普通の歯科医師なのか違うのか

COVID-19重症者の唾液検査は有効か?

 
この記事を書いている人 - WRITER -
アバター
5代目歯科医師(高知市開業)
東京医科歯科大学卒業(47期)
同大学院修了
【非常勤講師】
徳島大学
岩手医科大学

イタリアより

前回唾液採取によりCOVID-19感染がわかるかどうか、ということと唾液飛沫による感染のメカニズム等についてのレビューを読みました。
かなりの長文だったので、まあ読むのも諦めた人も多かったかもしれません。

しかし、これをしっかり読むと今どこまで分かっているのかと言うことを把握できるので論点の整理になりました。

さて、pubmedで saliva COVID-19 diagnosis と検索すると何本か論文が引っかかってきます。その中で前回のレビュー中に引用がない文献を読むことにしました。

アクセプトが4/8でまだin Pressであるイタリアからの論文。医科系の雑誌は詳しく無いですが、Journal of infectionという名前からしてこれはちゃんとした雑誌でしょう。IF調べたら5。なかなか凄い。しかもオープンアクセスです。

イタリアと言えば一時期大変な事になったわけでその中でしっかり論文にしているのは、本当にご苦労様としか言えません。

Saliva is a reliable tool to detect SARS-CoV-2
J Infect. 2020 Apr 14. pii: S0163-4453(20)30213-9. doi:10.1016/j.jinf.2020.04.005.

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/32298676

Abstract

Objectives: This study analyzed salivary samples of COVID-19 patients and compared the results with their clinical and laboratory data.

Methods: Salivary samples of 25 COVID-19 patients were analyzed by rRT-PCR. The following data were collected: age, sex, comorbidities, drugs. Lactate dehydrogenase (LDH) and ultrasensitive reactive C protein (usRCP) values were registered on the same day when a salivary swab was collected. Prevalence of positivity in saliva and association between clinical data and the cycle threshold as a semiquantitative indicator of viral load were considered.

Results: Twenty-five subjects were recruited into this study, 17 males and 8 females. The mean age was 61.5 + / −11.2 years. Cardiovascular and/or dysmetabolic disorders were observed in 65.22% of cases. All the samples tested positive for the presence of SARS-CoV-2, while there was an inverse association be- tween LDH and Ct values. Two patients showed positive salivary results on the same days when their pharyngeal or respiratory swabs showed conversion.

Conclusions: Saliva is a reliable tool to detect SARS-CoV-2. The role of saliva in COVID-19 diagnosis could not be limited to a qualitative detection of the virus, but it may also provide information about the clinical evolution of the disease.

目的:COVID-19患者の唾液を採取して臨床データやラボデータと比較することです。

方法:25名のCOVID-19罹患者の唾液サンプルをrRT-PCRにて分析しました。年齢、性別、合併症、服用薬、LDH、高感度CRP(usRCP)のデータを採取しました。LDHと高感度CRPは唾液綿棒による唾液採取と同一日のデータを記録しました。唾液の陽性率、臨床データとウイルス量の半定量的インジケーターとしてのCt値の相関を検討しました。

結果:25名の患者(男性17名、女性8名、平均年齢61.5±11.2歳)が参加しました。循環器系、代謝系の異常は65.22%に認められました。全ての患者はSARS-CoV-2陽性でした。一方でLDHとCt値は逆相関を示しました。2名の患者は咽頭または呼吸器綿棒による結果が陰性になった同一日の唾液検査が陽性となりました。

結論:唾液はSARS-CoV-2検出の信頼できるツールです。COVID-19診断における唾液の役割はウイルスの定性的な評価のみならず診療の進化に関しての情報を与えてくれるかもしれません。

ここからはいつものように適当に大事だと思う所を抜き出して訳していきます。何か気になった方は原文をご確認頂くようよろしくお願い申し上げます。

緒言

緒言は基本パスですが、内容としてはCOVID-19のアウトブレイクについてと迅速な診断方法の確立について模索している的な事が書かれています。

唾液による診断ができたらこういうメリットがあるぞ!ということが書いていますが、前回のレビューとほぼ同じです。不快感がなく容易に採取できる。特殊職でなくても採取できる的な事が書いてあります。

To date, there are not any studies regarding the possible role of oral fluids and saliva in the detection of SARS-CoV-2. The use of saliva as a diagnostic sample has several advantages: since saliva can be easily provided by the patient, 14 it does not re- quire specialized personnel for its collection. In addition, the com- fort of the procedure is significantly higher if compared with the nasopharyngeal swab or sputum procedure.

実験方法

25名の重症、または重篤な症状のSARS-CoV-2罹患者が対象です。これらの患者は鼻咽腔綿棒によるrRT-PCRによってCOVID-19の診断が行われています。

唾液採取はdrooling techniqueを用いてます。おそらく吐唾法の事ではないかと思います。このテクニックでは口腔内の唾液のみを採取でき、咽頭や呼吸系粘膜からの分泌物が含まれないと書いてあります。人工呼吸器が付けられているような場合は専門職がピペットを用いて唾液を採取しています。可能であれば4日後に再度採取を行っています。

採取したデータは以下の通りです。
年齢
性別
合併症(高血圧、糖尿病、脂質異常、肥満、肺や縦隔などの既往歴)
服用薬
炎症マーカーである高感度CRPとLDH

唾液に関してはRT-PCRを行って核酸を増幅していますが、その際のサイクル数(Ct値)が変数で、Ct値が少ない=少ないサイクルで検出可能→元々の核酸量(ウイルス量)が多いということになります。

結果

25名の患者(男性17名、女性8名)が参加しました。平均年齢61.5±11.2歳で範囲は39~85歳です。全員が重症または重篤な患者でした。

65.22%に基礎疾患、特に高血圧、脂質異常、肥満を認めました。約20%に胸腺腫や閉塞性睡眠時無呼吸症候群のような呼吸系疾患の既往歴がありました。服薬に関しては40%の人が最低1種類以上を服用していました。スタチン(25%)やACE阻害薬、アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)(20%)を多くの人が服用していました。

既往歴、病歴については血清LDH以外は男女に有意な差は認められませんでした。血清LDHは女性の方が有意に高い結果となりました。

25名全員の最初の唾液からSARS-CoV-2が検出されました。異なるCt値(18.12~32.23)において検出されましたが、全てCt値33以下でした。症状発現後の期間によってCt値に違いを認めませんでした。

興味深いことにCt値とLDHには負の相関を認めました。そのため唾液中のウイルス量と組織破壊のマーカーであるLDHとは正の相関を認めました
対照的にCt値と高感度CRPには相関を認めませんでした。ただし、この炎症マーカーと唾液中のウイルス量は負の関係性を認める傾向はありました。

Ct値と年齢性別には関連性は認められませんでした。

8名の患者は4日後に再度唾液を採取しました。Ct値の関連性の違い以外は1日目とほぼ同じ結果を示しました。

印象的な事象として、唾液検査陽性となった2人の患者では同日に咽頭または呼吸器から綿棒で採取した試料では陰性になったということが挙げられます。最初の患者では鼻咽腔で採取した試料の結果が陰性に変化した同じ日の唾液検査では陽性でした。その結果は2日後にも同じ結果を確認しました。2人目の患者では呼吸器系から綿棒採取した試料に関しては3連続で陰性だった一方で、唾液検査は2連続で陽性でした。

考察

上記の鼻咽腔綿棒等で採取した試料が陰性になったのに、唾液では陽性である、ということを考察においても下記の英文のように大きくクローズアップしていますが、前回の論文でも唾液中のウイルス核酸はかなり長期間に渡って検出されることが記載されています。それにより回復の定義自体を鼻咽腔綿棒2連続陰性+唾液検査陰性と変更すらしています。これが意味がある事なのかどうかは今後の検証が必要でしょう。

Surprisingly, in two patients the salivary samples proved pos- itive while their respiratory swabs showed negative results on the same days. This finding, together with the fact that Chi- nese colleagues reported similar results in sputum and feces sam- ples, 19 rises the concern about how to manage recovering pa- tients at the moment of hospital discharge, because some of them could be contagious through their saliva even after two consecu- tive pharyngeal swabs that converted to negative, a serious dan- ger for their own family and a troublesome issue for the social community.
For this reason, last week we decided that the patients who had recovered should be discharged only after two pharyngeal swabs and one salivary swab tested negative.

しかし前回の論文ではその核酸自体が病原性を有しているかはまだわからない、と書いており、この論文とは異なる見解を示しています。前回の論文では

たとえ2019-nCoVに対する抗体が作用しても、このグループの1/3において20日、いやそれ以上の期間、喉の奥の唾液中からウイルスのRNAが検出可能でした。これは抗体作用により死滅しても長期間ウイルスのRNAが残存する事を示唆しています。症状が完全に治癒した1人の患者において陰性結果の2日後に再度陽性となりました。これは臨床的に治癒しても少量の2019-nCoV RNAが唾液中に排泄されることを示唆しています。この治癒後の唾液中のRNAの検出が感染性を意味するのかウイルスの排出を意味するのかは今後の研究で確認する必要があります。

という記載があります。これからすると今回の論文は臨床系でしかも現在進行形で重症患者を診ているのでそこまでは考えつかなかったという所ではないかと思われます。これは仕方無いでしょう。

LDHについての考察は以下のような記載になっています。

Indeed, LDH is commonly released during tissue damage, it can be associated to the lung damage that takes place in COVID-19 patients. Within this frame, we reported an inverse association when comparing the Ct values in salivary rRT-PCR analysis with the haematochemical LDH levels recorded on the same day of the swab: this means that the higher the salivary viral load is, the higher the LDH levels in the bloodstream are. Therefore, our re- search shows that saliva is not only a biological fluid that could be used for qualitative detection of SARS-CoV-2, but it may represent a useful tool to follow the course of the illness together with other biological markers.

COVID-19患者においてLDHは肺の損傷に関連して高値を示すと考えられます。今回の研究では、唾液中のウイルス量が多ければ、血液中のLDHも高くなりました。そのため、唾液は単純にSARS-CoV-2が存在するかどうかの定性評価のみならず、病状の進行の把握にも有用であると考えられました。

まとめ

前回読んだレビューと今回の臨床研究ではだいぶ言ってることが違う所があるな、と思いました。それだけ現在進行形で物事が動いているということでしょう。

感覚的には前回のレビューの方が的を得ている気がします。しかし、重症患者では全症例で唾液からウイルスの核酸が検出されているわけで、唾液を使った何らかの診断というのは可能性はあるのではないかと思います。採取が比較的容易?でリスクが少ないという事ですし。

肺の破壊度ともしかしたら唾液のウイルス量が関係があるかもしれないというのも単にLDHの数値だけで判断することはできないと思いますが、予知性という所に使える可能性もありそうです。

まだ2本しかCOVID-19関連の論文は読んでいませんが、やはり昨日のレビューはかなりしっかり現状をつかんでいたんじゃないかと思いますので、唾液とCOVID-19について知りたければ、まず前回の論文をしっかり読むべきだと思いました。

この記事を書いている人 - WRITER -
アバター
5代目歯科医師(高知市開業)
東京医科歯科大学卒業(47期)
同大学院修了
【非常勤講師】
徳島大学
岩手医科大学

- Comments -

メールアドレスが公開されることはありません。

Copyright© 5代目歯科医師の日常? , 2020 All Rights Reserved.