普通の歯科医師なのか違うのか

CADCAM冠内面にボンディング処理はした方がいい

2021/03/28
 
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5代目歯科医師(高知市開業)
東京医科歯科大学卒業(47期)
同大学院修了
【非常勤講師】
徳島大学
岩手医科大学

適当に論文を検索していたら面白そうなやつを見つけたので読んでみることにしました。CADCAM冠の表面処理の話です。

Retention of CAD-CAM resin composite crowns following different bonding protocols
Amir H. Nejat, Jinwhan Lee, Shreya Shah, Chee Paul Lin, Prajakta Kulkarni, Ramakiran Chavali, Nathaniel C. Lawson
Am J Dent. 2018 April ; 31(2): 97–102.

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/29630794/

Abstract

Purpose: To evaluate the effect of different surface treatments and primers with a CAD/CAM resin composite block on its crown retention.

Methods: 120 human molars were prepared with a 24° total convergence angle, 1.5 mm height, and axial walls in dentin. Surface area was measured by digital microscopy. Crowns were machined from CAD/CAM resin composite blocks. Teeth were randomly allocated to 12 groups (n= 10) based on possible combinations of three surface treatments: [Control, Alumina air abrasion (50-µm Al₂O₃ at 0.28 MPa) ]; 5% hydrofluoric acid etch (20-second scrub); silane application (with or without Kerr Silane primer); and adhesive application (with or without Optibond XTR Adhesive). Optibond XTR Adhesive was applied to the tooth preparations and crowns were bonded with MaxCem Elite cement. Crowns were fatigued for 100,000 cycles at 100 N in water and debonded in tension (1 mm/minute). Crown retention strength (maximum load/surface area) values were analyzed using a three-way ANOVA with Tukey’s post-hoc tests (α= 0.05).

Results: Surface treatment, silane and adhesive applications independently affect retention force (P< 0.05). All interactions were not significant (P> 0.05). Alumina airborne abrasion surface treatment, silane and adhesive applications all improve retention strength. Therefore, CAD/CAM resin composite crowns can withstand debonding while undergoing mechanical fatigue. Although all forms of surface treatment and primer application improve bond strength, the highest mean retention strength values were recorded when the crowns were alumina particle abraded and coated with adhesive (with or without silane).

Clinical significance: In order to improve the bonding of resin composite crowns, application of alumina airborne particle abrasion and a coat of adhesive (proceeded by an optional coat of silane) is recommended. If hydrofluoric acid is utilized, the crowns should be treated with a coat of silane followed by adhesive application.

目的:CADCAMレジン冠の表面処理の違いが維持力に与える影響を評価する事です。

実験方法:120本のヒトの臼歯を収束角24度、軸面の高さ1.5mm、象牙質内形成しました。表面はデジタル顕微鏡で計測しました。クラウンをレジンブロックからCAMで削り出しました。歯を表面処理の方法により10本ずつランダムに12群にわけました。表面処理の方法は、コントロール、アルミナサンドブラスト、フッ化水素酸処理(20秒)、シラン処理(Kerr silane primer)、ボンディング処理(Kerr Optibond XTR)の4種類です。ボンディング処理は形成面とクラウン内面に用いマックスセムエリートセメントにおりセットします。クラウンは水中浸漬にて10000サイクルで100Nで疲労させた後に、1mm/分のスピードで引っ張りました。クラウンの維持力(最大荷重/表面積)を3元配置分散分析とTukeyの多重比較を用いて解析しました。

結果:シラン処理とボンディング処理は独立して維持力に有意に影響を与えました(p<0.05)。サンドブラスト処理、シラン処理、ボンディング処理は全て維持力を改善しました。そのため、CADCAMクラウンは疲労試験中には脱離することはありませんでした。表面処理の全ての種類とプライマー処理は接着強さを向上しますが、最も高い維持力を発揮したのは、アルミナサンドブラスト処理とボンディング処理(シラン処理の有無は問わない)を行ったときでした。

臨床的な重要性:CADCAMレジン冠の接着を向上するためには、アルミナサンドブラストとボンディング材の塗布(オプションとしてのシラン処理後に)がお薦めです。フッ化水素酸がもし使えるなら、クラウンの表面処理にはボンディング処理に続いてシラン処理を行うべきです。

ここからはいつもの通り本文を適当に要約します。誤訳もあり得ますので、気になったら実際の本文をご確認ください。

緒言

CADCAM冠はかなり使用されるようになっています。CADCAMレジン冠の破折強さは一般的なガラスセラミックス材料の半分程度ですが、CADCAMの方が疲労荷重に対して高い抵抗性があり、wearし辛いという報告があります。この好ましい性質によりCADCAMレジン材料は臼歯部の全部被覆冠に使用されています。

最近、CADCAMレジン冠(Lava Ultimate)は10%にも及ぶ高い脱離率で治療を進められなくなりました。インプラント支台の場合、セット後1年以内に80%の脱離率が報告されたケースもありました。この理由として、インプラント体とジルコニアアバットメントの弾性率とレジン冠の弾性率が大きく乖離していることが記載されていました。

CADCAM冠の接着強さを向上させるために色々な表面処理やプライマーが調べられています。しかし、殆どの論文はCADCAMのレジン材料とレジンセメント間の接着強さに関しての研究で、クラウンの維持力に関する論文はありません。そこで表面処理と維持力に関しての研究を行うこととしました。

実験方法

120本のカリエスフリーであるヒトの臼歯を選択しました。歯根部をアクリルレジンで包埋しました。咬合面は石膏トリマーで真っ平らに削り、軸面はダイヤモンドバーを用いて図1のような装置を用いて収束角24度になるように形成しました。収束角は操作する人により15.5度から30.2度の範囲となりました。軸面の多高さは1.5mm、象牙質面としました。全ての形成は注水下で行いました。

図1

形成面をデジタル顕微鏡の10倍で観察ソフトウェア解析を行い、表面積を計算しました。

形成した歯はIOSにてスキャンされ、STLデータを一般的なラボに送付します。CADソフトにより設計します。咬合面で4mm厚、50μmセメントスペースを設定します。さらに引張り試験用に近遠心にウィングを設定しました。その後CAMにてフィラー含有量77wt%のブロックをTS150を用いて削り出しました。

表面処理、装着方法

120本の歯をランダムに12グループに分類し、それぞれ表面処理方法を変化させました。表面処理のグループ別方法は表1に示す通りです。

表1

CADCAM冠表面処理ステップ1(surface treatment)
①コントロール
②アルミナサンドブラスト
③フッ化水素酸
以上の処理を行った後、超音波洗浄機で水洗5分。

CADCAM冠表面処理ステップ2(ステップ1終了後)
①シラン処理
②ボンディング処理
③シラン処理+ボンディング処理

シラン処理:Kerr Silane Primerを20秒塗布後乾燥
ボンディング処理:Optibond XTR adhesiveを20秒塗布エアーブロー後に10秒間光照射

歯面処理
ボンディング処理前にGluma(おそらくグルーマディセンシタイザー)を歯面塗布(20秒塗布後60秒待機)→プライマー処理(Optibond XTR primer)→ボンディング処理(Optibond XTR adhesive)

Optibondは2液性でプライマーとアドヒーシブの2液となります。

クラウンセット
マックスセムエリートセメントでセット。2kg荷重→余剰セメントを除去、頬舌側からマージン部に光照射各10秒→6分後2kg荷重除去

疲労、引っ張り試験

セット後、24度水中1時間浸漬→100N咬合面荷重 1秒1回100000サイクル 24度水中浸漬→引張り試験 クロスヘッドスピード 1mm/分 脱離する直前の最大荷重を表面積で割ったものを維持力として算出。

図2

脱離したクラウン内面と形成面を顕微鏡100倍で観察して、以下の様に評価分類しています。
(1)セメントは歯面側に主に残存(75%以上)
(2)セメントは歯面とクラウン側両方に残存
(3)セメントはクラウン側に主に残存(75%以上)
(4)クラウン破折

また、表面処理によるCADCAM冠内面の状態を電子顕微鏡で観察しています。

解析には3元配置分散分析を用いています。表面処理1、表面処理2、クラウン維持力が変数のようです。有意水準は5%です。

結果

維持力の平均値とSDを表1に示します。

表1

CADCAM冠にサンドブラスト+シラン処理+ボンディング処理が最も高い維持力となりました(G5)。次いで、サンドブラスト+ボンディング処理、フッ化水素酸+シラン処理+ボンディング処理の組み合わせとなりました。

3元配置分散分析の結果は表2のようになっています。

表2

サンドブラストまたはフッ化水素酸による表面処理、シラン処理、ボンディング処理はそれぞれ独立して維持力に有意に影響しました。特に表面処理の違いによる維持力に関して、サンドブラストvsコントロール、フッ化水素酸vsコントロールに、サンドブラストvsフッ化水素酸において有意差が認められました。コントロール軍と比較して、シラン処理またはボンディング処理群は有意に高い維持力を示しました。複数の表面処理の組み合わせについてはどれも有意差が認められませんでした。異なる組み合わせで同程度の維持力が得られていると考えられました。

ダツリさせたときにどちらにセメントが残っていたかを図3に示します。

また、クラウン表面の電顕像を示します。コントロールにおける表面パターン、Cではサンドブラストによる表面、EFではフッ化水素酸で表層がエッチングされた多孔性の表層面を観察できます。

クラウンと歯質間の状態を電顕で観察したのが図5となります。X線不透過性のフィラー粒子から判断できる10~30μmのボンディング層?(adhesive layer)が認められました。シラン処理による層は認められなかったそうです。

考察の一部

歯面に対する表面処理の方が、CADCAM冠表面への処理よりもクリティカルであると報告されています(文献14)。この研究では、ボンディング剤に光照射を行わないとセメントと象牙質間の接着強さが格段に低下する事を報告しています。歯質とセメント両者に独立して光照射を行った場合、脱離はCADCAM冠とセメントの間で起こります。ダツリさせたクラウン表面の観察で、ボンディング剤を冠内面に塗布した群では、冠内面にセメントがより残りやすい結果となりました。これは、ボンディング剤を冠内面に塗布することの重要性を示唆する物です。

サンドブラスト処理の方がフッ化水素酸処理よりも良好な維持を示しました。以前の研究でも同様な結果が示されています。サンドブラストもフッ化水素酸処理も接着面積の増加による機械的嵌合力の向上を目的としてます。過去の研究ではサンドブラストの方が有意にラフな表面を形成したと報告しています。今回の研究においても図4において表層の比較を行っており、サンドブラストの方がよりラフでした。

Kerr Silane Primerには、エタノールと有機ケイ素化合物エステルが含まれています。一方でOptibond XTRには、エタノール、アルキルジメタクリレートレジン、バリウムホウケイ酸ガラス、微粒子シリカ、ヘキサフルオロケイ酸が含まれています。有機ケイ素化合物エステルはコンポジットレジン内のフィラーとレジンセメント内のジメタクリレートと架橋構造を形成します。
Optibond XTRとCADCAMレジン間では、ボンディング剤とCADCAM冠のジメタクリレートレジン間での化学的接着がおそらく起こっていると考えられます。しかし、CADCAMレジンの高圧高温重合では、構成するメタクリル樹脂モノマーの転化率が非常に高いため、この化学反応には限界があります。

シランカップリング剤またはボンディング剤の使用は化学的結合以外にCADCAM冠表面エネルギー向上効果もあります。表面エネルギーが高いクラウンはレジンセメントによりよりぬれ性が向上します。過去の研究では、シラン処理とボンディングの併用で表面エネルギーが向上したと報告されています。結果、CAD-CAMレジン複合材料と各種レジンセメントとの間の拡がり係数を向上させ、さらにCAD-CAMレジン複合材料とレジンセメントとの間のせん断接着強さは,それらの拡がり係数と相関関係がありました。

論文の疑問点

カリエスもないほぼ健常な大臼歯を120本集めた→智歯が多い可能性
軸面の高さが1.5mm 咬合面のCADCAM冠の厚みが4.0mm→通常のCADCAMの形成ではない
形成面のテーパーにかなりの誤差がある→個体差が大きいのでは?
勿論抜去歯の実験なので、そこら辺は差し引いて考える必要がある。

軸面1.5mmしかなくても接着操作をしっかりすればある程度は持つ、という解釈になるのかもしれませんが・・・。

まとめ

以前CADCAM冠の表面処理に関しては大阪大学の論文を読みました。これは、CADCAMレジンとレジンセメント間の接着に関するin vitroでの研究でした。

大阪大学での論文では、CADCAM内面にボンディング剤を塗布しておらず、純粋な比較は難しいです。今回の研究だけから臨床を考えると、スコッチボンドのような全部入りのボンディング剤を使用するのが最も簡便でよい、という発想になりそうですが、これが本当に言えるかはもうちょっと色々な論文を読んでみる必要がありそうですね。

調べてみるとメーカ-的にはLAVA ultimateを接着するのにスコッチボンドを使うとセメントはリライエックス縛りになってしまうようですね。

https://multimedia.3m.com/mws/media/1485514O/lava-ultimate.pdf

スコッチボンドとリライエックスは両者バージョンアップしましたが、それでもやはり新しいセット同士ではないといけないみたいです。

https://www.3mcompany.jp/3M/ja_JP/dental-jp/products/cement/relyx-universal/

ボンディング剤とレジン材料は組成により相性があるのは確かでしょうから、他メーカーの組み合わせで使用する場合は注意が必要かと思います。

大阪大学と今回の研究結果をミックスさせるとCADCAM冠のセット時には
試適、調整→サンドブラスト→エアーブロー(水洗はだめ)→シラン処理andボンディング処理
歯面にも適宜ボンディング剤まで含めた表面処理
という流れが脱離を防ぐためには最も強そうです。

ただし、商品によっては歯面処理すると硬化時間が短くなるというものもあったはずなので、添付文書をよく読む必要があると思います。

医院にサンドブラスターがない場合、試適時についた唾液をリン酸で処理することになります。

私の場合は今までCADCAM冠内面にはサンドブラストとシラン処理のみでボンディング剤の処理は行っておりませんでした。それでも2年間でそこまで症例は多くありませんが、脱離はありません。ただ、今回の研究で電顕でのボンディング層をみると、ボンディング剤は塗布した方が良いと判断しました。次症例よりやってみます。フッ酸は危なすぎてパス(笑)。

文献14
Lührs AK, Pongprueksa P, De Munck J, Geurtsen W, Van Meerbeek B. Curing mode affects bond strength of adhesively luted composite CAD/CAM restorations to dentin. Dent Mater 2014;30:281–291. [PubMed: 24424092]

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