普通の歯科医師なのか違うのか

カンジダによっても舌乳頭は萎縮する

 
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5代目歯科医師(高知市開業)
東京医科歯科大学卒業(47期)
同大学院修了
【非常勤講師】
徳島大学
岩手医科大学

前々回のブログで、口腔乾燥は舌乳頭萎縮は関連するかどうか、という論文を読みました。関連性はあったのですが、他にも原因が考えられるため、口腔乾燥が舌乳頭萎縮の主な原因かはわからない、という結論でした。

この論文で舌乳頭萎縮の原因の1つに上げられていたのがカンジダです。興味が出てきたので、引用文献を読んでみることにしました。

Atrophic tongue associated with Candida
Haruhiko Terai , Masashi Shimahara
J Oral Pathol Med. 2005 Aug;34(7):397-400. 
PMID: 16011607

2005年の論文で、現在の大阪医科薬科大学歯科口腔外科の先生が著者です。

Abstract

Background: Traditionally, total atrophic tongue has been due to nutritional deficiencies, such as vitamin B12, folic acid, or iron deficiencies, and partial atrophic tongue has been well known as median rhomboid glossitis or geographic tongue. The other cause of atrophic tongue is oral candidiasis.

Methods: Forty patients with atrophic change of the tongue were examined on a relation to candidiasis. All of them complained of tongue pain on spicy or hot diet. Laboratory examinations included blood examination for diabetes and anemia, culture test and direct cytologic examination. The intensity of tongue pain was evaluated pre- and post-treatment using visual analogue scale (VAS).

Results: Twenty-four of 40 (60%) had pre-disposing factors of candidiasis including diabetes mellitus, malignancy, systemic steroid therapy, long-term antibiotic therapy and others in their medical history. Blood examinations revealed mild anemia and/or Fe deficiency in 5 (12.5%), mild diabetes in 4 (10.0%), both in two, while residual 29 patients (72.5%) were within reference levels. In the culture examination, candidal species were isolated in 72.5%, and almost all of them were candida albicans. The direct cytologic examination performed in 17 of 40 patients, witch revealed pseudohyphae of fungi in 14 patients (82.4%). After the antifungal treatment, the tongue pain disappeared or improved markedly in 80%. Simultaneously, the regenerative tendency of filifolm papilla of the tongue dorsum was observed in these patients.

Conclusion: Atrophic tongue associated with pain at eating, even though it is mild atrophic change, has a high probability of being a candida-induced lesion. Long disease duration and no benefit by topical steroids are suggestive and diagnostic factors of this disease.

背景:伝統的に、全体的な舌の萎縮はビタミンB12、葉酸、鉄などの欠乏によるものとされ、部分的な舌の萎縮は正中菱形舌炎または地図状舌がよく知られています。他の原因としてカンジダがあります。

方法:舌の萎縮性変化を有する40名の患者についてカンジダとの関連を調査しました。患者全員が辛味のある食事や熱い食事で舌の痛みを訴えていました。DM、貧血に関する血液検査と、培養検査、直接細胞診も行いました。治療前後の舌の痛みをVASにて計測しました。

結果:全患者の60%である24名の病歴にDM、悪性腫瘍、全身的なステロイド療法、長期の抗菌薬投与などのカンジダ症の危険因子を認めました。血液検査では、軽度の貧血または鉄欠乏症、または貧血と鉄欠乏症両方、を有するものが5名、軽度のDMが4名に認められました。また、これらが重複するものが2名いました。一方で29名は正常範囲でした。培養検査ではカンジダ属が72.5%から分離され、その殆どはCandida albicansでした。直接細胞診は40名中17名に行われ、14名から真菌の仮性菌糸が同定されました。抗真菌治療を行うと、80%の患者において舌の痛みは顕著に改善しました。同時に糸状乳頭の再生傾向が認められました。

結論:食事の痛みに関連する舌萎縮は、たとえ軽度の萎縮変化だとしても、カンジダが原因で引き起こされた可能性が高いです。長い病歴とステロイド外用剤で効果がないことが本疾患の示唆・診断因子となります。

ここからはいつもの通り本文を適当に抽出して要約します。誤訳もあり得ますので、気になったら実際の本文をご確認ください。

緒言

舌の萎縮または糸状乳頭萎縮による平滑舌は、ビタミンB12、葉酸、鉄欠乏症などの栄養不足によることがよく知られています。その他には、DM、口腔乾燥、カンジダも原因として含まれます(文献1)。従来、口腔カンジダ症は、急性偽膜性(鵞口瘡)、急性萎縮性、慢性萎縮性、慢性過形成に分類されています。萎縮性舌炎は、急性萎縮性カンジダ症またはカンジダ舌炎としてよく知られており、一般的に広域スペクトラムの抗菌薬、ステロイドの使用と関連します。また、HIV感染者において最も多く認められる口腔内症状の1つでもあります。しかし、萎縮性カンジダ症は、いつも急性とは限らず、何か月も続く事もあります。また、カンジダ感染の明確な危険因子を持たない人でも発症することがあります。

本研究の目的は、舌萎縮のカンジダの役割を調べることです。

実験方法

被験者

舌萎縮を認め、食事時に痛みがある40名

方法

年齢、性別、舌の痛みがある期間、他の徴候、既往歴、治療歴

血液検査:血糖値、Hb、ビタミンB12、葉酸、鉄

培養検査:痛みのある舌表面からサンプルを採取、培養

治療:1日4回25mgのミコナゾールゲル使用。患者に使用法を指導。最低2週間継続。治療前後の痛みの程度をVASで評価

結果

被験者の状況

男性6名、女性34名(中央値70歳、平均値67.4±12.6歳、27~83歳。)。舌背の萎縮変化は、少し赤いぐらいから平滑舌、赤またはマゼンタ色などと多岐にわたっていました。主訴の継続期間は6.43±5.18か月(中央値3か月、0.75~36か月)でした(表1)。

疼痛以外の徴候を訴えたのは15名で口腔乾燥が5名、口角炎が6名、口角炎と口腔乾燥両方が2名、頬粘膜の口内炎が2名でした。18名が可撤性義歯を使用していました。21名が他院で主訴に対する治療歴があり、ステロイドが9名、ポビドンヨードの含嗽が6名、ステロイドとビタミンB12の併用が4名、ステロイドとポビドンヨードの併用が2名でしたが、改善しませんでした(表2)。

24名がカンジダ症の危険因子を有しており、DMが5名、悪性腫瘍が5名、全身的なステロイド治療が4名、長期間の抗菌薬投与が2名、その他が8名でした。16名はこのような危険因子を有していませんでした(表3)。

血液検査、培養検査、細胞診

血液検査では、、軽度の貧血または鉄欠乏症、または貧血と鉄欠乏症両方、を有するものが5名、軽度のDMが4名に認められました。また、これらが重複するものが2名いました。残り29名は正常範囲でした。

培養検査では、カンジダ属が29名から分離され、殆どはCandida albicansでした(表4)。

直接細胞診を行った17名中14名から真菌の仮性菌糸が同定されました(図1)。14名中4名は培養検査で陰性でした。

抗真菌薬での治療結果

2~4週間の抗真菌薬の投与により、32名に食事時の疼痛が消失または著明な改善を認めました。同時に疼痛以外の徴候も改善が認められました。舌背の糸状乳頭の再生傾向が認められました(図2,図3)。

32名中3名が治療後6~12か月で疼痛を伴う舌萎縮の再発を訴えましたが、再度の抗真菌薬による治療で効果が認められました。4名の患者は治療後2週間たっても疼痛の改善を認めませんでした(表5)。

考察の一部

本研究の患者は舌萎縮だけではなく、辛い食事、熱い食事時の疼痛を認めます。機能障害または機能時の疼痛は炎症または感染の重要な徴候であると考えられます。実際、カンジダ培養試験で72.5%、直接細胞診で82.4%の患者が陽性でした。

今回の抗真菌薬投与の結果から、食事時の疼痛を伴う舌萎縮は、例え萎縮変化がわずかであっても、カンジダによって引き起こされた可能性が高い事が示唆されました。通常、舌が正常なのか、違うのか判別するのは困難です。臨床的に、医師の主観以外で正常な舌の診断基準は存在しません。今回の研究では、ほとんど正常に見えるようなわずかな萎縮変化の奨励も含まれています。私達は、そのようなケースでは治療前後の写真を比較することでしか舌萎縮を認識できませんでした。そのため、機能時の疼痛はカンジダ誘因性の舌萎縮の診断に有用かもしれません。長い病歴とステロイド外用剤で効果がないことが本疾患の示唆・診断因子となります。

終わりに

舌の痛みは口腔乾燥でも起こり得るでしょうから、口腔乾燥度も評価してほしかったと思いましたが、今回はカンジダに絞った研究ということで、そこまでは行わなかったようです。

萎縮があまりなくても機能時の舌の痛みがあればカンジダが原因の事もありえる、という事は理解しました。これからは頭の隅にインプットしておきましょう。

舌乳頭の萎縮、舌の平滑化に影響する因子はかなり多いため、前回の論文の一文が最も適切なのかもしれません。

しかし、著明な唾液量減少が認められない口腔乾燥症の患者や、健康群でカンジダ症や低栄養の徴候がない人にも中程度の舌乳頭の萎縮が認められました。そのため、口腔粘膜の乾燥が舌乳頭の萎縮を起こすかどうかはいまだ明確ではありません。

舌乳頭の萎縮があるひとに口腔乾燥が認められる事が多いのは確かですが、乾燥が舌乳頭の萎縮を起こすかはわからない、というのが現状のようです。勿論、カンジダや低栄養がなくても乳頭萎縮は起こり得ますので、色々な可能性を検討する事が大事かなと思いました。

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