普通の歯科医師なのか違うのか

OF-5を用いた場合のオーラルフレイルは高齢者の40%程度である

 
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5代目歯科医師(高知市開業)
東京医科歯科大学卒業(47期)
同大学院修了
【非常勤講師】
徳島大学
岩手医科大学

前回、オーラルフレイルの定義とアセスメントツールがやっと固まったという話をしました。オーラルフレイルに関する3学会合同ステートメントに記載されている引用文献を少し読んでいきます。今回はOF-5というアセスメントツールがどういう感じなのか、またオーラルフレイルが身体的フレイルとどのような関連をしているかを検討しています。2024年4月にパブリッシュされたばかりの論文です。

Prevalence of oral frailty and its association with dietary variety, social engagement, and physical frailty: Results from the Oral Frailty 5-Item Checklist
Masanori Iwasaki , Maki Shirobe , Keiko Motokawa , Tomoki Tanaka , Kazunori Ikebe , Takayuki Ueda , Shunsuke Minakuchi , Masahiro Akishita , Hidenori Arai , Katsuya Iijima , Hiroyuki Sasai , Shuichi Obuchi , Hirohiko Hirano 
Geriatr Gerontol Int. 2024 Apr;24(4):371-377. doi: 10.1111/ggi.14846. Epub 2024 Feb 23.

PMID: 38390632
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38390632/

Abstract

Aim: This cross-sectional study had two aims: to assess the prevalence of oral frailty (OF), according to the Oral Frailty 5-Item Checklist (OF-5), among community-dwelling older adults; and to examine the associations among oral frailty, dietary variety, social engagement, and physical frailty.

Methods: We pooled data from two population-based studies (the Otassha Study and the Itabashi Longitudinal Study on Aging). With the OF-5, OF is characterized by the presence of two or more of the following: (i) fewer teeth, (ii) difficulty in chewing, (iii) difficulty in swallowing, (iv) dry mouth, and (v) low articulatory oral motor skills. We calculated the OF prevalence for each sex. We assessed dietary variety, social engagement, and physical frailty. Generalized structural equation modeling was employed to investigate the associations among oral frailty, low dietary variety (dietary variety score ≤3), social isolation (Lubben Social Network Scale score <12), and physical frailty (Japanese version of the Cardiovascular Health Study score ≥3).

Results: A total of 1206 individuals (626 women and 580 men) with a mean age of 74.7 years were included. The prevalence of OF was 36.7%, and it increased with age; however, there was no significant sex difference. OF was significantly indirectly associated with physical frailty via low dietary variety (odds ratio, 1.43; 95% confidence interval, 1.04-1.97) and social isolation (odds ratio, 1.42; 95% confidence interval, 1.04-1.94).

Conclusions: Two of five community-dwelling older adults exhibited OF. Low dietary variety and social isolation are potential underlying mechanisms through which OF is indirectly associated with physical frailty.

目的:今回の横断研究には2つの目的があります。地域在住高齢者において、OF-5を用いてオーラルフレイルの有病者率を調査すること、もう1つはオーラルフレイル、食生活、社会参画、身体的フレイルとの関連性を検討する事です。

方法:2つの個体群研究(お達者研究と板橋健康長寿縦断研究)からデータをプールしました。OF-5を用いて(1)残存歯数が少ない、(2)噛みづらい、(3)飲み込みづらい、(4)口が渇く、(5)滑舌低下の中から2つ以上該当したものをオーラルフレイルと判断しました。オーラルフレイルの有病率を性別毎に計算しました。食生活、社会参画、身体的フレイルについても調査しました。構造方程式モデリングを用いて、オーラルフレイル、食生活(食品摂取の多様性スコア3以下)、社会参画(Lubben Social Network Scaleスコア12以下)、身体的フレイル(J-CHS3以上)との関連性を検討しました。

結果:トータルで1206名(女性626名、男性580名、平均年齢74.7歳)が被験者として含まれました。オーラルフレイルの有病率は36.7%で、加齢により増加しました。しかし、性差は認められませんでした。オーラルフレイルは、食品摂取の多様性が低い(オッズ比1.43、95%信頼区間1.04-1.97)および社会的孤立(オッズ比1.42、95%信頼区間1.04-1.94)を介して、身体的フレイルと有意に間接的に関連していました。

結論:地域在住高齢者において5人に2人がオーラルフレイルでした。食生活、社会的参画は、オーラルフレイルが身体的フレイルと間接的に関連する潜在的な基礎メカニズムです。

ここからはいつもの通り本文を訳します。誤訳もあり得ますので、気になったら実際の本文をご確認ください

緒言

人生の後半において、口の中の健康を維持することは、全身的な健康や社会福祉にとって重要です。口腔の健康とは、現在歯数と衛生状態だけでなく、咀嚼、嚥下、唾液分泌、舌口唇運動機能なども指します。口腔の複数の健康側面や機能において蓄積された障害は、オーラルフレイルと呼ばれています。この根尖プトを定義した目的の1つは、口腔の状態に注意を払う高齢者数が増加したことです。オーラルフレイルに対する社会的認知の促進や、この研究分野における多職種連携が鍵となる一方で、口腔機能の簡易的なアセスメントツールはありません。簡易的なアセスメントツールは、広範囲なアセスメントとオーラルフレイルへの介入には不可欠です。

2023年にOF-5を簡易的なツールとして開発しました。OF-5は(1)残存歯数が少ない、(2)噛みづらい、(3)飲み込みづらい、(4)口が渇く、(5)滑舌低下の5項目の基準で構成されています。OF-5が初めて定義された柏スタディでは、滑舌低下(OF-5の構成要素)が、反復発音速度またはオーラルディアドコキネシスを計測するという、客観的な指標に基づいて決定されました。オーラルディアドコキネシスは舌運動機能の信頼できる測定方法ですが、装置が必要です。そのため、限られた場所やシチュエーションのみで行う事ができます。舌口唇機能を自己評価できる計測方法の開発が必要です。自己評価計測の主な利点は、時間と費用対効果の高い方法で口腔機能を評価する比較的簡単な方法であることです。そのような要求への対応として、我々は最近単一自己評価の計測方法を開発し、その妥当性を検証しました。これらのアプローチで、OF-5の全ての構成要素が自己評価できるようになりました。そのため、OF-5は歯科医療の場以外での地域活動や高齢者による自己評価において、オーラルフレイルの評価が可能となります。

最近の研究では、(OF-5で評価された)オーラルフレイルは、日本人高齢者の身体フレイルリスクの上昇と関連していました。この関連の根底にあるメカニズムは、口腔の衛生と機能不良による不健康な食事(種類が少ない)と社会的孤独かもしれません。しかし、(OF-5で評価された)オーラルフレイルと食生活、社会参画、身体的フレイルとの関連性はいまだ完全に検討されていません。

本横断研究の目的は、(1)日本での地域在住高齢者において(OF-5で評価した)オーラルフレイルの有病者率、(2)オーラルフレイル、食生活、社会参画、身体的フレイルの関連の検討の2つです。オーラルフレイルは身体的フレイルと、食事の種類が少ない、社会的孤独を介して間接的に関連しているのが我々の仮説です。

方法

デザイン、設定、被験者

2つのコホート研究、お達者研究と板橋健康長寿縦断研究で得たデータを解析しました。両研究とも東京都長寿医療センターの周囲エリアの住民基本台帳に登録されていた65歳の地域在住高齢者を対象としています。研究デザインとプロトコルは他の論文に記載されています。両研究ともに、参加者に調査票を郵送し、現場で包括的な評価を行いました。OF-5に含まれる変数は2022年に評価されました。そのため、本解析では2022年に収集したデータを抽出し解析しました。

欠損データがない参加者は本研究に採用可能としました。倫理委員会の承認を得ており、全ての被験者は参加前にインフォームドコンセントを受けています。

OF-5を使用したオーラルフレイルの評価

OF-5は以下の5つで構成されています(表S1、S2)。

1 歯数減少は、自身の歯は何本残っていますか?という問いに対して0~19本と回答した場合です。
2 咀嚼困難は、半年前と比較して硬い物が食べづらくなりましたか?という問いに対してはいと回答した場合です。
3 嚥下困難は、お茶や汁物等でむせることがありますか?という問いに対してはいと回答した場合です。
4 口腔乾燥は、口の渇きがしばしば気になりますか?という問いに対してはいと回答した場合です。
5 滑舌低下は、最近言葉をはっきりと発音できなくなりましたか?という問いに対してはいと回答した場合です。

1つの項目が該当した場合1ポイントになります。OF-5のポイント範囲は0~5であり、2以上の場合オーラルフレイルあり、1ポイント以下の場合オーラルフレイルなしとしました。

食生活、社会参画、身体的フレイルの評価

食事の多様性は、食品摂取多様性スコアを用いて調査しました。食品摂取多様性スコアが3以下の場合、食事の多様性に乏しいと定義しました。

社会参画は、Lubben Social Network Scaleの日本語版を用いて調査しました。Lubben Social Network Scaleが12未満の場合、社会的孤立と定義しました。

身体的フレイルはJ-CHSを用いて調査しました。J-CHSスコアが3以上の場合、身体的フレイルと定義しました。

データの収集

年齢、性別、教育歴、喫煙歴(喫煙歴なし、過去喫煙、現在喫煙)、飲酒歴(飲酒なし、過去飲酒、現在飲酒)、同居人(独居、同居)などを質問表で収集しました。

認知機能はMMSE-Jを用いて評価しました。MMSE-Jが23以下の場合、認知機能低下と定義しました。

訓練された看護師の問診により、合併症データ(高血圧、心疾患、脳卒中、糖尿病、高脂血症、骨粗鬆症、慢性閉塞性肺疾患、がん)が収集されました。過去の研究から、合併症の数を解析に加えました。

統計解析

まず被験者特性の記述統計を計算しました。オーラルフレイル群、非オーラルフレイル群での比較はt検定、Mann-Whitney U検定、χ2検定を適宜用いました。次に、各性別で5歳毎(65-69、70-74、75-79、80歳以上)のオーラルフレイルの有病者率を表にしました。85歳以上の被験者が49名しかいなかったので、80歳以上の群に統合しました。コクラン・アーミテージ傾向検定を用いて、各性別における年齢階層間のオーラルフレイルの有病者率の傾向推定を行いました。また、各年齢階層における性差についてχ2検定を用い検討しました。

最後に、オーラルフレイル、食事の多様性の乏しさ、社会的孤独、身体的フレイルの関連について検討しました。われわれは、図1に示すような仮説モデルを考えました。この媒介モデルは4つの変数で構成されます。オーラルフレイルは独立変数、食生活の乏しさ、社会的孤立は媒介変数、身体的フレイルはアウトカムです。

媒介分析の前に、暴露、媒介、アウトカム間の個々の関連を多重ロジスティック回帰分析で検討しました。多変量モデルは以下の変数で調整しました。オーラルフレイル、食生活の乏しさ、社会的孤立、および身体的フレイルの間の関連についての予備知識に基づいて決定した年齢、性別、教育歴、喫煙歴、飲酒歴、同居人の有無、認知機能、合併症の数です。この研究は2つのコホート研究からのデータを解析しているので、コホートのランダム効果をマルチレベルモデルにより検証しました。さらに、回帰モデルに交互作用項を追加することで、性別による効果の修飾を評価しました。

身体的フレイルに対する、オーラルフレイルの直接的(図1のA)、間接的(図1のBC、DE)効果を検討するために、一般化構造方程式モデリングにより媒介分析を行いました。推定効果の方向性と強さを表現するためにオッズ比を算出しました。効果のバイアス補正標準誤差は、1000個の再標本によるブートストラップ法を用いて計算しました。観察された外生変数が条件付きであったため、モデル適合統計量は計算しませんでした。感度分析として、重度認知障害のない人の身体的フレイルに対するオーラルフレイルの直接効果および間接効果を推定しました。

有意水準は5%としました。多重比較(5歳年齢群によるオーラルフレイル有病率の性差の検定)を考慮し、I型エラーを防ぐために有意水準をボンフェローニ法で調整しました。

結果

被験者

トータルで1277名(お達者研究623名、板橋健康長寿縦断研究654名)を対象者としました。このうち71名(お達者研究43名、板橋健康長寿縦断研究28名)をデータの欠損で除外しました。残った1206名(女性626名、男性580名、平均年齢74.7±5.5歳)を本研究の解析対象としました。

表1に被験者の特性を示します。全体として、オーラルフレイル、食事の多様性が乏しい、孤独、身体的フレイルの有病率はそれぞれ36.7%、46.4%、34.6%、6.4%でした。オーラルフレイルは食事の多様性の乏しさ、孤独、身体的フレイル、高齢、教育歴が短い、飲酒習慣あり、認知機能低下、合併症多数、と相関しました。

年齢、性別によるオーラルフレイルの有病率

表2に年齢と性別によるオーラルフレイルの有病率を示します。65-69、70-74、75-79、80歳以上のオーラルフレイルの有病率はそれぞれ33.2%、31.9%、40.0%、44.3%でした。男性では28.4%、30.0%、42.7%、43.8%、女性では35.9%、33.9%、36.8%、44.7%でした。全体と男性において加齢が進むについて有病率が有意に増加しました。女性では、加齢におけるオーラルフレイルの有病率の増加は、有意水準に到達していました(p=0.09)。全ての年齢階層において、性差は認められませんでした。

オーラルフレイル、食事の多様性、社会参画、身体的フレイルの関連

表3に多変量ロジスティック回帰分析の結果を示します。ランダム効果は認められなかったため、単一レベルのモデルを使用しました。さらに、性別に伴うオーラルフレイル、食事の多様性の乏しさ、社会的孤独の交互作用も認めなかったため、性別で分けることはしませんでした。年齢、性別、教育歴、喫煙歴、飲酒習慣、同居人の有無、認知機能、合併症の数で調整後には、オーラルフレイルは食事の多様性の乏しさ(オッズ比1.61、95%信頼区間1.25-2.07)、社会的孤独(オッズ比1.55、95%信頼区間1.20-2.01)と有意に相関しました。食事の多様性の乏しさ(オッズ比2.26、95%信頼区間1.34-3.81)と社会的孤独(オッズ比2.35、95%信頼区間1.44-3.86)は有意に身体的フレイルのオッズを上昇させました。

オーラルフレイルが全身的フレイルに与える間接的、直接的、総合的な影響を表4に示します。オーラルフレイルによる間接的な効果(BCルート)は、食事の多様性の乏しさで媒介され、有意に身体的フレイルに影響を与えました(オッズ比1.43、95%信頼区間1.04-1.97)。社会的孤独で媒介される間接的な効果のDEルートについても有意な結果となりました(オッズ比1.42、95%信頼区間1.04-1.94)。これらの関連は、年齢、性別、その他の共変量とは独立していました。オーラルフレイルが身体的フレイルに与える直接的な影響は有意差を認めませんでした。

追加表3に示すとおり、MMSE-Jが18点未満の被験者を除外しても、オーラルフレイル、食事の多様性、社会参画、身体的フレイルの関連は有意に減弱しませんでした。

考察

本研究では、大規模な地域在住日本人高齢者サンプルでOF-5を使用したオーラルフレイルの有病率をまず調査しました。トータルでのオーラルフレイルの有病率は36.7%で、加齢により増加しました。性差は認めませんでした(男性36.0%、女性37.4%)。次に、オーラルフレイル、食事の多様性、社会参画、身体的フレイルの関連性を検討しました。一般化構造方程式モデリングの結果、オーラルフレイルは間接的に身体的フレイルに関連しており、食事の多様性の乏しさ、社会的孤独がこの関連を媒介していることが示唆されました。

オーラルフレイルのアセスメントツールとして他にもOFI-8があります。OFI-8は口腔保健に関連する行動とフレイル概念を評価する8個の質問で構成されています。去年より外出頻度が減っていますか?などの直接に口腔と関係ない質問も含まれています。加えて、8つの質問が同じウェートではなく、スコアをつける際には注意が必要です。OFI-8と比べると、OF-5はシンプル(5つの質問が同じウェートなど)で導入も容易です。さらにOF-5は口腔の社会的機能(滑舌低下はコミュニケーションに重要)を含んだ口腔機能の幅広い範囲をカバーしています。オーラルフレイル予防のための将来的な多職種連携で使用されるのはOF-5が推奨されます。OF-5により、高齢者は自分の口腔機能のささいな低下を認識し、専門職への積極的な相談に至るかもしれません。さらに、OF-5により、専門職が口腔機能低下の重大なリスクに直面している人達と早期に接触し、健康診断を進めたり、通いの場のような地域の集いの場に紹介したりすることが可能になります。

過去の研究では、口腔の健康状態が悪い高齢者は、野菜、フルーツ、肉など豊富な栄養素を含む噛みづらい食品を避ける傾向にあることが報告されています。これらの食品を避ける事により、食事の多様性が乏しくなります。さらに、口は会話や感情の発現など社会的なコミュニケーションにも使用されます。構音運動機能の低下によるコミュニケーションが困難になった高齢者は、社会参画が困難になると想定します。さらに、歯の喪失は社会交流スキルや顎顔面の見た目にマイナスの影響があるでしょう。多数歯を欠損した高齢者は、恥ずかしさを感じ、談笑や食事などの対面での社会交流を避ける傾向にあると研究で実証されています。 過去の研究では、口腔健康状態の悪さと問題は社会参画の低さと関連しました。結局、複数の口腔健康と機能の累積低下であるオーラルフレイルは、(食品多様性を含む)健康的な食事と社会参画への障壁となるのかもしれません。

多様性のある食事は、身体的フレイルの予防や管理に重要な役割を果たす適切でバランスのよい栄養素の供給を保証します。さらに、社会的に孤独な高齢者は、身体活動量が減り、座っている時間が増えがちです。そのような不活動により身体的フレイルリスクが上昇します。実際、食事の多様性の乏しさと社会的孤独の両者が身体的フレイルと関連すると実証されています。オーラルフレイル、食事の多様性、社会参画、身体的フレイルの関連についての上記エビデンスを考慮すると、我々の媒介分析が、高齢者におけるオーラルフレイルが間接的に身体的フレイルと関連する潜在的な基礎メカニズムとして、低食事の多様性と社会的孤立を示したことは妥当です。

本家級ではいくつかのlimitationがあります。まず、仮説の因果経路は一般化構造方程式モデリングで確認されましたが、本研究デザインは横断であり、関連性の時間性を評価することはできませんでした。縦断データの収集が次のステップで重要です。第2に、影響を与える他の可能性のある交絡、例えば収入、を定義しませんでした。

本研究は、日本のある特定エリアに住み、自発的に参加した被験者から収集したデータを解析しました。オーラルフレイル、社会的孤立、身体的フレイルの有病率は、過去の研究と同等でしたが、食事の多様性が乏しい率は46.4%と他の研究の28.6%よりもかなり大きい結果でした。この乖離についての可能性のある説明としては、過去の研究は縦断デザインでベースラインでフレイルである被験者を除外しています。しかし、今回の知見がより広い母集団に適応できるかどうかを判定するには、さらなる研究が必要です。

結論として、日本人高齢者の5人に2人がOF-5によりオーラルフレイルと判定され、オーラルフレイルは食事の多様性の乏しさと社会的孤立を介して、間接的に身体的フレイルと関連していました。

まとめ

今回、OF-5によりオーラルフレイルと判定された人は約40%でした。やや古いデータですが、東京都健康長寿医療センター研究所のプレスリリースでは身体的なフレイルは8.7%、プレフレイルは40.8%でした。そのため、オーラルフレイルは身体的フレイルの概念からするとプレフレイルに近いイメージになると考えられます。概念図だと、それよりも重い口の機能低下が口腔機能低下症と考えられますが、口腔機能低下症の該当率はある歯科診療所におけるデータでは50%程度という報告があり、身体的なフレイルとプレフレイルとの関係性とはだいぶ異なります。
オーラルフレイルだが、口腔機能低下症ではない群、オーラルフレイルでもあり口腔機能低下症ではない群、オーラルフレイルではないが、口腔機能低下症である群が考えられますが、一番最後の群は少ないでしょう。問題なのは、オーラルフレイルだが口腔機能低下症ではない群です。今の所歯科医院でオーラルフレイルに対するアプローチがただ働きになってしまう可能性があります。

今回得られた知見で、オーラルフレイルが直接的に身体的フレイルと相関しているわけでなく、あくまでも間接的に相関している事が示唆されました。今回は食事のバラエティと社会的な孤独が媒介しているという関係性が示されましたが、あくまでこれは研究デザインとして設定されたものであり、他の要素がもっと媒介している可能性もあります。ここらへんはより研究が必要でしょう。今回の研究からバラエティ豊かな食事を摂る事と、社会的な繋がりを持つことがアプローチとして良さそうだというのがわかりました。そう考えると、だれもが思いつくことですが、高齢者達がおしゃべりをしながら食事会というのが、簡単で効果が高そうです。

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同大学院修了
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