普通の歯科医師なのか違うのか

要介護高齢者への口腔機能向上サービス介入は体重維持に重要かもしれない

 
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5代目歯科医師(高知市開業)
東京医科歯科大学卒業(47期)
同大学院修了
【非常勤講師】
徳島大学
岩手医科大学

久々のブログ更新

去年の12月にブログを更新してからずっとお休みしていました。大きな仕事を依頼されてずっとそれにかかりっきりだったのですが、半年ぐらい頑張ってやっと仕事が少し落ち着いてきました。まだ完璧に仕事が終了したわけではありませんが、少し暇になってきましたので、ブログを再開したいと思います。

リハビリを兼ねて今日は日本語の論文を読んでみたいと思います。


通所介護事業所利用者に対する口腔機能向上および栄養改善の複合サービスの長期介入効果

森下 志穂(愛知県歯科衛生士会), 渡邊 裕, 平野 浩彦, 枝広 あや子, 小原 由紀, 白部 麻樹, 後藤 百合, 柴田 雅子, 長尾 志保, 三角 洋美

日本歯科衛生学会雑誌(1884-5193)12巻1号 Page36-46(2017.08)

緒言の一部

平成24年度介護報酬改定において、介護予防通所介護および介護予防通所リハビリテーション事業所において選択的サービス複数実施加算が新設された。これは利用者の生活機能の向上に資するサービスを効果的に提供する観点から、運動器の機能向上、栄養改善、口腔機能向上の各サービスを組み合わせて実施することを評価するものである。運動・栄養・口腔の各プログラムは、それぞれが密接に関わっており、これらのプログラムを複合的に行うことで相乗効果がうまれ、単独で行う場合よりも高い効果が期待される。

本研究では通所介護事業所において、口腔機能向上と栄養改善の各プログラムを複合的に実施した場合の口腔機能栄養状態、生活機能の維持向上に対する長期的効果を明らかにすることを目的として18ヵ月間の無作為化比較対照試験を行った。

実験方法

被験者

同一法人が運営する4つの通所介護事業所から同意の得られた130名から、要介護4と5、基礎疾患で体調不良の人、CDR3の重度認知症などで35名を除外した95名を対象としています。

方法

ベースライン調査:基礎情報、栄養評価、口腔機能評価

ベースライン調査を元に3群に分類
口腔群:口腔機能向上サービスを月2回
栄養群:栄養改善サービスを月2回
複合群:口腔機能向上サービスと栄養改善サービスをつき1回ずつ
サービスは各1回20分

歯科衛生士、管理栄養士によるサービスを18か月
介入開始6か月後に中間評価
介入終了時ベースライン調査と同じ調査

サービス内容はベースライン、中間評価の結果を基に個々の現状に合った目標を設定して、それが達成できるような内容に設定

最終的には図1に示すようにドロップアウトを除いた69名が解析対象

調査項目

年齢、性別、身長、体重
介護保険の認定状況
認知症:CDR
日常生活動作:Barthel Index
意欲:Vitality Index
精神的健康状態の評価:WHO-5
栄養評価:MNA-SF
食欲:CNAQ(Council on Nutrition Appetite Quetionnaire)
嚥下機能:RSSTとNWST
口唇、舌の巧緻性:オーラルディアドコキネシス
口腔衛生状態:歯、義歯のプラーク、舌苔の量を3段階に分類
咀嚼機能の評価:咬筋の緊張度を3段階に分類

統計

ベースラインの群間評価:Kruskal-Walis検定
ベースライン、中間、最終の群内の比較:Friedman検定またはCochran’s Q検定
有意水準:5%

結果

ベースライン調査では各群間で全ての項目で有意差を認めませんでした。

各群の介入前後の変化

介護保険認定状況:全ての群で有意に改善
CDR:全群有意差なし。口腔群は改善傾向
BI:有意差なし
VI:複合群のみ有意な改善
WHO-5:全群有意差なし。口腔群は悪化傾向、複合群は改善傾向
BMI:栄養群のみ有意な悪化
CNAQ:有意差なし
RSST:口腔群のみ有意な低下
オーラルディアドコキネシス:複合群パ有意な改善、口腔群カ有意な改善
舌苔の付着:複合群のみ改善
口腔内、義歯のプラーク付着:全群有意差なし
咬筋の緊張度:全群有意差なし

介入前後の変化率の状況を判定した結果は表5の通りです。有意差がないものにおいても改善傾向を示したという感じで、この結果は統計処理を行っているわけでもないので解釈は慎重に行った方がいいでしょう。

考察

本研究結果から口腔と栄養の複合プログラムは介護予防の目的であるQOLの向上に効果的である可能性が示唆された。また、口腔機能向上と栄養改善のプログラムを複合的に実施する利点としては、歯科衛生士と管理栄養士とがそれぞれの専門的な立場から関わり、互いに情報共有とプログラム内容の調整を行うことで、利用者の抱える問題の解決に向けた多面的なアプローチが可能であることが挙げられる。

Limitaion

サンプルサイズが小さい
栄養指標は炊事経験や同居者の有無などが影響するが今回は考慮していない
何のプログラムも行わない対象群は倫理的な面から設定できなかった
介入期間中の施設職員の知識や技術の向上が不可避

まとめ

口腔群は口腔のメニューを月2回、栄養群は栄養のメニューを月2回、複合群はそれぞれ月1回行っています。そういった訓練メニューの回数の違い、個々に合わせた訓練や指導が今回結果が散漫な感じになった原因なのかもしれません。

ただし、栄養群は他の2群と比較してBMIが悪化した事からも、口腔機能の維持、改善を目的としたプログラムを行う事が体重の維持には必要であることが示唆された、とはこの論文からは言えるかもしれませんね。
また、介入全群で介護保険の認定状況が改善したことから、どの方法でも介入自体の有効性はあると考えられます。

オーラルディアドコキネシスのパが有意に改善した複合群が舌苔の付着量が有意に減って、カが有意に改善した口腔群の舌苔の付着量が有意に改善していない、という結果から、舌機能の向上が舌苔の付着量に関与していないということになってしまいます。舌苔は口蓋に舌がしっかり接触することで付着しにくくなると考えられる事から舌後方部の巧緻性を判定するカが改善すれば舌苔は少なくなると想定されますが、今回はそういった結果にならず、口唇機能を推定するパが改善した複合群の舌苔が有意に減少する結果になっています。

余談ですが、オーラルディアドコキネシスの口腔機能低下症の基準値は6回/秒なんですが、今回のデータをみると訓練前は勿論訓練後でも要介護の高齢者で6回超えてる人はあまりいないでしょう。私はリハ病院で脳卒中後の人を計測していますが大体3~4回で6回を超える人は殆どいません(失語や重度構音障害の人は除く)。そういった意味で後期高齢者や脳卒中後の人でオーラルディアドコキネシスの基準値を単純に6と捉えるのは無理があると思っています。

Vaitality Index


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