普通の歯科医師なのか違うのか

咬合因子とNCCLには強い関連はない

 
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5代目歯科医師(高知市開業)
東京医科歯科大学卒業(47期)
同大学院修了
【非常勤講師】
徳島大学
岩手医科大学

今後はシステマティックレビュー

NCCLは多数の因子が絡み合って発症するものであり、アブフラクションのように咬合単体で起こりえるような事はない、というのが現在の定説です。ただし、咬合に関しての寄与を示唆する論文もあれば否定する論文もあります。つまり咬合がどれだけ要因として大きいかは割れています。

今回はシステマティックレビューで咬合とNCCLについて検討した一定のクオリティを満たす研究がどれだけあるのかについて2013年時点の結果を読んでみたいと思います。ちょっと古い文献で申し訳ないです。

Silva A G, Martins C C, Zina L G et al. The association between occlusal factors and noncarious cervical lesions: A systematic review. J Dent 2013; 41:9–16. 
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/23142094/

Abstract

Objectives: This study aimed to systematically review the scientific evidence for the association between noncarious cervical lesions (NCCL) and occlusal risk factors (ORF) [occlusal interferences in excursive movements; occlusal force; premature contacts; type of guidance; skid of centric occlusion to maximum intercuspidation] in adults.

Sources: Pubmed, Web of Science, Cochrane, Lilacs, Clinical Trials, National Research Register and National Institute for Health were searched.

Study selection: From 1082 potentially eligible studies, 106 were selected for full text analysis. Two independent reviewers (Kappa = 0.8; p < 0.001) selected the studies, abstracted information and assessed quality based on standardised scales. Six cross-sectional, two casecontrols and one clinical trial were included. Several occlusal variables were analysed among the studies, but there was no standardisation of the units used in the analysis of occlusal factors. The majority of studies did not find significant associations between NCCL and ORF. Three studies found associations between NCCL and some variables (occlusal contact area, right canine guidance, premature contacts in centric relation and working side) ( p < 0.05). The methodological quality varied across studies, and there was high heterogeneity among them.

Conclusion: Current scientific evidence does not support an association between ORF and NCCL. Further prospective studies with standardised methods are vital to strengthen the evidence.

Clinical significance: Understanding the risk factors for NCCL is important to control the causes and to help the dentist choose the best approach for the patient. The evidence does not support intervention to alter some occlusal factors for the prevention or control of the progression of NCCL.

目的:NCCLと咬合のリスク因子、例えば咬合干渉、咬合力、早期接触、ガイドの種類、中心位から咬頭嵌合位への滑走、などの関連性についてシステマティックレビューを行う事です。

文献検索:Pubmed、Web of Science、Cochrane、 Lilacs、 Clinical Trials、 National Research Register and National Institute for Healthから検索を行いました。

文献の選択:1082の論文からフルテキストが取得可能な106を選択しました。2人の独立したレビュワーにより6つの横断研究、2つのケースコントロール、1つの臨床試験を抽出しました。いくつかの咬合因子について各論文において解析しましたが、これらの因子は標準化されていませんでした。研究の主だったところではNCCLと咬合因子の有意な相関は認めませんでした。3つの研究でNCCLと咬合因子のいくつかで相関が認められました。研究の質はバラバラで高い不均質性を認めました。

結論:咬合因子とNCCLの関係性は現在のエビデンスでは支持されません。今後の共通の方法を用いた研究が必要です。

臨床的重要性:NCCLのリスクファクターを理解することは、原因をコントロールし、歯科医師がベストな方法を選択するために重要です。NCCLの予防または進行のコントロールのために咬合因子を変更する事を支持するエビデンスは存在しません。

ここからは適当に抽出して要約しますので、気になった方は原文をご確認いただきますようお願いいたします。

緒言

NCCLは多因子性の疾患であることはすでに圧倒的なエビデンスがあります。酸蝕や摩耗、咬耗などが原因で起こりますが、歯肉縁下の楔状欠損はこの3つだけでは説明出来ないことから、アブフラクションという概念が生まれました。

患者は発生する原因、それで起こる不具合、予防や治療、予後などに関する情報を教えて貰うべきです。また、NCCLのリスクファクターを理解する事は原因をコントロールして歯科医が適切な選択をするのに重要です。咬合と歯頸部のwearとの関連性については有限要素と研究室での実験データが殆どで臨床的なデータはあまりありません。最近、NCCLと咬合に関して評価したレビューが発表されました。しかし、さらにシステマティックに評価する必要があります。本研究の目的はNCCLと咬合のリスク因子、例えば咬合干渉、咬合力、早期接触、ガイドの種類、中心位から咬頭嵌合位への滑走、などの関連性についてシステマティックレビューを行う事です。

実験方法

検索条件などが詳しく書かれていますが、省略します。106の文献が候補になりましたが、多くはケースレポートであり削除となり、最終的に残ったのは9本しかありませんでした。

結果

研究の内容

最終的に残ったのは6つの横断研究、2つのケースコントロール研究、1つの臨床試験でした。このうちの5つは比較対象群がコントロール群として用いられてしました。5つの研究は大学の診療科からのリクルートされた被験者で構成、2つは軍の基地、1つは個人開業、1つは公衆衛生システムによるものでした。被験者の年齢は16-80歳でした。殆どの研究では被験者は便宜的標本(そこまで厳密に選ばれていない)でした。1つだけ人口構成に基づいた横断研究は性別、年齢に関して調整されていました。ランダム化比較試験は便宜的標本でしたが、治療に関してはランダムに割り振られていました。サンプルサイズの根拠について2707人の被験者を用いた研究以外は特に示されていませんでした。9つ全ての研究で3816名の被験者で58660本の歯が含まれています。被験者の除外基準について明確にしているものもあれば、していないものもありました。除外基準は多岐にわたります。

NCCLの評価

殆どの研究は臨床的な診査でNCCLを評価しています。1つだけ石膏模型で判断したものがあります。石膏模型をNCCLの大きさ、深さの測定に使用している研究がありました。ある研究ではエポキシで模型を製作し、NCCLの測定に使用していました。殆どの研究は全ての歯種を評価していましたが、1つだけ大臼歯と小臼歯のみ評価したものがありました。Tooth Wear Indexを評価基準にしている研究が1つだけありました。

咬合因子

咬合因子としては
偏心運動時の咬合干渉
咬合力
早期接触
ガイドの種類
セントリックから咬頭嵌合位への滑走
となります。

咬合因子は臨床的な手法で測定されています。1つの研究では咬合力や接触面積などをプレスケールを用いて測定しています。例外的な1つは模型を半調節性咬合器にマウントして咬合因子を調査しています。

解析単位

NCCLと咬合の関係を調査するために解析単位を歯としたもの、被験者としたもの、または両方としたものがありました。6つの研究は単変量解析で3つの研究は単変量と多変量両方の解析を行っています。

咬合因子とNCCLの関連

NCCL発生の原因としての咬合因子は
咬合接触面積 (オッズ比4.15 p=0.038)
右側犬歯誘導(オッズ比3.16 p=0.038)
中心位誘導時の早期接触(P=0.00222)
作業側での早期接触(P=0.00222)
でした。

考察

考察の最初では今回抽出した研究データが全く形式が揃っていないと言うことが述べられています。

The greatest difficulty was that the articles did not follow a classic epidemiologic study design

今回の9つの研究で咬合とNCCLの関連について統計的な有意差を認めたのは位以下の3つの研究です。

Bader JD, McClure F, Scurria MS, Shugars DA, Heymann HO. Case-control study of non-carious cervical lesions.Community Dental Oral Epidemiology 1996;24(4):286–91.
Madani AO, Ahmadian-Yazdi A. An investigation into the relationship between noncarious cervical lesions and premature contacts. Cranio 2005;23(1):10–5.
Takehara J, Takano T, Akhter R, Morita M. Correlations of noncarious cervical lesions and occlusal factors determined by using pressure-detecting sheet. Journal of Dentistry2008;36(10):774–9.

NCCL発生の原因としての咬合因子で有意な相関があったのは
咬合接触面積 (オッズ比4.15 p=0.038)
右側犬歯誘導(オッズ比3.16 p=0.038)
中心位誘導時の早期接触(P=0.00222)
作業側での早期接触(P=0.00222)
の4つです。単変量解析では他にも咬合力や咬合圧もNCCLの存在と有意な相関が認められましたが、多変量になった段階で有意差は認められなくなりました。
右側犬歯誘導に関しては、有意差が認められたものの信頼区間がかなり大きくなっています。犬歯誘導は臼歯部の干渉を防止すると考えられるため、結果と理論が一致していません。

文献17のMadaniらの研究ではNCCLの発生は咬合力と早期接触と相関するようです。NCCL群ではNCCL歯数と中心位、作業側での早期接触の数は高い正の相関を示しました。しかし、平衡側と前方滑走では認めませんでした。著者らはアブフラクションの考えを後押ししていますが、この研究は交絡の適切な調整がなされていません。

まとめ

最初はメタアナリシスの気分で読み始めたのですが、実はメタアナリシスではありませんでした。論文の抽出で9本しか適切な論文が該当せず、しかもRCTが殆ど存在しないので確かにメタアナリシスしようがないです。今回は定性的なシステマティックレビューと言うことになるのでしょうか。

もし、できたとしてもまた1つの研究が被験者2707人で54204本の歯を対象としており、この1本に大きく結果が委ねられる状況です。なにせ9つの研究で58660本ですから、この論文1本で9割以上の歯数を占めています。

この研究は以下のものですが、この研究では咬合とNCCLの関連性に有意な項目はなかったという結果になっています。
Bernhardt O, Gesch D, Schwahn C, Mack F, Meyer G, John U, et al. Epidemiological evaluation of the multifactorial aetiology of abfractions. Journal of Oral Rehabilitation 2006;33(1):17–25.

他の研究では被験者の不足、コントロールの不足などが多く認められ適切とは言えない状況です。右犬歯誘導とNCCLと有意に相関すると言われても何で?という感じですよね。こういった結果になるということは実験系、解析法に問題があった可能性があります。また咬合接触面積についても咬耗により年齢に応じて増加するのは明らかで、他の年齢的なファクターが検討されているかどうか、という問題もありそうです。

この論文では最後に色々な年代が含まれる長期間フォローアップし、交絡が調整されている研究が今後必要である、と結論づけています。

今回の論文はイマイチ中途半端な感じでしたが、それぐらいNCCLと咬合の関係に関してしっかりした実験系を持つ研究は少ない、と言えるかと思います。これから考えて咬合要因は絶対ないとは言えませんが、これがNCCL発生の第一の要因であるという事を証明するような論文はありません。むしろ関係ないという論文の方が今回抽出した論文ではパワーがあると思います。この結果から2013年時点ではNCCLがあるのをみて咬合調整するというのは明確な根拠はないと考えます。

今回抽出された研究においても問題を認めるわけで2013年~2020年の間に何か進展があったかを検索してみる必要がありそうです。

WSDはアブフラクションで起こるとまだ信じている方に是非読んで頂きたいブログ

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