普通の歯科医師なのか違うのか

IODのほうが栄養指導の効果が高い

 
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5代目歯科医師(高知市開業)
東京医科歯科大学卒業(47期)
同大学院修了
【非常勤講師】
徳島大学
岩手医科大学

普通の全部床義歯は低栄養リスクらしい

前回読んだ論文では無歯顎全部床義歯装着者はEichnerA群の高齢者と比較して栄養状態、栄養摂取量が悪く、低栄養のリスクであるという内容でした。ではインプラントでオーバーデンチャーしてみたらどうなのでしょうか?

Journal of Dentisryに2012年に載ったイギリスからの論文を読んでみたいと思います。

Do implant-supported dentures facilitate efficacy of eating
more healthily?
P J Moynihan , A Elfeky, J S Ellis, C J Seal, R M Hyland, J M Thomason
J Dent. 2012 Oct;40(10):843-50

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22796497/


Abstract

Edentulous persons have poor diet quality demonstrating a need for dietary intervention. Implant-supported mandibular overdentures (IODs) have functional advantages over conventional dentures (CD), but whether they enhance the ability to eat more healthily following dietary advice is unknown.

Objectives: This study aimed to compare the effectiveness of dietary intervention between IODs and CD patients.

Methods: Edentulous adults (28 IOD and 26 CD) received customised dietary advice. The percentage contribution of dietary fats, carbohydrate and protein to energy (kcal) intake, dietary intakes of fibre, fruits, vegetables and antioxidants, and plasma antioxidants were assessed pre- and at 3 and 6 months post-dietary intervention.

Results: Both groups increased fruit and vegetable intake at 3 and 6 months following dietary intervention but intakes between groups did not differ. The IOD group had reduced % energy from total fat at 3 and 6 months and from saturated fat at 3 months. The CD group had reduced % energy from saturated by 6 months. The IOD group had a significantly lower % energy intake from saturated fat at 3 months and higher intake of non-starch polysaccharide (NSP) compared with the CD group. Both groups showed improvements in serum antioxidant status but the IOD group had significantly higher plasma antioxidant capacity post intervention compared with the CD group.

Conclusions: Dietary intervention benefits denture patients. IOD patients showed moderately greater dietary improvements compared with conventional denture patients.

無歯顎者の食の質は食事への介入が必要なほど悪い状態です。下顎のインプラントオーバーデンチャー(IOD)は通常の全部床義歯(CD)よりも良く咬めますが、それが食事指導により健康的に食べる能力を向上させるかはよくわかっていません。

目的:IODとCD間で食への介入効果に関して比較する事です。

方法:28名のIOD患者と26名の無歯顎全部床義歯装着者に対して個人に合わせて食事指導を行いました。食事中の脂質、炭水化物、タンパク質をエネルギー量ベースで%化しました。また、食物繊維、フルーツ、野菜、酸化防止剤、血漿抗酸化剤の摂取料をあわせて食事介入前、介入後3か月、6か月の3回調査しました。

結果:両群ともにフルーツと野菜の摂取量が介入3、6か月時には増加しましたが両群間に有意差は認められませんでした。IOD群においては介入後3,6か月後の総脂肪、3か月後の飽和脂肪酸のカロリーに占める割合が減少しました。CD群では介入後6か月までに飽和脂肪酸のカロリーに占める割合が減少しました。IOD群では介入後3か月時の飽和脂肪酸のカロリーに占める割合は有意に減少し、非デンプン多糖類の摂取がCD群よりも多くなりました。両群共に血清中の抗酸化物質は改善しましたが、IOD群は介入後の血漿抗酸化能がCD群よりも有意に高くなりました。

結論:食への介入は義歯装着者にメリットがあります。IOD群はCD群よりも改善が大きい結果となりました。

ここからはいつもの通り本文を適当に要約します。誤訳もあり得ますので、気になったら実際の本文をご確認ください。

緒言

有歯顎者と比較して無歯顎者はフルーツや野菜、食物繊維を取る量が少なく、飽和脂肪酸を取る量が多い、という報告があります。食べづらさが新しい補綴物を求める第1の理由にも関わらず、補綴的なリハビリテーション単独では良い食事の変化にはならないようです。

以前の研究からIODは機能面でCDよりも優れていました。IODは肥満を少し改善しましたが、食を改善することはありませんでした。これは、個人に合った食事指導なしでは患者は変える必要性に気付かない、そして咀嚼能力以外の多くの要素が食の選択に影響しているかもしれないです。それにもかかわらず、無歯顎者は機能歯の制限を考慮した食事指導の効果を支持する疑いようのない人達です。

義歯装着への食事指導の効果に関する報告はあまりありません。Olivierらは女性の義歯装着者に対してリラインを行っても食物繊維摂取量は増加せず、食事しを行ったらフルーツと野菜の摂取量が増えたと報告しています(文献9)。義歯装着時に同時に食への介入を行うことでフルーツと野菜の摂取量が増加したという報告があります。機能的に優れているはずのIOD患者に対して食事指導を行った場合の効果はCD群と比較してどうなのかについては明らかではありません。

実験方法

被験者の選択

被験者の選択は以下のようになっていますが、IOD群は下顎に2本インプラント埋入のベーシックなIOD群に限定されています。義歯は装着3か月~5年という範囲になっています。年齢層が40~80歳となっているんですが、40歳の無歯顎者・・・・は社会的経済的に何か問題を感じざるを得ないのですが・・・

実験の流れ

実験の流れは以下の様になっています。食事指導介入前に何回か調査をしています。実際の食生活や質問表への記載、血液検査を経て、食事指導も2回個人に合わせた形で行われています。全員に規格化した介入ではなく、個人に合わせた食事指導をしてます。介入後3,6か月後に再度アセスメントを行い、最終的に残った人数がCD群については痛み群26、IOD群28名です。

食事摂取量のチェック

フルーツの摂取については、生、ドライフルーツにしたりジュースにしたりと大まかな加工の方法は問われていません。野菜に関しては生、大まかな加工はよいようですがジャガイモ以外という制限があります。ポテチ的な加工は駄目ということでしょうか。

データを解析して、カロリー、非デンプン多糖類、フルーツ、野菜の1日の平均摂取量や、脂肪、飽和脂肪酸、炭水化物、タンパク質のエネルギー量ベースに対する割合を算出しました。

血液検査

血漿中の抗酸化能、酸素ラジカル吸収能を計測しています。これは食材や健康食品などの機能を計る指標のようです。
また、レチノール(ビタミンA)、α-トコフェロール、δ-トコフェロール(ビタミンE)、β-カロテンの血漿中の濃度も計測しています。

咀嚼機能

義歯の満足度をVASで表現させています。


結果

被験者

CD群26名:男性8名、女性18名、平均年齢72.5歳
IOD群28名:男性8名、女性20名、平均年齢66.3歳

年齢はCD群の方がIOD群より有意に高い結果でしたが、UK Department of Health’s Index of Multiple Deprivationを用いてアセスメントの結果、社会経済的な要素については有意差を認めませんでした。

食物摂取

ベースライン時の摂取カロリー、フルーツと野菜、非デンプン多糖類(NSP)の摂取量はIOD群が有意にCD群よりも多く、血漿中の抗酸化能も優れた結果となりました。これらの差は時系列で比較する際には補正されています。

3か月後のフルーツと野菜の摂取量は両群ともに増加しましたが、IOD群では平均87g/d、CD群では平均54g/d増加しました。6か月後ではIOD群はベースラインより26g/d、CD群では57g/d増加しました。年齢とベースライン時の摂取量を調整した結果、3,6か月共に両群間に有意差は認めませんでした。

非デンプン多糖類の摂取量はCD群では変化を認めませんでしたが、IOD群では3か月後に0.7g/d増加でベースライン時より有意に増加しましたが、6か月後では有意差は認めませんでした。3か月時点ではIOD群がCD群よりも有意に摂取量が多い結果となりました。

総摂取カロリー比での脂肪摂取割合はIOD群、CD群ともに6か月後に有意に減少しました。両群間で有意差は認めませんでした。

総摂取カロリー比での飽和脂肪酸摂取割合に関してもIOD群、CD群ともに有意に減少し、両群間で有意差は認めませんでした。

抗酸化能、ビタミン

抗酸化能はIOD群、CD群ともに3,6か月後にはベースラインと比較して有意に向上していました。3,6か月後共に、IOD群が有意にCD群よりも高い値を示しました。

IOD群ではα、δ-トコフェロール共に3か月後には有意に増加しましたが、βーカロテンは有意差がありませんでした。CD群ではα-トコフェロールが3,6か月後に有意な増加を示し、β-カロテンは3か月後のみ増加しました。δ-トコフェロールは有意差を認めませんでした。3か月時のδートコフェロールにおいてIOD群がCD群よりも有意に高い値を示しました。

咀嚼能力

VASによる主観的な咀嚼能力の評価は
IODがベースライン79(±31.4)、3か月後76(±27.1)、6か月後80(±28.2)
CDがベースライン67(±37.0)、3か月後69.2(±34.5)、6か月後58.7(±36.0)
であり、ベースライン、3か月時には両群間に有意差はありませんでしたが、6か月時には有意差が認められました。

考察

グループ間で最も顕著な差があったのは、3ヵ月後の飽和脂肪酸で、CD群では5%に対してIOD群では約13%も減少していました。6ヵ月時点でのIOD群の飽和脂肪摂取量は、食事摂取基準値(DRV)であるエネルギー摂取量の10%未満に近づいていました。飽和脂肪の摂取量をこのレベルに制限することで、心血管疾患と一部のがんの両方のリスクが減少するという説得力のある証拠があります。

食事指導を行って3か月では有意差があるものの、6か月では有意差が認められなくなってしまうことに関しては、食事指導の継続性が必要でないかと説明しています。

ベースライン時に多くの項目でIOD群の方が有意に高かったことに関しては、IOD群の方が最初からリッチな食生活を送っており、それは咀嚼能力の差により咬めなくて避ける食べ物が少ない事に起因するのではないかと推察しています。

まとめ

もともとIOD群の方が食物摂取量、バランス等優れていましたが、IOD群、CD群ともに食事指導によりフルーツ野菜等の摂取量向上、飽和脂肪酸摂取量の減少、抗酸化能の向上が認められました。

どちらかというと抗酸化能などからIOD群の方が食事指導の効果が大きかったと言えると思います。

一応、この文献的に社会経済的な要素に有意差はなかったとのことですが、2インプラントでオーバーデンチャーする人と、それを選択しなかった、できなかった人で社会経済的な差が全く無かったのかは気になる所です。

また年齢は単純に認知や理解にも影響しますからIOD群の方が有意に若かったということは理解力が高く、顎堤状態もいいからIOD出来た可能性が考えられます。逆にCD群は年齢が高く理解力におとり、顎堤状態も悪いからIODできないから義歯もあまり状態がよくない、という可能性もあります。なんとも言えない所ですよね。セット後3か月と5年の人が同一の群にいるのもちょっと気持ち悪いです。

こういうのを補綴学会で発表すると大体義歯のクオリティはどうだったのか、顎堤の状態はちゃんと評価したのか、などで紛糾する事がありましたので、そういうのが気になる体質になってしまいました。

どちらにしても、IODの方が栄養に関してはCDよりはリッチである、というのは確かな事のようです。そして食事指導をすればIOD、CD両群共に栄養状態や食べ物の選択に変化が起こるわけで、やはり補綴するだけではなく食事指導も行うべき、という結論になるのかな、と思いました。

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