普通の歯科医師なのか違うのか

CADCAMレジン冠はセット前に表面処理をして唾液汚染を除去しないと駄目

2020/04/29
 
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5代目歯科医師(高知市開業)
東京医科歯科大学卒業(47期)
同大学院修了
【非常勤講師】
徳島大学
岩手医科大学

CADCAM冠調整時の唾液

CADCAM冠も基本的には通常時のクラウンと同じく装着前に調整する必要があります。結構テーパーも緩くしてますし、案外スポッと入ることもありますが、当然まず入れてみないとわかりません。
その時にラバーダムでもしていれば別でしょうが、どうしても唾液とのコンタミは避けられないと思います。今回はそれをどうするかという話。

2018年のJPRで大阪大学の論文です。

Adhesion procedure for CAD/CAM resin crown bonding: Reduction of bond strengths due to artificial saliva contamination
journal of prosthodontic research 62 (2018) 177–183
PMID: 28916464

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28916464

Abstract

Purpose: The present study aimed to elucidate how saliva contamination affects microtensile bond strength of resin cement to CAD/CAM resin blocks and identify a decontamination method that can restore original bond strength.

Methods: The KATANA AVENCIA block (Kuraray Noritake Dental) was sandblasted on the adherend surface (P-Co group). Then, the block was contaminated with artificial saliva (Saliveht Aerosol, Teijin). Air dry (N-Co), sandblasting (Sb) and phosphate acid cleaning (AT) groups were prepared. After silane treatment, PANAVIA V5 (Kuraray Noritake Dental) was built up and microtensile bond strength (mTBS) was measured after immersion in water (n = 24 per group). Scanning electron microscopy (SEM) analysis, surface roughness and contact angle measurement of each surface were performed.

Results: The P-Co group showed the highest mTBS value, and bond strength was significantly lower in the N-Co group than the other groups (P < 0.001). In all groups, decreased bond strength resulted from longterm water storage. In the N-Co group, a contaminated layer was observed on the surface by SEM and the contact angle was significantly smaller than the other groups (P < 0.001). In Sb and AT groups, mTBS values that were reduced by artificial saliva contamination significantly increased but did not recover to P-Co group values (P < 0.001). SEM showed no morphological difference between P-Co, Sb and AT groups.The Sb group showed increased surface roughness.

Conclusion: The long-term durability of bonds between CAD/CAM resin blocks and luting agent cement was significantly reduced by artificial saliva contamination. However, sandblasting or phosphoric acid cleaning can recover bonding effectiveness by 75–85%.

目的:CADCAM冠用レジンブロックに対するレジンセメントの接着強さに唾液のコンタミがどのように影響するかを解明する事と、その唾液の処理方法について検討することです。

方法:クラレノリタケデンタルのカタナアベンシアブロックを使用しました。接着面をサンドブラストしました(P-Co)。その後人工唾液に汚染させました。エアーブローによる乾燥(N-Co)、サンドブラスト(Sb)、リン酸処理(AT)の3群(24試料)にわけて処理を行いました。シラン処理の後に、パナビアV5にて接着し24時間水中浸漬後に接着強さを測定しました。電子顕微鏡によるSEM画像解析を行い、表面粗さと接触角の測定を行いました。

結果:P-Co群が最も接着強さが高い値を示しました。N-Co群は他の群と比較すると有意に低い接着強さとなりました。全ての群で長期間の水中浸漬により接着強さが減少しました。N-Co群ではSEM画像で汚染された層が確認され接触角は他の群よりも有意に小さくなりました。Sb、AT群では唾液の汚染により低下した接着強さは有意に回復しましたが、P-Co群と比較すると有意に低い接着強さとなりました。SEM画像では、P-Co、Sb、AT群では特に形態的な違いを認めませんでした。Sb群では表面粗さが上昇しました。

結論:CADCAM冠用レジンブロックとレジンセメントとの接着に関する長期的な耐久性は人工唾液の汚染によって有意に低下しました。しかし、サンドブラストまたはリン酸処理で75~85%まで回復する事ができます。

これからはまた適当に訳していきます。疑問に思われた方は原文をご確認いただきますようお願いいたします。

緒言

2014年に小臼歯のCADCAMレジンブロックが保険適応になりました。CADCAMのハイブリッドレジンは今までのCADCAMセラミックよりも製作や修理が容易で安価で金属修復よりも審美性が高いというメリットがありますが、レジンの未重合層がすくないためレジンセメントとの接着が難しいという欠点があります。

加えて一般的な重合度のCADCAM冠用レジンブロックの接着強さは、CADCAMセラミックよりも有意に弱いという報告もあります。最近の研究では、サンドブラストとシラン処置で接着強さが有意に改善したという報告があります。

唾液、血液、適合を診断するホワイトシリコーン等が修復物の被着面を汚染します。唾液は汚染の主となる物です。
そのため、今回は唾液の接着強さに与える影響と表面処理による接着強さの回復等を検討することとしました。

実験方法

使用材料は表1の通りですが、カタナアベンシアを7×7×5mmの立方体に整形した後に被着面を400番で耐水研磨しています。その後に50μmの0.2MPaアルミナサンドブラスト処理を10mmの距離で20秒間行っています。結構長いです。

P-Co群(8試料):非汚染群(サンドブラスト処理のみ)
N-Co群(8試料):人工唾液で20秒間汚染後スリーウェイシリンジで10秒乾燥
Sb群(8試料):人工唾液で20汚染後10秒乾燥→10秒サンドブラスト→10秒乾燥
AT(8試料):人工唾液で20汚染後10秒乾燥→20秒リン酸処理→10秒水洗10秒乾燥

全試料クリアフィルセラミックプライマープラスでシラン処理15秒後10秒乾燥

パナビアV5を2mm厚でレジン試料と接着して、20秒光照射して重合しています。その後37度の温水に24時間浸漬。その後に試料1個を32個にカットしています。1つの接着面は大体0.7mm×0.7mmになるように調整されました。カットされた試料は37度の温水中に0、1か月、3か月、6か月浸漬され、適宜取り出されて接着強さを測定しています。

結果

SEM像

abがP-Co群でアルミナが認められます。
cdがN-Co群で表層に唾液の汚染層が認められます。
efはSb群でghはAT群となります。

表面粗さと接触角は以下のような結果になりました。

唾液で汚染した後に単純にエアブローした群の接触角が有意に小さいです。

接着強さ

唾液汚染させていないP-Co群が最も高い値を示しました。サンドブラスト群とリン酸処理群はほぼ同じ値を示し有意差は認めませんでした。接着強さは唾液汚染後の表面処理で回復しましたが、完全には回復していません。

唾液汚染後にエアーブローしただけのN-Co群はかなり接着強さが弱く、他の全ての群と統計的な有意差を認めました。

まとめ

CADCAMレジン冠をセットする前には外注技工の場合はおそらく技工先がサンドブラストを行ってくると思います。
そのまま試適調整してシラン処理してセットでは今回のN-Co群と同じでかなり弱い接着力しか期待できない可能性が高いです。

そのため、サンドブラスターがあれば再度サンドブラスト、なければリン酸処理20秒をCADCAM冠内面に行った方がいいということになります

それでも、唾液のコンタミが全く無かった時の75~85%しか期待できないわけですが、何もしないと35%ぐらいの接着力しか期待できないわけです。
必ず一手間加える事が重要と思います。

当院の場合、リン酸処理を行った後に再度サンドブラスト→シラン処理を行っています。これだとどうなるんでしょうかね。
後サンドブラスト処理の噴射時間って規定だとこんなに長いのですね。以後気をつけて噴射していきたいと思います。

追記

この論文ですが3部作の3本目となります。
1,2本目を読んで統合して結論を考えると

試適、調整が終わったら必ずCADCAM冠内面をリン酸またはサンドブラストで表面処理する

接着力を期待したい時はセルフアドヒーシブセメントは使わず従来型のレジンセメントを使用する

サンドブラスト後には超音波洗浄等の水を使った処理はせずにシラン処理を行う

になるかと思います。

CADCAMレジンブロックとレジンセメント3部作

その1

その2

その3

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5代目歯科医師(高知市開業)
東京医科歯科大学卒業(47期)
同大学院修了
【非常勤講師】
徳島大学
岩手医科大学

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