普通の歯科医師なのか違うのか

義歯清掃の頻度と肺炎の関連

2020/02/16
 
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5代目歯科医師(高知市開業)
東京医科歯科大学卒業(47期)
同大学院修了
【非常勤講師】
徳島大学
岩手医科大学

東北大学の研究

義歯の清掃を毎日しない人は、毎日行う人に比べて肺炎リスクが1.3倍

という義歯のケアが非常に重要であることを裏付ける東北大学の研究がScientific Reportsの電子版に掲載されました。
日本語の概要に関しては東北大学からプレスリリースが出されています。
https://www.tohoku.ac.jp/japanese/2019/11/press20191105-02-ireba.html

原著論文は
https://www.nature.com/articles/s41598-019-50129-9.pdf
となります。
このURLからわかりますが、Scientific reportsはNatureが発行しているオンラインジャーナルであり、2018年のIFは4.011のようです。

研究方法

要介護認定を受けていない65歳以上の高齢者 71227人に対して
義歯の清掃を毎日を行うかどうか
過去1年間の肺炎の発症の有無

を質問表にて回答してもらっています。
それを色々な交絡を用いてロジスティック回帰分析しています。

結果

研究結果はそのままコピペします

対象者71,227人のうち、過去1年間に肺炎を発症したと答えた人は2.3%、義歯を毎日は清掃しない人は4.6%であった。また、義歯を毎日清掃する人では過去1年間に肺炎を発症した人は2.3%であった一方、毎日は清掃しない人では3.0%であった。さらに75歳以上の人に限ると義歯を毎日清掃する人では過去1年間に肺炎を発症した人は2.9%であった一方、毎日は清掃しない人では4.3%と肺炎発症のリスクが高くなった。また、傾向スコアを用いた統計解析により、65歳以上の全対象者では義歯を毎日は清掃しないことにより、リスクが1.30(95%信頼区間:1.01-1.68)倍高く、また、75歳以上の人に限ると1.58(95%信頼区間:1.15-2.17)倍高くなることが示された。

義歯清掃頻度と過去1年間の肺炎発症の有無のクロス集計

結果より

在宅や施設に訪問した際に要介護高齢患者さんの義歯が非常に汚れた状態であることにはよく遭遇します。家族が患者さんが義歯をつけているとは知らなかった、というような事もあります。
そういった患者さんが誤嚥性肺炎に罹患しやすいということは容易に想像出来ますが、今回、要介護ではない高齢者の義歯のお手入れ方法の違いにより肺炎のリスクが高まったということは義歯のケアの重要性を語る上で非常に重要な知見であると言えると思います。

疑問点

1.肺炎=誤嚥性肺炎?
高齢者の肺炎は高確率で誤嚥性肺炎と言われていますが、100%ではないと思います。私達は口の中が汚れている=誤嚥性肺炎と直感的に受け取りますが、そこはどう解釈すればよいのでしょうか?

2.義歯の清掃方法
義歯の清掃を毎日する、と言ってもその方法は様々であることが考えられます。例えば、義歯をブラシでゴシゴシする機械的な清掃と義歯洗浄剤に浸漬する科学的な清掃方法です。
両者併用が最も良いとされていますが、毎日清掃すると答えた人が両者併用したかはこの段階ではわかりません。もしかしたらブラシでゴシゴシだけ毎日やっている人もいるかもしれませんし、毎日義歯洗浄剤につけるだけの人もいるかもしれません。

原文をさらっと読んでみる

疑問に関して

We used the self-reported incidence of pneumonia within the last one-year as a dependent variable. We asked the question “Did you experience the following diseases within the last one year?”
Those who answered “pneumonia” were considered to be the individuals who suffered from pneumonia within the last one year.

肺炎に関しての質問は過去1年間に次の病気になりましたか?という質問で肺炎にチェックが入ったものをカウントしているようです。

We used the frequency of denture cleaning as an independent variable. To those who used removable dentures, we asked the question “Do you clean your dentures daily?”; the choices provided were “Yes” or “No.” We defined people chose “Yes” as those who cleaned their denture daily and “No” as those who cleaned their dentures infrequently (non-daily).

義歯に関しても毎日清掃していますか?ではい、いいえの回答での振り分けとなっており、清掃方法の指定などはなかったです。

ということで疑問点に関しては今回の実験手法からすると解決できませんでした。7万人以上のビッグデータを解析するのに目的変数がさらに増えたら大変だろうと思います。私の疑問は今回の実験趣旨と一致していないのでこれに関しては別の論文や今後のこのデータにおける追加報告で解決するべきかな、と思います。

まとめ

簡単に考えると

毎日なんらかの手段で義歯のお手入れをしているかどうかで特に介護状態でもない高齢者であっても肺炎のリスクが変わる。
毎日、というのが重要

ということが今回の報告でわかる、と言う解釈がよさそうです。

誤嚥性肺炎は死亡リスクのみならず医療費も底上げします。また1度誤嚥性肺炎になると繰り返す可能性が高くなりますし、寝たきりからの廃用症候群などを考えても誤嚥性肺炎を予防することは非常に重要です。

この報告からある程度健康そうな老人においても義歯ケアは肺炎予防に影響を与えることがわかりました。

勿論ですが、高齢者の肺炎の多くは誤嚥性肺炎で、それには口腔内の細菌が関与している可能性が考えられます。
単に義歯をゴシゴシブラシするのと、化学的に消毒するのでは義歯表面に残存する細菌数は違うと考えられるわけです。

この論文の主旨から飛躍してしまいますが、
毎日義歯洗浄剤による化学的洗浄をお勧めする理由になる
のかもしれません。

当院においては、
義歯洗浄剤はできれば毎日使った方がよいですよ
と指導していましたが
これからは
義歯洗浄剤は毎日使うべきです
と指導しようと思いました。

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