普通の歯科医師なのか違うのか

PFZの予後とパラファンクションの影響

 
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5代目歯科医師(高知市開業)
東京医科歯科大学(現東京科学大学)卒業(47期)
同大学院修了
【非常勤講師】
徳島大学、岩手医科大学

またお休みしてしまったのですが、今後こそ仕事が少し落ち着いてきた・・はずなので、論文を読んでいきます。今回はパラファンクションのありなしによるジルコニアクラウンの予後についての論文です。フリーなので、どなたでもダウンロード可能です。

Zirconia CAD-CAM Crowns Behavior after Intraoral Digital Impression in Normal versus Dysfunctional Patients: 3 Years Retrospective Study
Francesco Ferrini , Francesco Gianfreda , Francesco Bova , Francesca Cattoni , Patrizio Bollero , Enrico Gherlone , Filiberto Mastrangelo 
Eur J Dent. 2024 Jul;18(3):942-949. doi: 10.1055/s-0043-1777350. Epub 2024 Feb 8.

PMID: 38331041

Abstract

Objectives: The aim of this study was to evaluate the clinical performance and possible complications of single zirconia crowns fabricated using an intraoral digital computer-aided design-computer-aided manufacturing (CAD-CAM) protocol in normal and dysfunctional patients after 3 years of follow-up.

Materials and methods: Seventy patients were included in this study. The teeth were prepared with a knife-edge marginal design, and temporary crowns were placed. Digital impressions were taken using optical scanning, and the frameworks were milled using the same technology. The veneering process was performed by the same dental technician. The occlusal corrections were made before cementation. The outcomes were evaluated in terms of survival, failures, and complications. The marginal adaptation of the crowns was also assessed.

Results: The digital protocol for single zirconia crowns resulted in satisfactory outcomes, with high rates of survival and minimal complications after 3 years of follow-up. The marginal adaptation of the crowns was excellent, with 93% of the restorations achieving the ideal marginal adaptation, while 7% had minor deviations. Parafunctions were found in 41.9% of the prosthetic rehabilitation, but no significant differences were observed between the normal and dysfunctional groups regarding the survival and complications of the crowns.

Conclusion: The digital protocol for single zirconia crowns is a reliable and predictable treatment option, even for patients with parafunction, when proper occlusal corrections are performed before cementation. The use of intraoral digital CAD-CAM technologies with optical impressions can simplify procedures, reduce the workflow time, and minimize the variables linked to the human factor.

目的:本研究の目的は、パラファンクションありなしの患者においてIOSで製作したジルコニア単冠の、3年フォロー後の臨床的なパフォーマンスと起こりうる合併症を評価することです。

実験方法:70名の患者が本研究に参加しました。支台歯のフィニッシュラインはナイフエッジとし、プロビジョナルレストレーションを仮着しました。光学スキャンによるデジタル印象を行い、フレームワークをミリングしました。前装は同じ技工士が行いました。セメンテーション前に咬合調整を行いました。生存、失敗、合併症についてアウトカムを評価しました。

結果:ジルコニア単冠のデジタルプロトコルは、3年フォロー後の高い生存率と最低限の合併症という満足な結果となりました。マージンの適合はとても良く、93%が理想的な適合を示した一方で7%は少し不適合でした。補綴処置をした41.9%にパラファンクションが認められましたが、生存率、合併症には有意差は認めませんでした。

結論:ジルコニア単冠のデジタルプロトコルは、セメンテーション前に咬合調整をすることで、パラファンクションを有する患者においても信頼性、予知性のある治療オプションです。光学印象を用いたデジタルCAD/CAM技術は、処置手順を単純化、製作時間の短縮、人による変動幅を最小限に抑える事が出来ます。

ここからはいつもの通り本文を訳します。誤訳もあり得ますので、気になったら実際の本文をご確認ください

緒言

最近の歯科において、患者の不快さを最小限に抑えながら歯の機能と審美性を回復するという目的で、先端技術と材料が使用されます。石膏模型を用いた従来の印象法と陶材焼付鋳造冠は、長い間インプラント支持補綴物のゴールドスタンダードでした。しかし、従来の方法にはいくつかの欠点があります。時間がかかる、高額な人件費と設備を要する時間のかかる複雑な製作工程。品質が不安定な材料が多数、そして印象採得時の窒息の危険性、吐き気、味覚刺激などです。

これらを克服するために、CAD/CAM技術がますます用いられるようになっています。工程を単純化し、患者の受け入れを改善し、製作時間の短縮、人による変動幅の最小化などが期待できます。最近のCAD/CAM切削システムは、光学、レーザーによる口腔内スキャナーとグラフィックソフトウェアのコンビネーションであり、ジルコニアクラウン製作によく使用します。これらはよりポピュラーになっていくでしょう。特に顎間距離が不適切な場合においては(開口量が少なくて従来の印象が難しいという意味?)。

ジルコニアクラウンのデジタルプロトコルの利点以外では、クラウンの破折、チッピング、その他の合併症が報告されています。論文は、これらの失敗に対する可能性のある理由を示唆しています。例えば、ジルコニアとセラミックの接着、クラウンの欠陥、セメンテーションの欠陥、咬頭干渉やパラファンクションなどです。

特に、パラファンクションは習慣性、無自覚な行為であり、歯、顎関節、筋にダメージを与える可能性があると定義されています。

これらの習慣には、ブラキシズム(グラインディング、クレンチング)、咬爪癖、異物を噛む、トゥースウエア、顎関節症、補綴物の破折などを起こす可能性のあるその他の口腔習癖が含まれます。

Leitãoらによるシステマティックレビューでは、894名1657本の単冠修復を対象とし、マージンの完全な適合が高い成功率を示したことを明らかにしました。ただし、ブラキシズム症例のサブグループでは顕著な例外が認められ、生存率は31.60%にとどまりました。これは、ブラキシズムがジルコニア修復の耐久性と保全に有意に影響することを示唆しています。

一方で、Tartagliaらは開業医における303本のジルコニア修復の7年間のアウトカムを評価し、生存率推定値が0.966、累積生存率が94.7%であることを報告しました。しかし、16本(5%)の修復物、支台で、ポーセレンの破折などのトラブルが認められました。これはパラファンクションを含む色々な要因の可能性が考えられるトラブルです。

そのため、歯科専門職は、患者がパラファンクションを有しているかを評価し、適切な治療またはナイトガードやその他のオーラルアプライアンスなどによる保護を提供しなければいけません。

デジタルCAD/CAM技術は、手順の効率化、患者のコンプライアンス向上、ワークフロー時間の短縮に大きな可能性を秘めている一方で、その応用には徹底したトレーニングと専門知識が必要です。

本研究の目的は、デジタルプロトコルで製作したジルコニア単冠の生存率、失敗、合併症などについて、正常有歯顎者、パラファンクション患者を対象に3年間フォローアップを行い、それらの関連性を評価することです。

実験方法

研究デザインと被験者

本研究は後ろ向き研究で、2011年~2014年までにVita Salute Universityを訪問した70名のクラウン修復が必要な患者が対象です。

補綴治療前に全ての研究参加者からインフォームドコンセントを得ました。

採用基準は、18~65歳、片顎あたり3要素を超える補綴治療を受けていない、補綴治療をしていない失活歯を有しない、妊娠していない、咬合治療を受けていない、としました。

人口統計学的データや、治療内容、術後アウトカムなどのデータは患者の診療録から抽出しました。本研究にはクラウン修復が必要な患者が含まれています。全身疾患の既往がある人や、クラウン修復に影響を与える可能性がある口腔内の状況を有する人は対象から除外しました。

デジタル印象とクラウン修復過程

支台歯形成では、ナイフエッジのフィニッシュラインを設定し、同日にコンポジットレジン製のプロビジョナルレストレーションを装着しました。歯肉の回復のため8週間後に、Lava Powder for Chair-side Oral Scannerを用いデジタル印象を行いました。製造元の推奨により歯に薄い粉をふり層を形成しました(図1、図2)

適切な歯肉圧排を行うため、000コードと0コードを用いて2重圧排を行いました。

歯肉縁は、パウダーの過剰や気泡、不明瞭な領域などの歪み要素が無い状態で、PC画面上で拡大表示したデジタル印象画像により評価を行いました。隣接歯も同様です。何か問題が見つかった場合、スキャンをやり直しました。

対合歯列のために2回目のスキャン、咬合記録のために3回目のスキャンを行いました。

デジタルスキャンが問題無ければ、フレームワークのデザインと3M ESPE Lava Form CNC Mill systemによるミリングを行いました。

前装には、リューサイトベースの材料を用い、全て1名の技工士が行いました。咬合調整は、ダイヤモンドバーを用いてグレージング前に行いました。

セメンテーション前に、全ての支台歯を70%アルコールにより注意深く清掃し、エアーにより乾燥しました。セメントはデュアルキュアのセルフアドヒーシブセメント(RelyX)を使用しました(図3~5)。

データの収集

性別、年齢、パラファンクション、マージンの適合、クラウンの位置を記録するためにデータフォームを使用しました。麻酔と客観的評価の後に患者を選択しました。もし、the Smith and Knight’s
index(Tooth wearの指標)が2を越えており、酸蝕の徴候がない、さらに質問表を加え、パラファンクションを判断しました。マージンの適合はFDIの推奨に従い探針を用いて評価しました。以下のコードを使用しました。

A:臨床的にギャップを認めません。歯と修復物の境界が調和的に移行しています。
B:マージンの適合は理想とは言えませんが、研磨により理想的な状況にアップグレードできるかもしれません。修復物の小さなチップは、研磨により除外できる可能性があります。また、ちょっとしたギャップはプローブで感知可能な50μm以上、150μm以下程度のものでした。
C:辺縁漏洩、変色がマージンの境界エリアに限局して認められます。マージンギャップは150μmを超えていますが、250μm以下でありプローブで容易に触知できます。周辺組織や歯にダメージなしで修正する事はできませんが、放置すれば、長期的にネガティブな結果をもたらすとは考えられない程度です。いくつかの小さな周辺部のひび割れが認められましたが、これらが長期的な影響を及ぼす可能性は低いでしょう。
D:局在的に250μmを超えるギャップがあり、象牙質の露出があるかもしれません。予防的な理由で修復が必要です。
E:全体的に250μmを超えるギャップが認められるか、修復物が緩く、これ以上のダメージを防ぐために交換が必要な状況です。あるいはマージン部に大きな破折があり、材料の喪失が修復不可能なほど広範囲です。

12,24、36か月後に、クラウンのチッピング、破折に関するデータを追加して再評価しました。クラウンの失敗は、除去が必要な状態と定義しました。クラウンの合併症は、機能、審美に影響を与える1つ、またはそれ以上のイベントとして考えました。
合併症、チッピング、破折についての追加のデータを記録しました。

統計解析

統計解析にはバイナリロジスティック回帰分析を用いました。これは、二項従属変数といつ以上の読変数との関係をモデル化するために用いられる回帰分析の1つです。SPSS(verの指定なし)を使用しました。

結果

本研究では70名の患者が採用されました。男性39名、女性31名で、平均年齢は45.9±11.6歳(24-75)でした(表2)(注:論文では表1と表2が取り違え)。

86本のクラウンを患者に装着しました。そのうち13本が前歯部(切歯9本、犬歯4本)、73本が臼歯部(小臼歯27本、大臼歯46本)でした。36本(41.9%)についてはパラファンクションを有する患者に、残り50本(58.1%)はパラファンクションのない患者に装着しました(表1、表3)。

ベースライン時に、わずかな咬合調整が必要だったのはクラウン全体の11.6%でした。77.9%が適合でA評価でありギャップを認めませんでした。適合B評価が22.1%、C評価以下は認めませんでした。フォローアップ12か月後において、8つの冠でチッピングを認めました(パラファンクションあり5、なし3)。また患者2名に知覚過敏がありました(パラファンクションあり1、なし1)が、その後のリコール時には認めませんでした。二次カリエス、失活、歯肉退縮、歯周病などによる抜歯はありませんでした。24か月後のフォローアップにおいて、2つのクラウンのみにチンピングを認めました。両方ともパラファンクションありの患者でした。さらなる合併症は認められませんでした。36か月後のフォローアップにおいて、14本のクラウンにチッピングが認められました(パラファンクションあり7、なし7)。さらなる合併症は認められませんでした。トータルで、36か月のフォローアップ期間でチッピングが24本(27.9%)、2本のクラウンが失敗しました(図5、図6)。

パラファンクションの患者に装着した冠はパラファンクションなしの患者よりチップしていました(オッズ比2.54、95%信頼区間0.97-6.67、p=0.575)。咬合調整が必要だった冠は必要でなかった冠よりもチップしていました(オッズ比3.00、95%信頼区間0.78-11.50、P=0.109)。適合B評価の冠はA評価よりもチップしていました(オッズ比5.71、95%信頼区間1.91-17.05、p=0.002)(表4)。

第二段階のデータ解析を実施し、パラファンクションの有無が、合併症、咬合調整、適合スコアとの間に特異的な相関関係を認めるかを検討しました。パラファンクションの患者において咬合調整が必要だった場合、パラファンクションなしで咬合調整が必要だった場合と比較してチッピングが多い傾向を認めました(オッズ比 7.86、95%信頼区間0.28-217.12、p=0.223)。パラファンクションありで適合B評価の冠は、パラファンクションなしで適合B評価の冠と比較してチッピングが多い傾向を認めました(オッズ比5.25、95%信頼区間0.70-39.48、p=0.107)(表5,図7)。

考察

本調査の主目的は、パラファンクションありなしにおける単冠ジルコニアクラウンの臨床的有効性を評価することです。パラファンクション患者の高いチッピング傾向を示しましたが、統計的有意差は認めませんでした。パラファンクションあり患者において、咬合力学に関する詳細な検討が必要です。70人の患者(男性39名、女性31名、平均年齢45.9歳)に86本の単冠を装着しました。この中でパラファンクションありには36本(41.9%)、パラファンクションなしには50本(58.1%)を装着しました。最も多く装着したのは臼歯部領域(小臼歯27本、大臼歯46本)であり、前歯部には13本(切歯9本、犬歯4本)しか装着しませんでした。ベースライン時に11.6%が少し咬合調整が必要でした。12か月のフォローアップ時に、8本にチッピングが認められました。また、2名に知覚過敏が認められましたが、その後のリコールでは認められませんでした。24か月では、2本にチッピングが認められましたが、両方ともパラファンクションありでした。36か月では、14本にチッピングが認められ、2本が失敗しました。36か月でのトータルのチッピング率は27.9%で、失敗率は2.3%でした。パラファンクションありの患者は、なしの患者よりも高いチッピング率を認めましたが、統計的有意差はありませんでした。咬合調整が必要、適合がB評価だった場合、チッピングが有意に高頻度でした(注、咬合調整についてはp=0.109であり、有意はないのでは?)しかし、本研究では、二次カリエスや失活、歯肉退縮、抜歯等はありませんでした。本研究の結果は、ジルコニア単冠の臨床的パフォーマンスを評価した過去の研究と一致しています。例えば、Tannerらによる後ろ向き研究では、平均フォローアップ期間5.7年におけるジルコニア単冠の生存率は94.2%でした。最も多かった合併症はチッピングで、6.2%に発生していました。Sailerらによるメタアナリシスでは、ジルコニア単冠の臨床パフォーマンスを評価し、5年生存率は96.5%と報告しています。最も多かった合併症はチッピングで3.9%でした。加えて、ジルコニア単冠の生存率は陶材焼付鋳造冠に匹敵すると報告しています。結論として、本研究の結果から、ジルコニア単冠はパラファンクションありなしどちらでも、満足いく臨床パフォーマンスを発揮できることが示唆されました。しかし、チッピングリスクを最小化するために、咬合調整と適合に注意を払うべきです。

本研究の合併症の2/3以上(69.2%)が上顎頬側咬頭、下顎舌側咬頭に発生しました。これらの咬頭歯、中心咬合位よりは側方運動時に対合歯と接触する機会があります。この理由として、咬合面形態の改善が、特にパラファンクション患者には、合併症発生割合を低下させたと考えられます。加えて、最も多い合併症はチッピングであり、27.9%に起こりましたが、特にパラファンクション患者、咬合調整を行った、適合が悪かった群に発生しました。

顎機能障害、パラファンクション患者は、修復処置においてしばしば独特の課題をもたらします。ブラキシズムのようなパラファンクションは、ジルコニアクラウンを含む修復物の長期予後やパフォーマンスに有意に影響します。ジルコニアは優れた機械的強度、生体親和性、審美性などで知られており、クラウン修復の人気の選択になっています。しかし、ブラキシズムなどのパラファンクションによるシビアな摩耗がある患者のマネージメントは難しいです。咬合高径や歯の形態を喪失しているような場合は特に難しいです。

ジルコニア修復の臨床的な評価は有望な結果が示されており、機械的な失敗は5年間ではパラファンクション患者に主に認められます。ブラキシズムは睡眠時、覚醒時の両方で認められ、修復物のチッピングや破折など様々な合併症を引き起こします。

パラファンクションが生じる咬合力に耐えるジルコニアクラウンの堅牢性は臨床的興味のトピックです。ある研究では、ジルコニアクラウンは高い破折耐性を示す一方、咬合面、切縁部に起こるチッピングはパラファンクション患者にとって懸念です。これらの患者において、咬合調整の必要性はジルコニアクラウンのチッピング、破折の潜在的リスクとなります。そのため、特にパラファンクション患者の咬合面形態にしっかり取り組むことは、合併症確率を下げるのに非常に重要です。

さらに、顎機能障害、パラファンクション患者において、口腔内治療中の暫間的管理は、咬合、構造的課題のためしばしば複雑です。ジルコニア、またはその他の材料の使用は、患者の咬合力学とパラファンクションを充分に理解した上で、慎重に検討すべきです。

将来的な研究では、パラファンクションを伴う患者におけるジルコニアクラウンの長期的挙動の評価を検討するべきです。顎機能障害、パラファンクション患者において、ジルコニアとその他の材料でランダム化比較試験を行うことで、材料のパフォーマンスと耐久性についての価値ある見解を得る事ができるでしょう。さらに、咬合調整の最適化とパラファンクションの管理にターゲットをあてた研究は、パラファンクション患者におけるジルコニアクラウンの成功をより高める事に貢献するかもしれません。

さらに、本研究では、クラウンー患者比率という交絡因子が低減されており、患者1人あたり平均1.2本のクラウンが装着されています。これに対し、他の研究では比率が3倍以上でした。

limitationの1つは、パラファンクションを分類する事が不可能であった点です。しかし、パラファンクションをグレード化することがいかに困難かは指摘されています。異なる材料で製作したCAD/CAMモノリシッククラウンを同タイプのパラファンクション患者群でランダムに評価するべきです。

ジルコニアクラウンは耐久性が高いが、色々な問題もあります。クラウンまたは対合歯に破折、摩耗が認められるという評価があります。ジルコニアの硬さが対合歯の摩耗を引き起こしているかもしれません。モノリシックジルコニアクラウンは、前装部のチッピングを防止し、形成量も少なくできます。しかし、二層構造のクラウンに比較すると審美性が悪いかもしれません。早期の合併症には、局所の歯肉炎、知覚過敏、形成時の歯髄露出などがあります。透明度やシェードマッチングなどの審美的な限界が前歯部におけるジルコニアの使用に影響を与えています。大臼歯へのPFZは、対合歯がメタルだった場合、前装セラミックの破折リスクがあるため慎重に実施するべきです。

本研究では、結果の妥当性と一般化可能性に影響を及ぼす可能性のあるいくつかlimitationが明らかになりました。もっとも重要なlimitationは、パラファンクションを分類できなかった事です。ブラキシズムのようなパラファンクションは、ジルコニアクラウンのような修復物の耐久性とパフォーマンスに影響します。パラファンクションの徹底した分類は、パラファンクションの違いが様々な修復材料にどのように影響を与えるかより理解できる事を示唆しています。さらに、ランダム化比較試験のデザインではないことは重要なLimitationであり、観察された結果と調査対象変数との因果関係の確立が困難になります。クラウンー患者比は交絡因子として言及しています。とはいえ、患者1名あたり1.2本と比較的低い状態を維持することにより、軽減を試みています。加えて、長期的なデータと他の修復材料との比較がない事が、包括性と得られた洞察の深さを制限しています。将来の研究では、ランダム化比較デザインの採用、フォローアップ期間の延長、他の修復材料とジルコニアとの比較などを、分類されたパラファンクション群において検討することで、今回のlimitationを解決し、知見を得る事が出来るでしょう。

結論

結論として、今回の後ろ向き研究では、パラファンクションありなしの患者においてジルコニア単冠の長期的な臨床アウトカムと合併症を評価しました。36か月後のフォローアップでは、トータルの生存率が97.7%で、たった2本のみ失敗でした。二次カリエス、失活、歯肉退縮は観察されず、ジルコニアクラウンがパラファンクションありなし患者の修復手段として適していることが示唆されました。今回の知見から、パラファンクションと咬合調整といった患者因子を慎重に考慮することが、ジルコニア単冠の合併症リスク低減と長期的な成功率向上に寄与しうることを示唆しています。

確かに、顎機能障害患者の試験群を拡大し、追跡期間を延長することで、この有望な結果を確認するためには、さらなる研究が必要です。

まとめ

図表が間違っていたり、文章が読みにくかったり、統計的有意差がないにも関わらず結果が差があるような文言になっていたり、なかなか微妙な論文でした。査読適当すぎません?
色々と気になった所があるのですが、まずはパラファンクションと認定した基準が適切だったのかどうかです。tooth wearが一定以上ありでerosionがない+質問表という組み合わせが適切だったかどうかです。質問表の内容などがわからないため、なんともいえませんが、若い人はパラファンクションがあってもそこまでtooth wearがない場合もありそうな気もしますし、高齢者ならパラファンクションがそこまでなくてもwearはあるでしょう。今回の研究ではパラファンクション有りが全体の40%以上になっており、有病率として適切な設定なのかという疑問が残ります。
また、文章中で支台歯のフィニッシュラインをナイフエッジとしたと書いているんですが、PFZでナイフエッジは一般的な形成かどうか疑問です。ただし、実際の支台歯の写真ではディープシャンファーのように見えるところもあります。

今回のPFZでは、パラファンクションありなしでチッピング等には有意差はありませんでした。チッピングが3年で28%というのは結構多いんじゃないかと思いますが、これが臼歯にPFZを使っているからか、パラファンクションの人が母集団に多いからかなどはよくわかりません。

些細であっても咬合調整をしたかどうか、マージン部の適合がどうかの方がチッピングに影響するという結果を強調していますが、咬合調整は有意差がないんですよね。またマージンの適合に関しても95%信頼区間が広大すぎてどこまで信用できるか?という感じです。PFZの場合、咬合調整すれば陶材の厚みが減りますのでチッピングの可能性はあがるというのは想像できますが、マージン部の適合がなぜチッピングに繋がるかがちょっと想像できません。スキャン精度とかそういうことなんでしょうか。

最近充分厚みがあるモノリシックジルコニアが破折するというケースに遭遇しました。パラファンクションはないだろうと思っていたんですが、再製して念のためにナイトガードも装着してもらっています。咬合調整はある程度しました。今回はパラファンクションの有無で差がありませんが、もうちょっと色々読んでみたいと思いました。今回の論文がイマイチだったので・・・。

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東京医科歯科大学(現東京科学大学)卒業(47期)
同大学院修了
【非常勤講師】
徳島大学、岩手医科大学

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