普通の歯科医師なのか違うのか

食支援の旅に出ます

 
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5代目歯科医師(高知市開業)
東京医科歯科大学卒業(47期)
同大学院修了
【非常勤講師】
徳島大学
岩手医科大学

1月の講演に向けて

老年歯科医学会も昨日やっと終わりました。広報委員としてSNSでの発言をメインに担当しておりました。2日間家のPCに張り付いて延々とtweetし続けるのもなかなか疲れるものだという事がよく分かりました。

さて、1月に高知県歯科衛生士会にて食支援について話す事になっています。最初は丁重にお断りしたのですが、どうしても、と押し切られましてやることになりました。

しかし、大きな問題がありまして自分は今現在たいして訪問にもいってませんし、病棟回診もプライバシー保護が厳しくて写真や動画を撮影することは極めて難しい状況です。なので写真や動画が全くないのです。

自分は講演では写真と動画で押すタイプで、写真や動画がないと一気に説得力に欠けるプレゼンになる可能性が高いです。だから最初断ったのですが・・・・義歯も絡めてお話しを・・・ということで引き受けざるを得なくなりました。2時間なので、結構話を盛る必要があります。

まずどういうことを話すかを考えるためにしっかり知識を整理する必要がありそうです。なのでこれからはずっと栄養系やリハ系の論文を延々と読んでログとしてここに残しますので宜しくお願いします。

1発目

医中誌で「食支援」で検索しても殆どは学会発表の会議録ばかりで簡単に入手できるしっかりした査読や総説は殆どありませんでした。お、と思って引っ張ってきた今回の論文、読んでみたら実は2005年とかなり古いものでした。

口腔機能訓練と食支援が高齢者の栄養改善に与える効果
菊谷 武, 米山 武義, 手嶋 登志子, 堀内 ふき, 宮武 光吉, 足立 三枝子, 石田 光広, 西脇 恵子, 田中 甲子
老年歯学 2005 年 20 巻 3 号 p. 208-213

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsg1987/20/3/20_208/_article/-char/ja/

ダウンロードフリーです。

Abstract

本研究では口腔機能訓練と食支援が高齢者の栄養改善に与える効果について検討した。対象は某介護老人保健施設に入居する血清アルブミン (alb) が40mg/dl以下の者51名とした。作成したメニューに従い, I群 (27名: 平均年齢82.7±6.7歳) には食支援の介入のみを行い, II群 (24名: 平均年齢82.4±7.6歳) にはこれに加えて口腔機能訓練の介入を行った。2ヵ月後において, 口腔機能および栄養学的評価を行った。
得られた結果を以下に示す。
1. I群はalbが平均3.7±0.2g/dlから3.9±0.3g/dlへ, プレアルブミン (preALB) が, 18.2±4.7mg/dlから20.5±5.5mg/dlに, II群はALBが3.7±0.3g/dlから4.1±0.3g/dlに, preALBが, 19.3±4.3mg/dlから23.0±5.8mg/dlへ共に有意に上昇した (I群: p<0: 01, II群: p<0.001) 。
2. I群において介入によりalbが0.1±0-2g/dl上昇したのに対し, II群においては0.3±0.3g/dlの上昇であり, 2群問に有意差が認められた (p<0.05) 。
3. 舌圧測定による口腔機能について明らかな変化は認められなかった。
以上より, 食支援および口腔機能訓練はともに栄養改善に有効であることが示され, これらのかかわりが介護の重症化を予防する可能性が示唆された。

研究の詳細

実験方法

被験者:アルブミンが4.0mg/dl以下の介護老人施設入居者51名
方法:食支援介入のみ行う群(I群)と食支援+口腔機能訓練を行う群(II群)の2群にわけて2か月介入

食支援に関しては以下の項目についてアセスメントを行い、それを元に週2回歯科衛生士が昼食時に指導を行っています。このアセスメントに関しては今も昔も変わらないと思います。

口腔機能訓練に関しては、摂食嚥下機能をアセスメント+食事時のモニタリングによるこぼしやムセなどの観察により各自メニューが決定されているようです。基本的には間接訓練で1週間に2回20分歯科衛生士が介入、その他は施設スタッフによる施行のようですが、あまり詳しく記載がありませんでした。

栄養評価:全て血液生化学的検査であり、アルブミンやプレアルブミン、総蛋白、総コレステロール、HDLコレステロールなどを計測して比較しています。

口腔機能評価:JMS舌圧測定器が出る前の試作機をつかって舌圧を測定してます。

結果

介入前の両群間の差がない、均質であることをまず報告しています。食支援アセスメント、口腔機能に関してI群とII群で有意差を認めませんでした。しかし、これらはあくまで定性的な評価ですし、n数自体が少ないのでどこまで均質といえるかどうかはなかなかわかりません。常食ではない場合の嚥下調整食のグレードはかなり幅広いわけですし、意欲の低下で3割しか食べないが、サプリメントを服用している場合だってあるでしょう。本当の意味で均質であるとはこの結果からはなんともいえません。

血液生化学指標

血液生化学指標の結果、全ての指標においてI群、II群とも介入開始前よりも介入終了時の方が有意に上昇しています。

アルブミンに関してI群とII群で比較していますが、II群の方が有意に上昇したと報告されています。しかし、この図、ベースが3.0なので意図を感じます。

なお、現在ではアルブミンなどの生化学的指標は炎症などの存在により簡単に変化するため低栄養かどうかの診断に必須ではないというのがグローバルコンセンサスです。

つまり、今この実験をするならおそらく別指標になるのではないかと思います。例えばBMIや筋肉量、皮下脂肪厚などでしょうか。

舌圧

舌圧に関しては
I群は介入前19.5±7.3kPa→介入終了時17.2±8.5kPa
Ⅱ群は介入前25.8±10.0kPa→介入終了時25.4±10.3kPa
両群とも介入による舌圧の変化には有意差はありませんでした。

しかし、I群とII群間での元々の舌圧は有意差があったのではないでしょうか?これではI群とII群が均質であったといえるかどうかはわからないと思いますが、あくまで試作機をつかった測定なので舌圧は今回おまけだったかもしれません。

まとめ

今になってみてみると微妙な論文かも?という気がします。しかし、やれRCTだケースコントロールだ、多変量解析だ、交絡だ、と厳しく言われるようになったのってここ10年程度なのではないでしょうか。だから2005年当時では普通の論文だったと思います。

この結果から、単純に栄養状態が改善した!とは今の時代は言いづらい所がありますが、確かに血液生化学的指標は上昇しています。

そして口腔機能に関しては舌圧自体には有意差を認めなかったものの、口腔機能訓練をした群の方が有意に上昇していますので、食事指導に口腔機能訓練を追加すると付加的な要素がある、ということになりそうです。ただしその付加的な要素が何か、まではこの研究からはわからないです。舌圧に有意差がありませんでしたので、・・・舌圧以外の何か、ということになるのでしょう。

追加検索

なかなか論文が見つからないので、Feeding assistance care、 食事指導などというキーワードで再度検索していきたいと思います。

この論文は読んでおきなさい、というお勧めがあれば是非コメント欄にお願いいたします。

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