普通の歯科医師なのか違うのか

間接覆髄材料の種類よりもしっかり封鎖することが軟化象牙質の改質に繋がる

 
この記事を書いている人 - WRITER -
5代目歯科医師(高知市開業)
東京医科歯科大学卒業(47期)
同大学院修了
【非常勤講師】
徳島大学
岩手医科大学

虫歯の論文に戻ってきました

オーラルフレイル関連の論文を5本読んできましたが、ちょっと飽きてきたので以前HY材の話を書いた際にお?これは読まねばとメモしてあった論文を引っ張り出してきました。

実はこれはう蝕治療ガイドライン第2版のステップワイズエキスカべーション後の間接覆髄に関する部分に引用されている論文で最もエビデンスレベルが高いとされています。
詳しくはう蝕治療ガイドライン第2版の該当部位を読んで頂けると分かりますが、日本語の要約だけでもかなり刺激的な内容です。

Corralo DJ, Maltz M. Clinical and ultrastructural effects of different liners/restorative materials on deep carious dentin: a randomized clinical trial. Caries Res. 2013;47(3):243-50. doi: 10.1159/000345648. Epub 2013 Jan 19.

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23343804
PMID: 23343804

ブラジルの大学からの2013年の論文です

Abstract

We evaluated the effect of calcium hydroxide cement (CHC) and glass ionomer cement (GIC) on carious dentin and bacterial infections after partial caries removal and sealing.

Sixty permanent teeth with deep lesions underwent partial caries removal, the application of CHC, GIC or wax, i.e. negative control (NC), and were then sealed for 3–4 months. After the partial caries removal and the sealing period, the dentin was clinically assessed (colour and consistency) and analysed by scanning electron microscopy to assess dentin organization and bacterial infections. The effect of the treatment in each group was assessed by the Wilcoxon and χ2 tests, differences among groups by the Kruskal-Wallis test and the correlations between variables by Spearman correlation.

No clinical symptoms or radiographic signals of pulpits or pulp necrosis were observed during the study. Dentin darkening was observed after the sealing period in the CHC and NC groups (p <0.05). However, there was no difference in the colour after treatment among the 3 groups (p 1>0.05). Dentin hardening occurred in all groups after treatment (p <0.05), also with no differences (p > 0.05). Dentin samples showed better organization after the sealing period than after partial caries removal, with total or partial obliteration of dentinal tubules (CHC p < 0.03, GIC p < 0.05, NC p<0.01) and a reduction of bacterial infections (CHC p <0.03, GIC p< 0.05, NC p < 0.03). No differences were observed. Correlations between the different criteria, except for colour and bacterial infection, were detected in all cases.

Partial caries removal and sealing resulted in dentin hardening, decreased bacterial numbers and dentin reorganization, irrespective of the dentin protection used.

私達は軟化象牙質上に水酸化カルシウムセメント(CHC)とグラスアイオノマーセメント(GIC)を裏装した効果と部分的な虫歯の除去と封鎖による細菌感染について評価を行いました。

60本の深い虫歯を有する永久歯に関して部分的な虫歯の除去を行い、CHC,GICとコントロールとしてワックスを使用し3-4か月封鎖しました。封鎖期間終了後、残された象牙質に関して、臨床的に色と硬さ、電子顕微鏡を用いて象牙質の構成と細菌感染について診査を行いました。
各群の治療効果の比較に関してはWilcoxonとχ2検定を用いました。各群間の比較にはKruskal-Wallis検定を、相関に関してはSpearmanの順位相関係数を用いました。

レントゲン的な歯髄炎や歯髄壊死の徴候は今回の研究においては認められませんでした。裏装による象牙質の着色がCHCとNC群で有意に認められましたが、3群間に色の違いは認められませんでした。象牙質の硬化は全ての群において有意に認められましたが、各群間では有意差を認めませんでした。
象牙質サンプルは部分的に虫歯を除去した時よりも裏装期間終了後の方が好ましい組織像を示しました。全部又は部分的な象牙細管の有意な消失や細菌感染の有意な減少を認めました。各群間での差は認めませんでした。
異なる基準における相関関係は色調と細菌感染を除いて全てのケースにおいて認められました。

部分的な虫歯の除去と封鎖により、 象牙質保護材料の使用に関係なく 象牙質の硬化、細菌感染の減少、象牙質の再構成が起こるという結果になりました。

またいつものように後は適当に要約意訳していきますので、疑問点等ありましたが、原文をチェックして頂きますようお願い申し上げます。

緒言

CHCは間接覆髄剤として 細菌感染の減少や再石灰化などに関して色々エビデンスがあります。GICに関してはART(カリエスを無麻酔でエキスカのみで除去してグラスアイオノマーを充填する侵襲性の低い治療)で使用し、これも細菌感染の低下や再石灰化等のエビデンスがあります。しかし、今までの報告はコントロールがないなど実験系に問題を認めます。

他には封鎖を行い、口腔内環境との交通を遮断すると微生物叢の生存に影響することが報告されています。

以上の報告から、象牙質保護に関わらず、虫歯を封鎖すると進行が停止するという仮説を立てました。本ランダム化比較試験の目的は深い虫歯を不完全に除去して封鎖した際の裏装材の効果を確認することです。

実験方法

今回の研究は縦断、ダブルブラインド、プラセボコントロール、3群対象となります。

被験者

レントゲン的に完全に虫歯を除去すると露髄する可能性がある歯で冷刺激で反応があり、根尖病変がなく、自発痛や打診痛がない事が条件です。 被験者は44名で60歯(咬合面38、隣接面22,大臼歯47、小臼歯13)となっています。

治療方法

浸潤麻酔+ラバーダム後に必要でない所はバーで大まかに切削、その後エキスカで軟化象牙質を除去しました。
硬さの診断基準を用いて窩洞外周の虫歯は全て除去、歯髄腔側の軟化象牙質は露髄をさけて温存しています。
その後の処置はランダムに均等割付されています。術者が関与していない封筒の中に処置内容が書いてあってその通り行うというものです。

CHC群:ダイカル裏装後に酸化亜鉛ユージノールセメントにて封鎖します
GIC群:グラスアイノマーセメントで裏装+封鎖を一気に行う感じです
コントロール群:ワックスを裏装後に酸化亜鉛ユージノールセメントにて封鎖します

3-4か月後に歯髄の生活反応を再度診査します。
問題なければ麻酔+ラバーダム後充填したものを全て除去します。
色や硬さを評価して象牙質のサンプルを採取します。
その後、最終的にコンポジットレジンにて修復を行っています。

評価法

色と硬さに関しての評価
最初のラフなカリエス除去後と3-4か月経過後のリエントリー時を評価、比較しています。
色については(1)yellow (2)light brown (3)dark brownの3段階
硬さについても(1)soft (2)leathery (3)hardの3段階

電子顕微鏡による評価
3000~6000倍の拡大率で象牙質の構成と細菌感染について評価しています。
判断基準に関して以下の通りで、各々4段階に分類しています。

結果

封鎖前と封鎖後の比較が以下の表になります。

驚いたことに、特に薬理効果がないはずのワックスでも象牙質の改善効果が有意に認められています。

そして3群間の比較では有意差は認められませんでした。

相関関係の結果に関しては、色と細菌感染の組み合わせ以外は全て有意に関連性を示しました。

考察

重要と思う部分を抽出します。

裏装材料に関しての過去の研究ではCHCとGICが飛び抜けて多いです 。

裏装材料の種類に関係なく象牙質の硬化が認められた事から、裏装材料は虫歯進行停止に重要な役割を果たしていない事を示唆しています。

After the sealing period, all lesions showed dentin hardening irrespective of the experimental group, which indicated that the liner/restorative material itself did not play a role in the arrestment process.

裏装材料の細菌感染に対する効果に関してコントロール群を設定した研究が2つあり、片方はCHCが有意に効果があったという報告だが、片方はCHCとガッタパーチャで有意差がなかったという報告になっているようです。

The reduction in bacterial contamination after sealing carious dentin with different liners was assessed by bacteriological exams in 2 controlled studies. In the study by Leung et al. [1980], CHC promoted a significantly higher reduction in bacterial counts than did wax. On the other hand, Pinto et al. [2006] reported a similar reduction in infection when comparing samples treated with CHC and gutta-percha. Unlike microbiological techniques, which specifically detect the growth of viable microorganisms, the methodology used in our experiment was not adequate for the assessment of bacterial viability, although it could reveal a pattern of contamination. Significant reduction in bacterial infection was observed after the sealing period in all groups.

象牙質の色調は歯質の感染と関係がないという報告が多く、今回もそうだった事から、色調を評価基準に入れるのは間違いで硬さの方が信頼できる、と指摘しています。

With regard to the colour, lining with CHC and wax, an inert material, resulted in dentin darkening, while lining/ restoration with GIC did not. Microbiologic studies by Orhan et al. [2008] and Lula et al. [2011] demonstrated that dentin colour is not correlated to the degree of infection before and after dentin sealing. Dentin colour appears not to be an adequate criterion for defining lesion activity while dentin consistency appears to be a more reliable parameter [Kidd et al., 1993; Lynch and Beighton, 1994; Orhan et al., 2008].

まとめ

正直に言って驚きを隠せない論文でした。

間接覆髄に関する材料にこだわるよりもその上の封鎖の方が遙かに大事です

という結論になるかと思います。

つまり、封鎖さえしっかりできれば間接覆髄に使う材料というのは
保険がきかないセメントでも
水酸化カルシウムセメント(CHC)でも
材料を使わなくても
象牙質の改質が期待できる
という解釈になります。

勿論、CHCの裏装効果を支持する文献もありますから、CHCを使いつつ封鎖をしっかりとしてじっくり期間を待つ、というのがスタンダードでよいということを再確認しました。

ちなみにう蝕治療ガイドライン第2版ではCHCとHY剤を間接覆髄の裏装材として使用を推奨しております。それに関して書いたブログが以下の物になります。
色々調べてみた結果、CHCとHY剤はエビデンスレベルに差があるのではないか?という感想を持ちました。

この記事を書いている人 - WRITER -
5代目歯科医師(高知市開業)
東京医科歯科大学卒業(47期)
同大学院修了
【非常勤講師】
徳島大学
岩手医科大学

- Comments -

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

Copyright© 5代目歯科医師の日常? , 2020 All Rights Reserved.