普通の歯科医師なのか違うのか

定期検診にちゃんと来る事が大事なのはメタアナリシスでも結果が出ている

 
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5代目歯科医師(高知市開業)
東京医科歯科大学卒業(47期)
同大学院修了
【非常勤講師】
徳島大学
岩手医科大学

ついにメタアナリシスへ

2本ほど、歯周病のメインテナンス、SPTの重要性についての論文を読んできました。
https://www.dentist-oda.com/spt_toothloss2008/
https://www.dentist-oda.com/prospective_5yearmaintenance/

研究のデザインとしては後ろ向きだったり、縦断だったりと結構バラバラだったのですが、両方に共通しているのは、決められた定期検診間隔をサボってしまうと歯の喪失リスクが何倍にもなる、という示唆です。

今回はそこに関してのシステマチックレビューを見つけましたので、読んでみたいと思います。Journal of Dental Researchで2015年に掲載された論文です。

Impact of Patient Compliance on Tooth Loss during Supportive Periodontal Therapy: A Systematic Review and Meta-analysis
C T Lee , H Y Huang , T C Sun , N Karimbux 
J Dent Res. 2015 Jun;94(6):777-86. doi: 10.1177/0022034515578910. Epub 2015 Mar 27.

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/25818586/

Abstract

Periodontal treatment consists of active periodontal therapy (APT) and supportive periodontal therapy (SPT). Regular SPT is recommended to prevent and control the occurrence of periodontal disease following APT. A patient’s compliance with SPT is considered one of the most important factors affecting long-term periodontal status. Tooth loss is generally considered the final outcome of periodontitis. This review aimed to analyze the relationship between patient compliance with regular SPT and tooth loss. The PRISMA (Preferred Reporting Items for Systematic Reviews and Meta-Analyses) guideline for systematic reviews was used. A search of articles was conducted using MEDLINE (PubMed) and other databases. Quality assessments of selected studies were performed. To assess the effect of compliance on tooth loss during SPT, pooled risk ratio of tooth loss (RRTL) was used as the primary outcome. Pooled risk difference of tooth loss (RDTL) and weighted mean difference of tooth loss rate (WDTLR) were used as secondary outcomes. Subgroup analysis and meta-regression were conducted to evaluate the effects of different variables. In total, 710 articles were screened. Eight studies, which had a regular-compliance (RC) group and an erratic-compliance (EC) group with at least a 5-y follow-up period, qualified for the meta-analysis. The risk of tooth loss in the RC group was significantly lower than that in the EC group (pooled RRTL: 0.56 [confidence interval (CI): 0.38, 0.82]; pooled RDTL: -0.05 [CI: -0.08, -0.01]). The definition of compliance was a variable significantly related to risk ratio of tooth loss. Patients in the RC group had significantly lower tooth loss rate during SPT than did patients in the EC group (WDTLR: -0.12 [CI: -0.19, -0.05]). Teeth have less risk of being lost if patients are more compliant with supportive periodontal therapy. However, unidentified variables causing data heterogeneity and affecting the risk of tooth loss may have been present. More well-controlled prospective studies are needed in the future.

歯周治療は動的歯周治療とSPTによって構成されます。標準的なSPTはAPT後の歯周病の再発を防止、コントロールするために推奨されます。さぼらずしっかりと定期的に受診することは長期の歯周状態に影響する最も重要な要因の1つであると考えられています。歯の喪失は歯周病の最終的なアウトカムであると一般的に考えられています。本レビューの目的はSPTに対する遵守と歯の喪失の関連性について解析する事です。

レビューとメタアナリシスのためにPRISMAを用いました。色々なデータベースから論文検索を行いました。SPTの遵守が歯の喪失に与える効果を調べるために、歯の喪失の蓄積リスク比(RRTL)をメインアウトカムとして採用しました。歯の喪失の蓄積リスク差(RDTL)と歯の喪失率の平均差(WDTLR)を副次的なアウトカムとして採用しました。サブグループ解析とメタアナリシスを異なる変数の効果を評価するために行いました。

710本の論文から最低でも5年間は検診を定期的に受診した群(RC)と不定期に受診した群(EC)をフォローした8本の論文を抽出しました。RC群が歯を喪失するリスクは有意にEC群よりも低い結果 (pooled RRTL: 0.56 [confidence interval (CI): 0.38, 0.82]; pooled RDTL: -0.05 [CI: -0.08, -0.01]) となりました。定期検診の遵守は歯の喪失リスク比と有意に関連しました。RC群の患者がSPT中に喪失する歯は有意にEC群の患者より少ない結果となりました (WDTLR: -0.12 [CI: -0.19, -0.05]) 。SPTをより遵守して定期的に受診刷れば歯を失うリスクは低くなります。しかし、データの不均一性に基づき、歯の喪失リスクに影響を与える未確認の変数が有るかもしれません。よりコントロールされた縦断研究が望まれます。

ここからはいつもの通り本文を適当に抽出して要約します。誤訳もあり得ますので、気になったら実際の本文をご確認ください。

緒言

患者が決められた間隔で適切なSPTを受けなかった場合、動的歯周治療がしっかり終わっていたとしても歯周病が進行する可能性があります。SPT中の臨床的なアウトカムには沢山の要素が影響します。定期検診の遵守、年齢、喫煙、口腔衛生、全身疾患、初期の歯の予後、歯の位置、残存ポケット、ブリーディングなどは歯周病の安定性に非常に重要です。SPTの間、プロービングデプス、CAL、歯の喪失を測定し、安定性やさらなる治療の必要性を検討します。歯の喪失は歯周病や他の歯科的な問題の真のエンドポイントです。

コンプライアンスは医療者側からは部分的にしかコントロールできず、簡単に改善出来る物ではないという報告があります。一般的に約半数または半数を超える患者は医療者の指導を守れません。メインテナンス期においてアポイントをしっかり守ることは歯周病の状態安定に関して非常に重要です。多くの研究が口腔衛生状態、歯周病の進行、歯の保存をコントロールするためにメインテナンス期の定期受診の重要性を報告しています。しかし、宮本らの報告では逆の結果になっており、他のいくつかの研究でも定期検診の遵守は限定的な効果となっています。これらは変数の設定やアウトカムなどの研究デザインによるものだと考えられます。

長期間のSPTにおける歯の喪失に影響する因子に関するシステマチックレビューと臨床的なアウトカムへのSPTの影響に関するシステマチックレビューでは歯の喪失と受診遵守の関連について確たるエビデンスは認めませんでした。本研究の目的はSPT期間の受診の遵守が歯の喪失に与える影響を解析し、関連に影響を与える可能性のあるパラメータを調べることです。

実験方法

研究セレクト

ランダム化、非ラン檀家、縦断、後ろ向きコホートOK
SPTのアポイントの遵守度で群を分けている
SPTの過程を規定orSPTのガイドラインを提示
遵守の定義を規定
各群10名以上
SPTよりも前に動的歯周治療を行っている
5年以上のフォローアップ期間でフォローアップ期間の平均の差が両群で1.5年以内
動的歯周治療の後にSPTを受けなかった人は削除
SPT開始時の残存歯数とSPT中に喪失した歯の本数が明らか
英語論文

アウトカム

主なアウトカムはRC群とEC群で歯の喪失リスクを比較し、蓄積リスク比(RRTL)を求めることです。 歯の喪失リスクは、SPT期間中の喪失歯数をSPT開始時の残存歯数で割ったものとなります。歯の喪失リスク比(RRTL)はRC群の歯の喪失リスクをEC群の歯の喪失リスクで割ったものです。各研究のRRTLは、各データセットに有意な異質性(χ2 = 149.90, P < 0.01)があったため、DerSimonian-Laird法のrandomeffectsモデルを用いてプールされました。RRTLの値が1より小さければ、RC群の歯がEC群の歯よりもSPT中に失われるリスクが少ないことを意味します。 RC群とEC群間での歯の喪失の蓄積リスク差(RDTL)と歯の喪失率の平均差(WDTLR)も解析しました。

費用対効果の解析も行いました。費用対効果比は喪失歯1本を置き換えるコストをSPTでかかるコストで割った物になります。

結果

研究のセレクト

数の通りで最終的には8本の研究が残っています。

抽出された論文は以下のものになります。

4本の論文はAPTとSPTは個人開業のクリニックで、3つは病院で行われ、残り1つはAPTは病院でSPTは個人開業のクリニックで行われています。

各研究における歯周病の診断や状態は一貫していません。6つの研究ではAAPの分類が用いられていますが、他は異なります。5つの研究で喫煙の状態が、3つの研究でDMの状態が報告されています。フォローアップ期間はかなり長いものが多いです。

母集団は比較的どれも多いです。RC群とEC群の定義についても各研究でばらつきが認められます。絶対にアポイント通りに来た場合にしかRC群に分類されない厳格なものが3つ、他の5つはある程度アポイントをキャンセルしても許容範囲であればRC群に分類している緩いものです。

各研究の評価

研究レベルが高い物はあまり多くないのが現状です。

歯の喪失リスク比と歯の喪失リスク差

RC群はEC群と比較してSPT期間中に歯を喪失するリスクは有意に低下しました(pooled RRTL: 0.56 [CI: 0.38, 0.82], P < 0.01, pooled RDTL: –0.05 [CI: –0.08, –0.01], P < 0.01)。これは、1本の歯の抜歯を防ぐためには、5年以上のフォローアップ期間中にSPTを定期的に受けている患者で20本の歯を維持しなければならないことを意味しています。RC群とEC群の歯周病による歯の喪失リスクには、有意な差はありませんでした(蓄積RRTL-Perio:0.66[CI:0.39、1.12]、P=0.12、蓄積RDTL-Perio:-0.02[CI:-0.07、0.03]、P=0.35)。

RC群の歯の喪失率はEC群に比べて有意に低い結果でした(WDTLR:-0.12[CI:-0.19, -0.05]、P<0.01)。なお、データが不十分であったため、1件の研究が本解析から除外されました(Miyamoto et al.2010)。その結果、8 年間の SPT 期間中、RC 群の患者は EC 群の患者よりも約 1 本多く歯を保存できることが示されました。欠損した歯をインプラント支持のポーセレン焼付金属冠(3,774ドル)または3ユニットのポーセレン焼付金属ブリッジ(3,130ドル)で補う場合のベネフィット・コスト・レシオは2.46または2.01となります。計算の前提は、患者が1年に2回SPTの予約を取ることです(128ドル×2×8)。処置価格の情報は、2013年アメリカ歯科医師会の歯科治療費調査から得ています。

治療施設によるグループ分けを行うと、蓄積RRTLは病院が0.56(CI: 0.19, 1.7; P = 0.31)、個人医院が0.64(CI: 0.41, 1.00; P = 0.05)となりました。両群のデータは著しい不均一性を認めました。

遵守の程度を厳格または緩いでわけると、厳格な群の蓄積RRTLは0.30 [CI:0.21, 0.41]、緩い群では0.83[CI: 0.58, 1.19], P = 0.31)となりました(図4)。両群共にある程度の不均一性を認めました。

メタ回帰

メタ回帰の結果、歯の喪失リスクと有意に相関したのは定期検診の遵守のみでした。遵守が厳格な研究と、緩い群では有意に厳格な研究の方がSPT中の歯の喪失リスクが低下しました。

考察

今回のレビューでは、歯周病治療のメンテナンス段階において、患者が再治療の予約を遵守することが有益であることが示唆されました。患者がSPTをより遵守すれば、歯が失われるリスクは少なくなります。患者の予約遵守度は、SPTを受ける頻度を反映しているだけでなく、プロービングデプス、ブリーディング、プラークインデックスなど多くの臨床パラメータと関連しています。SPTを規則正しく受診する患者は、そうでない患者に比べて、プラークインデックスが低いことが示されています。

SPT期間中、RC群はEC群に比べてすべての原因による歯の喪失のリスクが有意に低い結果でした。しかし、歯周病を原因とする歯の喪失のリスクは、両群間で有意な差はありませんでした。American Academy of Periodontology(2000年)によると、「歯列および天然歯に代わるすべての補綴物をモニターすることにより、歯の喪失の発生率を減少させる」というケアの推奨パラメータは、歯周病のメインテナンスにおける目標のひとつです。SPTを遵守することで、すべての歯の問題(カリエス、根管治療など)に起因する歯の喪失を防ぐことができます。

いくつかの長期的な研究では、SPT期間中にメンテナンスを受けた患者の1年あたりの歯の喪失率は0.1~0.2でした。今回のレビューでは、RC群の蓄積喪失率(0.12[CI:0.08、0.16])は、先行研究やシステマティックレビュー(Trombelli et al.2015)で報告された喪失率と同様であった。RC群とEC群の喪失率の有意差は、SPT中にコンプライアンスを遵守することの有益性を示しています。ベネフィット・コスト分析によると、SPTを遵守することで、失われた歯を補うための費用を節約することができます。本レビューでは、APT 後に SPT を受けなかった非受診者の歯の喪失リスクは分析されていません。SPT受診者と非受診者の歯の喪失リスクは、歯周病治療を受けるかどうかによって大きく影響される可能性がありますが、遵守の程度に影響されるとは限りません。

社会経済的地位の影響については、データが不十分なため評価できませんでした。社会経済的地位の違いは、臨床結果に影響を与えるかもしれません。一方、コンプライアンスの定義は歯の喪失のリスク比に有意な影響を与えました。この結果は、SPTを完全に遵守している患者の歯は、遵守していない患者の歯よりも喪失するリスクが低いことを示唆しているかもしれません。

ポイント

SPT期間中にまじめに受診した患者の1年あたりの歯の喪失率は0.1~0.2
まじめに受診した患者とサボり気味の患者でSPT8年で喪失歯数が1本差がでる。
まじめに受診した患者とサボり気味の患者で歯周病が原因での喪失歯数には差がなく、他の要因による喪失を定期検診で抑えることができる。

まとめ

費用対効果については、アメリカの補綴の金額が入力されていますので、おそらく日本だとこんな費用対効果になりません。治療費が安すぎるのが予防が根付かない原因の1つであると思います。

それでも、最近は定期的に受診を促すシステムも保険に導入され、以前よりは予防的なアプローチもしやすくなっていると感じています。今回のメタアナリシスからまじめに受診したら歯の喪失が少なくなる事がわかりました。8年で1本?少ないな、と一瞬思いましたが、両群ともに定期検診には来ているわけで、全く定期検診に参加していない人との比較ではないことに注意が必要です。実験のデザインとして全く定期検診に参加していない人との比較は難しいと思います。

SPT中の歯の喪失は動的歯周治療をどれだけ厳密に行ったかで変わります。つまり最初に怪しい歯を沢山抜歯していればSPT中の喪失歯数は少なくなります。日本は歯を残す傾向が強いような気配がしますので、SPT中の歯の喪失はこのメタアナリシスより多くなるような気がします。

そして、歯周病以外の原因での喪失を防げる、と言うところが極めて重要だと感じています。定期検診時には勿論歯周ポケットやレントゲンなどの検査をするわけですが、その他にも虫歯や修復物の適合、フレミタスなど様々な事項を視診や触診でチェックする事が喪失歯数の減少に役立っていると考える事ができるからです。

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