普通の歯科医師なのか違うのか

喉の奥の唾液の採取方法

 
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5代目歯科医師(高知市開業)
東京医科歯科大学卒業(47期)
同大学院修了
【非常勤講師】
徳島大学
岩手医科大学

質問が来ました

前々回のブログにてCOVID-19のレビューを読みましたが、それについて質問を頂きました。質問内容は以下の部分に対する内容です。

報告によると喉の奥からの唾液は高い検出率を示しています。現病歴や診断基準、鼻咽腔または喀痰からの試料採取等でCOVID-19感染が確認された12名の患者において入院数日後の唾液を喀出にて採取しています。RT-PCRにより12例中11例において2019-nCoVが検出されました。鼻咽腔または喀痰からの試料採取等でCOVID-19非検出が確認されている33例に同様な唾液の喀出による検査を行った所全て非検出でした。加えて6例には連続した唾液の採取を行い、そのうち5例は入院を続けている間にウイルスが検出されなくなりました。上記6例のウイルス培養を行い3例にウイルスを確認しました。
唾液を綿棒で採集する方法も早期診断に有効である可能性があります。Zhangらの研究では15人のCOVID-19感染者中、半数の唾液からRNAが検出されました。4名が肛門、6名が血液、3名が血清からもRNAが検出されました。
呼吸系分泌物のコンタミを除外するためにChenらはCOVID-19感染者の唾液腺開口部より直接唾液を採取しました。31名のCOVID-19感染者のうち13例が口腔咽頭部の綿棒採取で核酸陽性でしたが、唾液からは4例のみ陽性となりました。その4例中3例が極めて重症で人工呼吸器が必要でした。

この喉の奥からの唾液ってどうやって採取しているのか、という質問です。

リファレンスを見てみる

喉の奥からの採取に関する論文は2つ引用されていますが、実は両方とも同じ著者で香港の研究者です

To, K. K. et al. Consistent detection of 2019 novel coronavirus in saliva. Clin. Infect.Dis. https://doi.org/10.1093/cid/ciaa149 (2020)

To, K. K.-W. et al. Temporal profiles of viral load in posterior oropharyngeal saliva samples and serum antibody responses during infection by SARS-CoV-2: an observational cohort study. Lancet Infect. Dis. https://doi.org/10.1016/s1473-3099(20)30196-1 (2020).

論文自体は両方フリーだったので、ダウンロードして確認してみることにしました。

確認してみると

2つ目の論文はLancetでありしっかりした論文ですが、1つ目はBrief Reportでした。後のLancetが後のpublishで被験者数も多いので、これは被験者が被っている可能性が高そうな感じなのでちょっと読んでみたら

Since archived specimens were used, written informed consent was waived. 12 of 23 patients included in this study have been reported previously

という記述が有り、1つ目の論文の被験者は全て2つ目にも含まれているという事でした。これは完全にレビューに騙されましたね。

レビューにはさも2つ研究があるように記載されていますが、実際は1つと言っていいでしょう。

実際の記述の確認

Consistent detection of 2019 novel coronavirus in saliva内の唾液の採取方法に関しての記載はかなりあっさりしています。

Saliva was collected by asking the patient to cough out saliva from their throat into a sterile container

それに引き換えTemporal profiles of viral load in posterior oropharyngeal saliva samples and serum antibody responses during infection by SARS-CoV-2: an observational cohort study内の唾液の採取方法はかなりしっかり記載があります。

For viral load monitoring, all patients were asked to produce an early morning saliva sample from the posterior oropharynx (ie, coughed up by clearing the throat) before toothbrushing and breakfast, because nasopharyngeal secretions move posteriorly and bronchopulmonary secretions move by ciliary activity to the posterior oropharyngeal area while the patients are in a supine position during sleep. Patients were instructed and supervised by nurses.

早朝、歯磨きと朝食前に採取

咳払いなどをして咽頭後方部からの唾液を採取する

鼻咽腔や気管支の分泌物が仰向けで寝てる間に線毛によって運ばれて丁度咽頭後方部に存在しているからだと説明しています。

要は唾液ではなくて分泌物狙いでした。
おそらく強い喀出ということになるかと思います。
これはもう歯科医が一般敵に想像する唾液じゃないだろうという気がします。

まとめ

これを考慮しつつレビューの内容を再度検討すると

1)咽頭部から鼻咽腔とかの分泌物狙いで取ってきた試料
2)口腔内の唾液を綿棒でとってきた試料
3)唾液腺開口部から唾液を直にとってきた試料

で1)、2)、3)の順でウイルス核酸の検出率が高かったのは純粋な唾液よりは鼻咽腔や気管支からの分泌物の混在を拾ってきている可能性が高い?と言う気がします。

ただし、昨日読んだ論文では、COVID-19患者の唾液をおそらく吐唾法で唾液を採取した場合でも100%ウイルスの核酸を検出しています。

採取する部位、時期、重症度など色々考えられるのでなんともいえませんが、とりあえず後方部の唾液は分泌物狙い!と言うことはわかりました。

ACE2受容体を介して小唾液線などがウイルスに汚染されるという可能性も示唆されています。

COVID-19患者の唾液からウイルスがある程度の確率で検出されるのは間違いない所かと思いますが、口は当然呼吸器系とも繋がってますのでそこら辺からの粘液とのコンタミは避けることはできません。
果たして唾液はどのような扱いになっていくのでしょうか?今後も注目していきたいと思います。しかし、ここ2,3日勉強してみて唾液診断は簡単ではないな、という印象を持ちました。

COVID-19関連の論文

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