普通の歯科医師なのか違うのか

時代に逆行し筋形成する

2020/10/19
 
この記事を書いている人 - WRITER -
5代目歯科医師(高知市開業)
東京医科歯科大学卒業(47期)
同大学院修了
【非常勤講師】
徳島大学
岩手医科大学

時代に取り残される、結構ですね。

世の中、なんかよくわからないですがBPS義歯が流行っているようです。
正直私はBPSはあまり興味がないのでそこまで詳しく知りません。
私は全部床義歯が専門で、一途にずっとコンパウンドを筋形成して印象を取ってきましたし、今後もおそらくそうすると思います。
今日は筋形成のお話

筋形成は何回も盛り足せる?馬鹿いってんじゃないですよ

コンパウンドによる筋形成は何回でも熱を加えれば修正出来る、と思っている方がいらっしゃいますが、それは違うと思います。

何回も熱を加えればそのうちどこかが焦げます。焦げるとコンパウンドは変性します。
また、盛り足すとその分軟化しないといけないコンパウンドの量が多くなり、絶対にどこか軟化不足が起きて形が崩れてきます。

そのため、コンパウンドはできるだけ量が少なく、熱を加える回数もできるだけ少ない方がよいのです。
なので、結構な量盛り足すぐらいならその部分を全部はずしてもう1回やり直した方が綺麗な形になることも多いです。
補綴科の若い医局員が1時間ぐらいアーでもない、コーでもない、とこねくり回した筋形成を私は全てバキバキに折るところからよく始めました。
それはイジメではなくて、そちらの方がより短い時間で綺麗にできるからです。

筋形成を手直しせずにやってみる

では、筋形成を一度も手直しせずに一周巻いたことがあるか?ときかれるとそれはなかったので、実際やってみることにしました。

勿論ですが、これをやるには予めある程度理想的に仕上がった個人トレーが必要です。そういった個人トレーを作るためにはよい概形印象が必要ですので、そこらへん、同じにならない、と怒鳴り込んでこられても困ります。

調整を終えた個人トレーです。この時点で後2mmぐらいコンパウンドを全周巻けば完了するようになっていなければいけません。

レトロモラーパッド部から巻いていきます。
レトロモラーパッドの印象が開口時か閉口時かみたいな事を議論する意味は私にはよくわかりません。柔らかい組織ですし、少し押した方が辺縁封鎖されると思いますので、ちょっと押す感じで印象をとります、私は。

後縁からまいた方がやりやすいです。

なぜなら、後縁から巻いた方が咬筋切痕や頬棚部の長さが想像しやすいからです。なので、私は必ずレトロモラーパッドから前に向かって筋圧形成します。

頬側を巻きます。個人トレーから2mm伸ばせばいい、個人トレーの中に入り込まないように注意します。

頬側が完了しました。一切手直しはせずに次の場所、次の場所に向かっています。

舌側も基本的に後ろから巻いていきますが、1回で半分巻きます。
後ろからコンパウンドを形作った方が、後顎舌骨筋窩や舌側のSカーブ等のイメージが作りやすいです。

はい全周巻きました。ちょっと最後に舌下腺部にコンパウンドが入っちゃいましたね。
左右舌側で長さが少し違うので、ここから個別の細かい修正をしますが、大体ここまで一周写真を撮りながら巻くのに15分といったところです。
以前の部位に全く戻らず1周巻いています。
30分あれば精密印象まで完了できます。
このやり方の方が1箇所で右往左往するよりも全体的な外形イメージが捉えられるのでよいと思います。
コンパウンドとオトモダチになるとこういったことが可能になります。

基本的に最終の義歯の形態が明確にイメージできているかが筋形成が上手くいくコツになります。イメージが出来ていれば個人トレーの調整も早くできますし、イメージがなければいつまで経っても進みません。
それはどの歯科治療でも同じでしょう。
なので、筋形成を上手くなるコツといわれれば、


上手い先生の義歯の形をいっぱいみた方がいいですよ。

と私は言います。
自分の場合師匠が大家だったので一杯見ることが出来ましたが・・・

結局BPSしたって筋形成したって最終的な形態イメージに差が起こるはずはない・・・はずなんですから、義歯外形のイメージって結構大事だと思いますよ。

コンパウンドのいいところって筋形成した時点で吸着がどれぐらいありそうか分かるという所で自分はそれがいいと思っているので、別の方法にいこうとは思わないです。

コンパウンドとオトモダチになる

コンパウンドがくっつく

コンパウンドを触る前に触る指を水かお湯にいれてからコンパウンドを触ればくっつきません。

コンパウンドが個人トレーからたれる

スティックの場合、スティックをクルクル回して均等に軟化しながら盛り付けます。この時に柔らかくしすぎるとたれます。どうせ盛り付けてから再度軟化しますから、この時に滅茶苦茶柔らかくする必要はないと思います。

個人トレーに盛り付けて修正時にたれる場合、熱しすぎです。
また表裏全面熱するとダラーとなりますので、裏は熱しないようにすればそこまでたれません。

コンパウンドが焦げる

1箇所を熱しすぎです。炙る時間や範囲を少し考えた方がいいです。
焦げてしまったコンパウンドは外してしまいやり直した方がいいです。

終わり

オトモダチになれればかなり早く一周まけます。
時代に逆行しているのかもしれないですが、ゴールが同じであれば私は慣れた方法で義歯製作を続けていきたいと思っています。

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5代目歯科医師(高知市開業)
東京医科歯科大学卒業(47期)
同大学院修了
【非常勤講師】
徳島大学
岩手医科大学

Comment

  1. 佐々木 拓也 より:

    初めてコメントさせていただきます。
    自分もコンパウンドで筋形成派です。
    はじめから義歯の勉強するにはうまい先生の外形をみてイメージして、さらに自分でもやっていき、イメージに近づけるようにしてきました。
    BPSも義歯の外形をイメージできているからこそ、できるものだと思います。
    ところで、師匠とは鈴◯先生でしょうか?
    何度も講演会に行きました。先生の書籍から何度もイメージの練習をしてきました。

    • 織田 展輔 より:

      はい、コメント有り難うございます。
      師匠はその通りでして、もう20年の付き合いになります。
      義歯のイロハをたたき込まれたといっても過言ではありません。
      去年まで師匠の講座の非常勤講師をしておりましたが、退官に伴い引退しました。

  2. 一山 茂樹 より:

    私も同意見です。筋形成の方法も同じです。同じ考えの先生かいらして心強い限りです。

    • 織田 展輔 より:

      ありがとうございます。結果が同じレベルなら慣れた方法でよいのではないかと考えています。このシステムじゃないと駄目だ!的な事をおっしゃる先生がいますが、私は道は1つではないと思います。

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