普通の歯科医師なのか違うのか

液体のとろみを外すステップ

 
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5代目歯科医師(高知市開業)
東京医科歯科大学卒業(47期)
同大学院修了
【非常勤講師】
徳島大学
岩手医科大学

ブログ再開

ずっと忙しすぎてなかなかブログを更新する事ができませんでしたが、やっと少し落ち着きましたので、ブログを再開いたします。
5月は医院のサイトを作るのに大変で、6月は老年歯科医学会の仕事が色々と忙しく過ごしておりました。老年歯科医学会では広報委員としてツイキャスの配信を企画して実行したりとなかなか頑張ったつもりです。

12月の講演に向けて

12月に講演を依頼されましたのでそのための論文を読んでいきたいと思っていますが、だいぶブランクが空いてしまったので、まずは日本語でリハビリしたいと思います。

摂食嚥下障害の患者さんに対して水分にとろみを付与するというのは重要です。脳血管障害により嚥下反射の遅延が起こり、嚥下速度の速い液体は喉頭の閉鎖が間に合わないため、誤嚥してしまうということはよくあります。その他、口腔機能の低下でうまく食塊をまとめられない、食品のテクスチャにより誤嚥する、など様々な状態をとろみは改善してくれます。

脳血管障害の後の治癒とリハビリテーションにより摂食嚥下機能が上昇してくればとろみが必要なくなるわけですが、ではとろみを除外してよいかというのを判定するのはなかなか難しい所があります。VEやVFをそのたびにやるというのもなかなか大変ですし、VEやVFで完璧に判断できるわけでもないでしょう。

そこで、ここ数年良く使われるようになったのが、LIP(Liquid Intake Protocol)というものです。私が回診に行っているリハビリテーション病院でもこのLIPが採用されています。今回はこのLIPに関する文献を読んでみたいと思います。

Liquid intake protocol(LIP)に関する論文

とろみを外すプロトコルの開発と有用性・安全性の検討
福山 小百合, 重松 孝, 國枝 顕二郎, 石垣 亮太, 北條 京子, 田中 直美, 長尾 菜緒, 金沢 英哲, 高橋 博達, 藤島 一郎
 嚥下医学 (2186-3199)7巻2号 Page211-215(2018.09)

Abstract

【背景と目的】嚥下障害患者などの水分摂取では液体にとろみを付けることが一般的に行われる。しかし、とろみをなくす基準はこれまでにない。われわれは段階的にとろみをなくす簡便なツールとしてLiquid Intake Protocol(LIP)を開発し、有用性と安全性について検討したので報告する。【LIP】2段階で構成されており、第1段階(LIP-S)では水分・お茶、第2段階(LIP-SS)ですべての液体のとろみをなくして観察する。問題がなければトロミなし液状物の摂取制限をなくす。第1段階、第2段階をそれぞれクリアすると「Sフリー」、「SSフリー」と呼ぶ。【対象と方法】当院入院中の嚥下障害患者905症例中、LIP対象患者173例についてLIPの有用性を安全面について後方視的に対象患者の転帰、途中脱落、完遂後の発熱トラブルを検証した。結果:LIP完遂(「SSフリー」)は131例、途中脱落は42例(とろみ継続17人、Sフリー継続25人)あり、LIP脱落の全例に嚥下障害に関連する症状を認めた。LIP完遂後の8例に発熱を認めたが、全例が嚥下障害との関連は低かった。結論:LIPは簡便性と安全性を併せもつ有用性の高いプロトコルといえる。

LIPの概要

実施の適応と開始基準

もの凄くラフにまとめると、とろみ付きで水分を摂取している1日3食経口摂取患者で30ml水飲みテストでプロフィール1または2という、とろみなしでもいけるんじゃない?というレベルの人に行う卒業試験みたいな感じでしょうか。

中止基準

当然ですが、ムセが酷くなった、バイタルの変化、こちらの指示が守れない飲み方しかできない、などのとろみなしはやはり厳しいか?という場合は中止してとろみありで継続していきます。

LIPのやり方

LIPは2段階での試行を行います。食事場面や飲水場面での観察所見となります。

1)LIP-S
水分とお茶のみのとろみを解除します。
最初の3日間:昼のみ解除
昼のみ解除して中止基準に該当しない場合
4日目~7日目:1日中水お茶のとろみ解除

水・お茶のとろみなしで1週間問題ない場合次の2)LIP-SSに移行します。

2)LIP-SS
1週間全てのとろみを解除
これで問題なければLIP完了で全てのとろみを解除します。

最初に水とお茶を解除するのは誤嚥したとしてもそこまで害がない液体と考えられるからです。

実験方法と結果

浜松リハビリテーション病院で摂食機能療法を施行した905症例中、LIP適応と認めた175人(平均年齢72.6歳)にLIPを施行しています。

入院時、LIP開始前の摂食状況は以下のFILSに示す通りですが、やはりFILS8という軟菜食レベル程度の経口摂取を3食しっかり行っている人達がメインとなっています。常食まで後1息という状況と考えられます。

173名中131名がLIP-SSまで完走しとろみがオフとなりました。
LIP-Sでの脱落はおそらくムセやバイタルといった摂食嚥下機能的な問題が多く、LIP-SSでの脱落は認知面や本人の希望といったLIP-Sとは異なる要因で中止となっているケースが多くなっています。

考察

考察ではこの方法のLimitationについて書かれています。

LIPは2週間期間をとっていますが、それが適切かどうか
LIPをクリアした人がその後どういった転帰をたどっているかが未調査のため、本当にこの方法でよいかが検証できない

まとめ

とろみを使っていたら並食にはやはりいけません。また、次の転院先が施設や病院であれば、水分とろみの調整もしてくれるでしょうが、在宅でとろみの調整、嚥下食の調理は難しい事も多く、できればとろみは解除しておきたい、並食にしておきたいという事情はあります。

LIPはこれで絶対とろみから離脱できないという検査ではありません。中止した場合でもさらに状態がアップ、指示がちゃんと入るようになれば再度挑戦してクリアすることも充分あります。

食形態を上げる際に「まず3日ぐらいやってみて適切か判断する」という事を臨床的によく行われていると思います。1食や2食では献立に偏りもでますし、患者の昼、夜で状態に差があるかなどもわかりません。そういう意味で3日ぐらいは様子をみないとわからないというのはエビデンスはあるとは思えませんが、ある程度適切と考えます。

最初のLIP-Sでは、3日、4日で段階を踏んでいます。その後のLIP-SSでは1週間なので、ある程度慎重であると思います。LIPで2割以上脱落しているので、この期間はある程度適切ではないかと考えられますが、検証は必要でしょう。しかし、LIPに関する他の論文を探してみましたが、全くありませんので検証できませんでした。英語も1本もないのでこれは日本オンリーのやり方と考えてよいのではないでしょうか。論文1本だけで方法が完全に確立してしまうというのは危険な気がしますので、今後の報告を待ちたい所ですし、私の通っているリハ病院でも少し経過を聞いてみようと思った次第です。

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