普通の歯科医師なのか違うのか

根未完成歯への水酸化カルシウム長期貼薬は破折のリスク

2020/05/17
 
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5代目歯科医師(高知市開業)
東京医科歯科大学卒業(47期)
同大学院修了
【非常勤講師】
徳島大学
岩手医科大学

久しぶりの歯科ネタに復帰

ここ2週間ぐらいずっと新型コロナウイルスの論文を読んだりしていましたが、歯科に関する論文はそれほど多くは無いので、普通の領域に戻ってきました。
なにせアウトブレイクした多くの国では歯科医院は本当の応急処置以外は行わないようになっているのでSARS-CoV2と歯科治療やその他の知見って現時点では集まりようがないと思います。

今回は古い論文

今回は古い論文を読みますが、これ900以上引用されているかならい有名な論文で商業誌などでもたまに見かけます。

実は1月頃に読んでみて欲しい的な感じでお願いされていたんですが、色々あって忘却してしまい、今回文献フォルダを漁っていたら出てきました。

根未完成歯に水酸化カルシウムを長期貼薬すると歯根破折のリスクが高くなるという論文です。

Long-term calcium hydroxide as a root canal dressing may increase risk of root fracture
Dental Traumatology 2002; 18: 134–137

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/12110105
PMID: 12110105

Abstract

It has been proposed (Cvek 1992) that immature teeth are weakened by filing of the root canals with calcium hydroxide dressing and guttapercha. The aimof the present study was to test the hypothesis that dentin in contact with calcium hydroxide would show a reduction in fracture strength after a certain period of time. Immature mandibular incisors from sheep were extracted and divided into two experimental groups. Group1: the pulps were extirpated via the apical foramen. The root canals were then filled with calcium hydroxide (Calasep) and sealed with IRM cement, and the teeth were then stored in saline at room temperature for 0.5,1, 2, 3, 6, 9, or 12 months. Group 2: the pulps were extirpated and the root canals were filled with saline and sealed with IRM cement.The teeth were then stored in saline for 2 months. Intact teeth served as controls and were tested immediately after extraction. All teeth were tested for fracture strength in an Instron testing machine at the indicated observation periods.The results showed amarkedly decrease in fracture strength with increasing storage time for group 1 (calcium hydroxide dressing). The results indicate that the fracture strength of calcium hydroxide-filled immature teeth will be halved in about a year due to the root filling. The finding may explain the frequent reported fractures of immature teeth filled with calcium hydroxide for extended periods.

根未完成歯の根管に水酸化カルシウムとガッタパーチャを充填すると弱くなるということは以前から報告されてきました。今回の実験の目的は水酸化カルシウムと接触した象牙質がある程度の期間経過後に破壊強度が減少しているかどうかを検証する事です。羊の下顎切歯の根未完成歯を抜歯後2群に分けました。グループ1:根尖まで歯髄を除去後に水酸化カルシウムを根管に充填後にIRMセメントで封をしました。その後生食中に室温で保管しました。保管期間は0、0.5、1,2、3、6,9,12か月です。グループ2:神経除去後に根管に生食を充填しIRMで封をしました。その後2か月間生食中に保管しました。コントロール群として抜歯後すぐに破壊強度を測定する群を設定しました。破壊強度はインストロンで全て測定されました。

結果としてグループ1の破壊強度は保管期間が延長されるに従って著明に低下しました。この結果から根未完成歯に対する1年間の水酸化カルシウム貼薬は破壊強度を約半分にすることが示唆されました。この結果は根未完成歯に対する長期水酸化カルシウム貼薬症例でしばしば破折が報告される事を説明するかもしれません。

ここからは適当に抽出して意訳していきますので、気になった方は原文をご確認いただきますようお願いいたします。

緒言の要約

水酸化カルシウムが根未完成歯の根尖閉鎖に用いられるようになりましたが1988年に根未完成歯のエンド症例の60%はちょっとした力で歯頸部で破折しやすい事が報告されました。同様な結果が他でも報告されています。
象牙質の破折強度はハイドロキシアパタイトとコラーゲンとの密接な結合に依存しています。この中には酸性の蛋白やリン酸、カルボン酸などを含むプロテオグリカンが存在しています。アルカリ性の水酸化カルシウムがこの構成を中和して破壊してしまうかもしれません。
今回の実験の目的は水酸化カルシウムと接触した象牙質がある程度の期間経過後に破壊強度が減少しているかどうかを検証する事です。

実験方法

屠殺された約4か月の若い羊から、根未完成歯である下顎前歯部を抜歯しました。抜歯は慎重に行われ、使用するまで1%クロラミンT中に保管されました。歯髄は未完成な根尖部から除去しました。その後2群にわけて処理しました。

グループ1:根管に水酸化カルシウム(Calacept)を充填しました。その後根尖部を2mm厚で酸化亜鉛ユージノールセメント(IRM)にて封鎖しました。その後室温で生理食塩水中に保存しました。保存期間は0、0.5、1,2、3、6,9,12か月です。生理食塩水は1週間に1回交換しました。

グループ2:根管に滅菌食塩水を充填して同様に根尖部を酸化亜鉛ユージノールセメントにて封鎖しました。生理食塩水中に2か月保存しました。生理食塩水は1週間に1回交換しました。

生理食塩水から取り出した歯を2.7cm×1.4cm×4cmのサイズに石膏で包埋します。包埋方法は一定になるように規定されています。その後インストロンを用いて破折強度を測定しています。

結果

表1に示すように抜歯直後、グループ2、グループ1の30日間生理食塩水浸漬までは破折強度は有意差を認めませんでしたが、グループ1の60日群からは有意差を認めています。60日から180日まではまた有意差はありませんが、60日と270日、360日では有意差を認めます。

破折強度の減衰を図にすると以下のようになります。1年経つと大体半分になります。

考察

同じくアルカリ性である次亜塩素酸ナトリウムの根管洗浄でも象牙質の弾性と破折強度が低下し、それは象牙質の抗生物質が欠損したためと報告されています。
今回の結果はハイドロキシアパタイトとコラーゲンネットワーク間の結合の混乱が原因と考えられます。ハイドロキシアパタイトとコラーゲンネットワーク間の結合を担っている象牙質中の酸性蛋白やプロテオグリカンの中和や溶解、変性が起こっているかもしれません。

まとめ

4か月の羊の下顎切歯の歯根がどれぐらい成長しているかというのは調べましたがよくわかりませんでした。

とりあえずこの実験状況では根未完成歯の破折強度の低下は認められています。実際の根未完成歯では象牙質の添加などが起こると思いますのでこのようにクリアな結果にはならないのではないかと思いました。

この理論であれば、象牙質の構造破壊が水酸化カルシウムで起こるわけですから、根未完成歯でなくても長期的に水酸化カルシウム貼薬を行えば歯質は脆弱化することになるはずです。
またMTAに関してもアルカリ性なので、この理論で行けば歯質が脆弱化すると考えられます。今現在はこういった場合MTAの方が使用されているのではないかと思います。

ここら辺は新しい論文があるかな?と思って探してみましたが、メジャー所の雑誌にはありませんでしたが、かなりマイナー系の雑誌には何本かありましたので今後読んでみたいと思います。

この論文の結果と真逆の論文を読みました。

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