普通の歯科医師なのか違うのか

直接覆髄時のケミカルサージャリーは賛否両論あるみたい

2020/02/15
 
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5代目歯科医師(高知市開業)
東京医科歯科大学卒業(47期)
同大学院修了
【非常勤講師】
東京医科歯科大学
徳島大学
岩手医科大学

前回と同じ感じの文献

前回と同じく前々回の文献のリファレンスから適当に 直接覆髄(DPC) に関する文献を引っ張ってきたんですが、大体結果として同じ感じです。

まあ同じ論文から引っ張ってきているので傾向が似てくるのは当然かなと思います。

今回読んだ文献

Marques MS, Wesselink PR, Shemesh H. Outcome of direct pulp capping with mineral trioxide aggregate: a prospective study. J Endod 2015;41:1026–31.

2015年 Journal of Endodonticsに載ったオランダからの論文です。

Abstract

Introduction: The aim of this experimental study was to assess the outcome of direct pulp capping with mineral trioxide aggregate (MTA) after complete excavation of caries in permanent dentition with a 2-visit treatment protocol.

Methods: Sixty-four teeth with deep carious lesions were consecutively selected. The mean age of the patients was 36.1 ± 15 years. An initial diagnosis of deep caries, with no irreversible pulp involvement,
was made. Excavation of caries was performed under a rubber dam and operating microscope magnification. White MTA was applied, and a provisional restoration was placed. At the following appointment, positive sensibility testing and the MTA setting were confirmed. Bonded composite restorations were placed afterward. The patient was recalled at least 1 year after treatment for clinical and radiographic control. Outcome was
described as success or failure. Success was defined as lack of complaints from the patient, positive reaction to cold testing, no sensitivity to percussion, and no widening of the periodontal ligament on the recall periapical radiograph.

Results: Forty-six teeth (77.9%) were recalled after 3.6 years (standard deviation = 1.1 years). The overall success rate was 91.3%. The success
rate in occlusal caries was 100% and 89.7% in proximal caries (difference = 10.3%; 95% confidence interval [CI], 8.5–89.1). The success rate in initial caries was 94.7% and 88.9% in secondary caries (difference =
5.8%; 95% CI, -48.1 to 59.7). The success rate in patients younger than 40 years was 100% and 80% in patients aged 40 years or older (difference = 20%; 95% CI, 4.2–35.8).

Conclusions: Direct pulp capping with MTA after pulp exposure during excavation of deep caries could maintain pulp vitality in permanent
teeth when a 2-visit treatment protocol is observed.

永久歯において完全に虫歯(カリエス)を除去した後に露髄した部位をMTAにて直接覆髄、仮封まで行い次の来院時に修復した際の結果を調査することが今回の目的です。

64本の深い虫歯を有する歯が選ばれました。患者の年齢は36.1±15歳でした。非可逆性の歯髄が含まれないように診断を行いました。虫歯の除去はラバーダム後にマイクロスコープ下でエキスカを用いて行われました。MTAによる直接覆髄後に仮封を行いました。次のアポイントで神経が生活反応を示す事、MTAが硬化している事を確認した後にCRで修復しました。その後最低でも1年後までは臨床的、X線的にフォローされました。結果は成功か失敗かの2択となり、成功は患歯に関する患者の訴えがないこと、冷刺激で生活反応を示し、打診に対する違和感等がなk、レントゲン的に異常がないこととしました。

46本の歯に関して3.6年後までフォローされました。全体的な成功率は91.3%で咬合面う蝕の場合は100%、隣接面う蝕の場合は89.7%でした。初めてのう蝕の場合の成功率は94.7%、二次う蝕の場合は88.9%でした。40歳より若い場合の成功率は100%、40歳より年上の場合の成功率は80%でした。

深い虫歯の除去に伴う直接覆髄においてMTAを用いた2度来院による修復は歯髄の生命力を維持する可能性が示唆された。

ここからは要約意訳でいきますので、訳が間違っている可能性があります。怪しいと思ったら原文をご確認ください。

要約

2008年~2011年の間に処置した59人、64歯が対象でした。前歯5本、小臼歯17本、大臼歯42本、上顎が38本、下顎が26本でした。
被験者が32名が女性、27名が男性で平均年生は36.1±15.1歳でした。
基本的な処置は全て筆頭著者1名で行っているようですが、2症例のみCR充填がGPにより行われたようです。

麻酔+ラバーダム後にカリエスをカリエスディテクターを用いて除去しています。除去に関してはタービン+エンジン+エキスカにて行われています。
露髄してもカリエスが残っていれば完全に除去したと記載があります。

露髄面に対してはケミカルサージャリーは行っておらず水洗と綿球による乾燥のみです。考察で次亜塩素酸は歯髄の幹細胞からのオドントブラスト分化を抑制すること、クロルヘキシジンがMTA硬化を阻害するため使用しなかったと説明しています。

MTAはProRoot使用で露髄面周辺に1.5mm以上の厚みになるように築盛、10分経過後に酸化亜鉛または硫酸亜鉛セメントにて仮封をしています。

次の予約は4~12週後で、その際に自発痛や歯髄の失活所見があれば根管処置をしています。そういうことがなければ、CR充填が行われます。

結果は基本的には上記アブストとほぼ同じです。
46本の歯に関して3.6年後までフォローされました。全体的な成功率は91.3%で咬合面う蝕の場合は100%、隣接面う蝕の場合は89.7%でした。初めてのう蝕の場合の成功率は94.7%、二次う蝕の場合は88.9%でした。40歳より若い場合の成功率は100%、40歳より年上の場合の成功率は80%でした。

この中でカプランマイヤーによる歯髄の生存率で有意差を認めたのは年齢が40歳より上か40歳以下のみで、残りの3項目(出血の有無、初めてのう蝕か二次う蝕か、咬合面う蝕か隣接面う蝕か)に関しては統計的有意差を認めていません。

まとめ

あまりしっかり条件が整えられた論文ではなく、歯種もバラバラです。咬合面カリエスなどは7症例しかないです。こういった症例の偏りが統計結果に影響を与えた可能性は否定はできないところかと思います。

前回の論文では咬合面カリエスか隣接面かで有意差が出ていましたが今回は有意差はありません。

前回の論文と共通して言えることはやはり40歳以下の方がMTAによる予後が良いということです。

いままでの論文の積み重ねで考えると

あまり痛みのない虫歯を削っていたら露髄しそうになった時

40歳よりも上の場合は間接覆髄で水酸化カルシウム貼薬→2か月後ぐらいにリエントリーしてカリエスを除去
40歳以下ならカリエスを除去して露髄してしまったらMTAにて直接覆髄

が良さそうですが、MTAは高価ですからね・・・

今の所、読んだ文献は40歳がボーダーになってます。
40歳・・・もう自分の歯髄は活き活きしていない部類のようです。

ケミカルサージャリーについて

次亜塩素酸が幹細胞からの分化を・・・と言うところについて引用文献はこれになります。

Kawashima N. Characterisation of dental pulp stem cells: a new horizon for tissue regeneration? Arch Oral Biol 2012;57:1439–58.

あら?これエンドの川島先生のreviewではないですか
学生時代は大変お世話になりました。こんな所で再会するとは。

ちらっと読んでみたんですが、分子生物学的な内容でこれはなかなか厳しいです。

sodium hypochloriteで検索すると1個しかなかったので、ここだけ読むことに、そうするとEDTAも次亜塩素酸もオドントプラストの分化を妨げてしまうようです。

デンティンブリッジの主要形成を担うのがオドントプラスト(象牙芽細胞)ということで良かったですよね?

単純に考えると直接覆髄する際にデンティンブリッジの形成を期待する材料を使用する場合、EDTAや次亜塩素酸は使わない方がよい、ということになりますが、前々回、前回の論文共にケミカルサージャリーしていますし、いわゆるリバスキュラリゼーション?の症例でもAAEの勧める術式では次亜塩素酸を使用すると書いてありましたし、実際自分の症例で根未完成歯にAAE術式でやってみて歯根完成してきているので、次亜塩素酸が接触した面が抑制されても実際の臨床では問題にはならないのでは?という感じもします。

ケミカルサージャリーの有無でデンティンブリッジの形成や予後に影響するかどうかを検討した論文があればいいんでしょうが、まだ見つけられていません。
どなたか知見をお持ちの方がいらっしゃれば是非教えて頂きたいです。

まあ、デンティンブリッジは魔法のシールドではありませんから、DPCの際はそれよりも歯髄の生活反応を優先するべきではないかという気もしています。

とりあえずまあ直接覆髄の文献はここら辺にします。
実はtwitterで質問を受けたので、次回はそれについて書いていく予定です。

いまだコメントがないのです。
コメント欄全て埋めなくても投稿できるはずですので、お気軽にコメントしていただけると・・・励みになるのか、不勉強があらわになるのか・・・わかりませんが、嬉しいのでよろしくお願い申し上げます。
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前々回の論文

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