンプルサイズは35本未満です。本研究は後ろ向きコホート研究ですが、サンプルサイズは10倍大きく、そのため、得られたデータは比較的信頼性が高いはずです。
本研究では、下顎第一大臼歯にCAD/CAMコンポジットクラウン治療を行ったケースが最も多かったです。これはその他の大臼歯の前に日本の公的医療保険によってカバーされているからです。全体的な成功率は70.7%、生存率は93.1%でした。Kaplan-Meier曲線にもとづいた1年後の累積成功率、生存率は70.9%、93.7%、2年後は50.8%、88.3%、3年後は49.5%、86.5%でした。1年以内に約30%の患者に、2年以内には約半分の患者にトラブルが起きていました。この結果は、VanoorbeekによるCAD/CAMコンポジットクラウンの3年予後(生存率87.9%、成功率55.6%)とほぼ一致しています。メタルフリークラウンを比較した別の研究では、CAD/CAMクラウンの3年累積成功率は40%以下だったと報告しています。長石系セラミッククラウンと比較した、CAD/CAMクラウンのトラブル発生に関するハザード比は3.42でした。その一方で、Sailerらは、陶材焼付鋳造冠の推定5年生存率は94.7%と報告しています。これらの結果から、CAD/CAMコンポジットクラウンは、従来のクラウンと比較して成功率が低いことが示唆されました。にも関わらず、トラブル後に多くのクラウンは再び使用することができ、生存率は臨床的に許容範囲でした。これらの傾向は小臼歯に関する過去の研究結果と類似しています。特に、本研究の大臼歯クラウンの破折は362本中たった5本(1.4%)でした。これは、大臼歯の方が咬合力が強いにも関わらず、過去の小臼歯の報告(1.6%)と殆ど同じでした。
小臼歯よりも大臼歯の咬合力の方が大きいというのが、メーカーが大臼歯用のレジンブロックの機械的物性を改良してきた主な理由です。特に、大臼歯用のCAD/CAMレジンブロックの基準は、日本歯科理工学会により厳密に決められています。大臼歯部の咬合力は平均約800Nであるため、レジンブロックには70%以上無機フィラーが含まれ、37度7時間水中浸漬後で240MPaの3点曲げ強さが必要です。我々の結果に基づくと、殆どクラウンの破折がなかったことから、現在のレジンブロックは咬合力に対して充分な抵抗力を有しているといえそうです。
ある比較研究は、最遠心のオールセラミッククラウンは、最遠心ではない歯と比較して有意に低いパフォーマンスであったと報告しています。我々の研究では、最遠心の歯とそうではない歯におけるクラウントラブルについて統計的有意差を認めず、以前の研究と明らかに異なる結果を示しました。この乖離はクラウン材料の違い(セラミックvsコンポジットレジン)によるもので、成功率に影響した可能性があります。加えて、われわれはCox比例ハザードモデルを用いて、クラウンを装着した部位(上顎/下顎、第1大臼歯/第2大臼歯/第3大臼歯、最遠心歯/最遠心歯ではない)と、歯の状態(根管治療歯vs未治療歯)でのリスクを評価しました(表2)。まず、モデル1では年齢と性別を共変量として含めました。モデル2では、セメントの種類(接着性レジンセメント/それ以外)と対合歯の状態(天然歯、修復歯、インプラント、喪失、不明)を共変量として加えました。CAD/CAMブロックの種類は共変量として含めませんでした。これは、全ての製品の曲げ強さが基準値をクリアしていたからです。実際、最近のレビューでは、市販されているCAD/CAMブロックの種類は生存率に影響を与えないと報告しています。両方のモデルで、クラウン装着部位でのハザード比には有意差を認めませんでした。加えて、Kaplan-Meier法とlog-rank検定を用いたところ、各部位で成功曲線に差異は認められませんでした(図5)。これらの結果は、CAD/CAMコンポジットクラウンは大臼歯部のどこにも使用できるというCox比例ハザードモデルの結果と一致しています。
モデル1では、生活歯と失活歯の比較でハザード比1.55(95%信頼区間1.03-2.33)という有意差が認められましたが、モデル2ではハザード比に有意差は認められませんでした。しかし、ハザード比と95%信頼区間はモデル1とほぼ同じ値を示しました。これは共変量の数を増やすと正しい検出が困難になることを示唆しています。実際に、CAD/CAMコンポジットクラウンは金属冠に比べて厚みがかなり必要であるため、象牙質をより多く切削する必要(咬合面で1.5mm以上)があります。形成量の大きな違いが、臨床結果に影響したかもしれません。特に生活歯では、形成量が多くなると歯髄症状の可能性が高くなります。一方で、歯髄炎や知覚過敏を避けながら充分な厚みを得るのは難しく、形成量とクラウンの厚みが不十分になってしまうと、破折や脱離時の変形が起こるかもしれません。小臼歯CAD/CAMコンポジットクラウンでは、生活歯と失活歯の違いは臨床結果に影響しませんでした。大臼歯のクラウン形成にはより注意を払うべきです。歯と歯髄腔の解剖学的違いが結果に影響しているかもしれません。
また、使用されたセメントの種類については、共変量であるにもかかわらず、ハザード比(HR)に有意な差が認められました。セメントの種類に関するハザード比は1.77(95%信頼区間1.17-2.68)であり、セメントはトラブル発生に関連している可能性が示唆されました。セメントの種類はその医療機関と強く関連しており、研究デザインの限界です。特に、本研究では、脱離は最も多いトラブルであり、全体の74.5%に及びます。CAD/CAMコンポジットクラウン装着時の接着操作の重要性は指摘されてきました。脱離の多くは装着後早期に起こり、テクニカルなものと考えられます。装着後の脱離は比較的高い割合で認められますが、再装着したクラウンでは16%のみが再度脱離し、その他は問題無く長期経過しています。
CAD/CAMコンポジットクラウンの弾性率はセラミッククラウンよりも低いため、応力がセメント層と接着界面に集中します(参考文献28)。そのため、圧縮強さまたはセメントの接着強さは、従来のセラミックよりも重要です。Ankyuらは、使用中のクラウンの変形を二ケイ酸リチウムクラウンと比較しました。彼らは、CAD/CAMコンポジット材料はセラミック材料よりも早期に変形することを確認しました。さらに、大臼歯は小臼歯と比較して面積が大きいため、セメンテーションの影響を受けやすいかもしれません。
本研究では、部分床義歯の支台歯だったのは2ケースのみだったため、統計処理を行うことはできませんでした。2ケースしかなかったのは、部分床義歯の支台歯それ自体がリスクファクターであり、適切なケース選択の結果だったと言えるかもしれません。言い換えれば、CAD/CAMコンポジットクラウンをもし部分床義歯の支台歯にしたら、臨床成績は芳しくないと予想されます。
小臼歯と同様に大臼歯でも装着後最初の6か月のトラブル頻度は、その後の期間と比較して多かったですが、大臼歯では6か月後もトラブル発生頻度が継続しました(図3)。12か月後、小臼歯ではこれまでほとんど見られなかった、支台歯の破折やクラウンの破折など、抜歯やクラウンの除去につながる重篤な合併症が発生しました。これらの問題は、経時的な疲労に関連しているものと推測されます。これらのトラブルの原因はいまだ不明なため、破折したクラウンの直接的な観察や、力学的考察などが必要です。結果として、咬合状態やTCHなどを評価するために前向き研究が必要です。また、クラウンの厚みやwearの程度なども個別に評価するべきです。
本研究のlimitationは、後ろ向きコホート研究であり、実際の形態やクラウンの厚み、咬合力、パラファンクションなどを評価することができなかったということです。加えて、2つの医療機関での調査だったため、印象方法、クラウン内面の処理、使用したセメントなどの違いが結果に影響したかもしれません。この後ろ向き研究のデザインにより、製造プロセスにおける仮想設計に関連するパラメータに関する情報の収集が制限されました。さらに、本研究では金属アレルギー患者が含まれており、大臼歯部であっても生活歯にメタルフリー材料が要求され、形成量の不足を招いた可能性があります。
支台歯の形態を本研究は評価していませんが、Kabetaniらは小臼歯CAD/CAMコンポジットクラウンの研究を行い、軸面の高さとクラウンの厚みを評価し、非機能側での軸面高さトラブルと関連していることを報告しています(ここは少し意味がわからないので引用文献を読んでみます)。加えて、Yamaguchiらは、小臼歯の支台歯形態とCAD/CAMコンポジットクラウンのトラブルの関連を予知するためにAIの使用を支持しています。そのため、大臼歯に関しても、トラブルを予知するために支台歯を形態的に評価することが必要です。
結論
この研究のLimitationの範囲内で、クラウン装着部位の違いがCAD/CAMコンポジットクラウンの臨床結果に影響するという帰無仮説は否定され、CAD/CAMコンポジットクラウンの部位の違いは、トラブルのリスクファクターの可能性は低いことが示唆されました。そのため、CAD/CAMコンポジットクラウンは大臼歯の全ての部位に適応できることが示唆されました。加えて、生活歯にCAD/CAMコンポジットクラウンを装着した場合にはリスクが上昇し、アドヒーシブレジンセメント以外のセメントの使用はトラブルと相関する可能性が示唆されました。
まとめ
2014年に出た補綴学会のCAD/CAM冠の臨床指針2014では、レジンセメントの使用が必須と記載されています。しかし、この研究ではグラスアイオノマーセメントで装着された冠がある程度混在しています。研究デザインの所に、「本研究に参加した歯科医師は全員日本補綴歯科学会の会員であり、補綴学会のガイドラインに従ってCAD/CAMコンポジットクラウンの治療を行いました。」という記載がありますが、正直首をかしげてしまう感じです。セメントの種類を共変量として統計処理するぐらいなら、レジンセメントのみのケースにした方がまだ結論が明確だったのではないでしょうか?レジンセメントだけにしたら症例数が減ってしまう、というのはちょっと違うと私は思います。
そういうことで、結果に対して私の信頼度は少し低めです。ただし、部位による差はあまりなかったというのは自分の臨床経験からもまあそうだよね、という感じで納得できるところです。CAD/CAM冠は6月から全ての部位に保険適応となりましたから、今後こういった研究をやるためのサンプルは加速度的に多くなるのではないでしょうか。
この研究ですと、3年後の累積成功率は50%を切っており、半分は何らかのトラブルが起こる感じになっています。これは私の臨床経験からするとかなり多いと思うのですが、こんなものなんでしょうか?3年で半分とれた、とかさすがに信用問題に関わる気がするんですが。グラスアイオノマーセメントのせいだけとは言えない気がします。そういった意味で考察の最後の方に支台歯形態の評価の話が出ていました。支台歯形成が駄目なやつは本当にはずれやすい、壊れやすいのか?というのは本研究では評価されていないので、次の論文を読んでみたいと思います。