普通の歯科医師なのか違うのか

乳歯の虫歯には裏装は必要か?

2020/03/27
 
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5代目歯科医師(高知市開業)
東京医科歯科大学卒業(47期)
同大学院修了
【非常勤講師】
徳島大学
岩手医科大学

乳歯は露髄しやすいが

今まで深い虫歯には水酸化カルシウムなどの裏装を行うと・・・という文献を読んできましたが、そもそもその裏装する事自体が有効なことなのか?という事が検証されていないのは事実です。
そこを突っ込んできたのが今回の論文です。
ドイツとデンマークからの2015年のJDRの論文となります。

この論文ですが、結構英語が難しくてよくわからない箇所が所々あります。
また、アブストを読んで気付いたのですが、乳歯が対象でした。最初は永久歯のつもりで読み始めたのであれ?っという感じになりました。

Cavity lining after excavating caries lesions: Meta-analysis and trial sequential analysis of randomized clinical trials

Abstract

Objectives: After removal of dentine caries lesions, cavity lining has been advocated. Non-clinical data support this approach, but clinical data are sparse and ambiguous. We aimed at evaluating the benefits and harms of cavity lining using meta-analysis and Trial Sequential Analysis.

Data: We included randomized clinical trials comparing restorations without versus with cavity lining for treating primary caries lesions. Only trials reporting failure (defined as need to re-retreat) after ≧1 year follow-up were included. Trial selection, data extraction, and risk of bias ssessment were conducted independently by two reviewers. We conducted random-effects intention-to-treat and per-protocol meta-analyses, and Trial Sequential Analysis to control for random errors.

Sources: Electronic databases (PubMed, Embase, CENTRAL) were systematically screened, and hand searches and cross-referencing performed.

Study selection: From 128 studies, three randomized trials (89/130 patients or teeth), all treating primary teeth, were included. The trials had high risk of bias. All trials compared no lining versus calcium hydroxide lining after selective caries removal followed by adhesive restoration. Follow-up was 36 to 53 months. Restoring the cavity without lining did not significantly affect the risk of failure (intention-to- treat relative risk (RR) (95% confidence interval) 0.71 (0.49–1.04), per-protocol RR 0.52 (0.24–1.10).According to Trial Sequential Analysis, no firm evidence was reached. The quality of evidence was very low.

Conclusions: Strong recommendations for using cavity liners are unsubstantiated, but firm evidence for omitting lining is also unavailable. Our findings apply only to primary teeth and calcium hydroxide liner.

Clinical significance: Whilst lining is frequently performed in dental practice, very few randomized clinical trials investigated this issue. The three trials included in this review treated deciduous teeth and did not find lining with calcium hydroxide beneficial. Lining is not supported by sufficient clinical evidence.

目的:象牙質の虫歯を除去した後には裏装が提唱されてきました。このアプローチを支持する臨床的なデータは存在せず、まばらであいまいな臨床データしかありません。本研究の目的は裏装の利点と欠点をメタアナリシスと逐次解析を用いて明らかにすることです。

研究方法:乳歯のう蝕の治療について裏装するかしないを比較するランダム化比較試験を含めました。1年以内の再治療が必要な場合を失敗と報告する唯一の実験が該当しました。2人のレビュアーによって独自に実験の選択やデータの除外等が行われました。ランダム効果、処置意図、プロトコール毎のメタアナリシスと逐次解析を行いました。Pubmedの検索と相互参照を行いました。128の研究から全て乳歯の治療である3つのランダム化比較試験が見つかりました。これらの実験はバイアスがハイリスクでした。全ての実験は裏装無しと水酸化カルシウム裏装の比較で、選択的に虫歯を除去し裏装後に接着修復が行われています。フォローアップ期間は36~53か月でした。裏装無しは有意な失敗のリスクではありませんでした。逐次解析の結果から確固たるエビデンスはなく、エビデンスレベルはかなり低いと言えます。

結論:裏装の強い推奨は根拠がありません。しかし裏装を省略する明確なエビデンスもありません。私達の発見は乳歯と水酸化カルシウム裏装のみ該当します。

臨床的な重要なポイント:日常臨床で裏装は非常に高頻度に行われていますが、それに関するランダム化比較試験はごく僅かしか存在しません。3つの乳歯を治療した実験がありましたが、水酸化カルシウムを裏装するメリットは発見できませんでした。裏装は充分なエビデンスに支持されていませんでした。

ここからはまた適当に要約意訳しますので、確認したいことなどあれば原文をご確認ください

緒言

最近では裏装する事に懐疑的な報告がありますが、実際には臨床ではよく裏装されています。
裏装は以下の理由で推奨されてきました。
歯髄に近接した残存細菌数の減少
反応性象牙質(デンチンブリッジ?)の発達誘導
再石灰化
歯髄への温度、電気刺激の遮断
HEMAによる歯髄刺激からの保護

動物実験においてこれらの裏装を行う理由は支持されていますが、人間においてランダム化比較試験を行った研究は1つのみであり、裏装が有効なのかどうか判断出来ません。

本研究では裏装のありなしで再治療の必要性などの失敗のリスクをシステマティックレビューとメタアナリシスを用いて比較することを目的としました。

実験方法

ランダム化比較試験で虫歯を除去や修復方法は同じだが、裏装の有無のみの差に関しての評価を行っている研究としました。

最低1年以上フォローしてレントゲンまたは臨床的に再治療が必要かどうかを検討した研究のみを対象としています。このフォロー期間はステップワイズを行い、2回目のリエントリー時までしかフォローしていない研究を除外し歯と修復のライフサイクルの関する最低限の期間を評価するためです。
主たるアウトカムは再治療の歯の割合で定量化可能である必要があります。言語の制限等は全て除外しました。

検索したアブストとタイトルを2人のレビュアーに個別に見せて2人とも採用であれば採用となるようです。

メタアナリシスの手法についての説明がかなり長くありますが、今回は割愛します。難しくて意味がよくわからない所も結構ありました。メタアナリシスの手法自体自分がやったこともないですし詳しく無いので、ここら辺は日本語のメタアナリシスの論文などを読んで慣れておく必要があることを痛感しました。

結果

128の論文が検索でヒットし、31に関しては全文を評価することができました。結局のところ、残ったのは3つの論文のみです。

3つの論文は全てランダム化比較試験で89人の患者、130本または部位で全てブラジルにて行われています。

深い乳歯の虫歯治療について完全に虫歯を除去せずに裏装材なし(またはプラセボとしてガッタパーチャを裏装)で直接修復を行った群、と水酸化カルシウムで裏装後に直接修復を行った群で比較検討しています。全てラバーダムと修復にはコンポジットレジン充填が用いられています。

メタアナリシスの結果、 失敗のリスクについて裏装の有り無しでの有意差を認めなかった一方、でintention-to-treat RR (95% CI) 0.71 (0.49–1.04) 、 per-protocol analyses 0.52 (0.24–1.10)とやや裏装しない方が失敗が少ない傾向が認められました。

ベストケース、ワーストケースをみても裏装無しの方が有利にみえますが、これも有意差はないようです。

逐次解析を行うと症例不足により上下の曲線がクロスしない現象が認められました。この解析からはどっちが有利とはいえないみたいです。

GRADEの基準に則って水酸化カルシウム裏装が推奨されるかどうかの検討もしていますが、推奨はできない(very low quality of evidence)だったようです。

まとめ

メタアナリシス系の論文はあまりよく読んだことがなかったため大苦戦です。これは勉強しないといけません。なので意味がちょっとわからない文書が多発しておりまして、疑問に思ったらすぐに原文をご確認頂きたいと思います。

前回読んだ文献もブラジルからだったのですが、こういった虫歯に関するランダム化比較試験が数多く行われているようです。しかし、この前読んだ文献が結構疑問点が多い文献だったのでそこら辺が心配です。

今回のメタアナリシスの元になった3本の論文も全て著者グループが同一で L. Casagrandeさんのグループなんですよ。
そこら辺、結論が偏ったりしていないのか少し心配です。

前回読んだブラジルの論文はこちらです。

ブラジルの場合、虫歯をわざと一部残して修復する治療(PCR)が結構行われているのでしょうか。まあ乳歯の場合は生え替わるわけで神経を残しつつ数年持たせることが成功と考えるとあえて少し残して修復して露髄させないようにするという選択肢もありえるのかな、と思いました。

自分の場合、乳歯に裏装は行っていませんでした。乳歯はかなり小さくて薄いので、水酸化カルシウムとか裏装してCRのスペースや厚みが減るのが嫌だからです。
また、乳歯で虫歯がかなり深い場合はステップワイズせずに虫歯を全部取って露髄すれば断髄してしまうことが多いのですが、その是非はまた別の論文で判断するしかなさそうです。

どちらにしても、乳歯に裏装する意味はあまりないかも、ということは心に刻んでおきたいと思います。

メタアナリシスの元になった論文

L. Casagrande, L.W. Bento, D.M. Dalpian, F. Garcia-Godoy, F.B. de Araujo, Indirect pulp treatment in primary teeth: 4-year results, Am. J. Dent. 23 (1) (2010) 34–38.

L. Casagrande, C.A. Falster, V. Di Hipolito, M.F. De Goes, L.H. Straffon, J.E. Nor, et al., Effect of adhesive restorations over incomplete dentine caries removal: 5-year follow-up study in primary teeth, J. Dent. Child (Chic) 76 (2) (2009) 117–122.

R. Franzon, L. Casagrande, A.S. Pinto, F. García-Godoy, M. Maltz, F.B. de Araujo, Clinical and radiographic evaluation of indirect pulp treatment in primary molars: 36 months follow-up, Am. J. Dent. 20 (3) (2007) 189–192.

時間があれば後に検討予定です。

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