循環器疾患に適量の酒が効く?
前々回の論文で、アルコール摂取量が寿命に影響を与えるという結果でした。前々回の論文はどれぐらい不摂生するとどの程度寿命が削られるかなどを推定しており、自分の今後の生き方の指針になりそうな論文でした。今回はその論文の引用文献を読んでいこうと思います。少し古いですが、2011のBMJでオープンアクセスです。
Association of alcohol consumption with selected cardiovascular disease outcomes: a systematic review and meta-analysis
Paul E Ronksley , Susan E Brien, Barbara J Turner, Kenneth J Mukamal, William A Ghali
BMJ. 2011 Feb 22:342:d671. doi: 10.1136/bmj.d671.
PMID: 21343207
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21343207/
Abstract
Objective: To conduct a comprehensive systematic review and meta-analysis of studies assessing the effect of alcohol consumption on multiple cardiovascular outcomes.
Design: Systematic review and meta-analysis.
Data sources: A search of Medline (1950 through September 2009) and Embase (1980 through September 2009) supplemented by manual searches of bibliographies and conference proceedings. Inclusion criteria Prospective cohort studies on the association between alcohol consumption and overall mortality from cardiovascular disease, incidence of and mortality from coronary heart disease, and incidence of and mortality from stroke. Studies reviewed Of 4235 studies reviewed for eligibility, quality, and data extraction, 84 were included in the final analysis.
Results: The pooled adjusted relative risks for alcohol drinkers relative to non-drinkers in random effects models for the outcomes of interest were 0.75 (95% confidence interval 0.70 to 0.80) for cardiovascular disease mortality (21 studies), 0.71 (0.66 to 0.77) for incident coronary heart disease (29 studies), 0.75 (0.68 to 0.81) for coronary heart disease mortality (31 studies), 0.98 (0.91 to 1.06) for incident stroke (17 studies), and 1.06 (0.91 to 1.23) for stroke mortality (10 studies). Dose-response analysis revealed that the lowest risk of coronary heart disease mortality occurred with 1-2 drinks a day, but for stroke mortality it occurred with ≤1 drink per day. Secondary analysis of mortality from all causes showed lower risk for drinkers compared with non-drinkers (relative risk 0.87 (0.83 to 0.92)).
Conclusions: Light to moderate alcohol consumption is associated with a reduced risk of multiple cardiovascular outcomes.
目的:アルコール摂取が複数の循環器系アウトカムに与える影響を調べるために、包括的なシステマティックレビューとメタアナリシスを行う事です。
デザイン:システマティックレビューとメタアナリシス
データソース:Medline(1950~2009年9月)、Embase(1980~2009年9月)の検索に加え、書誌情報および会議録の手作業による検索を行いました。採用基準は、循環器疾患によるトータルの死亡、虚血性心疾患による死亡、脳卒中による死亡と、アルコール摂取との関連性を検討した前向きコホート研究です。4235本の研究から84本が最終の解析に用いられました。
結果:ランダム効果モデルによる、飲酒しない人と比較した飲酒者の調整済み相対リスクは、循環器系死亡が0.75(95%信頼区間 0.70-0.80)、冠動脈性心疾患発生は0.71(95%信頼区間 0.66-0.77)、冠動脈性心疾患による死亡は0.75(0.68-0.81)、脳卒中の発生は0.98(0.91-1.06)、脳卒中による死亡は1.06(0.91-1.23)でした。用量反応解析では、毎日1,2杯飲むのが最も冠動脈性心疾患での死亡リスクが低くなりましたが、脳卒中での死亡リスクは1日1杯以下でした。全死因による死亡の二次解析では、飲酒しない人と比較して飲酒する人はリスクが低くなりました。
結論:適切なアルコール摂取は、複数の循環器系アウトカムのリスクの減少と関連します。
ここからはいつもの通り本文を訳します。誤訳もあり得ますので、気になったら実際の本文をご確認ください
緒言
観察研究で報告されているアルコール摂取の心臓保護効果の可能性は、論文やメディアで議論され続けています。臨床研究がないため、アルコール摂取が循環器兼疾患のリスクを下げるかという患者の質問に答える際、臨床医はデータを解釈しなければなりません。アルコール摂取と循環器系疾患の関連についてのシステマティックレビューとメタアナリシスはありますが、循環器系疾患による死亡や、冠動脈性心疾患と脳卒中の発生と死亡などとアルコール摂取との関連性について統一されていません。加えて、さらに、最新のレビューが発表された2006年以降も、さらなる研究が発表されています。このテーマに関する継続的な議論は、エビデンスをより深く再評価する必要を意味します。
本研究では、循環器疾患での全死亡、冠動脈性心疾患の発生、冠動脈性心疾患での死亡、脳卒中の発生、脳卒中での死亡についてのアウトカムのために、飲酒群と非飲酒群を比較した縦断研究の結果を合成しました。アルコール摂取による生物学的効果は様々なので、アルコールと全死因死亡の関連について記載されているようなら、それも調べました。アウトカムそれぞれについてメタアナリシスを行い、非飲酒者の参照群内の異質性を考慮するため、生涯禁酒者を参照カテゴリーとした感度解析を行いました。また、観察された関連の強さに対する交絡の影響も調べました。関連論文では、これらのアウトカムを、原因分子マーカー候補に関するアルコール摂取の実験と結びつけました。
実験方法
文献検索
MOOSEが報告しているガイドラインに準拠したプロトコールに従いシステマティックレビューとメタアナリシスを行いました。MedLine(1950~2009年9月)、Embase(1980~2009年9月)を検索し、可能性のある関連論文全てを確認しました。同定された論文や総説の書誌をスキャンし、3つの主要な学術会議の2007~2009年の会議録に目を通すことで検索を強化しました。失われた、継続中、パブリッシュされていない研究について調べるために、この分野の専門家にコンタクトを取りました。
検索キーワードについてこの後ある程度文章がありますが、省略します。
研究の選択
2名が独自に全ての論文のアブストラクトに目を通しました。アルコール摂取と循環器疾患イベントの関連について記載されているアブストラクト全てを全文に目を通すために選択しました。この段階は意図的に自由にしました。前述の基準に明確に合致していないアブストラクトのみを除外しました。2名の一致率は0.86と高いものでした。不一致が認められた論文に関しては協議にて解決しました。
同じ2名が、採用基準を満たした論文と適格性が不確かな論文の全文レビューを行いました。採用基準として、研究デザイン(縦断)、被験者(18歳以上で元々循環器疾患を有していない)、暴露(現在のアルコール摂取)、アウトカム(循環器系疾患の全死亡またはアテローム血栓の状態、冠動脈性心疾患の発生、冠動脈性心疾患での死亡、脳卒中の発生、脳卒中での死亡)を満たす論文は保持されました。採用基準を満たすものはパブリッシュされていないものも含みます。コホートのリスク評価が不明確な場合、著者と連絡を取りました。
データの除外と質の評価
主暴露変数は、ベースライン時に参照群である非飲酒群と比較した飲酒行動の存在です。参照群の異質性のため、生涯非飲酒群を参照群とした研究のサブセットと、元飲酒者と非飲酒者を区別した研究を同定しました。入手可能な場合はいつでも、1日当たりのアルコール量(グラム)を共通の単位として、飲酒量に関する情報を抽出しました。単位あたりのアルコール量の記載がないものについては、飲酒あたり12.5gとしました。12オンス(355ml)のボトルまたはビール缶、5オンス(148ml)のグラスワイン、1.5オンス(44ml)の40%蒸留酒で量を基準化しました。摂取量は1日2.5g未満(0.5drink未満)、1日2.5~14.9g(0.5~1drink)、1日15~29.9g(1~2.5drink)、1日30~60g(2.5~5drink)、60g以上(5drink以上)と分類しました。
アウトカムは、循環器系疾患による死亡のありなし(深刻な循環器疾患、脳卒中イベント)、冠動脈性心疾患の発生(深刻または深刻ではない心筋梗塞、狭心症、虚血性心疾患、冠血行再建術)、冠動脈性心疾患での死亡(深刻な心筋梗塞または虚血性心疾患)、脳卒中の発生(虚血性、出血性イベント)、脳卒中での死亡と定義しました。アルコール摂取と全死因死亡との関連性を決定するために、二次解析を選択した研究を用いて行いました。
採用基準を満たした全ての研究からデータを2名がそれぞれ抽出し、相違がある場合は話し合いにて解決しました。コホート研究の名称、被験者数、人口統計学的データ(国、男女比、年齢)を抽出しました。また、EggerおよびLaupaciが提唱した観察研究の質の主要指標に関する情報も抽出しました。特に、我々は潜在的交絡変数の数と被験者の追跡年数が各アウトカムに及ぼす影響を評価しました。
データの合成と解析
相対リスクは、複数の研究をまたいだ関連性の一般的な指標として用いられます。ハザード比と罹患密度率は相対リスクとして直接考慮されました。必要なら、オッズ比を公式を用いて相対リスクに変換しました。Relative risk=odds ratio/[(1–Po)+(Po×odds ratio)] Poは非曝露軍でのアウトカムの発生率。
結果の標準誤差を以下の公式を用いて相対リスクに変換しました。SElog(relative risk)=SElog(odds ratio)×log(relative risk)/log(odds ratio)
これらの変換は、オッズ比から得られる相対リスクの分散を過小評価する可能性があるため、この変換が適用された4つの研究を除外して感度分析を行いました。全ての解析はStata 10.0で行いました。
複数の研究では、飲酒群と非飲酒群との単一の相対リスク(またはオッズ比)が利用可能ではありませんでした。それはデータが量応答性のみで表現されていたからです(複数段階のアルコール摂取量)。これらの場合、まずランダム効果モデルを用いて研究内での摂取量をプールし、飲酒群と非飲酒群の単一の相対リスクを導き出しました。得られたその研究特有の単一の相対リスクは、他の研究の相対リスクと一緒にプールされました。
研究間の相対リスクの推定値と95%信頼区間を視覚的に評価するために、パブリッシュされた年でソートしたフォレストプロットを製作しました。解析は、研究の質の基準と被験者の特性により階層化されました。
研究間の相対リスクの異質性を検討するために、フォレストプロットを検査し、QとI2統計量を算出しました。異質性が存在する場合、研究間の統合推定値を得るために、ランダム効果モデルを用いました。感度分析と階層化分析を行い、交絡因子の数、中央値で二分したフォローアップ期間など、選択した試験の質および臨床因子の心血管リスクへの関連を評価しました。またオッズ比のみ報告している研究を除外した感度分析も行いました。また累積メタアナリシスを行い、時系列に発表された研究の連続的な寄与を評価しました。最後にファンネルプロットとBegg検定により出版バイアスを評価しました。
結果
最初の検索でトータル4235の文献がヒットしました(図1)。レビューを2周行った結果、131本の文献を可能性のあるものとして確認しました。そこから、慢性うっ血性心不全や安定狭心症など、元々不適格だと規定していたもの、アテローム血栓性のエンドポイントではない(不整脈)、複合的なエンドポイント、循環系系疾患ではないアウトカム(がんなど)、データの重複を除外しました。その結果84の文献をシステマティックレビューとメタアナリシスに使用しました。表1に詳細を示します。84のうち、34が全て男性のコホート、6が全て女性のコホート、残り44が男女混合のコホートでした。
研究の質
研究の質の主たる2つの特徴を評価しました。フォローアップ期間と交絡の調整です。フォローアップ期間は2.5~35年で、平均フォローアップ期間は11年、標準偏差は6年でした(表1)。13の文献は5年以下でした。同様に交絡調整の程度も無調整から18変数までと様々で、平均は6(標準偏差4)でした。殆どの研究(68)では調整済みの推定値でしたが、8つは未調整の推定値のみ、他の8つは基礎的な人口統計学データのみで調整されていました。調整、効果測定、交絡変数の方法を追加表1~5(量が膨大なため一番最後に添付)に示します。
主解析(循環器疾患による死亡、冠動脈性心疾患の発生と死亡、脳卒中の発生と死亡)
循環器疾患による死亡、冠動脈性心疾患の2つのエンドポイントについて、アルコール摂取は低リスクと関連し、相対リスクは0.75でした(表2)。より高度に調整された結果から得られた相対リスクと、あまり調整されていない結果から得られた相対リスクは同程度でした。
統計的に異質性のエビデンス(P<0.001、I2=72.2%)が認められましたが、図2~4から視覚的な異質性は認められませんでした。おそらく、100万人を越える膨大な被験者を扱っているからでしょう。循環器系疾患での死亡で1つ、冠動脈性心疾患で2つの研究以外の全ての研究で、推定値は1.0を下回っていました。
対照的に、アルコール摂取と脳卒中発生、死亡との関連は、最小補正モデルでも、より高度に補正したモデルでも、全体としてほぼ無効でした(表2、図5、6)。しかし、この無効な関連は、脳卒中発症のサブタイプとのほぼ有意な、逆の関連を不明瞭にしているようでした。出血性脳卒中についての12の研究では、非飲酒群と比較した飲酒群の相対リスクは1.14(95%信頼区間 0.97-1.34)でした。一方で虚血性心疾患についての8つの研究では、相対リスクは0.92(95%信頼区間 0.85-1.00)で、中等度のリスク低下を示しました。アルコール摂取は脳卒中死亡とは相関しませんでしたが、出血性、虚血性脳卒中を分けて検討した論文はありませんでした。さらに、生涯非飲酒と比較した過去に飲酒歴ありの脳卒中エンドポイントの相対リスクを報告した研究は2つしかありませんでした。
量応答の解析
アルコール摂取量の解析では、1日2.5~14.9gのアルコール摂取は、非飲酒と比較して全てのアウトカムで保護的でした(表2)。冠動脈性心疾患のアウトカムでは、1日2.5g以上の全ての摂取レベルで、同程度のリスク低下を認めました。循環器疾患での死亡、脳卒中の発生、死亡については、摂取量との関連はUまたはJ字状のカーブになり、飲酒量が多い人はリスクが増大する事が示唆されました。特に、1日60gを越える飲酒群では、非飲酒群と比較して脳卒中発生リスクが有意に上昇しました(RR 1.62(1.32-1.98)。
感度分析
性差による関連性の違いを分析したところ、飲酒の有無にかかわらず、男性よりも女性の方が循環器疾患死亡、脳卒中の発症、死亡の低下と関連していました。しかし、脳卒中との関連は注意深く解釈する必要があります。女性の推定リスクはたった3つの研究から算出されているからです。一方で、冠動脈性心疾患の発症と死亡では、男性、女性において同様の関連が認められました(表2)。
喫煙、年齢、性別という重要な交絡因子をコントロールした研究のみに限定して感度分析を行ったところ、すべてのアウトカムについて概ね同様の結果が得られました。対象研究の多変量解析における交絡変数の数の中央値を考慮した感度解析を追加したところ、交絡変数の数が少ない(中央値より少ない)研究では、一般的に相対リスク推定値がわずかに小さいことが明らかになりました。しかし、このパターンはアウトカムにより一貫しませんでした。特に、脳卒中による死亡リスクの増加は交絡の限られた調整を行った研究に認められました。同様な傾向がフォローアップ期間を考慮した場合にも認められました。カットポイントとしてフォローアップ期間の中央値(年)を使用した場合、フォローアップ期間が短い研究では、循環器疾患、冠動脈性心疾患での死亡を除いて、他の全てのアウトカムでリスクが大幅に小さくなりました(表2)。
長期間飲酒していない群を基準群として採用し、以前飲酒していた群を除外、または別枠で評価した研究では、飲酒と疾患の発生、死亡との関連の推定値は実質的に変わりませんでした(表2)。以前飲酒していた群を別枠で評価した研究では、飲酒群と比較して循環器疾患、冠動脈性心疾患による死亡リスクが有意に高くなっています。しかし、以前飲酒していた群では、循環器疾患(脳卒中または冠動脈性心疾患)の発生イベントリスクの増加は認められませんでした。
最後に、オッズ比を採用している研究を除外した感度分析では、結果に殆ど影響を与えないことが示されました。循環器疾患と冠動脈性心疾患のアウトカム(追加図1~3)に対する累積メタアナリシスでは、1999年以降の新しい研究を追加した場合、アルコール摂取が循環器疾患による死亡、冠動脈性心疾患の発生に及ぼす相対リスクには殆ど変化がありませんでした。冠動脈性心疾患での死亡に関しては、新しい研究による増加分のプラトーは、1992-3年の時点で生じていました。
全死因死亡
今回採用した84の文献中、31がアルコール摂取と全死因死亡を検討していました。これらの研究での推定値は非飲酒群と比較して飲酒群は低リスク(RR 0.87 95%Cl : 0.83-0.92)を示しました(図7)。しかし、関連はJ字型であり、最もリスクが低いのは1日2.5-14.9g(RR 0.83 95%Cl : 0.80-086)で、1日60gを越えるとリスクの上昇(RR 1.30 95%Cl : 1.22-1.38)が認められました。
出版バイアス
ファンネルプロットの視覚検査では非対称性は認められず、明確な出版バイアスはなさそうでした。Begg検定においても全てのアウトカムで有意差を認めませんでした。
考察
84のアルコール摂取と循環器疾患に関する文献のレビューで、1日2.5~14.9gのアルコール摂取は、非飲酒群と比較し、全てのアウトカムで14~25%程度のリスク低下と関連しました。このリスクの低下は臨床的に重要である可能性があります。しかし、多量の飲酒は脳卒中発生、死亡リスクを上昇します。
知る限り、今回のシステマティックレビューとメタアナリシスは今日までで最も包括的なものです。過去の冠動脈性心疾患と脳卒中についてのメタアナリシスでも、リスクの低下はおおまかに似た推定値でしたが、我々のレビューはより広範な関連する循環器系のアウトカムを評価し、新たにいくつかの重要な研究を加えることによって、知見を拡張しました。われわれのレビューは、以前の研究とのいくつかの相違を明らかにしました。Corraoらはアルコール摂取と冠動脈性心疾患のJ型の関連を報告しています。一方で、Maclureによるレビューでは、アルコール摂取量に伴う冠動脈性心疾患リスクの上昇が認められなかったため、L型の関連であると記載しています。我々の最新のメタアナリシスは、冠動脈性心疾患については後者を支持しており、軽度から中等度の飲酒では25-35%のリスク低下が認められ、これは多量の飲酒でも同様です。
複数の循環器系疾患アウトカムにおける我々の解析は、アルコール摂取の研究に内在する複雑さも示しています。適量のアルコール摂取は、脳卒中の発生、死亡リスクの低下と関連しますが、過量のアルコール摂取ではリスクが上昇します。さらに、アルコール摂取の関連は複雑で、脳卒中のタイプにより異なります。虚血性脳卒中ではわずかにリスクが低下しますが、出血性脳卒中ではリスクが上昇します。これらの異なる関連はアルコールの抗血栓効果の影響かもしれません。アルコール摂取、特に多量の摂取では、血圧との関連も否定できないようで、多量飲酒に伴う出血性脳卒中リスクの高さの一因と考えられる。加えて、我々の解析は、他の既知のアルコール多量摂取の有害作用を考慮していません。そのため、我々の知見はアルコール摂取の制限をさらに支持するものです。
我々のレビューは、アルコール摂取と循環器疾患との関連における他の重要な側面も強調します。まず、冠動脈性心疾患のリスク低下は、男性でも女性でも同程度でした。限られたエビデンスですが、アルコールと脳卒中リスクでは、男性に比べて女性が低い事が示唆されました。しかし、これは女性の方がアルコール摂取量が少ない事を反映しているだけかもしれません。第2に、以前飲酒していた人達を採用することは、アルコール摂取と循環器系疾患の関連を偏らせるような事はありません。第3に、研究を年代順に要約したところ、飲酒と循環器疾患および冠動脈性心疾患との全体的な関連は、少なくとも10年前には明らかになっており、現在進行中の研究では、推定された関連を修正することはほとんど行われていないことがわかりました。
因果関係についての議論
ここに要約した広範な文献から、アルコール摂取と循環器系リスク低下との関連は疑問の余地がありません。更なる研究がこの結果を変更することはないでしょう。それよりも、この関連性が因果関係にあるのかどうかという疑問が残ります。明らかなのは、観察研究では因果を確立することできないということです。しかし、今回の結果と、心血管疾患に関連するバイオマーカーに焦点を当てた介入メカニズム研究を要約した我々の総説の結果とを合わせると、因果関係についての議論はより説得力のあるものとなります。実際、バイオマーカーのレビューでは、病態生理学的に関連する分子の好ましい変化を示すことにより、因果関係の生物学的妥当性を示しています。
そのため、我々は、Hillの基準に基づいて因果関係についての議論を試みる事ができます。上述した生物学的妥当性の議論にとどまらず、アルコール摂取と循環器系疾患の予防には適切な時間的関係があります。第2に、出血性脳卒中リスクとの負の関連によっていくらか相殺されるようですが、摂取量の増加に伴ってより大きな予防的関連が観察されました。第3に、アルコールの予防的な関連は、様々な人種や男女両方においても一貫して認められました。第4に、関連は特有です。適切な飲酒(女性なら1日12.5g、男性なら1日25.0gまで)は、循環器疾患のリスク低かと関連しますが、他の状態、例えばがん、にも保護的に作用するわけではありません。最後に、既知の交絡(喫煙、食事、健康)をコントロールした時でさえ、リスクの低下は顕著です。可能性のある未測定の交絡があったとしても、この明らかに保護的な関連を説明するにはかなり強い関連である必要があります。
Limitation
今回のメタアナリシスの結果h、利用できるデータの限界の中で解釈されるべきです。まず、各々の研究のクオリティは様々であり、フォローアップ期間が短かったり、調整した交絡が少ないものもあります。フォローアップについて、時間の経過とともに飲酒習慣が変化するため、アルコール摂取量の誤分類が研究期間とともに増加する可能性があります。アルコールの生物学的効果が暴露時間に応じて変化する可能性もあります。しかし、これらの可能性について議論するため、フォローアップ期間で階層化した解析を行い、フォローアップ期間が短い群と長い群との間に、アルコール摂取とアウトカムの関連に違いは認められませんでした。
第2に、限られたサブセットのみが、アルコール飲料別にリスクの推定値をふっています。ビール、ワイン、スピリッツによる違いは大変興味がありますが、アルコール印象は一般的に高密度リポタンパク質コレステロールに同様の影響を与えます。ワインの特徴は、食事や社会経済的地位による交絡を受けやすいことです。最後に、いくつかのプール解析では、研究間で有意な異質性が観察されました。これは、異質性の検定に大きな統計的検出力を与えることができる大きな研究サンプルサイズによるところが大きいと考えられますが、この異質性の臨床的関連性はかなり低いかもしれません。様々なフォレストプロットの視覚的検査と、臨床的・方法論的変数間のプール相対リスクの相対的整合性から、研究間および層間の相対リスク所見にはかなりの一貫性があることが示唆されました。
Implicationはあまり訳す意味がなさそうだったので訳しません。
まとめ
英語がかなり難解で、自分で訳したものをDeepLにかけたものと比較するとと全然違う内容になっていたりして大変でした。まあ自分の専門からかなり遠いというのも訳が難しかった原因でしょう。
全く飲まない人よりも循環器疾患のリスクが低くなっていますので、適量であれば酒は百薬の長というのはあながち嘘ではないのかもしれません。ただし、今回のメタアナリシスでは保護的に働くのは1日のアルコール摂取量が2.5~14.9gです。60gを越える場合は逆にリスクが上昇しますので注意が必要です。サントリーのサイトをみると飲酒量について記載があり、健康日本21では男性1日40g、女性1日20gまでにしとけと書いてます。2.5~14.9gを厳密に守ろうとするとビール350ml1本が限界です。1日20gとしてもビール500mlとなりますので、毎日晩酌するという方は簡単に越えてしまっているでしょう。養命酒を毎日1杯やって寝るぐらいが最も循環器に優しいお酒との付き合い方なのかもしれませんね。そんな人がどれぐらいいるのかは置いといて・・・。