普通の歯科医師なのか違うのか

CAD/CAMデンチャーは従来法より模型への適合が良い。

 
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5代目歯科医師(高知市開業)
東京医科歯科大学卒業(47期)
同大学院修了
【非常勤講師】
徳島大学
岩手医科大学

ここ2回でCAD/CAMデンチャーのシステマティックレビューを2本読みましたが、両方の本文に引用されている論文はある程度重要だろうということで読む事にしました。オーストリアの人が書いた2018年にパブリッシュされた論文ですが、筆頭とラストが同じSteinmasslさんなんですよね。パトリシアさんが教授でオットーさんが旦那さんなんでしょうか?ちょっと気になりました。in vitroの研究になります。

CAD/CAM produces dentures with improved fit
Otto Steinmassl , Herbert Dumfahrt , Ingrid Grunert , Patricia-Anca Steinmassl 
Clin Oral Investig. 2018 Nov;22(8):2829-2835. doi: 10.1007/s00784-018-2369-2. Epub 2018 Feb 22.

PMID: 29468600
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/29468600/

Abstract

Objectives: Resin polymerisation shrinkage reduces the congruence of the denture base with denture-bearing tissues and thereby decreases the retention of conventionally fabricated dentures. CAD/CAM denture manufacturing is a subtractive process, and polymerisation shrinkage is not an issue anymore. Therefore, CAD/CAM dentures are assumed to show a higher denture base congruence than conventionally fabricated dentures. It has been the aim of this study to test this hypothesis.

Materials and methods: CAD/CAM dentures provided by four different manufacturers (AvaDent, Merz Dental, Whole You, Wieland/Ivoclar) were generated from ten different master casts. Ten conventional dentures (pack and press, long-term heat polymerisation) made from the same master casts served as control group. The master casts and all denture bases were scanned and matched digitally. The absolute incongruences were measured using a 2-mm mesh.

Results: Conventionally fabricated dentures showed a mean deviation of 0.105 mm, SD = 0.019 from the master cast. All CAD/CAM dentures showed lower mean incongruences. From all CAD/CAM dentures, AvaDent Digital Dentures showed the highest congruence with the master cast surface with a mean deviation of 0.058 mm, SD = 0.005. Wieland Digital Dentures showed a mean deviation of 0.068 mm, SD = 0.005, Whole You Nexteeth prostheses showed a mean deviation of 0.074 mm, SD = 0.011 and Baltic Denture System prostheses showed a mean deviation of 0.086 mm, SD = 0.012.

Conclusions: CAD/CAM produces dentures with better fit than conventional dentures.

Clinical relevance: The present study explains the clinically observed enhanced retention and lower traumatic ulcer-frequency in CAD/CAM dentures.

目的:レジンの重合収縮は、義歯床と床下粘膜間の適合を低下させ、従来法で製作した義歯の適合を低下させます。切削加工で製作したCAD/CAMデンチャーは重合収縮が問題になりません。そのため、CAD/CAMデンチャーは従来型の義歯よりも適合が良いと推定されます。この仮説をテストすることが本研究の目的です。

実験方法:4つの異なるメーカーのCAD/CAMデンチャー(AvaDent、Merz Dental、Whole You、Wieland/Ivoclar)を10種類のマスター模型から製作しました。コントロールとして同じマスター模型から従来法(通常の埋没塡入、長時間重合)の義歯を10個製作しました。10個のマスター模型と義歯床はスキャンされ、デジタルで照合されました。不適合の絶対値は2mmメッシュで計測されました。

結果:従来法で製作した義歯の不適合は平均0.105mm±0.019mmでした。CAD/CAMデンチャーの不適合さはより小さいものでした。全てのCAD/CAMデンチャーの結果は、AvaDentが最も適合が良く、0.058mm±0.005mm、Wielandは0.068mm±0.005mm、Whole Youは0.074mm±0.011mm、Balticは0.086mm±0.012mmでした。

結論:CAD/CAMデンチャーは従来法よりも適合が良いと考えられます。

臨床的な関連性:本研究から、CAD/CAMデンチャーでは維持力の向上や義歯性口内炎の頻度の低下などが認められる事が示唆されます。

ここからはいつもの通り本文を適当に抽出して意訳要約します。誤訳もあり得ますので、気になったら実際の本文をご確認ください。

緒言

無歯顎患者にとって、可撤式の全部床義歯は侵襲が殆ど無く、費用対効果が高い治療オプションです。義歯の質を決める重要な要素は適合です。よく適合した義歯は、装着感が快適で義歯性口内炎の機会が減少します。良好な維持には、粘膜とぴったり一致した義歯の適合が重要な要素となります。義歯の維持は咀嚼能力や会話能力などに影響を与えます。特にQOLには強い影響を与えます。そのため、全部床義歯の製作においては、粘膜と最大限一致させることが主なゴールの1つであるべきです。

CAD/CAM技術が可撤式義歯に導入される以前は、粘膜と義歯床粘膜面の一致は常に重合収縮によって妨げられてきました。収縮は義歯の変形を起こし、適合と維持力にマイナスとなります。CAD/CAMでの製作では切削加工です。重合済みのレジンをミリングするため、収縮や変形が起こりません。

CAD/CAMで製作した義歯床が、従来法で製作した義歯床よりも適合が良い、という仮説を検討するのが本研究の目的です。

実験方法

試料

無歯顎患者から得た上顎模型をマスター模型としました。試料の数は同様の研究から類推して決定しました。今回用いた模型は、中等度または高度な顎堤吸収、アンダーカットあり、なし、高い、低い口蓋、などと様々な形態をしています。1つの模型で、4種類のCAD/CAMデンチャーと従来法の5つの義歯を製作しました。4種類のCAD/CAMデンチャーはそれぞれ異なるメーカーから供給されています。AvaDent Digital dentures、Baltic Denture System、Whole You Nexteeth、Wieland Digital Denturesの4種類です。1つのマスター模型からそれぞれ1つのCAD/CAMデンチャーを製作しました。

AvaDent、Baltic、Wielandについてはマスター模型のスキャンで解剖学的な情報を得ました。Whole Youは模型のスキャンではなく、印象のスキャンを行いました。

10個のマスター模型に対して、それぞれ1つずつ合計10個の従来法による義歯を製作し、コントロールとしました。従来法による義歯は埋没塡入にて製作しました。埋没はclass Ⅳ石膏を用いてメーカー指示に従い行いました。その後、分離材を塗布しました。義歯床は加熱重合レジンを用いて、推奨された75度8.5時間の長時間重合法で行いました。全ての試料は研磨面のみを研磨し、粘膜面は臨床で行われているように研磨を行わないように仕上げました。全ての義歯は、200mlの脱イオン水を入れた密閉ビーカーに入れ、37.0度で7日間暗所に保管してから分析を行いました。

スキャニングとマッチング

従来法による義歯製作では、最終的に模型を壊してしまうため、従来法で義歯を製作する前にマスター模型をスキャンしました。スキャンは、Shera scansprayを薄く塗布した後に、7Series Dental Wings scannerで行いました。全てのスキャンはトレーニングされた研究者が1名でおこないました。3DメッシュのデジタルデータはSTL形成で出力されました。実験義歯それぞれの粘膜面に対して同じ方法を用いました。メッシュの標準的なトリミングを行った後、リバースエンジニアリングソフトウェアGOM Inspect 2016(GOM, Braunschweig, Germany)を用いて、研究者1名が粘膜義歯床面をマスター模型と義歯床粘膜面をマッチングさせました(図1)。測定点は最短距離でセッティングされ、結果として2mmメッシュとなりました。プラスとマイナスの値が相殺されないように絶対値を使用しました。全体的なミスマッチの平均値を計算する以外に、マスター模型を5つの機能的な領域(後縁封鎖部、前歯部~側方部の床縁部、顎堤部、上顎結節部、口蓋部)に分割して、領域固有のミスマッチを評価しました。

これらの解析後に、6ヶ月間口腔内で使用したシミュレーションとして全ての試料にサーマルサイクルを行いました。義歯を5℃と55℃の脱イオン水に交互に浸漬するサイクルを5000回行いました。サーモサイクルの後、前述のプロトコルにしたがってスキャンとマッチングの手順を繰り返しました。

統計処理

データはSPSSとRにて扱いました。義歯とマスター模型のミスマッチ量の絶対値の平均を用いました。データは、外れ値に関する箱ひげ図検査によって評価されました。データの正規分布の検定には、Shapiro-Wilk検定とQQ-plotを使用ました。平均値とSD、95%信頼区間を算出しました。従来型義歯とCAD/CAMデンチャー間で有意差が認められるかどうかを検討するため、一元配置反復測定分散分析にポストホック分析とBonferroni補正を組み合わせて統計処理を行いました。部位による統計的な差を調べるために、一元配置Welch分散分析とGames-Howellによるポストホックテストを用いました。

結果

全体的な義歯の適合

義歯と模型粘膜面とのミスマッチの測定点は、平均650.2±86.1点計測しました。データには異常値はなく、正規分布していました。従来型義歯の平均ミスマッチ量は0.105mm±0.019mmでした。全てのCAD/CAMデンチャーは従来型よりも平均ミスマッチ量は小さい結果となりました。AvaDentが最もミスマッチ量が小さく、平均0.058mm±0.005でした。Wielandの平均ミスマッチ量は0.068mm±0.005、Whole Youは0.074mm±0.011、Balticは0.086mm±0.012でした。平均値、SD、95%信頼区間などを表1、図2に示します。

5種類の義歯間でミスマッチ量は統計的に有意差を認めました。

AvaDent、Wieland、Whole Youは従来型と比較して有意に優れたミスマッチ量でした。Balticも従来型と比較すると正確な適合でしたが、統計的な有意差は認めませんでした。

従来型と比較したミスマッチ量の平均値の差は、AvaDentでは0.047mm、Wielandでは0.037mm、Whole Youでは0.031mmであり、この3つのCAD/CAMシステムは従来型よりも有意に適合が良い結果となりました。Balticでは0.019mmであり、従来型よりも優れていましたが、統計的な有意差を認めませんでした。

部位による違い

従来型およびほぼすべてのCAD/CAMデンチャーにおいて、最も精密に適合した部位は顎堤部と口蓋部でした。最も適合が悪かったのは後縁封鎖部と前歯部、側方部の床縁部でした。AvaDentとWielandは最も精密な適合を示し、後縁封鎖部では、0.057±0.005mm、0.071mm±0.008mm、床縁部では0.084±0.017mm、0.088±0.011mmでした。Whole Youは後縁封鎖部で0.166±0.044mmと最も悪い結果となりました。部位別の平均ミスフィット量および95%信頼区間を表2に示します。図3は従来型、CAD/CAMデンチャーごとの部位別によるミスフィット量の違いを図示したものです。

部位別によるミスフィット量の違いは、従来型でも全てのCAD/CAMデンチャーでも統計的に有意差が認められました。全種類で口蓋部は、後縁封鎖部や床縁部よりも有意にミスフィット量が小さい結果でした。Whole Youでは、後縁封鎖部が他の部位よりも統計的に有意にミスフィット量が大きい結果でした。

サーマルサイクル

サーマルサイクルによる影響は統計的に有意ではありませんでした。適合度の変化は、スキャニングとマッチングプロセスの不正確さの範囲内であるだけでなく、適合度の精度の向上や低下という再現性のある傾向は従来の義歯にもCAD/CAM義歯にも認められませんでした。

考察

本研究は、臨床的な装着時の適合を評価するためにデザインされました。マスター模型は様々な臨床的な顎堤状態を表現しています。かなり極端な状態でさえ想定しています。同じマスター模型から複数の義歯を製作することで、AvaDent、Baltic、Wieland、および従来型の義歯については印象によるコントロールできないバイアスを回避しました。whole Youに関してはマスター模型のスキャンは不可能でした。そのため、マスター模型の印象が必須でした。他社と同様にマスター模型をスキャンする事ができたなら、Whole Youで製作した義歯はより正確だったかもしれません。

私達の実験条件では、CAD/CAMデンチャーの粘膜とのミスマッチを決定する主な要因は、スキャナーの解像度と、ミリングの正確性の2つです。取り扱い説明書には、dental wings 7Seriesのスキャナーの精度は15μmであり、in vitroの研究では、スキャニングパウダーを塗布しただけの手を加えていない面は、スキャナーの精度に悪影響を与えないと報告されています。本研究では、ミスマッチ量はスキャナー精度よりも大きかったので、この実験設定は必要な測定レベル内の差異を検出するのに適していると思われます。臨床では、印象方法も関連因子となるでしょう。可撤式義歯の印象採得は、エビデンスに基づくゴールドスタンダードがなく、全ての印象過程にコントロールの難しい要素、例えば、気泡の混入や圧力などが含まれるため、本研究の実験設定では印象採得を可能な限り避けました。

知見

従来型のレジンは必ず重合収縮を伴います。一方で、CAD/CAMデンチャーに使用されるミリング過程は切削加工です。工業的に重合されたレジンディスクを最終形態へとミリングします。ミリング過程での体積変化は起こりません。そのため、CAD/CAMで作った義歯がマスター模型と高い適合を示したことに何の驚きもありません。今まで、CAD/CAMデンチャーの正確性を検討した論文は2つしかなく、AvaDentのみが両方で検討されており、相対する結果となっています。GoodacreらはAvaDentは従来型の義歯よりも適合が向上すると報告しましたが、SrinivasanとCantinはAvaDentよりも従来型の方が適合が良かったと報告しています。我々の結果はGoodacreらの知見を後押しするものです。しかし、本研究のミスマッチ量は以前の研究よりもだいぶ大きいです。Srinivasanの場合、異なる評価法とソフトウェアを採用していたのが原因かもしれません。Goodacreは本研究と同じソフトウェアを使用していましたが、メッシュがかなり広く、各義歯で60点しか計測ポイントがありませんでした。全てのCAD/CAMデンチャーシステムの中で、AvaDentが最も正確性が高い結果でした。しかし、今回用いたCAD/CAMデンチャーは全て従来型の義歯よりもよい結果でした。従来型義歯のミスマッチ度は非常に小さかったにも関わらずです。

部位による違いに関しては、CAD/CAMデンチャーと従来型義歯は同じ様な脆弱性を示しました。CAD/CAMデンチャーは不適合の度合いが小さく、AvaDentの部位別特徴はGoodacre、Srinivasanの研究と一致しました。不適合の起こるメカニズムはCAD/CAMと従来型では異なります。従来型では重合収縮に直面する一方で、ミリングではアンダーカット領域の再現が主なチャレンジになるかもしれません。この仮説は、CAD/CAMデンチャーシステムでは、小さいながらも床縁部の再現にトラブルがあったことからも支持されます。床縁部はアンダーカットが含まれることが多いです。

臨床的な関連

本研究の目的は、現在市販されているさまざまなCAD/CAMシステムの将来的な臨床性能の概要を明らかにすることでした。実験に使用したCAD/CAMシステムは、従来型よりも正確にマスター模型の粘膜面を再現する事ができました。本研究で得られた知見は、推奨される適合と印象のプロトコルを削減しても、CAD/CAMで製作された義歯が維持力に関して臨床的に優れていることを説明するものです。

結論

CAD/CAMデンチャーは従来型よりも、より高い粘膜面との一致性を認めます。AvaDent、Whole You、Wielandは従来型よりも有意に正確性が高い結果でいた。そのため、CAD/CAMデンチャーはよい維持力を有し、義歯性口内炎などの頻度が減少する、というのは可能性が高いです。デジタルデザインと自動的な製作は、人為的なミスを補償する可能性があります。しかし、補綴治療を成功させるためには、綿密な調整と深い補綴学の知識が不可欠であることに変わりはありません。

まとめ

こういった適合を調べるのに一番重要なのは、重ね合わせ時にどこを基準点とするか、かと思いますが、それが記載されていません。CAD/CAMの場合収縮することがないですが、従来型だと重合収縮するため、適合がマイナスになる部位が出る事が予想されます。今回は定量化するために絶対値を用いており、マイナスかプラスかはよく分からないです。

また、今回は模型への適合のため、実際の口腔内への適合とはまた少し異なる可能性があります。模型は硬化膨張していると考えられますし、その前の印象の変形なども考えられます。勿論粘膜には被圧変位があります。

同一模型で実験したら、CAD/CAMの方が模型表面と義歯粘膜面の一致性が従来型よりも有意に良い、というのが今回の実験から言える事です。勿論模型への適合が良い方が、口腔内の適合が良い可能性は高い、とは思いますが。そこはあくまで推定ですので注意が必要でしょう。

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5代目歯科医師(高知市開業)
東京医科歯科大学卒業(47期)
同大学院修了
【非常勤講師】
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