普通の歯科医師なのか違うのか

義歯新製時に簡単な食事指導をするかで栄養状態に差が出る

 
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5代目歯科医師(高知市開業)
東京医科歯科大学卒業(47期)
同大学院修了
【非常勤講師】
徳島大学
岩手医科大学

なんとか見つけてきました

食支援の論文を色々探したがなかなかないので、食事指導も含めて論文検索を行った結果、それっぽい奴がありました!!と思ったら自分の元講座の先輩後輩達の論文でした・・・。

2019年JPR掲載の論文ですが、ダウンロードフリーではありません。

Changes in the nutritional statuses of edentulous elderly patients after new denture fabrication with and without providing simple dietary advice
Hiroyuki Suzuki, Manabu Kanazawa, Yuriko Komagamine, Maiko Iwaki, Noriko Amagai, Shunsuke Minakuchi

Journal of Prosthodontic Research 63 288-292 2019

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jpr/63/3/63_288/_article/-char/ja/

Abstract

Purpose: Providing appropriate dental prostheses and dietary interventions may improve food and nutrient intake in elderly edentulous patients, but evidence to support their use is scarce. In this trial, we aimed to clarify the combined effect, on the nutritional statuses of edentulous elderly patients, of dentists providing complete dentures with dietary advice.
Methods: A randomized-controlled trial was performed on a healthy elderly population who required new complete dentures. All participants had new complete dentures fabricated and were randomly divided into an intervention or a control group. The intervention group received simple dietary advice through standardized patient information leaflets and the control group received advice on denture care only. Nutritional status was assessed using the Mini Nutritional Assessment short-form (MNA-SF) before and at 3 and 6 months after treatment. At each assessment point, the MNA-SF scores were compared using the Mann–Whitney U test. The within-group differences in the MNA-SF scores were analyzed using the Wilcoxon signed-rank test with Bonferroni correction.
Results: In total, 59 participants completed all trial steps. At 6 months after treatment, the MNA-SF score in the intervention group was significantly higher than that in the control group (p = 0.01). Comparing the within- group changes in the MNA-SF score revealed that the score increased significantly from 3 to 6 months in the intervention group (p = 0.001, Bonferroni correction).
Conclusions: Nutritional statuses of healthy edentulous elderly population might be improved by fabricating new complete dentures and providing simple dietary advice.

目的:適切な補綴物と食事介入は高齢無歯顎患者の食事と栄養素の摂取を改善するはずですが、確固たるエビデンスは殆どありません。私たちは高齢無歯顎患者において、全部床義歯装着に食事指導を追加する相乗効果について明確にする事を目的としました。

方法:新義歯製作希望の健康な高齢者を対象としてRCTを行いました。全ての参加に全部床義歯を製作し、ランダムに介入群とコントロール群に振り分けました。介入群には簡単な食事指導のリーフレットを渡し、コントロール群には義歯ケアの指導のみを行いました。栄養評価はMNA-SFを用い、治療後3,6か月後にアセスメントを行いました。MNA-SFのスコア比較にはMann-Whitney U検定を用いました。MNA-SFの群内比較にはBonferroni補正を行ったWilcoxonの符号順位検定を用いました。

結果:59名の被験者が参加しました。治療後6か月でのMNA-SFのスコアは介入群がコントロール群よりも有意に高い結果となりました。群内比較において介入群のMNA-SFのスコアは治療後3か月から治療後6か月にかけて有意に増加しました。

結論:健康な無歯顎者の栄養状態は新義歯製作と簡単な栄養指導で改善する可能性が示唆されました。

ここからはいつもの通り本文を適当に要約します。誤訳もあり得ますので、気になったら実際の本文をご確認ください。

緒言

高齢者の栄養状態は機能障害による食欲不全、社会的要因、認知機能低下、などにより低下する傾向にあります。栄養状態の低下は、身体活動、ADL、QOLの低下に関連し、さらには慢性疾患の罹患率や死亡率にまで関連します。

口腔の状態が悪いということも高齢者の栄養に関連します。咀嚼機能障害は加齢による歯の喪失により引き起こされ、食べる物の選択に影響する事が知られています。それは栄養素摂取の減少と言い換える事もできます。一般的に無歯顎高齢者は補綴治療をうけています。補綴治療が栄養状態に与える影響についてはいくつかの報告があります。Coussonらは全部床義歯装着者は有歯顎高齢者と比較して有意に栄養状態が悪かったと報告しています(文献11)。またMoraisらは新しく全部床義歯を製作しても、高齢無歯顎者の栄養状態を改善しなかったと報告しています(文献12)。一方でPrakashらは義歯を持っていなかった高齢無歯顎者に全部床義歯を製作した場合、栄養状態が改善したと報告しています(文献13)。McKennaらは部分床義歯の新製により栄養状態が改善したと報告しています(文献14)。このように対立した研究結果が示されており、補綴治療が栄養状態に与える影響については明らかではありません。

最近の研究では、全部床義歯製作と各個人に合わせた栄養指導により食物と栄養素摂取の改善が認められたという報告があります(文献15,16)。さらに、義歯新製と規格化されたリーフレットを用いた歯科医師による簡単な栄養指導の組み合わせも栄養状態を改善する可能性が、私たちの以前の報告で明らかになりました(文献17,18)。補綴治療と栄養指導の組み合わせは恒例無歯顎者の食物と栄養素摂取を改善する可能性がありますが、どういった栄養指導が効果的なのかは明らかとなっていません。

そこで、本研究の目的は義歯製作と簡単な食事指導が高齢者の栄養状態に与える影響を明らかにすることです。

実験方法

研究デザインは単独施設のダブルブラインド、ランダム化比較試験です。

被験者は2015年6月から2016年12月まで募集しました。条件としては1年以上前から無歯顎であり、残根がないこと、介助無しで通院できること、日本語が理解出来、質問に答えることができることです。除外項目としては、感染症罹患、口腔顔面領域に機能障害、精神疾患、うつ、医科的な理由で栄養制限されている、自分で食事を選択する事ができない、などとしました。

全員に新しく全部床義歯を製作し、ランダムに介入群とコントロール群の2群に分類しました。簡単な栄養指導を介入群に行い、コントロール群には義歯ケアの指導を行いました。全ての指導はパンフレットを用いて歯科医師が行いました。介入群の被験者が調理をしない場合、調理をする人に対して電話で指導を行いました。

全部床義歯は通法にもとづいて臨床経験11~14年の3名の歯科医師により製作しました。指導に関しては義歯製作に関与していない2名の歯科医師によって行いました。

栄養状態の評価はNMA-SFを用いて、術前、術後3か月、6か月時点でアセスメントしました。

結果

79名の被験者を対象としてスタートして70名が2群にランダムに振り分けられました。11名がドロップアウトして最終的に59名が残っています。術前の2群間の比較ではBMIや年齢、男女比に関して統計的な有意差は認められませんでした。

NMA-SFの結果

コントロール群:術前では栄養状態良好が19名、リスクありが9名、栄養状態不良が1名だったのが、義歯装着後3か月、6か月共に栄養状態良好が21名、リスク有りが6名、栄養状態不良が2名

介入群:術前では栄養状態が良好が25名、リスク有りが5名だったのが、義歯装着後3か月後では特に変化なしだったが、義歯装着6か月後には栄養状態良好27名、リスクあり3名

群間の比較では、術前、3か月後では有意差を認めず、6か月後では介入群とコントロール群で有意差を認めました。

群内の比較では、介入群の3か月後→6か月後のみ有意差が認められました。

考察

義歯による補綴治療だけでは、健康な高齢者の栄養状態を改善するには不十分であることが示されました。むしろ、有益な効果を得るためには、歯科医によるパンフレットを用いた簡単な食生活のアドバイスを併用する必要があるかもしれません。高齢者の栄養状態を改善するためには、歯科医師による食事アドバイスが重要である事が示唆されました。

Lizakaらは食に関する知識の不足と準備の大変さが高齢者の栄養不良のリスクになる事を示唆しています。今回、私たちが介入群に指導したのは農水省の「シニア世代の健康な生活をサポート 食事バランスガイド」であり、色々な情報が載っており、非常に有益なツールであると考えられます。

今回介入群でNMA-SFのスコアが治療3か月後→6か月後の間に有意に上昇しました。以前、栄養素摂取状況について報告した結果では治療後3か月での介入群はコントロール群よりも有意に栄養素を多く摂取していました。この栄養素摂取の改善は食事指導による多様な食事摂取の増加によるものかもしれません。

まとめ

農水省の食事バランスガイドはかかりつけ歯科医のための口腔機能低下症入門でも紹介されています。簡単にダウンロード可能ですので自分もこれから義歯を作った人にこれを用いて指導していきたいと思います。

しかし、単純に義歯を作っただけでは栄養状態は改善しない、というのは今まで自分がやってきた事を少し否定されているようで微妙な気分になってしまいました。作っただけではだめ、予後良好になっただけでは駄目、どうやってその義歯で何を食べるのか、まで教えて初めて道具として意味があるものになる、と言うことを深く心に刻んでいきたいと思います。

ダウンロードはこちらから

https://www.maff.go.jp/j/balance_guide/b_sizai/pdf/korei_all.pdf

かかりつけ歯科医のための口腔機能低下症入門は2020年版に改訂されました。口腔機能低下症の検査法、基準値の根拠なども詳しく記載されています。

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