普通の歯科医師なのか違うのか

全部床義歯の後縁を顎位の診査に使う

2020/10/19
 
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5代目歯科医師(高知市開業)
東京医科歯科大学卒業(47期)
同大学院修了
【非常勤講師】
徳島大学
岩手医科大学

後縁をナメてはいけません

全部床義歯の後縁は上顎は左右のハミュラーノッチを結び、下顎はレトロモラーパッドの1/2~2/3を被覆するように教科書的には書いてあります。

上顎はそこまで極端に短い義歯というのはあまり見かけませんが、下顎に関してはよく見ます。

以下の様な明らかな紐状義歯は最近ではそこまでの頻度では見ませんが、それでもたまに見ます。おそらくこれを読んでいる方でこういった全く義歯の要件を満たしていないものを作っている先生はいないと思います。こんな義歯では咬合力を負担できませんし、義歯がプカプカ浮いてくるでしょう。

ここまで酷くなくても下のような左右で長さが違う義歯というのは結構見ます。おそらく右側はレトロモラーパッドまで到達していますが、左側は到達していません。

この場合はそこまで浮いてこないかもしれませんし、ある程度の面積を被覆していますので患者さんも強い痛みを訴えたりしないかもしれません。

しかし、このケースは残念ですが、義歯製作後から調子が悪かったということで再製作となってしまいました。

何が悪かったかというと顎位が間違っていました。

上下の後縁をしっかり揃えると指標が増える

上下の後縁、顎間関係が適正な場合、上下の義歯の後縁は以下の写真の様な感じで前後的な位置が揃います。

上顎後縁のハミュラーノッチとレトロモラーパッドは翼突下顎ヒダというヒダで連結されており、以下の写真のような位置関係にあります。かなり近い位置にあるのがわかります。

また、顎位が適正な場合、上下の後縁を結んだ線を左右両側で見るとハの字になることが多いです(このアングルの写真がなかったので焦って写真を撮ったら少しイマイチな写真になってしまい、すいません)。

つまり、前後的にも左右的にも水平的な顎位が問題ないかの指標となります。

れは完成義歯でなくても、咬合採得時やろう義歯試適の際の確認事項として有用です。

どこでこの指標を活用するか

私は咬合採得時にメインに使います。咬合採得時の顎位の採得が適切かどうかを後縁の位置関係も利用しながら判断します。ずれていそうなら口腔内で再度今採得した顎位が再現性があるのかないのか等を確認します。

しかし、蝋堤同士の接触で顎位のズレに関してはなかなかわかりません。そのため、最終的にろう義歯試適時に再確認を行っています。顎位のずれに関しては人工歯が排列されていた方が遙かに判断しやすいです。

ろう義歯試適時に顎位が問題ないことを確認しつつ、後縁の前後的、左右的な位置関係でさらにチェックをします。

顎位が前方にでた場合

前方チェックバイトを採得した所ですが、前後的な後縁の位置関係がずれているのがおわかり頂けると思います。
顎を前方に出しているから当然なのですが、普通に噛ませたときに後縁がこういう位置関係になれば顎位が前すぎる可能性がありますので注意が必要です。

顎位が側方にずれている場合

咬合採得時に咬合床を後ろからみて後縁の左右的な位置関係のハの字がずれていたので、顎位が右にずれているだろうな、と思いながら排列しています。上下蝋堤の位置関係からも右に顎位がずれているだろう事が考えられます。

私は必ずろう義歯試適を行いますので、そこで修正すればよいと考えています。咬合採得はワックスの軟化等がどうしても完璧にいかない事も多いですし、最低でも前歯が並んだ方が顎位のずれが明確に分かります。この症例はやはりろう義歯試適時に右にずれていたことがわかり、修正しました。

しかし、ろう義歯試適を行わない歯科医院では咬合床で顎位が合っている必要があります。私は咬合床で顎位をピタリと合わせる自信はありません。ろう義歯試適時に顎位がある程度あっていると判断しても中心位チェックバイトをとって下顎模型をリマウントします。微妙にずれている事が多いからです。微妙な顎位のズレを咬合調整だけで補正できるほど人工歯の咬合面は大きい物ではありません。

そういう意味で私は絶対にろう義歯試適は行った方がいいと思います。

まとめ

後縁を適切な位置に設定する、というのは粘膜の支持や維持安定に重要なだけではなく水平的な顎位のチェックとしても使用できます。

全部床義歯は顎位を診査するのもなかなか難しいです。上下の義歯やろう義歯をうまく抑えつけながら顎位が適切であるかを判断しないといけないので、そこらへんはテクニックを問われます。

そういう意味でもチェック項目は1つだけではなく複数個持っていると精度が上がります。例えば普通に噛ませてみて問題なかったとしても、後縁の上下的な位置がおかしければ疑ってみた方がよいと思います。疑って診査しても再度やはりここだ!ということならばそこでいけばいいと思います。最近は顎位が不安定な人が結構多いですから。

下顎の左右の後縁の位置が違う義歯はよく見ます。その場合後縁で顎位を判断することが難しくなりますので、そういった事がないように印象用のトレーをしっかり合わせましょう。

全部床義歯臨床のコツ編

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東京医科歯科大学卒業(47期)
同大学院修了
【非常勤講師】
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