普通の歯科医師なのか違うのか

歯が少ない、口腔乾燥、口の中の痛みを感じている高齢者は認知機能低下の可能性

 
この記事を書いている人 - WRITER -
アバター
5代目歯科医師(高知市開業)
東京医科歯科大学卒業(47期)
同大学院修了
【非常勤講師】
徳島大学
岩手医科大学

オーラルフレイル第4弾

今回は日本語です。そしてダウンロードフリーです。
老年歯科医学最新号です。できたてホヤホヤです。

歯科医院受診高齢者の認知機能スクリーニング検査と口腔内状況との関連
奥森 直人, 小室 美樹, 江黒 徹, 溝口 尚, 宮田 幹郎, 栁澤 邦博, 早乙女 雅彦, 野村 智義, 竹島 明道, 木村 英一郎, 米山 俊之, 野本 秀材, 大橋 功, 簗瀬 武史
老年歯科医学  2019 年 34 巻 3 号 p. 389-398

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsg/34/3/34_389/_article/-char/ja

前回は大府スタディによるMCIと口腔機能との関連性についての論文を読みました。

前回の論文では一般高齢者を対象に大規模な調査を行っていますが、今回は歯科医院を受診した高齢者を対象としています。

抄録

抄録:目的:本研究は,一般歯科医院に来院する65 歳以上の高齢者に対し,認知機能 スクリーニング検査を行い,軽度認知障害(Mild Cognitive Impairment: MCI)の疑 いのある者と認知機能低下者の割合を調査し,口腔内状況などとの関連を調べることが 目的であった。
方法:全国の15 歯科医院を受診した高齢者のうち,同意を得られた者に調査した。 認知機能スクリーニング検査は,Montreal Cognitive Assessment 日本語版(MoCA-J) を用いた。
結果:65~84 歳の181 人を検討対象とした。MCI の疑いのある者は65~74 歳群で 41.5%,75~84 歳群で49.3%であった。認知機能低下者の割合は,65~74 歳群で 8.5%,75~84 歳群で26.7%であった。加齢とともに増加(p<0.001)していた。認知機能低下者は,健常者と比べて現在歯数が少なく(p=0.009),「主観的口腔乾燥」が 4.89 倍,「口の中に痛みを感じたことがある」が3.19 倍のオッズ比であった。しかし, 健常者とMCI の疑いのある者では口腔内状況などの違いはなかった。
結論:認知機能低下の早期発見には,年齢,現在歯数の減少,「主観的口腔乾燥」お よび「口の中に痛みを感じたことがある」などの要因が手がかりとなる可能性がある。

MOCAとMMSEの違い

MOCAはMCIを判定するために作られたスクリーニング検査でMCI専用ですが、MMSEは認知症からMCIまで全てをスクリーニングします。

ここら辺のスクリーニング検査については老年医学会のサイトがわかりやすいです。

https://www.jpn-geriat-soc.or.jp/tool/tool_02.html

これからすると、MOCAはMMSEよりも糖尿病患者の認知機能障害の検出に優れるようです。
MOCAは感度は高いですが、特異度はそこまででもない感じですね。つまり偽陽性が多くなりがちということでしょうか。

対象者

一般歯科医院(15医院)を受診した65歳の患者で同意を得られたもの205名から除外項目該当者を除外した181名となります。

調査項目

口腔内診査:歯式、その他の所見
アンケート:年齢、性別、身長、体重、既往歴、投薬内容、現病歴、教育歴、独居か同居か、社会活動の有無、認知症家族歴
認知機能検査:MOCA-J
口腔関連QOL:OHIP-14
咀嚼能力検査:咀嚼スコア

今回の研究ではMOCAが26点以上を健常、26点未満20点以上をMCI疑い、20点未満を認知機能低下者と分類しています。

統計解析ですが、MOCA-Jにより分類した3群間で各項目を比較します。有意差があった主観的口腔乾燥と口の中の痛みを説明変数とし、他の関連性が強いだろうものを独立変数としてロジスティック回帰分析を行っています。

結果

MCI疑いが多すぎる?

181人中、MCI疑いが44.8%とかなり高い数値を示しています。 
認知機能低下も合わせると、MCI疑い+認知機能低下者が110名、健常者が71名となります。

いくらMOCA-Jが偽陽性が多いといってもこれは多すぎでは無いでしょうか?厚労省はMCIを高齢者の13%程度と試算していますから、これは数字としてかなり乖離しているのではないでしょうか?ここら辺が疑問点になります。

そのため、MOCA-Jに関する他の論文を検索して調べてみることにしました。

地域在住高齢者におけるMMSE・MoCA-Jを用いた認知機能の年代比較 https://www.jstage.jst.go.jp/article/rika/34/3/34_331/_pdf/-char/ja
この論文では48名の高齢者を調査していますが、44名がMOCA-Jで25点以下となっています。
Brief screening tool for mild cognitive impairment in older Japanese: Validation of the Japanese version of the Montreal Cognitive Assessment
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20141536
この論文でもかなり高い検出率となっています。

MOCA-Jは感度が高く特異度が低いためこういった検出率になるようで、今回の論文が逸脱したデータということはないようです。

各群間の比較

健常者群、MCI疑い群、認知機能低下者群間において各項目で統計処理していますが有意差があったのは
年齢群 65~74歳 vs 75~84歳
主観的口腔乾燥の有り無し
口の中の主観的な痛みの有り無し

の3つでした。
また、残存歯数については、健常者と認知機能低下者間において有意差を認めています。健常者よりも認知機能低下者の方が有意に残存歯数が少ない結果となりましたが、MCI疑い群とは有意は認めませんでした。

ロジスティック回帰分析の結果
認知機能低下者は、健常者に比べて4.89倍主観的乾燥を感じやすく、3.19倍口の中に痛みを感じたことがある
ということになっています。

まとめ

今回、MCI疑い群と健常者群では有意差が認められた項目は、75~84歳における咀嚼スコアのみのようです。
MCI疑い群では食べづらい食品が増えるというのはオーラルフレイルとしても妥当な所ではないかと思います。

認知機能低下と口の中の不快症状や喪失歯数の増加は連動するという事は今回の論文からも確認出来ます。

MOCA-Jの検出率が高すぎて健常者群とMCI疑い群であまり能力差がなくなっているのが今回MCI群で有意な結果がでなかった原因なのかもしれない、と思いました。

詳しい方がいれば、統計手法も含めて教えて頂きたいですね。

この記事を書いている人 - WRITER -
アバター
5代目歯科医師(高知市開業)
東京医科歯科大学卒業(47期)
同大学院修了
【非常勤講師】
徳島大学
岩手医科大学

- Comments -

メールアドレスが公開されることはありません。

Copyright© 5代目歯科医師の日常? , 2020 All Rights Reserved.