普通の歯科医師なのか違うのか

オールセラミックとメタルセラミックどっちが予後がいい?インプラントマルチユニット編

 
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5代目歯科医師(高知市開業)
東京医科歯科大学卒業(47期)
同大学院修了
【非常勤講師】
徳島大学
岩手医科大学

今回はインプラント支台マルチユニット

前回同じ著者の書いた単冠編を読みましたが、今回は続編?がみつかりましたのでそのまま読み進めたいと思いますが、あれ?前回は天然歯のみだったのですが、今回はインプラント支台が主役のようです。もしかして間にもう1本あったんですかねえ・・・。うまく探せてない模様です。

前回のブログは以下のリンクより

A systematic review of the survival and complication rates of zirconia-ceramic and metal-ceramic multiple-unit fixed dental prostheses
Clin Oral Impl Res. 2018;29(Suppl. 16):184–198.
PMID: 30328185 

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/30328185

Abstract

Objectives: The aim of the present review was to compare the outcomes, that is, survival and complication rates of zirconia-ceramic and/or monolithic zirconia implant-supported fixed dental prostheses (FDPs) with metal-ceramic FDPs.

Materials and Methods: An electronic MEDLINE search complemented by manual searching was conducted to identify randomized controlled clinical trials, prospective cohort studies and retrospective case series on implant-supported FDPs with a mean follow-up of at least 3 years. Patients had to have been examined clinically at the follow-up visit. Assessment of the identified studies and data extraction was performed independently by two reviewers. Failure and complication rates were analyzed using robust Poisson regression models to obtain summary estimates of 5-year proportions.

Results: The search provided 5,263 titles and 455 abstracts. Full-text analysis was performed for 240 articles resulting in 19 studies on implant FDPs that met the inclusion criteria. The studies reported on 932 metal-ceramic and 175 zirconia-ceramic FDPs. Meta-analysis revealed an estimated 5-year survival rate of 98.7% (95% CI: 96.8%–99.5%) for metal-ceramic implant-supported FDPs, and of 93.0% (95% CI: 90.6%–94.8%)
for zirconia-ceramic implant-supported FDPs (p < 0.001). Thirteen studies including 781 metal-ceramic implant-supported FDPs estimated a 5-year
rate of ceramic fractures and chippings to be 11.6% compared with a significantly higher (p < 0.001) complication rate for zirconia implant-supported FDPs of 50%, reported in a small study with 13 zirconia implant-supported FDPs. Significantly (p = 0.001) more, that is, 4.1%, of the
zirconia-ceramic implant-supported FDPs were lost due to ceramic fractures compared to only 0.2% of the metal-ceramic implant-supported
FDPs. Detailed analysis of factors like number of units of the FDPs or location in the jaws was not possible due to heterogeneity of reporting. No studies on monolithic zirconia implant-supported FDPs fulfilled the inclusion criteria of the present review. Furthermore, no conclusive results
were found for the aesthetic outcomes of both FDP-types.

Conclusion: For implant-supported FDPs, conventionally veneered zirconia should not be considered as material selection of first priority, as pronounced risk for framework fractures and chipping of the zirconia veneering ceramic was observed. Monolithic zirconia may be an interesting alternative, but its clinical medium-to long-term outcomes have not been evaluated yet. Hence, metal ceramics seems to stay the golden standard for implant-supported multiple-unit FDPs.

目的:インプラント支台のジルコニアセラミックマルチユニットと、メタルセラミックマルチユニットについて生存率と不具合について比較することです。

方法:インプラント支台の固定性補綴で3年以上のフォローアップがあるRCTと前向き、後ろ向きコホート研究を検索抽出しました。患者はフォローアップ時に臨床的に診査されてきました。研究の抽出や除外は2人のレビュアーによって行われました。生存と不具合の確率にはロバスト・ポアソン回帰モデルを用いて5年間の推定値を計算しました。

結果:検索の結果、5263のタイトルと455の要旨が見つかりました。フルテキストは240あり、19のインプラント補綴の論文が基準に該当しました。は932のメタルセラミックと175のジルコニアセラミック治療が行われていました。メタアナリシスの結果、5年推定生存率はインプラント支持メタルセラミックは98.7%、インプラント支持ジルコニアセラミックは93.0%で有意差が認められました。13の論文では781のインプラント支持メタルセラミック治療が行われ、破折やチッピングが5年で起こる推定確率は11.6%でした。ジルコニアセラミックの場合は50%であり、メタルセラミックとの間に有意差が認められました。またジルコニアセラミックのセラミック破折によるロスト確率は4.1%であり、メタルセラミックの0.2%と比較すると有意に高い結果となりました。補綴物のユニット数や位置に関してはうまく比較することができませんでした。インプラント支持のモノリシックジルコニアに関しては基準に該当する研究が見つかりませんでした。さらに両者の審美的な結果に関する結論も見つかりませんでした。

結論:インプラント補綴に関しては、従来のジルコニアフレームオールセラミッククラウンはフレームワーク破折やチッピングが起こりやすく、第1選択とするべきではありません。モノリシックジルコニアは興味深い材料ですが、臨床的に中長期の予後が評価されていません。やはりメタルセラミックはインプラント支持マルチユニット補綴においてもまだゴールドスタンダートであることが示唆されました。

基本的な解析方法は前回とあまり変わりは無いようです。これからはまた適当に訳していきます。疑問に思われた方は原文をご確認いただきますようお願いいたします。

緒言

 Pjeturssonの2012年のシステマティックレビューによるとインプラト支台の固定性マルチユニット補綴の5年推定予後は95.4%でした。技術的な不具合に関してはベニア材料の破折が13.5%、スクリューの緩みが5.3%、脱離が4.7%でした。Pjeturssonはインプラント支台のマルチユニット補綴は妥当で予知性のあるオプションであり、歯科医師は信頼できる材料を決めるべきだと述べています。

 そういった理由から、今回の研究の目的は、インプラント支台のジルコニアセラミックマルチユニット(あればモノリシックジルコニアも)と、メタルセラミックマルチユニットについて生存率と不具合について比較することです。

実験方法

論文を抽出して43の論文がピックアップされています。その中で単冠用のスタディとして35をマルチユニット用のスタディとして19をピックアップしています。重複論文は単冠とマルチユニット両方に関する研究です。

除外基準として人ではない研究や3年以上フォローされていないとか当たり前なやつが多いですが、1つだけ重要な除外基準としてフルアーチでのインプラント補綴が15%を超える研究は除外されています。

結果

研究の内容

19の論文がピックアップされていますが、16はメタルセラミックで3つがジルコニアフレームワークでした。メタルセラミックは2001~2015年まで(中央値2012)ジルコニアフレームワークについては2本が2014年、1本が2010年のパブリッシュでした。
11の研究は前向きコホートで8つが後ろ向きコホート研究でした。
そのうちの1つは6mmのショートインプラントと10mmインプラントをランダムに振り分けています(Romeo et al., 2006)。

患者は18歳から100歳!!!!です。途中でドロップアウトした患者数は平均で8.8%でしたが、1つの研究は25%以上でした。

インプラント支持のメタルセラミックを用いた16の研究では2289本のインプラント支台に993の補綴装置がセットされていました。73%がセメントリテインで27%がスクリューリテインでした。ジルコニアフレームワークを用いた3つの研究では、175の補綴装置がセットされていますが、セメントリテインはわずか15%で85%がスクリューリテインでした。
メタルセラミックでは2~6ユニット、ジルコニアセラミックでは3~5ユニットでした

生存について

生存はフォローアップ終了時点で補綴物がそこに多少の変化はあったとしても残っている事と定義されています。おそらく凄く小さいチッピングとかはセーフとかそういう感じではないでしょうか。

フォローアップ期間はメタルセラミックが平均6.3年、ジルコニアが平均5.1年となっています。

932のメタルセラミック補綴の失敗率は推定年率0.26%で5年に換算すると98.7%となりました。175のジルコニア補綴の失敗率は推定年率1.45%で5年に換算すると93.0%となり、両者には有意差が認められました。

研究デザインによる生存率の違いに関しても検討しています。11の前向きコホート研究の710の補綴物と6つの後ろ向きコホート研究の397の補綴物に関して分けて分析した所、前向きの5年推定生存率は97.9%、後ろ向きは98.5%で統計的な有意差を認めませんでした。

成功

成功はフォローアップ終了まで何の不具合もなかった場合を指します。
3つの研究から371のメタルセラミック補綴物に関して不具合について報告しており、5年間の推定不具合率は15.1%でした。逆にいうと84.9%は5年間全く不具合なく経過するということになります。ジルコニアセラミックに関しては不具合に関して報告している研究はありませんでした。

技術的な不具合

不具合に関しては論文によって定義や調査項目が異なるため、不具合の項目により対象となる補綴物の数などが違いますのでご注意ください。

12のメタルセラミックの研究と1つのジルコニアセラミックの研究では、アバットメント、スクリューの破折について分析しています。

スクリューの不具合はメタルセラミックでは4.1%でした。ジルコニアではスクリューの緩みの結果がないのでわかりません。ジルコニアは圧倒的にスクリューリテインが

不具合の比較

セラミックの破折とチッピングについては画一的な基準で報告されておらず、定義の方法で統計的な結果が変わることになりました。
13の研究による781のメタルセラミックでは5年推定セラミック破折とチッピングの確率は11.6%であり、ジルコニアセラミックの50%と比較すると有意差を認めました。ただし、これはジルコニアセラミックに関しては補綴物がたった13の結果でありかなり母数が少ないので注意が必要です
修理が必要なセラミックの破折に関してはメタルセラミックが4.7%、ジルコニアセラミックが2.5%であり有意差は認められませんでした。
しかし、フレームワーク破折による補綴物のロストに関してはメタルセラミックが0.2%だったのに対し、ジルコニアセラミックは4.1%であり、有意差が認められました。
6つの研究において476のセメントリテインメタルセラミックの5年推定脱離率は1.9%でした。ジルコニアセラミックについては脱離に関しては報告されていません。

生物学的な不具合

インプラント周辺の粘膜に関する不具合は色々な方法で報告されています。インプラント周囲炎または軟組織の不具合に関して5年推定確率はメタルセラミックでは3.1%でした。73の補綴物を報告した1つの研究を元にするとジルコニアセラミックでは10.1%であり、メタルセラミックと比較して有意に高い結果となりました(あくまで1つの研究だけの結果をベースにしているので信頼性は他よりも低いです)。

想定される骨のリモデリングを超えて2mm以上の骨吸収が起こる確率はメタルセラミックでは5年で1.0%でした。ジルコニアセラミックではデータはありませんでした。

審美的な不具合

94本のメタルセラミックを扱った2論文、73本のジルコニアセラミックを扱った1論文で審美的な問題を報告しています。しかし、審美的な問題で再製が必要になったかなど詳細がわかりません。

考察

メタルセラミックに比べてジルコニアセラミックの5年生存率が悪かった理由として致命的な補綴物の破折が有意に多いせいだ、とこの論文では結論づけています。次点でベニア部の大きな破折としています。

Catastrophic fracture of the FDP occurred significantly more often at the zirconia-ceramic FDPs than at metal-ceramic FDPs.

Another often observed reason for failure was extended chipping of the veneering ceramic (Sailer et al., 2017).

まとめ

インプラントを支台としたマルチユニットの固定性補綴物でもメタルセラミックの方が有意に5年生存率が高い結果となりました。

最近はPFMをやらない技工所も多いと聞いています。陶材焼付用のメタルも高くなってますしね。ただ、長期予後という観点からするとやはり簡単に捨ててはいけない技術ではないでしょうか。

ただし、今回の研究ではメタルセラミックはセメントリテインがかなり多く、ジルコニアはスクリューリテインが圧倒的に多いという対照的な補綴状況になっています。これを一概に比較できるのか?という疑問は残りますよね。

インプラントの歯種、位置、支台歯数などにより使い分けている可能性もあるわけなのでそこら辺をもうちょっと詳細を解析するにはもっと論文数がないと難しいのではないかと思います。ジルコニアの論文が3本しかないのも結果に影響したと思われます。

ジルコニアフレームオールセラミッククラウンだとチッピングや破折が多いけどモノリシックだったらまた結果違うかもしれません、と考察にも書いてありますが、今回の研究では残念ですがモノリシックの論文は入っていませんでした。

これはまだ今後の検討課題とさせて頂きます。

今まで読んだ文献

今まで読んだ文献に関しては以下のリンクをご参照ください。

https://www.dentist-oda.com/category/歯科/文献/

メニューの歯科>文献からも辿れます。
自分が適当に読みたいものを読んでいるので一貫性はない雑食ですがご了承ください。

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