普通の歯科医師なのか違うのか

下半身の姿勢も最大舌圧に影響を与える

 
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5代目歯科医師(高知市開業)
東京医科歯科大学卒業(47期)
同大学院修了
【非常勤講師】
徳島大学
岩手医科大学

姿勢は大事、とよくいいますが

食事中の姿勢が与える影響はかなり大きいことが知られています。有名なのは足底接地や頸部屈曲、リクライニングなどでではないでしょうか。

健常な人間でも姿勢が悪ければ誤嚥しやすくなると考えられます。咽頭期にリスクがある患者さんなら尚更です。

今回は姿勢が舌圧に与える影響についてパブリッシュされたばかりの論文となります。広島大学の補綴の先生方ですね。

Improper sitting posture while eating adversely affects maximum tongue pressure
Mineka Yoshikawa, Kanako Nagakawa, Reiko Tanaka , Kanako Yamawaki, Takahiro Mori, Aya Hiraoka, Chiaki Higa, Yuichi Nishikawa, Mitsuyoshi Yoshida, Kazuhiro Tsuga
J Dent Sci. 2021 Jan;16(1):467-473. 

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33384836/

Abstract

Background/purpose: Although many studies have examined the efficacy of neck and trunk positioning during eating, few studies have examined how the positioning of the lower extremities affects swallowing function. The purpose of this study was to examine how tongue pressure, which is an important factor during swallowing, is affected by eating postures in bed and wheelchair.

Materials and methods: A total of 43 healthy adults (13 men and 30 women; 29.0 ± 5.9 years) and 33 elderly individuals requiring long-term care (14 men and 19 women; 83.6 ± 7.8 years) participated.In both healthy and elderly participants, tongue pressure was measured in four different postures: a good and poor postures in bed (postures 1 and 2, respectively), and a good and poor postures in a reclining wheelchair (posture 3 and 4, respectively).

Results: Among the healthy participants, the mean tongue pressure was significantly higher in posture 1 (40.2 ± 7.24 kPa) than in posture 2 (37.6 ± 8.68 kPa) or posture 4 (38.2 ± 8.14 kPa) (P < 0.05). Tongue pressure was also significantly higher in posture 3 (41.3 ± 7.75 kPa) than in either posture 2 or 4 (P < 0.05).Among the elderly participants, the median tongue pressure in posture 1 (16.9 kPa; interquartile range [IQR], 9.4-21.6 kPa) was significantly higher than that in posture 2 (14.1 kPa; IQR, 9.2-21.6 kPa). Tongue pressure in posture 3 (18.5 kPa; IQR, 14.2-26.0 kPa) was significantly higher than that in either posture 1 or 2, and posture 4 (15.9 kPa; IQR, 10.6-22.9 kPa).

Conclusion: Posture during eating can potentially affect tongue pressure.

背景:多くの研究で、食事中の首と体幹のポジショニングの有効性について検討されています。しかし、下肢のポジショニングが嚥下機能に与える影響について検討している論文は殆どありません。本研究の目的は嚥下の重要な要素である舌圧がベッド上、車いす上での食事姿勢により影響をうけるかどうかを検討する事です。

実験方法:被験者は43人の健常者(男性13名、女性30名、平均年齢29.0±5.9歳)と33人の要介護高齢者(男性14名、女性19名、平均年齢83.6±7.8歳)です。
 両群ともに舌圧を4つの異なる姿勢、ベット上でのよい姿勢(姿勢1)と悪い姿勢(姿勢2)、車いす上でのよい姿勢(姿勢3)と悪い姿勢(姿勢4)で測定しました。

結果:健常者の舌圧において、姿勢1での舌圧(40.2±7.24kPa)は姿勢2での舌圧(37.6±8.68kPa)または姿勢4(38.2±8.14kPa)より有意に高い結果となりました。また、姿勢3での舌圧(41.3±7.75kPa)は姿勢2、4より有意に高い結果となりました。
 高齢者群では、姿勢1での舌圧の中央値(16.9kPa)は姿勢2の舌圧の中央値(14.1kPa)より有意に高い結果となりました。姿勢3での舌圧の中央値(18.5kPa)は姿勢1,2、4(15.9kPa)より有意に高い結果となりました。

結論:食事時の姿勢が舌圧に影響する可能性が示唆されました。

ここからはいつもの通り本文を適当に要約します。誤訳もあり得ますので、気になったら実際の本文をご確認ください。

緒言

不適切な座り方は姿勢の悪化を招き、最終的に仙骨座りになってしまいます。座位での体幹の傾斜は全身的な筋肉の緊張や咳反射、排痰の困難さを招き、嚥下機能の低下、誤嚥リスクの悪化を引き起こします。

多くの研究で、食事中の首と体幹のポジショニングの有効性について検討されています。しかし、骨盤、体幹、首へと繋がる下肢のポジショニングが嚥下機能に与える影響について検討している論文は殆どありません。

姿勢の変化は頸部の筋や舌骨に影響の位置に影響を与えます。舌骨の位置は舌機能に影響を与えます。様々な研究から舌圧の減少は摂食嚥下障害の臨床的症状と関連性が示唆されています。

そのため、適切な姿勢の維持が重要である事を確かめるために、本実験において、食事時の姿勢が舌圧に与える影響について検討する事としました。

実験方法

被験者

被験者は20~39歳の健常者43名(男性13名、女性30名、平均年齢29.0±5.9歳)と67~96歳の要介護高齢者33名(男性14名、女性19名、平均年齢83.6±7.8歳)です。
要介護高齢者群は脳梗塞または他の疾患を経験し広島市のX病院に入院中で歯科医が訪問可能な人が選択されています。実験における姿勢がとれない、理解出来ないような人は除外されています。

姿勢と測定

姿勢1~4は以下の図のように設定されています。

姿勢2,4は足底接地もなく、かなり乱れた姿勢になっています。

全ての被験者は同じPT、STによって姿勢調整がされています。

舌圧はJMSの舌圧測定器により測定されています。

なお、原文では図3の右側に目線がなかったので、こちらのほうで追加させて頂きました。

結果

健常者の舌圧において、姿勢1での舌圧(40.2±7.24kPa)は姿勢2での舌圧(37.6±8.68kPa)または姿勢4(38.2±8.14kPa)より有意に高い結果となりました。また、姿勢3での舌圧(41.3±7.75kPa)は姿勢2、4より有意に高い結果となりました。
 高齢者群では、姿勢1での舌圧の中央値(16.9kPa)は姿勢2の舌圧の中央値(14.1kPa)より有意に高い結果となりました。姿勢3での舌圧の中央値(18.5kPa)は姿勢1,2、4(15.9kPa)より有意に高い結果となりました。

考察

良い姿勢1,3での舌圧が高かったことから、骨盤座りと足底接地が安定した舌圧の寄与する事が示唆されました。

通常の嚥下では、咽頭期の間に喉頭蓋が閉じると食道圧が一時的に低下します。食道圧の低下は、上部食道括約筋を境に圧力勾配のさらなる上昇と咽頭圧の上昇をもたらし、その結果、食塊の推進力が増大すると考えられています。

大腿骨や骨盤帯に付着している筋肉や靭帯などの軟部組織の存在により、下肢は骨盤帯のアライメントの変化の影響を受け、ひいては体幹を介して頸部に影響を与えます。姿勢2や4のように下肢を床や板の上に置かないと、下肢挙上に近い状態になり食道圧が上昇し、通常の嚥下圧では食塊の輸送が困難になります。しかし、この予測はビデオ透視下でのクロノメーター評価でしか証明できません。そのためさらなる検討が必要です。

まとめ

足底接地しないとパワーが出ない、というのはよく言われていることですが、今回の実験において舌圧にも影響がありそうだということがわかりました。やはりしっかりした姿勢をとり、それを維持するということは摂食嚥下障害者の食事には極めて重要であると考えられます。

普通の椅子とテーブルの場合は以下のように座ることが原則と成書に記載があります。(歯科が活躍するミールラウンド&カンファレンスより)

それにしても今回の要介護高齢者群の舌圧は中央値的にも20kPa以下の人が多く、30kPa以上は1人もいません。口腔機能低下症の診断基準を1つ満たしているわけで、口腔周囲のトレーニングが必要でしょうね。

私自身も姿勢が悪い、とよく言われており、注意しないといけないと思いました。PC作業用の椅子がよくないんですよね、これは新しい椅子を買うしかないということでしょうか。

口腔機能低下症に関しては以下の本がお勧めです。

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