普通の歯科医師なのか違うのか

口腔乾燥は舌表面に影響を及ぼすか?

 
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5代目歯科医師(高知市開業)
東京医科歯科大学卒業(47期)
同大学院修了
【非常勤講師】
徳島大学
岩手医科大学

口腔乾燥が進行している人の舌の表面性状ってツルツルが多いですよね

舌って普通は乳頭が表面にあってよく見るとでこぼこしているんですが、口腔乾燥が進んだ高齢者の舌はでこぼこがなくなって平滑になっている事が多く感じます。果たしてこれが口腔乾燥の影響なのか違うのかがどこまでわかっているか知りたくなりました。

検索した所、シェーグレン症候群の舌乳頭萎縮に関する論文を見つけました。

Atrophic change of tongue papilla in 44 patients with Sjögren syndrome
Kazuhiko Yamamoto 1, Miyako Kurihara, Yumiko Matsusue, Yuko Komatsu, Motokatsu Tsuyuki, Takashi Fujimoto, Shinobu Nakamura, Tadaaki Kirita
Oral Surg Oral Med Oral Pathol Oral Radiol Endod. 2009 Jun;107(6):801-5.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19464655/

Abstract

Objective: The purpose of this study was to investigate the atrophic change of tongue papilla in Sjögren syndrome (SjS) patients and the correlation with characteristic features of the disease.

Study design: Atrophic change of tongue papilla, investigated by a digital microscope, was classified from score 0 (normal) to score 6 (severe) and compared among 44 SjS patients, 20 xerostomia patients, and 20 healthy subjects. In SjS patients, correlation of the atrophic score of tongue papilla with characteristic changes in sialometry, sialography, lip biopsy, and serologic tests was also investigated.

Results: The atrophic score of tongue papilla was significantly higher in SjS patients and correlated with the decrease of salivary secretion, the stage on sialography, and the histologic grade of the minor salivary gland.

Conclusion: Atrophic change of tongue papilla is significant in SjS patients and is correlated with the characteristic features of the disease.

目的:本研究の目的はシェーグレン症候群患者の舌乳頭の萎縮性変化と本疾患の特徴との関連を調べることです。

研究方法:被験者は44名のシェーグレン症候群患者、20名の口腔乾燥症患者、20名の健康な被験者の3群です。舌乳頭の萎縮に関して、デジタル顕微鏡で調査を行い、スコア0(正常)からスコア6(深刻)まで6段階に分類しました。また、シェーグレン症候群の患者において、舌乳頭の萎縮と唾液検査、唾液腺造影検査、口唇の生検、血液検査との関連性を検討しました。

結果:シェーグレン症候群の患者群で舌乳頭萎縮は有意に高いスコアを示しました。唾液分泌量の減少、唾液腺造影検査のステージ、小唾液腺の組織学的なグレードが舌乳頭萎縮と相関しました。

結論:シェーグレン症候群の患者では舌乳頭の萎縮が著明であり、本疾患の特徴と相関が認められました。

ここからはいつもの通り本文を適当に抽出して要約します。誤訳もあり得ますので、気になったら実際の本文をご確認ください。

緒言

舌は特定の疾患や状態を診断するための重要なヒントを示す事がある器官の1つと認識されています。例えば、舌乳頭萎縮による平滑な舌は鉄やビタミンB12、葉酸などが欠乏したり、口腔カンジダ症や糖尿病の際に起こる事が知られています。舌乳頭の萎縮はシェーグレン症候群の患者にも認められます。唾液分泌の低下による口腔乾燥が原因の1つと考えられています。しかし、舌乳頭の萎縮変化はシェーグレン症候群のサインとして調べられてきませんでした。

最近、前田は、シェーグレン症候群と他の膠原病患者の舌糸状乳頭の皮膚鏡パターンを検討し、シェーグレン患者では舌乳頭の完全扁平化パターンが優勢であることを報告しました。

今回の研究では、シェーグレン症候群の患者の舌乳頭の萎縮をデジタル顕微鏡を使用して評価し、口腔乾燥症の患者と健常者との比較を行いました。加えて、シェーグレン症候群の患者において、舌乳頭の萎縮と唾液検査、唾液腺造影検査、口唇の生検、血液検査との関連性を検討しました。

実験方法

被験者

44名のシェーグレン症候群患者、20名の口腔乾燥症患者、20名の健常者。

口腔乾燥症の患者は、口腔乾燥を主訴として来院して、サクソンテストの結果にかかわらず検査者がなにかドライマウスの兆候を指摘した者。

健常者は特に全身疾患等を認めず、年齢階層を他の2群に近づけるように配慮しています。

方法

唾液検査:サクソンテスト(全ての被験者)

乳頭の萎縮:デジタル顕微鏡で写真を撮影して約300の乳頭を観察(全ての被験者)。糸状乳頭と茸状乳頭をそれぞれ評価し、0~3のスコアをつけ合計することで0~6の評価(表1)。4週間後に同じ評価を行い、もし評価に食い違いが出た場合、大きいスコアを採用。

シェーグレン症候群患者のみ

①耳下腺の唾液腺造影:RubinとHoltに基づきステージ0からⅣに分類
②下唇の小唾液腺の病理学的検査:GreenspanらのFocus scoreにより小唾液腺へのリンパ球浸潤を評価
③SS-A抗体、SS-B抗体の血液検査
今回はこれらの検査項目と舌乳頭萎縮との相関を調べています。

Mann-Whitney U検定とSpearmanの順位相関係数を使って統計処理がされています。

結果

3群での比較

母集団:3つの群で年齢や性別には有意差はありませんでした。どの群も殆ど女性となっています

サクソンテスト:口腔乾燥症群は健常群と比較すると有意に唾液量が少なく、シェーグレン群は他の2群と比較して有意に唾液量が少ない結果となっています。

舌乳頭萎縮:口腔乾燥症群は健常群と比較すると有意に舌乳頭の萎縮が認められました。シェーグレン群は他の2群と比較して有意に舌乳頭の萎縮が認められました。健常群では0~2の範囲に収束、口腔乾燥症群でも0~3の範囲に収束していたのに対して、シェーグレン群では0~6全てが観察されています。

シェーグレン症候群での舌乳頭萎縮との相関

舌乳頭の萎縮スコアが増加するとサクソンテストによる唾液量の平均値が減少する傾向を示しました。舌乳頭萎縮と唾液量の相関はSpearmanの順位相関係数で有意であり、相関係数は-0.6217となりました。

唾液腺造影と舌乳頭萎縮についても有意な相関が認められました(相関係数:0.5881)。

小唾液腺の病理学的検査と舌乳頭萎縮についても有意な相関が認められました(相関係数:0.5863)。

シェーグレン症候群患者の血液検査による結果では、SS-A、SS-B両方が陰性である患者が8名、SS-Aが陽性でSS-Bが陰性の患者が16名、両方陽性が20名でした。SS-Aが陰性でSS-Bが陽性の患者はいませんでした。抗体のパターンと舌乳頭萎縮には相関が認められませんでした。

考察の一部

糸状乳頭の初期の萎縮変化は角化の低下と乳頭の丸みを帯びた形状であると考えられます。今回の結果から、萎縮が進行するにつれて乳頭が角化を喪失し、フラットになり最終的に完全に減少すると推定されます。糸状乳頭の変化に平行して、茸状乳頭にも特徴的な変化が起こります。

今回の結果ではスコア4以上の乳頭萎縮はシェーグレン症候群の患者にしか認められませんでした。これらの患者の殆どはサクソンテストで1g未満であり、唾液腺機能が著明に低下していると考えられます。深刻な口腔粘膜の乾燥の結果として様々な合併症が起こるかもしれません。

また、舌乳頭の萎縮性変化の程度は、シェーグレン症候群患者における唾液腺造影のステージおよび小唾液腺の組織学的グレードとよく相関していました。これらの結果は、舌乳頭の萎縮性変化が唾液腺の実質的な損傷と並行して起こることを示しており、したがって病気の進行状況を観察するためのパラメータとなり得えます。一方、血清検査による抗SS-A抗体、抗SS-B抗体のパターンは、舌乳頭の萎縮の程度と相関がありませんでした。これは、これらの抗体が他の膠原病患者でも陽性であることが一因であると考えられます。

舌乳頭の萎縮を引き起こす要因としては、口腔カンジダ症がよく知られています(文献3)。シェーグレン症候群の患者さんでは、カンジダなどの微生物の保有数や保有頻度が高いことから、口腔内フローラが舌乳頭の萎縮に関与している可能性が報告されています(文献12)。口腔乾燥症患者では、唾液量とカンジダコロニーの形成は負の関係性が報告されています。今回の研究ではカンジダの分析はしていませんが、カンジダのような微生物が唾液量低下の結果、舌萎縮に関与しているかもしれません。

しかし、著明な唾液量減少が認められない口腔乾燥症の患者や、健康群でカンジダ症や低栄養の徴候がない人にも中程度の舌乳頭の萎縮が認められました。そのため、口腔粘膜の乾燥が舌乳頭の萎縮を起こすかどうかはいまだ明確ではありません。

前田はシェーグレン症候群患者の組織学的検査で、上皮下の小血管の周囲に単核細胞の浸潤が認められ、サイトカインネットワークを介して上皮のケラチン発現に対して相互作用している可能性があると報告しています。本研究では舌乳頭の組織学的検査は行っていませんが、シェーグレン症候群患者の舌乳頭の萎縮性変化は、唾液腺で観察されるようなリンパ球の浸潤と一部関係している可能性が示唆されます。

まとめ

口腔乾燥が進んでいる人は舌乳頭の萎縮が進んでいる人が多いのは確かなようですが、口腔乾燥があまりない人でも中程度の舌乳頭の萎縮が認められるため、口腔乾燥が原因で全ての舌乳頭萎縮が起こるわけではないようです。カンジダや免疫応答による角化の低下などが関係しているかもしれません。

唾液量が少ないというのは、カラカラで誰でもわかるようなもの以外は口の中を見慣れていないとなかなか気付かないんですし、あまり診査されていない気がします。舌はリハビリの関係上、よく挺舌させたり動かしたりすることが多いので、歯科業種でなくても比較的よくみる部位だと思います。もし、舌がツルツルだったり、唾液が粒になって舌に載っているなら口腔乾燥の可能性がありますので、口の中をよくみて乾燥していないかチェックしてみることをお勧めします。

文献リスト

文献3

Terai H, Shimahara M. Atrophic tongue associated with Candida. J Oral Pathol Med 2005;34:397-400.

文献12

Torres SR, Peixoto CB, Caldas DM, Silva EB, Akiti T, Nucci M,et al. Relationship between salivary flow rates and Candida counts in subjects with xerostomia. Oral Surg Oral Med Oral Pathol Oral Radiol Endod 2002;93:149-54.

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