普通の歯科医師なのか違うのか

義歯安定剤短期使用での主観的評価

 
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5代目歯科医師(高知市開業)
東京医科歯科大学卒業(47期)
同大学院修了
【非常勤講師】
徳島大学
岩手医科大学

前回義歯ケア学会の行ったマルチセンターの口腔乾燥と安定剤についての論文を読みました。今回は同じマルチセンターで主観的な評価に絞った内容の論文を読んでいきたいと思います。2020年のJDR Clinical & Translational Researchでオープンです。

Subjective Evaluation of Denture Adhesives: A Multicenter Randomized Controlled Trial
G Ohwada , S Minakuchi , Y Sato , H Kondo , T Nomura , A Tsuboi , G Hong , Y Itoh , Y Kawai , S Kimoto , A Gunji , A Suzuki , T Suzuki , K Kimoto , N Hoshi, M Saita , Y Yoneyama , Y Sato , M Morokuma , J Okazaki , T Maeda , K Nakai , T Ichikawa , K Nagao , K Fujimoto , H Murata , T Kurogi , K Yoshida , M Nishimura , Y Nishi , M Murakami , T Hosoi , T Hamada 
JDR Clin Trans Res. 2020 Jan;5(1):50-61.
PMID: 30975019

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30975019/

https://journals.sagepub.com/doi/10.1177/2380084419837607 (オープン)

Abstract

Introduction: Many reports show that denture adhesives improve the retention and stability of dentures. However, few randomized controlled trials have examined the effects of denture adhesives.

Objective: This 10-center randomized controlled trial with parallel groups involving 200 edentulous patients wearing complete dentures aimed to evaluate the effects of short-term use of cream and powder denture adhesives.

Methods: Patients were allocated into 2 cream- and powder-type adhesive groups and 1 control group. Intervention groups were treated with the 2 adhesives (1 each), and the control group received saline solution. Adhesive or control was applied to the denture-mucosal surface for 4 d, and data at baseline and after day 4 of intervention (i.e., 8 meals) were obtained. Patient satisfaction was evaluated with a 100-mm visual analog scale. Oral health-related quality of life was measured with the Japanese version of the Oral Health Impact Profile for Edentulous Patients. Perceived chewing ability was evaluated by a questionnaire regarding ease of chewing and swallowing food. Between-group comparisons were performed with Kruskal-Wallis tests with the Mann-Whitney U test adjusted by Bonferroni correction. Within-group comparisons of pre- and postintervention measurements were performed with the Wilcoxon signed-rank test. Intention-to-treat analysis was also performed.

Results: Between-group comparisons showed no significant differences for general satisfaction or Oral Health Impact Profile for Edentulous Patients. However, significant differences in satisfaction with various denture functions with cream- and powder-type adhesives were seen in pre- and postintervention comparisons (P < 0.05). Significant differences were also observed for perceived chewing ability of hard foods (P < 0.05).

Conclusion: These results suggest that although denture adhesives do not invariably improve denture function, they do affect subjective evaluations and possibly chewing of hard foods. Therefore, the effects of denture adhesive use are insufficient to resolve any fundamental dissatisfaction with dentures ( ClinicalTrials.gov NCT01712802 ).

Knowledge transfer statement: The results of this study suggest that denture adhesives should be applied under certain conditions; however, an appropriate diagnosis is important before application. These practice-based data provide information to establish evidence-based guidelines for applying denture adhesives.

イントロ:多くの論文が、安定剤により義歯の維持安定が改善すると報告していますが、安定剤の効果を調査したランダム化比較試験は非常に少ないです。

目的:200名の無歯顎全部床義歯装着者が参加した10センターランダム化比較試験で、クリームタイプ、パウダータイプの短期間使用効果について検討しました。

方法:患者をクリームタイプ、パウダータイプの安定剤群とコントロール群に振り分けました。コントロール群は生理食塩水を使用しました。4日間使用させ、ベースラインと介入後(8食)のデータを採取しました。患者満足度を100mmのVASで評価しました。口腔関連QOLの評価にはOHIP-Edent-Jを用いました。咀嚼能力は咀嚼と嚥下しやすさに関する質問表で評価しました。群間の比較はKruskal-Wallis検定とMann-Whitney U検定(Bonferroni補正)で行いました。介入前後の群内比較はWilcoxonの符号順位検定を行いました。また、intention-to-treat解析も行いました。

結果:全体的な満足度、口腔関連QOLの群間比較では有意差を認めませんでした。しかし、クリームタイプ、パウダータイプでは、義歯の機能面での満足度について介入前後で有意差を認めました。硬い物の咀嚼能力についても有意差を認めました。

結論:本結果から、安定剤は義歯の機能を全部向上させるわけではなく、主観的な評価とおそらく硬い物の咀嚼に影響しています。そのため、安定剤使用の効果は義歯への不満全てを改善するには不十分です。

ナレッジトランスファー:本研究の結果から、特定の条件化で義歯安定剤を使用するべきです。しかし、適切な診断が使用前に重要です。本研究データが安定剤のエビデンスに基づいたガイドライン構築に役立ちます。

ここからはいつもの通り本文を適当に抽出して意訳要約します。誤訳もあり得ますので、気になったら実際の本文をご確認ください。

緒言

安定剤は義歯の維持安定を向上するために長く使用されてきました。高齢者の治療では様々な理由でインプラントオーバーデンチャーが全ての人に向いているわけではありません。そのため、全部床義歯による治療は将来的に重要な役割であり続けるでしょう。安定剤の効果を明確にするために数多くの研究が行われてきました。Feltonらは、安定剤の効果を文献収集した後に全部床義歯のケアとメインテナンスに関するガイドラインを発表しました。彼らは20の文献をレビューしました。安定剤の使用により、適合がよい、悪い義歯両方で維持と安定を改善すると多くの文献で報告されています。また、安定剤が義歯と粘膜の空隙を埋める事により食渣が侵入するのを防止し、主観的な維持安定を向上させ、それにより口腔関連QOLが改善することも報告されています。しかし、安定剤を用いたランダム化比較試験は殆どありません。以前の研究では、コントロールが設定されていない、上顎のみ計測、下顎に関する情報が無い、ブラインドに関するはっきりした記載がないなどの問題があります。そのため、研究デザインのクオリティが保護されておらず、エビデンスは限定的です。

そのため、私達は義歯安定剤の効果を調査し、使用に関するガイドライン構築のためにマルチセンターのランダム化比較試験を行いました。10施設が協力しました。

実験方法(前回読んだ論文とほぼ同じ)

実験方法のプロトコルの詳細はKimotoらによって報告されています。

被験者

1)完全無歯顎患者
(2)新しい義歯を作りたい
(3)リコールで義歯の調整のために来院
主訴のタイプについては問わない

除外基準
(1)90歳以上
(2)深刻な全身疾患があり、研究に参加が難しい
(3)研究で使用する質問表が理解出来ない、返答できない
(4)金属床義歯装着
(5)安定剤を日常的に使用している
(6)顎補綴
(7)粘膜調整材使用
(8)深刻な口腔乾燥

満足度は100mmのVASで評価するため、計算上1群100名、合計300名が必要と考えられました。

デザインとスケジュール

10施設によるランダム化比較試験が行われました。各施設にコーディネーターと評価者を配置し、コーディネーターが被験者と評価者のランダム配置やスケジュールを管理しました。評価者にはグループの配置などの情報を一切伝えずに評価のみ行わせました。

デイ0:コーディネーターが施設に来た全部床義歯装着者にインタビューし、参加できるかどうか、除外基準にあてはまらないかなどを確認。被験者として問題なければ、ランダムに3群のどれかに振り分け。

デイ1~4:午後に評価者がベースライン評価。コーディネーターが安定剤などの使用方法をレクチャー。クリームタイプ群は1日1回朝食前に塗布。コントロール群は毎食前に生理食塩水を塗布。パウダータイプは朝と晩ご飯前に塗布。維持力不足を感じた場合は追加で塗布を許可。新しく安定剤を塗布する前と就寝前に安定剤を除去する方法をレクチャー。デイ1は夕食から安定剤を使用。デイ2、デイ3は終日、デイ4は朝食前に使用してから来院→午前に4日間8食介入後の最終評価。データは第3者組織に送られてデジタルデータ変換されて、コーディネーターにブラインドデータとして解析できるように送付。

介入

安定剤は、パウダータイプとクリームタイプの2種類(両方ともポリグリップ)で、コントロールは生理食塩水20mlです。パウダータイプ、クリームタイプ、生理食塩水、共に使用時の指導を行っています(詳しく書いてありますが、今回は割愛します)。

アウトカム

主なアウトカムは全体的な満足度で100mmのVAS法で測定しました。副次的なアウトカムはさまざまな義歯の機能における満足度、咀嚼能力、口腔関連QOLとしました。義歯の機能における満足度は、咀嚼能力、発音能力、清掃しやすさ、安定、維持、快適性、審美性を100mmのVAS法で測定しました。食品咀嚼能力は豆腐、魚肉ソーセージ、もやし、キューブ型せんべい、堅いせんべい、イカの干物を食べたり飲み込んだりしたときの感覚をVASで評価しました。口腔関連QOLはOHIP-EDENT-Jにて判定しました。

統計処理

Kruskal-Wallis検定、χ2検定が被験者の特性を比較するのに用いられました。群間の比較はKruskal-Wallis検定とMann-Whitney U検定(Bonferroni補正)を用いました。群内での介入前後の比較ではWilcoxonの符号順位検定を用いました。

加えて、Intention-to-treat(ITT)解析を行いました。ITT解析では、脱落や未記録の結果欠落した値は、得られた他のデータから中央値を代入することで補完しました。

早期の終了

本試験は、以下のいずれかに該当する場合、早期に終了するように設定されました。1) 過度の有害性が認められた場合、2) 統計的に有意な有益性が認められた場合、3) 完全に終了しても有用な追加情報が得られない、あるいは有効性を示す可能性がほとんどない場合。

ブラインド化

割り付けはコーディネーターにより管理されており、評価者にはブラインド化されています。しかし、被験者は何を使用しているか分かってしまうので、ブラインド化されていません。

結果

被験者の情報と割り付け

無歯顎者のリクルートを2013年9月~2016年10月まで行いました。表1にベースライン時の被験者の特性を示します。年齢、性別、無歯顎期間、全部床義歯装着期間、、現義歯の使用期間には有意差を認めませんでした。

200名の被験者がランダムに割りふられて、ITT解析が行われました(図1)。本来なら300名の被験者を想定していましたが、200 名を募集したところ、主観的アウトカムである満足度の変化量の 95%信頼区間が期待値である Visual analog scale の 29mm に満たなかったため、募集を早期に終了しました。

群間の比較

表2に群間の比較を示します。全体的な満足度(図2)とOHIP-EDENT-Jでは群間に有意差を認めませんでした。しかし、上顎の維持、快適性、審美性に関する満足度は有意差を認めました。

上顎義歯における咀嚼しやすさに関しては、魚肉ソーセージ、キューブ型せんべい、堅いせんべい、ほしいかで有意差を認め、下顎義歯においては、魚肉ソーセージ、豆腐、キューブ型せんべい、ほしいかで有意差を認めました。嚥下しやすさについては、魚肉ソーセージ、豆腐、キューブ型せんべい、堅いせんべい、ほしいか、で有意差を認めました。

群内比較

群内比較の結果を表3に示します。全体的な満足度は有意差を認めませんでした。

クリームタイプ群では、上顎義歯の咀嚼、維持、下顎義歯の咀嚼、安定で有意差が認められました。またOHIP-EDENT-Jでも有意差が認められました。食品咀嚼能力については、上顎義歯では魚肉ソーセージ、キューブ型せんべい、堅いせんべい、ほしいか、下顎義歯では魚肉ソーセージ、豆腐、キューブ型せんべい、堅いせんべい、ほしいかの咬みやすさで有意差を認めました。また、魚肉ソーセージ、豆腐、キューブ型せんべい、堅いせんべい、ほしいかの嚥下のしやすさでも有意差を認めました。

パウダータイプ群では、上顎義歯の咀嚼、発音、安定、維持、快適さ、審美性、下顎義歯の快適さの満足度で有意差を認めました。また、OHIP-EDENT-Jでも有意差が認められました。食品咀嚼能力は、上顎義歯では堅いせんべい、ほしいか、下顎義歯ではキューブ型せんべい、堅いせんべい、ほしいかでかみやすさに有意差が認められました。加えて嚥下しやすさでは、キューブ型せんべい、堅いせんべい、ほしいかで有意差をみとめました。

コントロール群では、OHIP-EDENT-Jで有意差を認めました。

考察

本研究は10施設でのマルチセンターリサーチであり、外的妥当性は高いと考えています。シリアルサンプリングにより、被験者の選択バイアスはできる限り低く抑えられました。多くの施設から多くの患者が参加したため、脱落者の絶対数が多い可能性があり、測定値の記入漏れが確率的に増加するため、データ値が失われる可能性がありました。また、これらの欠損データを削除することで、無作為に割り付けられたはずの参加者にバイアスがかかる危険性がありました。そこで、無作為化を保護し、バイアスの結果として介入効果が高く評価されることを防ぐために、ITT解析が行われました。ブラインド化は各施設の情報管理を行うコーディネーターを配置することで、評価者が参加者の割り付けを把握できないようにしました。しかし、被験者は使用する材料が把握できるため、ブラインド化できませんでした。しかし、被験者は通常安定剤を使用していない人をリクルートしたため、知識や経験を殆ど持ち合わせていませんでした。そのため、安定剤群に割りつけられた結果としてのバイアスはあまりないと思われます。

本研究では2種類の安定剤とコントロールとしての生理食塩水で評価しました。主なアウトカムについて、群間による有意差はありませんでした。この結果は以前の報告と異なります。Torres-Sanchezらは、クロスオーバー二重盲検法で2タイプの安定剤と非安定剤での比較を行い、主観的な評価では、安定剤使用群の方が満足度が大きかったと報告しています。Marinらは、新義歯を用いたクロスオーバーランダム化比較試験を行い、下顎義歯の快適さ、維持力、全体的な満足度、咀嚼が改善したと報告しています。de Oliveiraらは新義歯を用いたランダム化比較試験で、アーモンド咀嚼による客観的な咀嚼能力を評価しました。彼らは安定剤の使用により改善を認めましたが、クリームタイプとパウダータイプの間には有意差を認めませんでした。Munozらは適合の良い義歯を用いて、3種類の安定剤と非安定剤によるクロスオーバー試験を行いました。彼らは、安定剤使用群の信頼性、快適さ、満足度が改善したと報告しています。これらはクロスオーバー試験で有り、同じ被験者が安定剤あり、なしの状態で評価しています。さらに適合の良い義歯を使用しており、それが本研究とは異なる所です。

義歯床下組織の状態で分類した研究がいくつかあります。UysalらとKoronisらはクッションタイプをもちいて主観的な評価を行いました。両者共に、顎堤吸収が進んでいる場合には、安定剤使用による主観的評価が高いと報告しました。NeilとRobertsは義歯の状態を分類して客観的な評価を行い、Fujimoriらは、義歯床下組織の状態で分類しました。両者共に、状態が良い場合には咀嚼能力は有意に改善せず、状態が悪い場合には咀嚼能力が改善しました。主観的、客観的評価は義歯や床下組織の状態によって大きく変化しました。そのため、新義歯、旧義歯をもちいた本研究の結果と、適合の良い義歯のみを用いた過去の研究の結果を同じように扱うことはできません。適合の良い義歯では、快適さ、維持、全体的な満足度、咀嚼能力が安定剤使用で改善するかもしれません。しかし、本研究では、安定剤群とコントロール群で全体的な満足度は有意差がありませんでした。この結果から安定剤は義歯の機能を必ず向上させるものではなく、義歯の質や床下組織の状態にかかわらず、安定剤に本来の機能以上を期待することはできないことを示唆しています。

介入前後の群内比較では、コントロール群では有意差を認めなかった一方で、安定剤群は有意差を認めました。クリームタイプでは咀嚼が、パウダータイプでは咀嚼、維持、快適さ、審美性が有意に改善しました。KelseyらとKulakらは古い義歯を使用してクリームタイプを評価し、両研究共に、咀嚼能力、快適さ、維持、信頼性に関する主観的満足度が改善したと報告しています。Bergはクリームタイプとパウダータイプによる主観的評価の改善を報告しました。Figueiralらは上顎義歯の維持力を客観的に測定し、クリームタイプ、パウダータイプ、テープタイプで維持力が向上したと報告しています。加えて、安定剤使用で咬合力が改善したという報告がいくつかあります。本研究でも同様な結果を示し、安定剤使用が主観的評価に影響を与えることが示唆されました。3群の比較から、安定剤を使用すればどんな状態でも義歯の機能を常に改善する、ということはないことが示唆されます。にもかかわらず、介入前後の比較から、安定剤使用は知覚にかなり影響を与える可能性がありそうです。

豆腐は被験食品でもっとも軟らかい食品で、群間、群内共に有意差を認めませんでした。これはおそらく天井効果です。対照的に、堅い食品については群間で咀嚼能力に改善が認められ、同様な傾向が群内での比較でも認められました。本研究と同様に、Tarbetらは、安定剤使用により、試験食品の咀嚼に関する主観的評価が向上し、義歯床下への食渣侵入が減少することを報告している。従って、大きな咀嚼力を必要としない食品では、安定剤の有無は影響しないと考えられる。一方で咀嚼が必要な硬い食品では安定剤は効果を発揮します。

本研究では、口腔関連QOLも検討しましたが、3群間でOHIP-EDENT-Jは有意差を認めませんでした。Nicolasらは、適合の良い新義歯装着患者で3か月後にQOL満足度は向上しなかったと報告しています。その研究では、安定剤使用を指示し、QOLの変化をGOHAIスコアで、咀嚼能力の変化をビデオ方式で評価しました。咀嚼機能には変化はありませんでしたが、GOHAIスコアは有意に向上しました。Nicolasらは、安定剤使用により口腔関連QOLが向上しても、時間と共にプラトーになり、患者の能力を超えたQOLの向上は期待できないと主張しました。そのため、安定剤の使用は、患者の義歯への適応を促進するものです。Lockerらによると、OHIP-14はより重度な心理・行動状態の評価に適していますが、通常の状態ではGOHAIで変化を観察する方が簡単であるようです。本研究では、OHIP-EDENT-Jでの群間比較では有意差を認めませんでした。Nicolasらの研究は6か月を超える長期間でしたが、本研究は4日間でした。これが口腔関連QOLに変化がなかった原因かもしれません。加えて、全ての群で介入前後で有意差が認められました。この結果から、短期間の安定剤使用は口腔関連QOLに影響しない事が示唆されました。しかし、義歯への適応が難しい元々口腔関連QOLが低い患者では、安定剤は義歯への適応を助けることによって許容できるレベルまで口腔関連QOLを上昇させることに寄与するかもしれません。

適合のよい義歯を装着している患者は、歯科医師から適切なプロフェッショナルケアをうけるべきです。そして、適切な適合と機能を通して口腔の健康を維持することが望ましいです。Grassoは、安定剤の目的は義歯の根本的な問題をカバーしたり、欠点を補償する事ではないと主張しています。本研究からこの考え方は支持されます。本研究は十分にコントロールされたランダム化比較試験ですが、短時間の介入です。そのため、長期間の安定剤の効果は不明瞭です。長期間の介入研究が求められます。加えて、より多くのランダム化比較試験が必要です。本研究から、安定剤は義歯機能を全て改善するわけではないことが示唆されました。しかし、義歯接着剤の使用が最も有益な患者を特定し、明確な診断基準を定義することは、さらに検討されるべきことです。本研究で得られた結果をもとに補足的な解析を行うことで、義歯の接着剤塗布条件について臨床的に有用な知見が得られる可能性があります。

結論として、安定剤の短期間使用は全ての患者の満足度を向上させるわけではありませんでしたが、私達の結果から安定剤の使用は主観的な評価や咀嚼能力に影響を与える事が示唆されました。加えて、安定剤の使用は咬合力が必要な硬い食品の咀嚼しやすさ、嚥下しやすさにも影響していました。短期間の介入では口腔関連QOLには影響を与えませんでしたが、長期間の介入研究が今後必要です。

まとめ

疑問点がいくつかあります。口腔関連QOLであるOHIP-EDENT-Jですが、介入前後の比較の考察の1文

加えて、全ての群で介入前後で有意差が認められました。この結果から、短期間の安定剤使用は口腔関連QOLに影響しない事が示唆されました。しかし、義歯への適応が難しい元々口腔関連QOLが低い患者では、安定剤は義歯への適応を助けることによって許容できるレベルまで口腔関連QOLを上昇させることに寄与するかもしれません。

In addition, significant differences were found in the preand postintervention comparison for all groups. The results of the present study suggest that short-term use of denture adhesives does not affect OHRQoL. However, for patients with low OHRQoL because of difficulty adapting to dentures, denture adhesives may contribute to increasing OHRQoL to a level acceptable to the patient by helping one adapt to denture use.

コントロールを含めて全ての群で口腔関連QOLは有意に改善しているにもかかわらず、短期間の安定剤使用は口腔関連QOLに影響しない事が示唆されました、という文脈が私にはよく理解出来ないのです。コントロール群も改善しているから影響しないってことでしょうか?コントロールが上がってる事についての考察がないのでなんともいえませんが。

あと、全体的な満足度のVASスコアですが、縦軸がD4-D1になっており、これは4日目のVASスコアから1日目のスコアを引いたものという解釈かと思いますが、確かにどの群も中央値が0ぐらいになっており、4日間安定剤を使用してもそこまで全体的な満足度が変化していないですし、パウダーに関してはマイナス方向になっている人も多くて、使用感が悪い印象を与えた可能性が考えられそうです。

OHIP-EDENT-Jの点数が各群ともに30点ぐらいでそこまで悪い点数ではないので、あまり不満に思っていない患者にたいして義歯安定剤を使用してもそこまで効果がなかった、という事も考えられるのかなと思いました。そういう意味では、義歯の不満点を安定剤が全て改善するわけではない、というのは確かかな、と思います。

もっと色々な論文を読まないとなかなか自分の中での考えがまとまりそうにないので、もうちょっと読んでいきたいと思います。

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同大学院修了
【非常勤講師】
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