普通の歯科医師なのか違うのか

孤食はオーラルフレイルのリスクである

 
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5代目歯科医師(高知市開業)
東京医科歯科大学卒業(47期)
同大学院修了
【非常勤講師】
徳島大学
岩手医科大学

日本の研究に戻ってきました

色々読んできたので、食支援から少し脱線したので、本流に戻ってきました。今回は今年の東京都長寿医療研のいつもの皆さんの論文ですが、オーサーが老年歯科医学会で一緒に広報の仕事をさせて頂いている小原さんです。これは心して読まねばいけませんね。

Association of eating alone with oral frailty among community-dwelling older adults in Japan
Yuki Ohara , Keiko Motokawa , Yutaka Watanabe , Maki Shirobe , Hiroki Inagaki , Yoshiko Motohashi , Ayako Edahiro , Hirohiko Hirano , Akihiko Kitamura , Shuichi Awata , Shoji Shinkai 
Arch Gerontol Geriatr. Mar-Apr 2020;87:104014. 

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32000053/

Abstract

Background: Because the oral cavity plays an important role as the first digestive organ, thus, decreased oral function such as oral frailty may negatively affect the nutritional status of older adults. However, few studies have examined the relationship between oral frailty and dietary habits.

Objective: This cross-sectional study aimed to investigate the relationship between oral functions and dietary habits in a general population of older adults.

Methods: Participants were 722 older adults (mean age, 79.1 ± 4.5 [standard deviation] years) who had participated in the Takashimadaira Study conducted in 2018, in Tokyo, Japan. Oral frailty among them was determined by a modified version of a well-known method originally proposed by other researchers. Dietary habits were evaluated based on two aspects: dietary variety and eating behavior (eating alone or together). The independent association between oral frailty and dietary habits was analyzed with an ordinal logistic regression model, controlling for important covariates.

Results: Of the participants, 23.5 %, 57.2 % and 19.3 % were determined to have non-oral frailty, pre-oral frailty, and oral frailty, respectively. Eating alone (practiced by 36.0 % of the participants) was significantly associated with oral frailty status (adjusted odds ratio, 1.82 [95 % confidence interval, 1.14-2.90]) even after controlling for potential confounders including age, sex, body mass index, living arrangement, employment, chronic medical conditions, and depressive mood.

Conclusions: We found a significant association between eating alone and oral frailty in a general population of Japanese older adults. Because of the strong association, further investigation of potential mechanisms is warranted.

背景:口腔は摂食の最初のステップとして重要な役割を果たしているので、オーラルフレイルのような口腔機能の低下は高齢者の栄養状態に悪い影響を与える可能性があります。しかし、オーラルフレイルと食習慣との関連性について検討した論文は殆どありません。

目的:一般的な高齢者において口腔機能と食習慣の関連性について調査する事が今回の横断研究の目的です。

方法:被験者は2018年に実施された高島平スタディに参加した722人の高齢者(平均年齢79.1±4.5歳)です。オーラルフレイルは他の研究者達が提唱した既知の方法の改良版により決定しました。食習慣に関しては食のバラエティと食行動(孤食か否か)の2つの側面から評価しました。オーラルフレイルと食習慣の関連性について変数を調整し、ロジスティック回帰分析にて解析しました。

結果:被験者の23.5%がオーラルフレイルなし、57.2%がプレフレイル、19.3%がオーラルフレイルと診断されました。全被験者の36%が孤食であり、年齢、性別、BMI、生活環境、仕事、慢性疾患、うつなどの交絡を調整後もオーラルフレイルとオッズ比1.82で有意に関連性を認めました。

結論:孤食とオーラルフレイルは日本の一般的な高齢者において有意に関連性がある事がわかりました。強い関連性があり、潜在的なメカニズムのより詳細な調査が求められます。

ここからはいつもの通り本文を適当に要約します。誤訳もあり得ますので、気になったら実際の本文をご確認ください。

緒言

口腔は様々な機能を有しています。これらは高齢者のQOLと密接に関連しています(Enoki 2014, Ohi 2018, Takeshita 2015)。以前の研究では口腔の健康と全身の健康は特に高齢者において相互的な関係にあり、口腔の健康は全身的な機能から切り離して考える事はできません。

最近、フレイルは高齢社会において全身的な健康問題の1つとして認識されてきています。高齢者において高い罹患率であり、死亡、施設入所、転倒、入院などのリスクファクターの1つであると考えられています。サルコペニアと低栄養は精神的、社会的要素を含むフレイルサイクルのコンポーネントです。

口腔機能とフレイルの関係性は以前の研究でも報告されており、咀嚼機能と口腔の運動機能の低下がフレイルに関連した独立した要素であると認識されています(Iwasaki 2018, Watanabe 2017) 。口腔機能には色々ありますが、殆どの研究は個人の口腔機能、特に咀嚼に焦点をあてています。

最近、オーラルフレイルという年齢に関連した口腔機能低下のプロセスが提唱されています。オーラルフレイルは口腔機能低下を暗に意味します。例えば、咀嚼機能の不良だったり、口腔の運動機能低下、嚥下困難、舌圧低値、残存歯の減少などです。オーラルフレイルは口腔機能の多様性に基づいた包括的な概念です。日本の都市在住高齢者を対象とした縦断研究において、Tanakaらはオーラルフレイルは身体的なフレイル、死亡、要介護の予測因子であると報告しています。そのため、高齢者において口腔機能を効果的に改善、維持する事を考えることが重要です。

口腔は摂食の最初の器官あり、口腔機能低下と歯の喪失は栄養状態に影響を与える事は確かなようです(Inomata 2017, Wakai 2010)。食事は生命を維持するだけではなく、食べる事や社交性を楽しむようなQOLにも関連します。特に食の質や多様性のような食習慣、孤食か否かという食行動は、高齢者に於ける口腔機能との関連性を判別するために栄養状態に加えて考慮する必要があります。しかし、殆どそういった報告はありません。孤食は食習慣の重要なコンポーネントです。なぜなら孤食はうつや死亡との関連性が報告されているからです(Kuroda 2015, Tani 2018)過去の研究では孤食はフレイルとの関連性が報告されています(Suthutvoravut, Tanaka, Takahashi, Akishita, & Iijima,2019)。同様に孤食はオーラルフレイルの深刻化に影響を与えるかもしれません。しかし、、私たちが知る限りその関連性について報告した研究はありません。

実験方法

被験者

高島平スタディのデータを用いて横断研究をしています。2016年のベースライン字の調査では1248名の被験者でしたが、2年後のフォローアップに応じたのは743名でした。そこからデータの欠落やMMSEのスコアが18未満の被験者を除外して最終的な被験者数は722名となっています。

口腔の診査

口腔の診査はよく訓練された歯科医師または歯科衛生士が行いました。口腔の診査項目は6つで
残存歯数(重症なカリエス、残根はカウントせず)
口腔機能(オーラルディアドコキネシス、舌圧、咀嚼機能:色変わりガム)
口腔機能の自己評価(硬い物が咬みづらいですか?の質問にYesかNoか)

6つのうち、低値が0の場合はオーラルフレイルではない
1,2つが低値に該当する場合はプレオーラルフレイル
3つ以上はオーレルフレイルとして分類 

食習慣

1週間でどういうものを食べたかという自己申告制の質問表によりdietary variety score(DVS)にて評価。10個のメイン食材にチェックを入れる。1種類しか食べてない人は1、10種類全部で10という採点方法となっています。

孤食かどうかの評価は、あなたは他の人と一緒に食事をとりますか?という質問に対して5つの回答項目が設定されています。
いつも誰かと食べている
1週間に4、5日
1週間に2、3日
1週間に1日
いつも1人

共変量

年齢や性別などの人口統計的な要素
BMI
社会的要素(学歴や雇用、独居など)
身体機能
健康に影響を与える行動(喫煙、飲酒など)
既往歴(高血圧、脳血管疾患、心疾患、DM、脂質代謝異常、骨粗鬆症、がんなど)
うつ(GDS-15)

結果

オーラルフレイルの各項目の基準値は柏スタディのオーラルフレイルの論文を基準としています。口腔機能低下症の診断基準の数字とは異なりますのでご注意ください。
今回のデータと評価基準から最も多く認められたのは咀嚼機能低下で38.9%、次が残存歯数20本未満で37.3%でした。

全被験者の23.5%は非オーラルフレイル、57.2%はプレオーラルフレイル、19.3%はオーラルフレイルと診断されました。孤食は36.0%でした。

オーラルフレイル、プレオーラルフレイルの被験者には年齢層が高い、食事のバラエティが少ない、孤食傾向、うつ傾向、といった特徴が認められました。一方で性別や社会的要素、基礎疾患などは有意差が認められませんでした。DVSによる比較では、牛乳と緑黄色野菜の摂取がオーラルフレイルの重症度に有意に相関していました。

交絡調整後のロジスティック回帰分析に結果ですが、孤食とオーラルフレイルはオッズ比1.82(95%CI 1.14-2.90)で有意な関連性を認めました。

まとめ

孤食がオーラルフレイルと関連性が認められたのは、会話の欠落と咀嚼行動の低下により口腔機能がより低下する、に加えて、会話や感情表出という心理的因子も口腔機能に影響、という2つの要素が関係しているのではと考察しています。

また、食事のバリエーションよりも孤食の方がオーラルフレイルのリスクが高かったわけで、予防するためには多方面からの孤食にしない介入が必要と考えられます。

実際に訪問にいくと孤食の人は結構います。そういった方へのアプローチ方法を少し変える必要があるのかなと思います。しかし、なかなか昼や夕食の時間に合わせて訪問というのも、治療もありますしミールラウンドだけしにいくわけでもないのでなかなか厳しいですよね。誰かと一緒に食事がとれるシチュエーションを考えてあげる、ぐらいがまず一歩なんでしょうか。

この研究も横断なので、やはり縦断による研究が待たれる所です。

カウントしたら100本目のブログでした。大体1年近くで100本なんとかいきました。目標は1年で論文100本だったのですが、そういうわけにもいかなかったです。

オーラルフレイルに関する柏スタディの論文は以下のブログをご参照ください。

また高島平スタディの論文は他にも色々ありまして当ブログでも1つ読んでいます。


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