普通の歯科医師なのか違うのか

当然だが、歯ブラシが硬い+研磨剤入りの歯磨剤は削れる

2020/06/22
 
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5代目歯科医師(高知市開業)
東京医科歯科大学卒業(47期)
同大学院修了
【非常勤講師】
徳島大学
岩手医科大学

歯磨きで象牙質は削れるか第2弾

前回のブログにて研磨剤入りの歯磨剤を使用して歯頸部を磨くと象牙質が結構削れてしまうという論文を読みました。今回は毛の硬さと歯磨剤の相互作用による影響を検討した論文となります。実は前回の論文と著者が被っており、前回の続きとして書かれていますので実験方法も類似したものとなっています。

前回のブログ

Turssi C P, Binsaleh F, Lippert F et al. Interplay between toothbrush stiffness and dentifrice abrasivity on the development of non-carious cervical lesions. Clin Oral Investig 2019; 23: 3551–3556.

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30607621/

Abstract

Objective This study investigated the effect of toothbrush stiffness and dentifrice slurry abrasivity on the development and progression of simulated non-carious cervical lesions (NCCLs).

Materials and methods Human maxillary premolars were allocated to 12 groups generated by the association between toothbrushes, soft, medium, and hard stiffness, and simulated dentifrice slurries, lower, medium, and higher; deionized water (DI) served as negative control. Teeth were mounted on acrylic blocks, and their root surfaces partially covered with acrylic resin to simulate gingiva, leaving a 2-mmarea apical to the cemento-enamel junction exposed to toothbrushing. Specimens were brushed with the test slurries for 35,000 and 65,000 double strokes. Impressions taken at baseline and after both brushing periods were
scanned by a 3D optical profilometer. Dentin volume loss (mm3) was calculated by image subtraction. Data were analyzed using three-way ANOVA and Fisher’s PLSD tests.

Results All toothbrushes caused higher volume loss when associated to higher abrasive slurry, compared to medium- and lowerabrasive slurries. Medium caused more volume loss than lower-abrasive slurry, which led to more volume loss than DI. Hard and medium toothbrushes were not different when used with medium- or higher-abrasive slurries. There were no differences among toothbrushes when used with DI and lower-abrasive slurry. Overall, 35,000 brushing strokes resulted in significantly less volume loss than 65,000.

Conclusions Toothbrush stiffness was an important factor on NCCL development, especially when brushing with medium- and higher-abrasive slurries.

目的:NCCLの発生や進展に歯ブラシの硬さと歯磨剤の研磨性の効果が与える影響を調べることです。

実験方法:上顎第1小臼歯を用い12群に分けました。12群は歯ブラシの毛の硬さで柔らかい、中間、硬いの3群、歯磨剤の研磨性で低い、中間、高い+ネガティブコントールとしての脱イオン水で4群で合計12群となります。歯の歯根CEJより2mm下方部分をアクリル包埋しました。CEJから2mm部分を歯磨剤を用いて35000、65000ダブルストローク歯磨きしました。その後印象採得を行い、印象を3次元形状測定器を用いて計測し、象牙質の減少をmm3で計算しました。データは3元配置分散分析とFisherの多重比較を用いました。

結果:中間、低研磨性の歯磨剤を使用した場合と比較すると、高研磨性の歯磨剤を使用した場合どの歯ブラシでも象牙質の減少量が多くなりました。その後は中間、低、脱イオン水の順番となりました。硬い、中間の歯ブラシに関しては、中間、高研磨性の歯磨剤を用いた場合は差はありませんでした。また低研磨性または脱イオン水を用いた場合、どの歯ブラシの硬さでも差は認めませんでした。35000ストローク時の象牙質の減少は65000ストローク時よりも有意に小さい結果になりました。

結論:歯ブラシの硬さは中間、高研磨性の歯磨剤を使用する時は特にNCCLの発生要素として重要です。

ここからは適当に抽出して要約しますので、気になった方は原文をご確認いただきますようお願いいたします。緒言は前回と似た感じなので省略します。

実験方法

試料

前回の実験で得たデータの標準偏差から1群に必要な試料数を算出し、1群21本必要となっています。そのため1群24本で実験することにしています。12群なので合計288本のヒト上顎第1小臼歯を使用しています。歯はあらかじめ大きな異常が無いことが確認されています。ハンドスケーラーで綺麗にした後に歯の大きさを大体揃えながら12群に分けています。
前回の実験と同じく2本ずつ歯根部をアクリル包埋しています。CEJより根尖側2mmの象牙質が露出するようにそれよりも根尖側の歯根を包埋しています。

歯磨き

実験に使用する歯面以外を隠すためにバキュームフォーマーを使ってスプリント用のシートを圧接、他の歯面を保護するように形態修正を行っています。CEJから2mm根尖側の部分が露出するようになってます。オリジナルの歯磨きマシーンにセットして歯磨剤+歯磨きをします。歯磨き圧は200gとしています。

使用した歯ブラシは以下のようになります。毛の長さや植毛されている房の数はどれも同じですが、毛の繊維の直径が柔らかいものと硬いものでは1.5倍違います。1房に植毛されている毛の本数がかなり違っていて柔らかい歯ブラシだと48本なのに硬いものだと18本しか生えていません。その結果毛の総本数は2064ほんと774本となり、2.5倍ぐらい差があります。

歯磨剤はオリジナルでISO11609に則り設定されています。水和したシリカを研磨剤として基剤はCMCで構成されています。研磨性による3種類+コントロールとして脱イオン水の4種類を使用しています。

歯磨き回数は35000、65000ダブルストロークで、おそらく行って帰ってで1ストロークです。10000ダブルストローク毎に研磨剤を攪拌しています。規定回数磨いた後に洗浄して印象採得を行っています。

印象採得

印象材は前回と同じくExamix NDSですが、前回はインジェクションタイプだったのですが、今回はモノフェイズになっています。印象採得した物を3次元形状測定器にいれて象牙質の減少度合いを算出します。ここら辺は省略します。

結果

3元配置分散分析の結果、歯ブラシの硬さ、歯磨剤の種類、歯磨き回数の間にそれぞれ有意差を認めました。
脱イオン水、低研磨性歯磨剤を使用した場合、歯ブラシの種類による象牙質の減少は差が認められませんでした。
中間研磨性歯磨剤を使用した場合、35000ストロークでは柔らかい歯ブラシは最も象牙質の減少量が小さく、中間と硬い歯ブラシの間では有意差は認められませんでした。一方で65000回では歯ブラシの種類で有意差は認められませんでした。
高研磨性歯磨剤を使用した場合には、柔らかい歯ブラシは他の2群と比較して有意に象牙質の減少量が小さく、他の2群間には有意差は認めれませんでした。

全ての歯ブラシにおいて、高研磨性歯磨剤を使用した場合には他の研磨性研磨剤を使用した場合よりも象牙質の減少量が有意に大きくなりました。
中間研磨性よりも低研磨性の方が、コントロールよりも低研磨性の方が象牙質が減少しました。

研磨性のある歯磨剤を使用した場合、全ての歯ブラシにおいて、35000,65000ストロークの両方において有意に象牙質が減少しました。

まとめ

前回も述べましたが、全部しっかり磨くのに2分。6分割すると20秒。1秒で4.5ストロークなので90ストローク、各歯に15ストロークずつ、頬側、舌側。咬合面の3面なので1面5ストローク、という歯磨き回数の設定で、65000回は13年間という設定になっています。
しかし、実際の臨床で2分で全部磨く指導などはしていないと思います。つまり1回の歯磨きにもっとストロークがかかっているのではないでしょうか?ということは65000回は13年より短い可能性があります。

今回の研究では、研磨材無しまたは低研磨性の歯磨き粉であれば歯ブラシの硬さは関係ありませんでした。ただし、中研磨性以上になると65000回も磨くと象牙質の減りは大きくなります。

研磨性の高い歯磨剤の場合は柔らかい歯ブラシでもかなり削れています。
低研磨性歯磨剤+柔らかい歯ブラシで65000ストローク磨いた場合象牙質の減少量の平均は1.40mm3で、高研磨性なら同じ柔らかい歯ブラシでも7.04mm3とかなり差があります。
研磨性が中程度も低い場合と比較すると2.5~3倍削れています。

研磨材入りの歯磨剤の使用はNCCL的に好ましくないと考えます。

研磨材が入っていない歯磨き粉の場合は、歯ブラシの硬さによる差はない結果です。患者さんはある程度硬い方を好む方が多い気がします。硬い方が磨いた感じが強いんじゃないでしょうか。硬い歯ブラシを使いたければ、研磨材入りは駄目ということになると思います。

ただし、今回の200gを大幅に超えた力でゴシゴシ磨くような場合はまた話が変わってきますので、研磨材が入っていないのにも関わらずNCCLができる患者さんは歯ブラシを柔らかい物に変更する、歯磨き圧をチェックするなどの配慮が必要かもしれません。

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