普通の歯科医師なのか違うのか

5つのライフスタイル改善が寿命に大きな影響を与える

 
この記事を書いている人 - WRITER -
5代目歯科医師(高知市開業)
東京医科歯科大学卒業(47期)
同大学院修了
【非常勤講師】
徳島大学
岩手医科大学

2月に仙台で日本義歯ケア学会があり、参加しました。その際に東北大学の服部佳功教授の「人生100年時代の高齢者歯科保健」という講演を拝聴したのですが、なかなか面白い内容でした。その中で興味深い論文をいくつか紹介されていたので、読んでみたいと思います。今回紹介するのが、一番聴講者の中で話題になっていたものです。2018年の論文で、ライフスタイルがアメリカ人の寿命に与える影響について検討した論文になります。オープンアクセスです。

Impact of Healthy Lifestyle Factors on Life Expectancies in the US Population
Yanping Li , An Pan , Dong D Wang , Xiaoran Liu , Klodian Dhana , Oscar H Franco , Stephen Kaptoge , Emanuele Di Angelantonio , Meir Stampfer , Walter C Willett , Frank B Hu 
Circulation. 2018 Jul 24;138(4):345-355. doi: 10.1161/CIRCULATIONAHA.117.032047.
PMID: 29712712

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/29712712/

Abstract

Background: Americans have a shorter life expectancy compared with residents of almost all other high-income countries. We aim to estimate the impact of lifestyle factors on premature mortality and life expectancy in the US population.

Methods: Using data from the Nurses’ Health Study (1980-2014; n=78 865) and the Health Professionals Follow-up Study (1986-2014, n=44 354), we defined 5 low-risk lifestyle factors as never smoking, body mass index of 18.5 to 24.9 kg/m2, ≥30 min/d of moderate to vigorous physical activity, moderate alcohol intake, and a high diet quality score (upper 40%), and estimated hazard ratios for the association of total lifestyle score (0-5 scale) with mortality. We used data from the NHANES (National Health and Nutrition Examination Surveys; 2013-2014) to estimate the distribution of the lifestyle score and the US Centers for Disease Control and Prevention WONDER database to derive the age-specific death rates of Americans. We applied the life table method to estimate life expectancy by levels of the lifestyle score.

Results: During up to 34 years of follow-up, we documented 42 167 deaths. The multivariable-adjusted hazard ratios for mortality in adults with 5 compared with zero low-risk factors were 0.26 (95% confidence interval [CI], 0.22-0.31) for all-cause mortality, 0.35 (95% CI, 0.27-0.45) for cancer mortality, and 0.18 (95% CI, 0.12-0.26) for cardiovascular disease mortality. The population-attributable risk of nonadherence to 5 low-risk factors was 60.7% (95% CI, 53.6-66.7) for all-cause mortality, 51.7% (95% CI, 37.1-62.9) for cancer mortality, and 71.7% (95% CI, 58.1-81.0) for cardiovascular disease mortality. We estimated that the life expectancy at age 50 years was 29.0 years (95% CI, 28.3-29.8) for women and 25.5 years (95% CI, 24.7-26.2) for men who adopted zero low-risk lifestyle factors. In contrast, for those who adopted all 5 low-risk factors, we projected a life expectancy at age 50 years of 43.1 years (95% CI, 41.3-44.9) for women and 37.6 years (95% CI, 35.8-39.4) for men. The projected life expectancy at age 50 years was on average 14.0 years (95% CI, 11.8-16.2) longer among female Americans with 5 low-risk factors compared with those with zero low-risk factors; for men, the difference was 12.2 years (95% CI, 10.1-14.2).

Conclusions: Adopting a healthy lifestyle could substantially reduce premature mortality and prolong life expectancy in US adults.

背景:アメリカ人は他の先進国と比較して平均寿命が短いです。本研究の目的は、ライフスタイルが早期死亡率と平均寿命に与える影響を推定することです。

方法:看護師の大規模コホート(n=78865)、医療専門職のフォローアップ研究(n=44354)のデータを用い、非喫煙、BMIが18.5~24.9、毎日30分以上の中等度、活発な身体活動、適度なアルコール摂取、食事の質スコアが40%以上を5つの低リスクライフスタイルを定義しました。ライフスタイルスコアの合計(0~5)と死亡率の関連性をハザード比で推定しました。ライフスタイルスコアの分布を推定するためにNHANES(National Health and Nutrition Examination Surveys;2013-2014年)のデータを用い、アメリカ人の年齢別死亡率を導き出すためにCDCのWONDERデータベースを用いました。ライフスタイルスコアのレベルによる平均寿命の推定にライフテーブル法を使用しました。

結果:フォローアップ34年で、42167名が死亡しました。ライフスコア0と比較したライフスコア5の多変量調整済みハザード比は全死因で0.26(95%信頼区間 0.22-0.31)、がん死亡で0.35(95%信頼区間 0.27-0.45)、循環器疾患死亡で0.18(95%信頼区間 0.12-0.26)でした。非服薬の5つの低リスクライフスタイルへの集団帰属リスクは、全死因で60.7%(95%信頼区間 53.6-66.7)、がん死亡で51.7%(95%信頼区間 37.1-62.9)、循環器疾患死亡で71.7%(95%信頼区間 58.1-81.0)でした。低リスクライフスタイルが0の場合、50歳時点での平均寿命は女性で29.0年(95%信頼区間 28.3-29.8)、男性で25.5年(95%信頼区間 24.7-26.2)でした。対照的に、低リスクライフスタイルが5の場合、50歳時点での平均寿命は女性で43.1年(95%信頼区間 41.3-44.9)、男性で37.6年(95%信頼区間 35.8-39.4)でした。低リスクライフスタイル0と比較し5の場合、50歳時点での平均寿命は女性で14.0年(95%信頼区間 11.8-16.2)、男性で12.2年(95%信頼区間 10.1-14.2)延伸しました。

結論:健康的なライフスタイルの採用は、潜在的にアメリカ人の早期死亡率の低下させ、平均寿命を延伸する可能性があります。

ここからはいつもの通り本文を訳します。誤訳もあり得ますので、気になったら実際の本文をご確認ください

緒言

アメリカは世界でも裕福な国の1つです。しかし、アメリカ人の平均寿命は他の先進国と比較して短く、2015年生まれの平均寿命は世界31位です。2014年の国民1人当たりの総医療費は9402ドルで、国内総生産に占める医療費の割合(17.1%)では、米国は世界第1位でした。しかし、アメリカの医療制度は、予防よりも創薬や治療に主眼を置いてきました。循環器疾患、がんなどの慢性疾患は、最も一般的でコストがかかるものですが、おおくは予防可能です。不健康なライフスタイルは様々な慢性疾患と早期死亡の主なリスクファクターであることはよく知られています。

20年以上前に、McGinnis、Foegeらは、国の主な健康施策を不健康なライフスタイルを減らす事に移行するべきだと主張しました。17カ国、531804人の被験者、平均フォローアップ13.24年の15論文を扱ったメタアナリシスでは、早期死亡の60%が、喫煙、過度なアルコール摂取、運動不足、不適切な食生活、肥満などの不健康なライフスタイルに起因していると示唆しています。健康的なライフスタイルは、日本、イギリス、カナダ、デンマーク、ノルウェイ、ドイツの平均寿命の7.4~17.9年延伸と関連していました。しかし、低リスクライフスタイルが、アメリカ国民の平均寿命に与える影響についての包括的な解析はまだありません。そのため、我々の目的は、ライフスタイルがアメリカ国民の早期死亡と平均寿命に与える潜在的な影響について評価することです。

方法

全体的なデザイン

看護師(NHS)、医療専門職(HPFS)の大規模コホートデータから、低リスクに関連したライフスタイルと死亡率の関連性についてまず定量化を行いました。次に、NHANES(National Health and Nutrition Examination Surveys)のデータを用いて、アメリカ人口の生活習慣関連因子の分布を推定しました。さらに、CDCのWONDERデータベースから、アメリカ人の死亡率を入手しました。最後に、異なったライフスタイル、ライフスタイルのコンビネーションと平均寿命の延伸の関連を推定するために、3つのデータを統合しました。

被験者

NHSは1976年に始まり、30~55歳の女性看護師121700人が、医学、ライフスタイル、その他健康関連の質問表に回答しました。1980年に92468人の看護師が、有効な食物摂取頻度調査票に回答しました。HPFSは1986年に設立され、40~75歳51529人の男性医療専門職(歯科医師、眼科医、整骨医、足病医、薬剤師、獣医師)が既往歴、食物摂取頻度を含むライフスタイル質問表に回答しました。不適切なカロリー摂取量(女性:1日500kCal以下または3500kCal以上、男性:1日800kCal以下または4200kCal以上)、BMI18.5未満、さらにBMI、身体活動、アルコール摂取、喫煙などのデータが欠落しているものを除外しました。除外後に女性78865人、男性44354人のベースライン時のデータを本解析に使用しました。

NHANES(2013-2014)のデータを、アメリカ人成人のライフスタイル関連因子の人口分布を推定するために使用しました。このデータは、50~80歳2128人の食事、BMI、身体活動、アルコール摂取、喫煙歴が全て揃っています。BMIが18.5未満のデータをこちらでも除外しました。NHANESは、アメリカ人口の代表サンプルを含んでいます。

データ収集

NHSとHPFSの食事データは有効な食物摂取頻度調査票を用いて4年毎に調査されます。この調査票は前年に特定の種類の食物を平均何回摂取したかを尋ねるものです。身体活動レベルは、2年毎に質問表で調査されました。体重と喫煙習慣は2年毎の自己申告でした。アルコール摂取も、食事摂取頻度調査票によりデータを収集しました。2年毎の質問表は、年齢、民族性、マルチビタミンの使用、アスピリンの常用、ホルモン療法の実施(NHSのみ)、糖尿病、がん、心筋梗塞の家族歴などの潜在的な交絡データを収集するのに用いられました。

NHANESの食事データは、24時間食事回想法という、面接官によるコンピュータ支援によるもので、訓練された面接官によって行われる綿密な面接によって収集されました。身長と体重は、移動検査センターで標準化された手法と機器を用いて測定されました。喫煙歴は自己申告制で、1日の喫煙本数、生涯で100本以上吸ったかどうかも質問に含みました。仕事、余暇での身体活動レベルについても質問しました。アルコール摂取については、2回の24時間食事回想法で記録しました。

低リスクライフスタイルスコア

5つのライフスタイル関連因子を設定しました。食事、喫煙、活動量、アルコール摂取、BMIです。今回は改善可能なライフスタイル因子に焦点を当てたので、臨床的なリスクファクターである高血圧、高脂血症、服薬などはスコアに採用しませんでした。

食事の質は、Alternate Healthy Eating Index scoreで評価しました。これは、一般的な集団における心臓代謝疾患の発生と強く関連する指標です。健康的な食事とは、各コホート分布の上位40%の食事スコアと定義しました。喫煙において低リスクは、1回も吸ったことがないと定義しました。身体活動において、低リスクとは最低1時間当たり3METsである中等度または活発な活動(早歩きを含む)を1日30分以上と定義しました。アルコール摂取は、女性で1日5~15g、男性で1日5~30gを低リスクと定義しました。BMIについては18.5~24.9kg/m2を低リスクと定義しました。

それぞれの低リスク因子で、低リスクに該当した人はスコア1を獲得しました。基準に該当しない、ハイリスクと判断された場合、スコアは0となります。総合点は0~5点となり、高い点数は健康的なライフスタイルを意味します。

死亡の確認

NHS、HPFSでは、死亡は、州の統計記録、全国死亡指数、家族からの報告、郵便などで確認しました。両コホートにおける死亡のフォローアップは最低でも98%でした。医師が死亡診断書または医療記録を確認し、NHSでは国際疾病分類第8版(HPFSでは国際疾病分類第9版)に従って死因を分類しました。

また、2014年の全死因、循環器疾患による死亡、がんによる死亡割合を、50~84歳の範囲で性別、各年齢による分類でCDCのWONDERデータベースから入手しました。このデータベースは84歳までの死亡率のみを提供しているので、85~105歳の各年齢による全死因、特定死因による死亡率は、各年齢群の中間点から49.5歳を引いた年齢について線形項と2次項の両方を持つポアソン回帰モデルに基づいて外挿することにより推定しました。

統計処理

被験者はベースライン時(NHS 1980年、HPFS 1986年)での質問表を送付してから、死亡またはフォローアップ期間終了(NHS 2014年6月30日、HPFS 2014年1月30日)までの間、データの収集に協力しました。個人要因と低リスクスコアによる全死因、がん、循環器疾患での死亡の調整済みハザード比を求めるためにCox比例ハザードモデルを使用しました。

ライフスタイル因子は長期間にわたって死亡リスクに影響を及ぼす可能性があるため、長期的な影響を最もよく表すために、食事、身体活動、飲酒に関する主要な解析では、最新の2回の反復測定値を用いて生活習慣因子の累積平均レベルを算出しました。例えば、NHSでは1980~1982年に死亡したケースでは、1980年の質問表で収集した身体活動量との関連性を調査しました。1980~1982年の身体活動量の平均値は1982~1984年の死亡リスクを評価するのに用いました。1982~1984年の身体活動量の平均値は、1984~1986年の死亡リスクを評価するために用いました。以下同様に繰り返しました。Alternate Healthy Eating Index scoreとアルコール摂取では、4年間の反復測定を元に計算しました。喫煙は、喫煙歴と毎年更新される直近の状態から5つに分類しました。全く吸ったことがない、過去に喫煙していた、直近で1日1から14本、15~24本、25本以上。元々の基礎疾患による体重減少の結果起こる因果の逆転を最小化するため、生涯におけるBMIの最大値を採用しました。例えば、1980年から1982年の死亡率の予測には18歳時のBMIと1980年のBMIの最大値を、1982年から1984年の死亡率の予測には18歳時のBMIと1980年のBMIと1982年のBMIの最大値を採用しました。同様な解析手法はHPFSでも採用されています。ある時点で低リスク因子に関するデータが欠落していた場合は、最後のデータを採用しました。以下の変数を多変量モデルに採用しました。年齢、民族性、マルチビタミンの服用、アスピリンの常用、閉経状態とホルモン療法(女性のみ)、家族歴(糖尿病、心筋梗塞、がん)。ライフスタイルを暴露因子、その他のリスクファクターを制約のない共変量として含み、共変量の効果が特定死因により異なるようにすることで、特定死因の競合リスクモデルを採用しました。

集団起因リスクを仮定し、計算しました。これは、観察された関連性が因果関係を表していると仮定した場合、理論的には全ての人が低リスクカテゴリーであれば発生しなかったであろう被験者集団での早期死亡のパーセンテージの推定です。5つの低リスク因子すべてで2値カテゴリー変数を用い、低リスクカテゴリーに属する参加者とそれ以外の集団(5つの低リスク因子すべてを持たない、またはいずれかの高リスク因子を持つ)とを比較し、ハザード比を算出しました。NHANESデータに基づき、アメリカ人成人における低リスクカテゴリの割合と、これらハザード比を統合し、集団起因リスクを推定しました。

異なるライフスタイルを有する参加者の平均寿命を計算するために、ライフテーブルを使用しました。50歳から始まり105歳で終わるライフテーブルを以下の3つの推定値で構築し、50歳以降の累積生存率を計算しました。(1)NHSとHPFSから得た低リスク生活習慣の数に関連した死亡率の性・年齢別HR、(2)CDC WONDERデータベースから得た全死因、循環器系死亡率、がん死亡の性・年齢別集団死亡率、(3)NHANESから得た低リスク生活習慣の数の年齢・性別集団有病率。低リスク因子0の人と比較した低リスク因子の数による死亡の年齢別ハザード比を各性別で計算し、多変量調整済みコックス回帰モデルに適合させました。モデルの仕様には、年齢変数の線形項と二次項(5年ごと、85歳まで)、および低リスク因子の数と年齢変数の線形項と二次項との交互作用が含まれました。死亡率の年齢別HRは、関連する推定係数の線形結合として求め、年齢は50歳から85歳までの5年年齢群の中点に対応する値に固定しました。85歳超のHRは85歳のHRと同じと仮定した。次に、年齢と性別に特異的なHRを適用して、低リスクの生活習慣要因の数によって異なる年齢での平均余命を推定しました。

我々の知見の頑健性の確認のために全死因、特定死因での死亡性別ハザード比(年齢のみ調整済み)を適用し、感度解析を行いました。ライフスタイルと死亡との関連に影響する潜在的な加齢効果を調べるために、NHS、HPFS参加者で75歳未満に限定した感度解析を実施しました。3つの階層化解析を行いました。1つは喫煙状態で階層化した解析、もう1つは他の4つのライフスタイル因子の共同効果を推定するためにBMIで階層化した解析、3つ目はベースラインの疾患状態(コレステロール上昇、高血圧、糖尿病の有無)で階層化した解析です。

2値変数では、これらのライフスタイル因子がより極端なレベルにある場合の死亡リスクの勾配を説明することができなかったので、3番目の感度分析を行い、コホートにおける各ライフスタイル因子と死亡率との関連に基づいて拡張低リスクスコアを算出しました。スコア1(最も健康ではない)からスコア5(最も健康)に割り付け、5つのライフスタイルを総合し、スコア5~25としました。この解析では、最も健康的な群は、喫煙歴無し、BMIが18.5~22.9、適切なアルコール摂取(5~14.9g/日)、中程度から活発な活動を週6時間以上、Alternate Healthy Eating Index diet scoreで最上位1/5と定義されました。

結果

ベースライン時では、低リスクライフスタイルの数が多い被験者はわずかに若く、アスピリンをよく使い、マルチビタミンのサプリメントをあまり服用しない傾向でした(表1)。女性のフォローアップ期間の中央値は33.9年間、男性は27.2年で、42167件の死亡が記録されました。13953件ががん、10689が循環器疾患による死亡でした。

各ライフスタイルと、全死因、がん、循環器疾患による死亡は有意に相関を認めました(表2)。ライフスタイル5つ全て該当群は、ライフスタイル0の被験者群と比較して全死因でハザード比0.26(95%信頼区間 0.22-0.31)、がんで0.35(95%信頼区間 0.27-0.45)、循環器疾患で0.18(95%信頼区間 0.12-0.26)でした。

5つの低リスクライフスタイル因子に該当しない人口寄与危険割合(PAR)は、全死因で60.7%(95%信頼区間 53.6-66.7)、がん死亡で51.7%(37.1-62.9)、循環器疾患死亡で71.7%(5.1-81.0)でした。75歳以前においても低リスクライフスタイル因子と死亡には同様の関連性を認めました(補足表1)。

同様に、低リスクライフスタイル因子は、男性、女性の特定原因による死亡の低リスク化と相関しました(補足図2)。

年齢群によりハザード比の控えめな違いを観察しました(図1A)。年齢、性別特異的ハザード比を用いて、50歳時点で低リスクライフスタイルが0の人の平均寿命は女性で29.0年(95%信頼区間 28.3-29.8)、男性で25.5年(95%信頼区間 24.7-26.2)でした。対照的に、50歳時点で低リスクライフスタイル5つを全て満たした場合、平均寿命は女性で43.1年(95%信頼区間 41.3-44.9)、男性で37.6年(95%信頼区間 35.8-39.4)でした(図1B)。低リスクライフスタイル0と比べて、女性は5つの低リスクライフスタイルで14.0年(95%信頼区間 11.8-16.8)、男性は12.2年(95%信頼区間 10.1-14.2)の寿命を平均で得る事ができます(図1C)。

前述の推論は、年齢で調整した性別特異的ハザード比を用いた感度分析でも同様でした(補足図3A、B)。女性では、低リスクライフスタイル0と5の間で得られる寿命延伸の30.8%が、循環器系疾患死亡減少によるもので、がん死亡減少分が21.2%、その他の疾患死亡減少分が48.0%でした。男性では、循環器系が34.1%、がんが22.8%、その他が43.1%でした(補足図3C)。

喫煙に関しては、低リスクライフスタイル因子数の数が増えるほど、寿命が延長する一貫した傾向を認めました(補足図4)。

また、正常体重とオーバーウエート(補足図5)、ベースライン時に慢性疾患ありなし(補足図6)でも同様な傾向を認めました。

適度なアルコール摂取を除外した低リスクライフスコアを用いた感度分析では、低リスクライフスタイル0と比較した低リスクライフスタイル4のアメリカ人女性は、50歳時点で平均11.4年(95%信頼区間 9.5-13.3)の寿命延伸となりました。男性の場合は10.0年(95%信頼区間 9.2-10.9)でした(補足図7)。

ライフスタイル因子それぞれに関連した寿命の延伸も推定しました。期待通り、運動増加、非喫煙または喫煙本数減少、健康的な食事パターン、適度なアルコール摂取、適切な体重は全て寿命の延伸と関連しました(図2)。

拡張した低リスクライフスタイルスコア(5~25ポイント制)を元にした推定では、最高のライフスタイルスコアと最低のライフスタイルスコアを比較した場合、女性50歳時点で寿命に20.5年の違いを認めました(補足図8)。

考察

本研究では、低リスクライフスタイル因子を5つ全て満たすアメリカ人は、0の人と比較して50歳時点での寿命が男性で14.0年、女性で12.2年延長すると推定しました。この推定値は、健康的なライフスタイルを取り入れることで、アメリカと他の先進国の寿命のギャップを狭める事が出来ることを示唆しています。2014年では、50歳のアメリカ人の平均寿命は女性で33.3年、男性で29.8年でした。低ライフスタイルスコアが0の場合、平均寿命は女性で29.0年、男性で25.5年と推定されましたが、低ライフスタイルスコアが5の場合、女性で43.1年、男性で37.6年に延長される可能性があります。しかし、アメリカ人成人では、低リスクライフスタイルは、主に肥満によりここ30年間で減少しており、1988~1992年の15%から2001~2006年では8%となっています。

アメリカ人の平均寿命は1940年の62.9歳から2000年には76.8歳、2014年には78.8歳まで延長しました。この延長は、生活水準の向上、医療技術の向上、喫煙の減少、食事の質の改善などの要因によるものでしょう。しかし、不健康なライフスタイルが、平均寿命の延伸を打ち消している可能性があり、特に肥満と身体活動の低下が顕著です。我々の研究では、アメリカでの循環器疾患による早逝の3/4、がんによる早逝の1/2は高リスクなライフスタイルによるものです。健康と寿命にはまだまだ改善の可能性があります。それは個人の努力だけでなく、食品、物理的環境、政策環境にも左右されます。最近の研究では、ニューヨークやサンフランシスコのような都会の低所得者は、ゲーリーやデトロイトのような貧しい地域の低所得者よりも平均寿命が有意に長いと報告しています。この現象は、社会経済的なステータスよりも住環境が平均寿命に寄与することを示唆しています。例えば、裕福な街では、公共サービスへのアクセスもよく、公共での喫煙が厳しく制限されるため、喫煙の被害も少ないです。健康的な食事と運動習慣は、建築物、社会的環境、社会経済的環境の資産(公園へのアクセス、社会的つながり、豊かさ)と関連付けられ、不健康な行動は建築物環境の阻害要因(ファーストフード店へのアクセス)と関連付けられています。これは、健康的なライフスタイルのための環境をサポートすることが、アメリカ国民の長寿促進の一部であるべきであることを示唆しています。予防が国の健康施策の最優先で、予防的なケアは医療制度の不可欠な部分であるべきです。

低リスクライフスタイルを取り入れることによる寿命の延伸についての我々の推定は、過去の研究と概ね一致しています。健康的なライフスタイルは、日本では女性で8.3年、男性で10.3年(文献10)、カナダでは17.9年、ドイツでは女性で13.9年、男性で17.0年、イギリスでは14歳の平均寿命の差と推定されました。デンマーク、ドイツ、ノルウェイでの3つのヨーロッパのコホートでは、好ましいライフスタイルである50歳の男女は、不健康な人達と比較して7.4~15.7年長生きであると示唆しています。低リスクライフスタ溢の定義や、被験者の違いから、これらの推定値はやや異なります。

健康的な食事パターン、適度なアルコール摂取、非喫煙、適正体重、通常の活動量は、それぞれ早逝の低リスクと関連しました。喫煙は、酸化ストレスと慢性炎症により、がん、糖尿病、循環器疾患、死亡の強い独立したリスクファクターであり、禁煙はこれらリスクの低下に繋がります。健康的な食事パターンとその主要な食品成分は、糖尿病、循環器疾患、がん、神経変性疾患の罹患率や死亡率の低下と関連しており、その潜在的な健康上の利点は臨床試験で再現されています。身体活動と体重コントロールは糖尿病、循環器疾患、肺がんのリスクを有意に下げました。アルコール摂取が慢性疾患のリスクかどうかを長期的に検討した臨床試験はありませんが、適度なアルコール摂取による循環器系にとってよいという大規模なコホート研究が報告されています(文献45)。感度解析の結果、健康的なライフスタイル因子のコンビネーションは特にパワフルで、低リスクライフスタイル因子の該当数が多いほど、寿命が潜在的に延長されることが示唆されました。

本研究の主な強みは、食事、ライフスタイルを詳細に反復して計測し、フォローアップの脱落が少ない2つの大規模な長期間のコホート研究です。他の重要な強みは、コホート推定とNHANESという全国を代表する研究を組み合わせたことで、調査結果の一般化可能性が向上したことです。ライフスタイル因子と死亡のハザード比は、我々の故ホー土データのみから推定しましたが、他の被験者群での研究結果と類似しています。我々のコホートは、殆どが白人の医療職なので、異なる民族のサブグループにおけるライフスタイルの全体的な影響を具体的に検討することはできませんでした。

本研究にはいくつかのlimitationがあります。まず、食事とライフスタイルは自己申告制です。そのため、測定誤差は避けられません。しかし、反復測定の使用が計測誤差誤差を減らし、長期的な食生活やライフスタイルを表すことができました。第2に、我々はライフスタイル因子の数をそれぞれ2分値でカウントしましたが、ライフスタイル因子と死亡の関連性はそれぞれ異なります。しかし、各リスク因子の異なるレベルを考慮した拡張スコアによる解析でも同様の結果でした。第3に、ベースライン時の基礎疾患や背景にある医学的治療などを十分に考慮していません。糖尿病、高血圧、コレステロールの上昇というベースラインの慢性疾患による階層化分析は、健康な個人と慢性疾患を持つ個人の両方にとって健康的なライフスタイルを採用することが重要であるという仮説をある程度支持するものであったが、がんと循環器疾患と診断された個人を対象としたさらなる研究が必要です。

結論

低リスクライフスタイルは、低リスクライフスタイル因子該当0の人と比較してアメリカ人50歳時での寿命を女性で14.0年、男性で12.2年延伸する可能性があると推定しました。本研究から、ライフスタイルを改善すれば、アメリカと他の先進国との平均寿命のギャップを狭める可能性が示唆されました。

まとめ

統計処理が詳しく記載されていたのですが、こういった多変量を自分が行った事がないので、本当に読むのに苦労しました。間違いがあるようなら教えてください。

本研究では、ライフスタイルとして、非喫煙、BMI、アルコール摂取量、身体活動量、食生活の5つを取り上げています。この5つが適切であればあるほど寿命の延伸が進む事が結果で示されています。0よりは1が1よりは2が推定寿命が長くなっており、かなりきれいな結果になっています。
また、現在も喫煙しているよりは禁煙した方が寿命が長いのもクリアに示されています。勿論生涯で全く吸ったことがない人には負けてますが、それでも生活習慣を変化させれば寿命が延びるわけで、今から禁煙する理由に十分なります。
アルコールに摂取量が実際どれぐらいのレベルなのか分かりづらいので、実例を挙げておきます。女性は5~15gが適正量として本研究では設定されていますので、ビール500ml1本飲むとオーバーしてしまいます。1日350mlビール1本が限界です。男性は5~30gなので、ビール750ml飲むとギリギリです。瓶ビールを1本飲めば限界という所でしょう。お酒好きには結構厳しい制限と言えるのではないでしょうか。お酒をもっと飲みたいけど長生きしたい!という人は他の4項目頑張るしかないですが、だいたいお酒を一杯飲む人が適切な食生活であるわけがない気もします。

各カテゴリを0,1の2値ではなく5段階でも評価しています。以下にその区分を示しますが、アルコールに関しては5-14.9gが最も高い点数がふられており、考察にも記載されていますが適度な量は飲んだ方がよい、という解釈のようです。ただし、1日350mlのビール1本までです。

 Body mass index (kg/m2): 18.5-22.9 (5), 23-24.9 (4), 25-29.9 (3), 30-34.9 (2), ≥35 (1)
 Cigarette smoking: never (5), past (4), current 1-14/day (3), Current 15-24/day (2), Current ≥25/day (1)
 Alcohol consumption (g/day): 0 (1), 1-4.9 (3), 5-14.9 (5), 15-29.9 (4), ≥30 (2)
 Physical activity (hours/week): 0 (1), 0.1-0.9 (2), 1.0-3.4 (3), 3.5-5.9 (4), ≥6 (5)
 Alternative healthy eating index: Fifth 1 (1), Fifth 2 (2), Fifth 3 (3), Fifth 4 (4), Fifth 5 (5)

逆に言うと80歳までに絶対死にたい!と思っている人は5つ全て満たさないようにすれば期待通りになるかもしれませんね。日本は世界でも有数の長寿国ですし、白色人種とアジア系ではまた条件が変わってくるでしょう。考察でも、環境要因の重要性について触れられていますが、日本の寿命の高さは医療へのフリーアクセスがかなりのウエートを占めているのではないかと感じました。

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5代目歯科医師(高知市開業)
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徳島大学
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