普通の歯科医師なのか違うのか

低用量骨吸収抑制療法はインプラント失敗リスクを低下させる

 
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5代目歯科医師(高知市開業)
東京医科歯科大学(現東京科学大学)卒業(47期)
同大学院修了
【非常勤講師】
徳島大学、岩手医科大学

前回は高齢者の骨折は死亡リスク上昇に直結するという論文を読みました。高齢者の骨折は死亡リスク以外にも寝たきりによる介護の問題なども含まれ、医療にかかるコストを増大させます。そのため、骨折の予防として、多くの高齢者、特に女性に骨吸収抑制薬が使用されています。
骨吸収抑制薬といえばMRONJが歯科では大きな問題になっています。私もMRONJに何例か遭遇したことがあります。MRONJの歯科の指針としてポジションペーパーがありますが、最新版は2023年でこれに使われているエビデンスはそれよりも古いものとなります。このポジションペーパーで骨吸収抑制薬投与中のインプラント治療について、「現時点では低用量ARA 投与中の患者にインプラント埋入手術を行ってはならないとする根拠はない」という記載があります。過去に自分が読んだ論文でもそういう結論でした。では最近のエビデンスはどうなっているのか、ということを調べてみることにしました。今回読む論文は2025年のものとなります。

Dental Implant Failure and Medication-Related Osteonecrosis of the Jaw Related to Dental Implants in Patients Taking Antiresorptive Therapy for Osteoporosis: A Systematic Review and Meta-Analysis
Reza Mirza , Mohamed El Rabbany , Dalal S Ali , Sotirios Tetradis , Archibald Morrison , Salvatore Ruggiero , Rasha Alnajimi , Aliya A Khan , Gordon Guyatt 
Endocr Pract. 2025 Sep;31(9):1189-1196. doi: 10.1016/j.eprac.2025.06.003. Epub 2025 Jun 10.
PMID: 40505730

Abstract

Objectives: To inform the 2024 International Task Force on Osteonecrosis of the Jaw update, we conducted a systematic review and meta-analysis evaluating dental implant failure and medication-related osteonecrosis of the jaw (MRONJ) related to antiresorptive therapy for osteoporosis.

Methods: We searched 5 databases (1946-2024) for interventional and noninterventional studies reporting rates of dental implant failure or osteonecrosis in those with osteoporosis or osteopenia. Two reviewers independently screened all titles, abstracts, and full texts. Risk of bias was assessed using the modified Ottawa-Newcastle scale, and the evidence was assessed using the Grading of Recommendations Assessment, Development, and Evaluation.

Results: We found 793 unique citations. Nine studies (n = 655) were included in the implant failure analysis. Random-effects meta-analysis revealed wide confidence intervals (CIs) for implant failure among those exposed to antiresorptives (relative risk, 0.82; 95% CI, 0.52-1.28; P = .38, very low certainty). Sensitivity analysis at the level of implant suggested that antiresorptives reduce implant failure (relative risk, 0.53; 95% CI, 0.34-0.81; P = .003, very low certainty). We identified 186 cases of MRONJ in implant recipients. The pooled rate of MRONJ following implantation in those exposed to antiresorptive therapy was 0.5% pooled from 21 cohorts. A single report of risk-adjusted MRONJ found that bisphosphonates increased MRONJ by 3 cases per 1000 patients (adjusted hazard ratio, 4.09; 95% CI, 2.75-6.09; P < .001, moderate certainty).

Conclusions: The low-certainty evidence suggests that antiresorptive therapy for osteoporosis reduces dental implant failure. Bisphosphonates are associated with MRONJ in patients with osteoporosis receiving dental implants with moderate certainty.

目的:2024年国際顎骨壊死タスクフォースの更新情報提供を目的として、骨粗鬆症に対する骨吸収抑制療法に関連するインプラント失敗および薬剤関連性顎骨壊死(MRONJ)を評価するシステマティックレビューとメタアナリシスを実施しました。

方法:インプラントの失敗率または骨粗鬆症、骨減少症患者の骨壊死に関する介入、非介入研究について1946~2024年間の5データベースを検索しました。2名のレビュアーがそれぞれ独立してタイトル、アブストラクト、全文をスクリーニングしました。バイアスリスクは修正オタワーニューカッスルスケールを使用して評価しました。エビデンスはGRADEにて評価しました。

結果:793のうち9つの研究(n=655)がインプラント失敗の解析を行っていました。骨吸収抑制薬使用下でのインプラントの失敗について、ランダム効果メタアナリシスでは信頼区間が幅広くなりました(相対リスク0.82、信頼区間0.52-1.28、p=0.38、非常に低い確実性)。インプラントレベルでの感度分析では骨吸収抑制薬はインプラントの失敗を減少する事が示唆されました(相対リスク0.53、95%信頼区間0.34-0.81、p=0.003、非常に低い確実性)。インプラント治療を受けた患者に186ケースのMRONJを確認しました。21のコホート研究から得られた骨吸収抑制薬使用患者のインプラント治療後のMRONJのプール率は0.5%でした。リスク調整済みMRONJに関するある研究では、BP製剤によりMRONJが1000患者当たり3症例増加したと報告しています(調整ハザード比4.09、95%信頼区間2.75-6.09、P<0.001、中等度の確実性)。

結論:かなり低い確実性のエビデンスから、骨粗鬆症患者への骨吸収抑制治療はインプラントの失敗を減少させることが示唆されました。インプラント治療を受けた骨粗鬆症患者において、BP製剤投与は中等度の確実性でMRONJと関連します。

ここからはいつもの通り本文を訳します。誤訳もあり得ますので、気になったら実際の本文をご確認ください。

緒言

ビスホスホネート(BP)やデノスマブ(DMB)が含まれる骨吸収抑制療法は、骨粗鬆症の管理、悪性腫瘍患者の骨疼痛、骨関連事象、高カルシウム血症、ならびに骨パジェット病の治療などで広く使われています。2種類の骨吸収抑制薬、ゾレドロン酸とデノスマブは、腫瘍および骨粗鬆症の両方の適応症に対して投与されます。がん患者ではゾレドロン酸とデノスマブの累積投与量は10~12回と高用量であり、低用量である骨粗鬆症患者への累積投与量と比較してかなり多くなります。

骨吸収抑制薬を検討する際には、高用量投与による薬剤関連顎骨壊死(MRONJ)の確立されたリスクを考慮し、インプラントの生存率などの歯科的有害事象に対処すべきです。インプラントの生存率は、患者要因(基礎疾患、口腔衛生状態、定期検診受診、骨質、軟組織の質)とインプラント要因(位置、形態、表面微細構造、外科のテクニック)により決定されます。骨吸収抑制療法とインプラント失敗の関連性を検討したランダム化比較試験はありません。以前の2名のレビュアーが骨粗鬆症患者のインプラントの生存率を調べ、骨吸収抑制療法を受けている人もそうでない人もあまり生存率は変わらない研究が多い事を発見しました。これらの研究の患者は殆どが経口BP製剤を服用していたことは記載しなければなりません。これらのレビューは、がんで骨吸収抑制療法を受けている患者のインプラントは禁忌ですが、骨粗鬆症で骨吸収抑制療法を受けている場合、その他のリスク因子を最小化できる限りインプラント治療は可能である事にも賛同しています。骨吸収抑制療法がインプラント治療に与える効果についての質の高いエビデンスは限られますが、AAOMS(the American Association of Oral and Maxillofacial
Surgeons)はBP投与中のインプラント埋入後のMRONJ発生リスクは不明で、デノスマブでは0.5%と考えてます。2022年の European Calcified Tissue Societyのポジションペーパーでは、インプラント埋入はMRONJのトリガーとしてのリスクは低いとみなされています。

the American Society for Bone and Mineral Researchと the American Association of Oral and Maxillofacial
SurgeonsによるMRONJの定義は、過去、現在骨吸収抑制療法を受けているが、顎顔面領域に放射線治療は受けた事が無い患者において、顎顔面領域に骨が露出しており、8週間治癒していないものとなります。骨吸収抑制療法または血管新生阻害療法を受けており、顎骨に骨壊死が起こった時にMRONJは推奨される用語です。ただし、当初はBP関連顎骨壊死と呼ばれていました。

MRONJは、骨粗鬆症で骨吸収抑制療法を受けている患者(BP 0.01~0.05%、デノスマブ 0.04~0.3%)より、がんで骨吸収抑制療法を受けている患者にはより一般的(1.8~5%)です。臨床データおよび前臨床データの両方から、ほとんどのMRONJの発症には、全身性危険因子(骨吸収抑制薬または血管新生阻害薬)と、抜歯、歯に関連する局所炎症(例:歯周病または根尖周囲感染)、義歯による外傷、および潜在的には歯科インプラントを含む局所口腔内危険因子の併存が必要であることが強く示唆されています。MRONJの組織レベルにおける基礎的な理解が進んだにもかかわらず、これらの組織レベルでの観察結果の背景にある分子レベルのメカニズムは、依然として解明されていません。

MRONJの発生、診断、管理に関する国際タスクフォースのアップデートされた推奨を周知することを目的として、我々はインプラント治療を受けた骨粗鬆症患者の骨吸収抑制薬使用に関連したインプラント失敗とMRONJの過剰リスク(通常の背景リスクに上乗せされる追加のリスクのこと)を定量化するためにシステマティックレビューとメタアナリシスを行いました。

方法

国際MRONJタスクフォースの周知を目的に、システマティックレビューとメタアナリシスを行いました。本研究の質問は、MRONJに関する国際コンセンサス作業部会によって考案されました。プロトコルは初回更新時に登録されました(CRD42022307412)が、事前登録は行われていません。

検索

システマティックレビューを経験しているヘルスサイエンスインフォメーションに関するスペシャリストが、検索方法を決めました。5つのデータベース(MEDLINE、Embase、Cochrane Central、CINAHL、Web of Scinece)で、1946年から2024年5月まで検索しました。詳細な検索方法を付録1に示します。既存のシステマティックレビューからの引用文献についても手動によるレビューを実施し、さらに参考文献や説明を求めるため内容の専門家へ連絡を取りました。

採用基準

インプラントの失敗率または骨減少症、骨粗鬆症患者にインプラント埋入後のMRONJに関する観察、介入研究を考慮しました。骨吸収抑制療法は、骨減少症、骨粗鬆症の治療に対するBPとデノスマブを含みます。地理的な制限は設けませんでした。前向き、後ろ向き研究両方を対象としています。5名以上MRONJ患者を扱う場合にはケースシリーズを対象としました。アブストラクトは、必要な情報を記載していれば、採用可能としました。悪性腫瘍患者におけるアウトカムを統合した研究、および対象集団が既に組み入れられた研究のより小さなサブグループを表す研究は除外しました。

メタアナリシスの採用では、骨減少症、骨粗鬆症患者において、低用量骨吸収抑制療法あり、なしによる歯科アウトカムの比較を行っている研究を求めました。がん患者のデータは除外しました。骨吸収抑制療法の種類や量が不明、比較対象がない、コントロール群が骨減少症、骨粗鬆症患者ではない研究はメタアナリシスから除外しました。英語論文のみを採用しました。

スクリーニングとデータの抽出

2名のレビュアーが、全ての文献についてスクリーニングを独立して二重に実施しました。すべてのレビュアーは専門知識を有しており、専門知識と方法論の経験を持つ1名のレビュアーがすべての引用文献を査読しました。タイトルとアブストラクトで関連データが含まれる場合、全文のスクリーニングを行いました。全文スクリーニングにより適格基準を満たし、少なくとも1つの関連するアウトカムが測定されていることを確認した場合、データ抽出対象として論文を含めました。2名のレビュアーは以下の様にデータを抽出しました。(1)実験方法、(2)介入と比較対象、(3)研究対象集団、(4)データ収集の開始と終了、(5)フォローアップ期間、(6)患者数とインプラント数、(7)インプラント失敗イベント、率、定義、(8)MRONJイベント、率、予知因子、(9)薬剤の適応、暴露、量、投与期間。著者がMRONJの発生を記載していない場合、我々はMRONJは起こらなかったと推定しました。議論した後も2名のレビュアーの不一致が認められた場合、第3者である研究計画者により解決されました。

非パブリッシュデータ

採用の可能性がある研究でより多くの情報が必要なケースでは、著者と連絡を取りました。23名の著者に連絡を取り、9名から返答があり、6つの新しい情報により6つの研究は採用、1つは不採用、2つはデータが利用不可でした。

Wattsらは、Amgenから得たフォローアップデータを提供しました。Tallaricoらの研究は、BPの適応が骨粗鬆症であることが確認されたため、採用しました。Familiらの2つの研究は、被験者が重複していないため採用しました。Kasaiらは全ての患者が骨粗鬆症に対するBP服用で、4名が骨粗鬆症でBPを服用していませんでした。Clauserらは骨粗鬆症患者が1名のみと報告してきたため、除外しました。Chengらは骨吸収抑制療法を受けていない群でインプラントが失敗した患者数を報告してきたため採用しました。Kokaらの研究は全ての患者が骨減少症または骨粗鬆症と確認できたため、採用しました。

バイアスリスク、エビデンスの質

2名のレビュアーが独立して採用した研究のバイスリスクを評価しました。改訂オタワーニューカッスルスケールに基づき、以下の8項目を評価しました。(1)選択バイアス、(2) 介入への曝露、(3) 試験開始時および(4) 試験終了時におけるアウトカム測定、(5) 予後因子の評価、(6) 予後因子不均衡の適切な調整、(7) 追跡調査の適切性、(8) 群間における介入の同等性。3人目のレビュアーが、特に矛盾した結果となっている1つの研究が例外的なバイアスリスクになるのではないかと指摘しました。バイアスを軽減するために、第三の査読者は、対象となった全研究におけるバイアスのリスクを評価し、第三の査読の目的についてはブラインドされました。

われわれはエビデンスの質の評価にGRADEを使用しました。もし、採用する研究が10を超えるようなら、ファンネルプロットを用いて出版バイアスを記載する予定でした。表の要約のためにMagicappを使用しました。

インプラントのアウトカム

事前に指定された主解析は患者レベルでのインプラントの失敗を評価することです。インプラント失敗の超過相対、絶対リスクの累積推定値を、Review Manager5.4によるランダム効果メタアナリシスにて生成しました。研究対象集団(例:閉経後女性 vs 全女性)、薬剤介入、インプラント処置(例:インプラントの数と位置、関連するサイナスリフト、骨移植、抜歯)の間で、群内においても有意な異質性が認められたため、ランダム効果モデルが選択されました。主アウトカムは患者レベル(1本以上インプラントを有している場合、イベントはインプラント毎ではなく患者毎)で解析されました。

2つのポストホック感度解析がインプラント失敗の相対リスクのために行われました。(1)インプラントレベルの解析、(2)信じられないほど高いインプラント失敗リスクを報告している2つの研究を除外した場合の解析。

顎骨壊死

我々は、歯科インプラント失敗に適用されたものと同様の解析手法を用いて、骨壊死の超過リスクを評価することを意図しました。追加的に関心のある解析は、骨吸収抑制薬を使用している患者における骨壊死の発生率でした。

結果

検索で1779の論文がみつかり、重複を削除した後にタイトルとアブストラクトのスクリーニングのため973が残りました。タイトルとアブストラクトのスクリーニング後に可能性のある123の論文が残りました。全文のスクリーニングで33の論文が確認され、エクスパートによって追加で1つが見つかり、トータル34の論文を採用しました。追加2にPRISMAダイヤグラムを示します。

インプラントのアウトカム

骨減少症と骨粗鬆症患者において、骨吸収抑制薬を投与、非投与でインプラントアウトカムの比較リスク推定について報告した研究は9つでした。我々はインプラントの失敗と成功両方を評価しました。

表1にインプラント成功を報告した研究の特徴を示します。9つの研究には655名、最低でも1715本のインプラント(いくつかの研究ではインプラントの本数が報告されておらず、1人1本として推定)が含まれています。7つはアメリカで行われ、1つは日本、残り1つはインドで行われていました。

表2に、採用したが最終的に除外した研究を除外理由付きで示します。

バイアスリスクは9つの研究中7つが高い結果で、リスクが低いと判断されたのはFamiliら、Chengらの研究でした。ハイリスクだった7つ全ての研究で、交絡の調整がされていませんでした。他の問題として、被験者のリクルート方法、フォローアップ期間の長さ、フォローアップまでに被験者がロストしたかどうかが記載されていませんでした。論文数が限られていたため、出版バイアスは評価できませんでした。

ランダム効果メタアナリシスでは、骨粗鬆症で骨吸収抑制療法を受けている患者において、患者レベルでのインプラント失敗の相対リスクは0.82(95%信頼区間 0.52-1.28、p=0.38)でした。フォレストプロットを図1に示します。

2つのポストホック感度メタアナリシスを行いました。まず、患者レベルではなくインプラントレベルで元の分析を実施した結果、信頼区間が狭まり、現在ではBP製剤がインプラント失敗リスクを約半分に低減することが示唆されました(図2,相対リスク 0.53、95%信頼区間 0.34-0.8、p=0.003)。

次に、YajimaらとKasaiらの研究を除外しました。この2つの研究は骨吸収抑制療法群におけるインプラント失敗率が、他の研究と比較して桁違いに高いものでした(27%対2%)。メタアナリシスへの寄与が低く、推定値、95%信頼区間は大きく変化しませんでした。

GRADEによるインプラント失敗に関するエビデンスの確実性は、全ての解析において非常に低い結果でした。特に主要な解析(図3)においては、エビデンスの観察研究的性質を考慮すると確実性は低いものでした。

信頼区間が骨吸収抑制薬の重要な有益性と重大な有害性と関連する可能性を含むため、重大な不正確性として深刻なバイアスリスクがあるため、評価はさらに引き下げられました。

顎骨壊死

34の利用できる研究で、インプラント治療を受けた患者にMRONJが起こった186のMRONJケースが報告されていました(付録4)。9つのインプラント失敗についての研究にプラスして、後ろ向きコホート研究13、ケースシリーズ11、前向きコホート研究1を追加しました。

骨吸収抑制薬投与、非投与患者両方において調整されたリスク差を比較した研究は1つしかなかったため、メタアナリシスは行いませんでした。20の研究では発生率が報告されていましたが、Ryuらのみがインプラント治療後に骨粗鬆症でBP投与された患者のMRONJの調整リスクを報告していました。RyuらはBP投与高齢韓国人において、9738本のインプラントで41のイベント(0.4%)が発生した報告しています。傾向スコアマッチングしたコホートでは、BP非投与のインプラント埋入において12712本のインプラント中11イベント(0.09%)でした(調整ハザード比 4.09、95%信頼区間2.75-6.09、p<0.01、GRADEでは中等度の確実性(図4))。これは、BP使用により1000名中3名超がMRONJになると解釈されます。

インプラント治療を行った場合、BPと骨壊死の因果関係には中等度の確実性があると考えられます。深刻なバイアスリスク、不正確性、間接性、異質性、出版バイアスは認められませんでした(付録5)。サンプルサイズが大きいことを考慮し、最適な情報量に関する懸念はないと判断しました。強い関連性を踏まえ、確信度は低から中程度に上昇しました。

発生率を記載している21の研究で、骨吸収抑制療法を受けているインプラント患者でMRONJ発生率が0ではなかった研究は4つでした。韓国の全国保険請求データベースを用いた2つの研究は、重複しないデータを使用し、(1)Ryuらは0.42%(41/9738)、(2)Parkらは0.49%(143/29056)と報告しています。いずれも抜歯を受けた患者数は記載されていません。Wattsらは、デノスマブの長期単一群データを用い、0.47%と報告しました。デノスマブ投与期間にインプラントを埋入した骨粗鬆症女性212名で1名がMRONJと判定されました。しかし、この1名にはMRONJのリスク因子として知られる抜歯が行われています。Chengらは0.8%と報告しています。我々はインプラント埋入後のMRONJの発生率をプール解析したところ、発生率は0.5%でした。特筆すべきは、一部の症例でMRONJのリスク因子である抜歯が認められた事です。

考察

知見の要約

骨吸収抑制療法を受けている骨粗鬆症患者におけるインプラントのアウトカムについての国際タスクフォースの推奨を周知するために、我々はシステマティックレビューを行いました。総合すると、9つの比較研究は不確実性が高いものでしたが、経口BPを服用する患者のインプラントアウトカムを評価した感度分析から、骨吸収抑制療法が骨減少症または骨粗鬆症患者のインプラント失敗リスクを低下させる事が示唆されました。エビデンスの確実性が非常に低かった理由として、観察研究、個々の研究方法論に関連するバイアスの高いリスクがあります。

BP服用者のリスク調整MRONJ確率を計算し、中等度の確実性だった1つの研究では、患者1000人中3名超のMRONJイベントが発生する結果で調整ハザード比は4.09でした。我々のデータで、骨吸収抑制療法中のインプラント埋入後のMRONJの最も優れた推定値は、抜歯などが付随しますがプール解析で0.5%でした(骨粗鬆症でインプラント治療を受けた200患者あたり1ケース)。

骨吸収抑制療法を受けている患者のインプラントの生存率を検討したいくつかのシステマティックレビューがあり、その中には4つのメタアナリシスも含まれますが、どれも非常に低い確実性となっています。以前の研究では、高用量と低用量の抗骨吸収薬患者を混在させる傾向があり、時にはその存在を明記しないこともありましたが、より最近の研究では一般的にこの誤りは回避されています。いくつかの研究ではコントロール群が設定されています。フォローアップ期間は数ヶ月から7年で、平均は約3年です。高用量の骨吸収抑制薬を投与されている患者のインプラント治療は、低用量患者と比較してMRONJ、インプラント失敗リスクが高い事は、普遍的な同意がすでに存在していることには注目すべきです。

本レビューの強みとしては、前述の課題すべてに対処した点が挙げられ、特に、適応による交絡を避けるため、対照群が骨粗鬆症において一致するよう細心の注意を払いました。エビデンスの確実性の判断はGRADEアプローチに従いました。多くの著者にデータの提供を依頼し、9つのリクエストが成功しました。結果として6つの研究を追加することができました。

今回の研究には、研究へのアプローチとエビデンスそれ自身によるlimitationがあります。追加の感度分析を実施したところ、知見が変化しました。インプラントのアウトカムを検討した比較研究は殆ど無く、MRONJの調整リスクを検討した研究が1つだけです。インプラントの研究は一般的に母集団が小さく、バイアスリスクが高いものが多いです。また、被験者、薬物、期間、治療、比較対象、フォローアップ等がバラバラで異質性が認められます。未解決の適応による交絡因子について、我々は重大な懸念を有しています。治療を受けている骨粗鬆症の患者は、治療を受けていない人よりも骨折リスクが高く、骨質が良くない可能性があります。

骨粗鬆症の研究には、重要な異質性が存在します。治療適用が年代や地域により大きく変わります。このため、予後が異なる集団がメタアナリシスで統合される可能性があり、さらに悪い事には、それは無秩序な形で実施されます。骨密度による治療適応の従来のパラダイムにおいてさえ、Tスコアのカットオフ値は不均一でした。2000年代初頭から、現在のパラダイムは骨折リスクによる治療にシフトしました。現在のパラダイムでは、主な予防は主要骨粗鬆症性骨折の10年リスクによって決定され、そのカットオフ値は地域により大きく異なります。カットオフ範囲は、低骨量10%が最近のスコットランドのガイドラインで、日本は15%、カナダとアメリカは20%です。

限定されたデータのため、我々は重要な疑問に回答することができませんでした。例えば、骨吸収抑制薬の中止はインプラントの失敗またはMRONJリスクを下げるのか、あるいは骨吸収抑制薬投与と手術のタイミングをどう調整するべきかなどの疑問です。同様に、我々のデータは、骨吸収抑制療法の期間がMRONJをどの程度予測するかを裏付けるものではありません。The European Calcified Tissue Societyは、MRONJリスクが低い場合には、骨吸収抑制療法を継続しながら歯科治療を受けるよう主張している一方で、MRONJリスクが高い患者では、BPの中止や、デノスマブの投与サイクルの終わりまで待つ事を推奨しています。

我々のシステマティックレビューは、最も最新かつ包括的で方法論的厳密性を備えた評価を提供します。非常に限定的なエビデンスから、骨吸収抑制療法はインプラントの失敗を減少させることが示唆されました。一方で、BP製剤はインプラント治療を受けた骨粗鬆症患者のMRONJリスクを1000人中約3人上昇させます。骨吸収抑制療法は、インプラントの失敗を超えた要因、例えば骨の健康状態、MRONJなどの有害作用、治療コストなどで行うか決めるべきです。エビデンスの確実性を挙げる質の高いランダム化比較試験が必要です。例えば、骨吸収抑制薬の術前の中止が歯科的イベントを減らすのか、骨イベントを増加させるのかどうかです。同様に、調整済み解析を含み、低用量骨吸収抑制薬長期投与患者を対象とし、10年後の歯科インプラント生存率を評価する、より質の高い対照研究が推奨されます。

まとめ

対象とした研究のエビデンスレベルがかなり低いため、結果がバラバラな感じになっていますが、このレビューでは、「骨吸収抑制療法はインプラントの失敗を減少させる」という結論に至っています。ただし、メタアナリシスをみると圧倒的にChengの論文の患者数が突出しており、weightが80%を超えています。そのため、ほかに多くの患者数を扱う論文が追加されるとまた結果が変わる可能性はありそうです。ただし、今現在、低用量の骨吸収抑制薬を投与されているからといってインプラントの失敗率があがるわけではないとはいえそうです。

ただし、低用量骨吸収抑制薬を投与している患者にインプラント治療を行うとMRONJリスクが上がるようです。ハザード比は4.09で95%信頼区間もそこまで大きくないので、インプラント自体がMRONJリスクになるという事はいえるでしょう。ただし、骨吸収抑制薬を投与されていない場合0.1%、投与されている場合には0.4%の発生率ということなので、そこまで多いわけではないですね。万が一MRONJになった場合、腐骨がどこまで拡大するかですが、開業医レベルでは対応できない事もありえますので、その際にインプラントを埋入した判断、責任といった事が問われる可能性はありますので、事前に充分な説明と承諾が必要かと思います。

過去に読んだ骨吸収抑制薬とインプラント治療の論文

MRONJとインプラント治療vol.1
MRONJとインプラント治療vol.2
MRONJとインプラント治療vol.3

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