普通の歯科医師なのか違うのか

歯磨きと歯肉退縮の関連性はやはりわからない(2015review)

 
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5代目歯科医師(高知市開業)
東京医科歯科大学卒業(47期)
同大学院修了
【非常勤講師】
徳島大学
岩手医科大学

この前、歯磨きで歯肉退縮が起こるかどうかに関する2007年のレビューを読みました。集められた論文の質が低く、結論付けることはできませんでした。今回はそこから8年たった2015年の論文です。実は2007年と著者が被っており、同じ研究チームによるレビューとなります。リベンジということになりますでしょうか。研究方法等も類似しているので、以前のブログを読んでからこちらのブログを読む事をお勧めします。

Journal of Clinical periodontologyは本文が3段組で非常に読みづらいです。せめて2段にしてほしい所です。

Evidence for the occurrence of gingival recession and non-carious cervical lesions as a consequence of traumatic toothbrushing
Peter A Heasman , Richard Holliday, Andrew Bryant, Philip M Preshaw
J Clin Periodontol. 2015 Apr;42 Suppl 16:S237-55. doi: 10.1111/jcpe.12330.

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/25495508/

Abstract

Aim: To identify the best available evidence for the effect of toothbrushing on the initiation and progression of gingival recession and non-carious cervical lesions (NCCLs).

Methods: A protocol was developed for the questions: Does traumatic toothbrushing, compared to normal toothbrushing, lead to an increased prevalence of non-inflammatory gingival recession? [FQ1] and NCCLs? [FQ2]. The search covered four electronic databases. Bibliographies of review articles, relevant texts, World and European Workshops were screened. Hand searches were performed of the Journals of Clinical Periodontology, Periodontology, Periodontal Research and IADR abstracts.

Results: A meta-analysis included 159 subjects and showed that subjects who used MTBs (manual toothbrush) had greater gingival recession after 12 months when compared with those using PTBs (powered toothbrush). Thirteen cross-sectional studies identified the most frequent toothbrushing factors associated with gingival recession as being toothbrushing frequency, a horizontal or scrub toothbrushing method, bristle hardness, toothbrushing duration and the frequency of changing a toothbrush. The principal toothbrushing factors associated with NCCLs were toothbrushing method and frequency.

Conclusion: The data to support or refute the association between toothbrushing and gingival recession and NCCLs remain largely inconclusive.

目的:歯肉退縮とNCCLの発生や進行に対する歯磨きの効果に関する利用できるエビデンスをを確認する事です。

実験方法:ラフな歯磨きが正常な歯磨きと比較して歯肉退縮とNCCLの増加の原因となるかどうか、というQに基づいたプロトコールを用いました。検索対象としてネット上のデータベースに加えて、レビューのビブリオグラフィなども加えました。さらに特定の雑誌に関してはハンドサーチを行いました。

結果:メタアナリシスは159名の被験者で構成され、通常の歯磨きは電動歯ブラシによる歯磨きと比較して12か月後に有意な歯肉退縮を起こしたと報告しています。13の横断研究から、歯肉退縮と関連する最も頻度の高い歯磨き要因は、歯磨き回数、水平またはスクラブによる歯磨き方法、毛の硬さ、歯磨き時間、歯ブラシの交換頻度であることが確認されました。NCCLと関連する歯ブラシのメイン要因は歯磨き方法と頻度でした。

結論:歯磨きと歯肉退縮、NCCLの関連を支持、または否定するためのデータはまだ決定的ではありません。

ここからはいつもの通り本文を適当に抽出して要約します。誤訳もあり得ますので、気になったら実際の本文をご確認ください。

緒言

不適切な歯磨きまたは、歯磨き傷が歯肉退縮に寄与しているかもしれないという可能性は長期に渡って認識されてきました。しかし、観察による臨床的なエビデンスの多くは状況証拠や逸話的なものです。手動および電動の歯ブラシを用いた短期間の縦断研究では、歯磨き後の歯肉擦過傷の発生が観察、報告されているが、局所的な擦過傷と後に生じる率直な歯肉退縮との関連性および実際の臨床的関連性は依然として不明であり、実証されていません。

NCCLは頬側または唇側がメインで起こる実質欠損であり、歯磨きは発生、増悪因子であると指摘されてきました。特に酸性条件下では加速されるようです。in vitroでは歯磨きだけでは実質欠損は起こらないと報告されています。また歯磨き習慣がなかった頃の人にも認められています。しかし、NCCLが唇側面に多発することは歯磨きが病因の1つである可能性を暗に意味しています。

私達のグループは以前歯肉退縮に対する歯磨きの関連についてのレビューを検討し、支持、不支持のためのよいデータが不十分であると結論続けました。本研究の目的は前回のレビューを拡張してさらにNCCLを含めることです。

実験方法

論文の抽出条件

メインのQは
有歯顎者でラフな歯磨きをする人は正常な歯磨きをする人も歯肉退縮の有病率が高い。
同様にラフな歯磨きをする人はNCCLの有病率が高い。
の2つです。

表1にしめすような条件で論文を検索しています。

前回の実験方法とほぼ同様で、症例報告/専門家の意見[レベルIV]は除外され、レベルI~IIIのエビデンスレベルでの論文を抽出しています。

被験者が人であり、歯肉退縮の範囲を決定するための臨床的な診査が行われており、さらに歯磨き方法、歯肉退縮やNCCLの評価、歯肉退縮やNCCLの発生や進行に関連しそうな因子に関する評価が行われている研究をピックアップしています。

除外条件もほぼ前回と同じです。動物実験、歯肉退縮よりも歯肉の摩耗や浸食を見た研究、歯ブラシの比較研究、子供が含まれる、歯周病患者が含まれる、スポンサーがついたプラーク除去、歯肉炎解消に関する歯ブラシ効果に関する調査、電子顕微鏡を用いたものを含む組織学的な研究は除外されています。

論文の検索

前回は2005年までの文献検索だったのが2014年までになっただけです。NCCLについては新しい検索キーワードがセットされています。ネット上のデータベース検索にプラスして歯周病系の雑誌+IADR抄録をハンドサーチしています。

論文の評価

レベル1の論文に関しては5つの基準、レベル3に関しては7つの基準で研究の質をそれぞれ評価しています。

レベル1の評価:ランダム化の方法、ランダム割り当てのブラインド、実験に関するブラインド、フォローアップ率(脱落率)、Intention-to treat解析かどうか

結果

研究の抽出

最終的に歯肉退縮では19、NCCLでは13の研究がピックアップされました。ただし、定量的な評価に耐えうるのは歯肉退縮の2つのみであり、NCCLに関しては1つもありませんでした。

歯肉退縮

歯肉退縮に関する19の研究では、2つが1980年代、5つが1990年代、7つが2000年代、5つが2010~2014年でした。3つがギリシャ、3つがアメリカ、2つがイタリア、2つがフィンランド、2つがドイツ、のこりはイラン、スペイン、スウェーデン、タンザニア、トルコ、イギリスが1つずつでした。5つがRCTに該当し、1つはケースコントール、残り13は横断研究でした。5つのRCTでは被験者は483名、その他14の研究では3744名した。前回2007年のレビューと比較するとRCTが増えています。

5つのRCTは全て手動の歯磨き(MTB) か電動による歯磨き(PTB)かをランダムに割り付ける方法でした。Wilsonら(1993)が報告した12ヶ月間の研究では、歯肉退縮のベースラインデータが報告されておらず、意味のある結論を出すことができませんでした。Dentinoら(2002年)の研究では、MTBまたはPTBで6ヶ月間ブラッシングを行った後、犬歯もそれ以外の歯においても歯肉退縮に有意な増加は見られなかったと報告しています。Dorferら(2009)の研究では、PTBとMTBの両方が6ヶ月間のブラッシング後に既存の歯肉退縮を有意に減少させたと結論づけています。これらの研究は、妥当なデータが欠落しており、また6ヶ月という期間であったため、メタアナリシスに含めることができませんでした。

残り2つは問題ない研究だったためこの2つでメタアナリシスを行いました。159名の被験者で、12か月で手動の歯磨きの方が電動の歯磨きよりも有意に歯肉退縮した(mean difference 0.20 mm; CI 0.05–0.34 mm)という結果になりました。

Graetzら(2013)は、どちらのブラシタイプを使用した被験者でも12ヶ月間で歯肉の後退が減少したと結論付け、McCrackenら(2009)は、同じ期間でどちらのブラシタイプでも歯肉の後退が悪化しなかったと報告しています。しかし、どちらの研究も、ベースラインから12ヶ月間の変化スコアの平均値と標準偏差を報告していないため、この期間の後退の変化を評価するためのメタアナリシスを行うことはできませんでした。両筆頭著者に連絡を取り、追加データセットの提供を依頼しました。McCrackenら(2009)は、PTB 平均0.27 mm(標準偏差0.37 mm)とMTB 0.06 mm(0.45 mm)という12ヶ月間の変化スコアの平均(SD)を提供し、各グループ共に歯肉退縮のわずかな減少を認めました。

他の研究の主な検討事項は以下のようになります。Metas(2011)らは良好な口腔衛生を有する歯科医師を調査し、10年後には歯肉退縮が増加したと報告しています。

1つだけあったケースコントロールにおいては、123名の歯肉退縮を有する被験者と123名の歯肉退縮を認めない被験者で水平的なゴシゴシ磨きが歯肉退縮と有意に関連したと報告しています。

RCT以外の研究をまとめると、歯肉退縮に関連する歯磨き因子は歯磨き頻度、水平的、またはゴシゴシ磨きなどの歯磨き方法、歯ブラシの硬さ、歯磨き時間、歯ブラシ交換の頻度が報告されています。

NCCL

13の文献が該当しました。2つの研究は1970年代、1つは1980年代、1つが1990年代、6つが2000年代、3つが2010~2014年となっています。4つの研究がアメリカ、2つがスウェーデン、2つがトルコ、2つがドイツ、あとはブラジルとパキスタンが1つずつでした。

RCTは1つのみで、ケースコントロールが1つ、のこり11は横断研究でした。RCTは被験者109名、ケースコントロールが264名、残った横断研究11で6684名でした。

3つの研究では歯磨きの頻度とNCCLには有意な相関は認められなかったと報告しています。しかし、4つの研究では、有意な相関があったと報告しています。Queら(2013)は、歯磨きの頻度が重要な要素であることを示唆していますが、水平または垂直方向のブラッシング方法との関連でしか分析していません。

4つの研究は歯磨きのテクニックとNCCLには有意な相関は認められなかったと報告しています。しかし、4つの研究では正または負の有意な相関を認めました。例えば、水平的な歯磨きテクニックの場合、オッズ比はそれぞれ0.11、1.59という報告があります。 Queら(2013) は歯磨き頻度、テクニックと歯磨き頻度、歯ブラシ交換頻度が混在するとかなり大きなオッズ比になると報告しています。

歯ブラシ、毛の硬さに関しては4つの研究では有意差なしでしたが、Brandiniらは中間、硬い歯ブラシで有意な関連性が認められたと報告しています。

考察

今回のレビューでは、歯肉退縮やNCCLに対する歯磨き剤の効果を評価していないことにも注意してください。

文献検索の結果、2件のRCTが見つかりましたが、いずれも前回のレビュー以降に発表されたものです(McCracken et al.2009 Graetz et al. 2013)。これらの研究はほぼ同一のデザインであり、異質性の全体的な効果を検証した結果、母集団も非常に類似していた。両コホートの被験者は、既存の歯肉退縮部位を有しており、既存の病変に対する両ブラシの相対的な効果を比較する目的で、手動歯ブラシまたは電動歯ブラシのいずれかに無作為に割り付けられました。独立したデータでは、12ヶ月の期間中、後退の部位は安定しているか、減少していることが確認されています(McCracken et al.2009、Graetz et al.2013)。McCracken らは、ベースライン時に少なくとも 1mm の後退があるという組み入れ基準は、これらの病変の一部が 12 ヶ月の試験期間の前に既に安定している可能性を意味すると指摘していますが、どちらの論文もその理由については示唆していません(McCracken et al. 2009)。実際、参加者への注意深い指導を伴う歯ブラシ介入を用いた試験への参加者募集は、プラークコントロールの基準が改善されることで、組織の健康と安定性が向上し、そのような期間中に歯肉退縮の最大高さが減少することを示唆しているのかもしれない。メタアナリシスでは、ベースラインおよび12ヵ月間のコホートの平均値と標準偏差が組み込まれており、後退の解消は、電動歯ブラシを使用している人の方が大きいことが示された。とはいえ、平均差が約0.2mmであることから、臨床的に有意であるとは言えません。残念ながら、ベースラインから12ヶ月間の変化の平均値と標準偏差を報告する縦断的なデータがないため、縦断的な効果を見るためのメタアナリシスを構築することができませんでした。

ポイント

歯磨きの方法や頻度によって歯肉退縮が起こる可能性はあるが、否定する論文も多く結論は明確ではない。
それはNCCLも同様である。

まとめ

2015年になるとRCTが少しずつ増えています。ただし、RCTという特性や歯磨きは日常習慣であることを踏まえると、歯磨きをしない群とする群での比較はできません。当然ですが、歯磨きしなければ歯肉炎が起こりそれで歯肉のラインが変わる可能性が高いですので、そういった事も実験系や結果に影響を与えると考えられます。今回新たにみつかったRCTも電動歯ブラシと手動との比較をランダムに割り付ける形です。

電動においても手動においても歯肉退縮は起こらないというかむしろクリーピングしているような結果になっており、実験に参加して厳密な歯磨き指導をうけた影響を考慮する必要があります。ただ、硬い歯ブラシで自己流でラフに磨いた場合、歯肉退縮してしまうリスクはあり得ると思われます。

NCCLと歯磨きですが、これに関しても各論文で意見がわかれています。以前読んだ論文では歯肉退縮して露出した象牙質をターゲットとした抜去歯の歯磨き実験で研磨性の高い歯磨剤を使用すると削れることが報告されていました。同様に歯ブラシの毛の硬さとNCCLについて検討した論文でも硬いもので磨くと象牙質は多少削れると報告しています。そのため歯肉退縮した後の根面がNCCLになる可能性はあります。ただしNCCLの発生には酸性食品の関与が示唆されています。そういった食生活を長く続けている場合にラフな歯磨きで頬側歯頸部の歯質が持って行かれるという可能性は否定できません。ちなみにアブフラクションという概念自体は今は否定されてきています。咬合はあくまで因子の1つにすぎません。

AbstractのConclusionが2007年とほぼ同じ文章で8年ごときでは世の中はなかなか進歩しないな、と思った次第です。

論文集

歯肉退縮に関する論文

NCCLに関する論文

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東京医科歯科大学卒業(47期)
同大学院修了
【非常勤講師】
徳島大学
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